

1.四府県に緊急事態宣言発出
7月30日、政府は武漢ウイルス対策で、東京都と沖縄県に出されている緊急事態宣言について埼玉、千葉、神奈川、大阪の4府県を追加することを決定しました。
期間は8月2日から31日までとし、東京と沖縄の宣言の期限もこれにあわせて延長するとのことです。
現在、首都圏3県と大阪府に「蔓延防止等重点措置」を適用していますけれども、いずれも新規感染者数が宣言の目安となる「ステージ4」に達し、医療機関の負担が増大していることを考慮したとのことです。
更に、感染が急増している北海道、京都、兵庫、石川、福岡の5道府県には重点措置を新たに適用。重点措置の地域では、原則として酒類の提供停止を求めるとしています。
菅総理は記者会見で、「首都圏、関西圏の多くの地域でこれまで経験したことのないスピードで感染が拡大している。病床が逼迫する恐れがある……今回の宣言が最後となるような覚悟で、政府をあげて全力で対策を講じていく」と語り、今後の宣言解除については、接種状況や重症者数、病床使用率などを参考にする考えを示しました。
2.緊急事態宣言など何の効果もない
今月12日から4回目の緊急事態宣言の期間に入っている東京都では、29日、3日連続で過去最多の新規陽性者が確認されています。
この発表にSNSでは「もういい加減、誰か・何かのせいにしてないで現実見たほうがいいってー出歩いてるし、遊んでるじゃん 一人一人の行動の結果だよ…」とか、「なんかもう過去最多という字に慣れてしまった人は僕だけじゃないはず」とか「緊急事態宣言から3週近くなるのに過去最多更新って、もう緊急事態宣言がなんの効果もないことを見事に証明してるよな」などの反応があるようですけれども、押しなべて緊急事態宣言を出したところで効果はないという意見です。
ビッグデータ解析などを行っているAgoop社は、1都3県からの県外移動したデータを解析し、2021年7月の四連休と他の大型連休との比較結果を発表しています。
それによると7月四連休の県外移動は、昨年のお盆と今年のゴールデンウィークとほぼ同じ程度であったと解析されています。
それでいて、昨年のお盆と今年のゴールデンウィークよりも陽性者が増えているということは、単純に人流が感染拡大要因ではなく、その他の要因があるということになります。
7月8日放送のTOKYO MX『バラいろダンディ』では、東京都に四度目の緊急事態宣言が発せられることに対し、出演者の梅沢富美男氏が「その他大勢の平民は言うこと聞かないよ。お店開けてるよ。12時までやってるよ。酒も提供してるもん。捕まえて下さい。罰金は払えません。お金ないんだもん。懲役に行きます。死ぬよりマシだ。そのくらい腹くくっちゃってるもん。いい加減にしないと」と怒りをあらわにし、東京五輪についても「責任は誰が取りますってことをはっきり国民に言いなよ。私が責任取りますって。そのために大臣がいるんだろ。オリンピック大臣じゃ荷が軽いから、私がと総理大臣が言うのか、小池さんが言うのか。誰も言わないじゃん……そんなオリンピックで、よく開催しますなんて偉そうに言うよな」と述べました。
このコメントに、ネットは、「徐々に首を締め付けられてるようなものだからな」、「補償なき自粛要請の実態がこれだ」、「確かに誰も責任取りたくないのはミエミエ」「みんな物言いが中途半端なのはある」などと共感する声が出ています。
つまり、最初こそ、一人一人が一生懸命自粛していたけれども、長きに渡る自粛要請に疲れ果てたか、あるいはワクチンを接種したからもう大丈夫とばかり、日常の生活に戻し始めた結果なのではないかという気がしてきます。
3.中年世代はうんざりし高齢者は怯えている
慶應大学大学院准教授の小幡績氏は、第3回目の緊急事態宣言が出された5月の段階で、緊急事態宣言の効果は皆無だと断言しています。
小幡氏は、その理由として世代別に挙げています。それは次の通りです。
