

1.線状降水帯による記録的豪雨
線状降水帯による記録的豪雨が続いています。
各地で河川の氾濫や土砂災害の被害が発生しており、佐賀県嬉野市では降り始めからの総雨量が14日夜に1000ミリを超え、14日の72時間雨量の最大値は佐賀県嬉野市で929.5ミリ、長崎県雲仙市が848.5ミリ、富山県氷見市が290.0ミリ、岐阜県中津川市が278.5ミリなど九州を中心に東海や北陸、中国地方を含む46地点で観測史上最多となりました。
この中には2018年7月の西日本豪雨で被害が出た広島県や福岡県、佐賀県などの複数の観測点も含まれているそうですから、既に西日本豪雨を超えたところもあるということです。
長崎県と佐賀県の各知事は自衛隊へ災害派遣を要請しました。
総務省消防庁によると、14日午後0時半時点で、避難情報のうち最も危険度が高い「緊急安全確保(警戒レベル5)」は福岡、佐賀、長崎、広島の4県23市町で約65万1千世帯の142万3千人に発令。避難指示は北陸から九州にかけての22府県164市町村で、約188万8千世帯に出されています。
気象庁予報課の黒良龍太課長は14日の記者会見で、「前線はすぐに北上し、1週間程度本州付近に停滞する可能性がある。安心する状況では決してない」と述べ、いつどこで災害が起きてもおかしくない状況だと警戒を呼び掛けています。
2.未曾有の天災で天譴
東京五輪の時は連日の猛暑が続いていたのに閉会した途端に、梅雨どころか今回の豪雨です。
ここに天意が働いているかどうか分かりませんけれども、今回の豪雨が今後齎すであろうことに、次の2つないし3つがあるのではないかと思っています。
まず、一番目に思い浮かぶのは、天罰ならぬ"警告"です。
今年の大河ドラマ「青天を衝け」は、実業家の渋沢栄一が主人公ですけれども、渋沢栄一は、1923年の関東大震災直後に新聞紙上で、次のように述べています。
今回の震災は未曾有の天災たると同時に天譴(てんけん)である。維新以来東京は政治経済其の他全国の中心となって我が国は発達してきたが、近来政治界は犬猫の争闘場と化し、経済界亦商道地に委し、風教の廃は有島事件の如きを賛美するに至ったから此大災決して偶然でない。渋沢栄一は、政界は犬猫の如き権力争いの場と化し、経済界も商道徳を失い、心中を賛美するほどモラルも廃れたが故に震災は天罰でもあると述べています。それと比べて、今はどうなのかとは敢えて言いませんけれども、少なくとも、今の世相は、武漢ウイルス禍も相俟って、乱れているとはいえるでしょう。
確かに、豪雨などの自然災害は、「人は自然には敵わないのだからもっと謙虚であれ」と、いつも教えてくれるのだと思います。
その一方、現実的、政治的な観点からは、日本人に再びインフラの大切さを思い知らせるとともに、その復旧など、金を使って経済を回すように促していく面もあるのではないかと思います。
なぜなら、今年は国家予算が余りまくっているからです。
2020年度の国の予算は、武漢ウイルス問題への対応から、3回にわたって補正予算が編成され、一般歳出は76.8兆円増加しました。
一方、税収はというと、武漢ウイルスの影響で、旅行関連、飲食関連など対人接触型サービス消費は大幅に悪化したものの、巣ごもり消費の増加や輸出の急回復の影響で、大企業製造業の業績が好調となり、法人税収は11.2兆円と想定より3.2兆円多い結果となりました。
けれども、これら大幅に積み上げた予算は、2020年度内に使いきれずに、2021年度に繰り越され、その額は30.8兆円に達しています。
この繰越額は東日本大震災直後の2012年度の7.6兆円の4倍を超えるものです。
繰越金の内訳をみると、武漢ウイルス禍で打撃を受けた企業向けの実質無利子・無担保融資制度の6.4兆円が最大で、休業要請に応じた飲食店などへの協力金に充てる地方向けの臨時交付金は3.3兆円が余り、「GoToトラベル」も予算の半分程度にあたる1.3兆円が繰り越し。更に公共事業費も人手不足などで執行が進まず、4.6兆円の使い残しが生じています。
30兆円といえば、2021年度の税収見通しである57兆円の半分以上です。税収見通しのうち、消費税収は20兆円超だそうですから、災害復旧に10兆円回しても、残りの20兆円で1年限定で消費税ゼロにすることだって出来る筈です。
繰越金が山とある中、大規模自然災害が発生した。減税する理由も財源もあります。
3.お盆はみんなステイホーム
二つ