1)まず若い世代は、緊急事態宣言無視だ。そもそもテレビを見ない、持っていない。だから、テレビで大臣がわめこうが、知事が国を罵ろうが、そもそもそれを知らない。政治家たちのアリバイ作りのパフォーマンスはそもそも認識すらされていない。彼らにとっては、1回目の緊急事態宣言のときは、コロナ危機への異常な自粛、という目新しいイベント。初めてハロウィンに参加するような気分だ。だから、1回イベントを消費すれば、次は目新しいイベントではないから、まったく関心の対象に入らない。だから、支持とか不支持とか従わないとかではなく、関心の外にある。「緊急事態宣言? で、何か?」という感じだ。確かに、5月28日に放送された『ニュースウオッチ9』で、お笑いコンビEXITのりんたろー氏が、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身会長と対談しましたけれども、そこで、りんたろー氏が、今の若い子は緊急事態宣言が出ているか出ていないのか、知らない子が多いと述べ、尾身会長が絶望的な表情で「緊急事態宣言が出ていることも知らない?」と聞き返す場面もあり、話題になっていたことがありました。
2) 中年世代はどうか。テレビをつけると、官邸と知事の非難合戦、罪の擦り付け合い、まさにうんざりだ。アリバイ作りよりも、テレビに出る暇があったら、病院を説得してくれ。2度目からは、もううんざりで今回はあきれ果てているから、これもテレビは見てはいるが、馬耳東風だ。政治家の叫びは趣味の悪いBGMにしか聞こえない。
3) 高齢者は、ただ怯えているだけだ。テレビでコロナの話が出れば出るほど、それがどんな話であれ、恐怖がさらに刺激されるだけ。金持ち高齢者はさらに家に引きこもり、巣ごもり消費に慣れていないから、ただ、怯えて貝になっているだけだ。
また、中年世代はうんざりし、高齢者は怯えているだけ、という小幡氏の指摘も当たっているように思います。
4.恐怖の支配
そして小幡氏は、緊急事態宣言第1弾で行った接触8割削減の主張や「ロンドン、ニューヨークの次は東京だ」という脅しを続けた「自称(他称)専門家」により、専門家不信は確定し、それによって緊急事態宣言を出せば出すほど、政治不信は強まることとなったと指摘。1回目の緊急事態宣言が効いたように見えたのは、緊急事態宣言自体ではなく、欧米がやられたという情報による、恐怖の支配によるものであったと喝破しています。
小幡氏は「それでも年末年始にはそれなりに、自粛が広まった。しかし、その理由は、緊急事態宣言にあったのではなく、東京の陽性確認者数が、あっというまに1000人という4ケタにのり、それがすぐさま2000人を超えたからであった。この数字の急増は恐怖を広めた。この数字に対する恐怖感、東京2000という恐怖感が東京を支配し、なぜか、東京以外も支配し、ついでに「東京2020」への批判、否定的な見解も広まった」と指摘しています。
緊急事態宣言よりも恐怖による支配が人々を自粛させたという小幡氏の指摘は傾聴に値すると思います。
なぜなら、武漢ウイルスの実態が徐々に明らかになるにつれ、世代によってその「恐怖感」が異なるであろうからです。
恐怖感という切り口で見た場合、若年者は重症化しにくいというこれまでのデータから、若年層の「恐怖感」は薄いのに対し、逆に重症化しやすいとされる高齢者の「恐怖感」は高いであろうことは論を待ちません。
つまり、武漢ウイルスを怖がらない若者は普通に出歩き、中年層は生きるためにリスク覚悟で働き、高齢者はウイルスを恐れてあまり外にでない、というのがこれまでの状況なのではないかと思います。
5.重症患者は増えず陽性者だけ増える
政府が進めているのがワクチン接種です。重症化を防ぐワクチン接種によって医療体制の逼迫を抑えようという訳です。
既に高齢者のワクチン接種率は9割近くに迫っていますし、東京都が発表している重症患者数の推移を見ても一月末の150人水準に対して、7月は100人以下水準に抑えられています。
昨年のお盆と今年のゴールデンウィークと同程度の人出で、重症化患者数も増えてない状況で、陽性者数だけ増えている。これはつまり、無症状か中等症が増えたということです。
ワクチンは自粛を促す「恐怖感」を和らげる効果があることは間違いないと思います。けれども、ワクチンは感染そのもの、あるいは陽性判定を消し去るものではありません。何個かのウイルスが喉に付着すること(PCR陽性判定→感染)までは防いでくれる訳ではないからです。
その意味では、重症化患者数が増えず、陽性判定者だけが増えたというのは、ワクチン接種者が増え、そこに慣れも加わって、武漢ウイルスに対する「恐怖心」が薄くなった結果、普通の生活に戻りつつあることを示しているのだとも言えます。

6.ゼロコロナからウィズコロナへ
もし、武漢ウイルスに対する恐怖心がなくなるようなことがあれば、武漢ウイルスも「未知の病原体」から「ただの流行り風邪」に格下げになります。
どなたかが仰っている「ウィズ・コロナ」です。
既に世界では「ウィズ・コロナ」に舵を切り始めつつあります。例えばイギリスがそうです。
7月19日、イギリス政府はマスク着用とソーシャルデイスタンスの維持など武漢ウイルス対策の主要な規制を全面解除しました。
1日当たりの感染者数は5万人以上と日本と比べて格段に多いにもかかわらずです。
というのも、ワクチン接種が進み感染しても重症化はしないことが明らかになってきたからです。
イギリスでは武漢ウイルスでこれまでに約13万人が亡くなっていますけれども、7月に入ってからの1日当たりの死者数は50人以下にとどまっています。
7月5日、イギリスのジョンソン首相は、「ワクチン接種が進み、感染と死亡の関係を断ち切ることができた。コロナと共生する新しい方法を見つけなければならない」と述べ、ジャビド保健相も「新型コロナウイルス以外の医学や教育、経済上の問題がパンデミックを通じて蓄積されており、感染者数が1日当たり10万人に達したとしても、社会を正常に戻す必要がある」と、今回の措置は「ウィズ・コロナ」の為のプロセスの一部だとの認識を示しています。
この「ウィズ・コロナ」への政策転換はイギリスだけではありません。
シンガポール政府は6月下旬に「感染者数の集計をせずに重症患者の治療に集中する」と宣言し、武漢ウイルスを季節性のインフルエンザのように管理する戦略に切り替えました。
シンガポール政府は、ワクチン接種が進んでいるイスラエルでは、ワクチン接種完了者が感染する確率は未接種者の30分の1、重症化は10分の1に過ぎず、ワクチン接種完了者の致死率は0.3%まで低下しているというデータを根拠にこの方針に転換しています。
どこかの首長は「ウィズ・コロナ」と嘯きながら、自粛を要請して感染者を限りなく減らすという「ゼロ・コロナ」を要求していますけれども、そろそろリスクをどこまで社会的に許容するかという世論形成と「ゼロ・コロナ」を続けるのかそれとも「ウィズ・コロナ」にするのかといった大きな判断が求められている時期が来ているように思います。
たとえば、政府が「ウィズ・コロナ」にすると決断すれば、それこそシンガポールのようにPCR判定の集計を止めて陽性者数を発表しないまたは、報道しないように要請するなんてこともあり得ますし、なんとなれば、要請してもなお感染者数を報道する番組は、名指しして発表したってよい訳です。
実際、今現在飲食店に対して、時短営業や酒類提供禁止を要請して、守らない店を公表しているのですから、同じ理屈で要請を守らない番組を公表することだって出来ることになります。
武漢ウイルスで死ななくても、自粛などで引き起こされた経済的ダメージで命を落とす人もいることを考えると「武漢ウイルスの撲滅」を目指すだけではなく、「武漢ウイルスに対する恐怖心のコントロール」に軸足を移して経済活動を活性化させていくことも考えてもよいのではないかと思いますね。
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カリンパパ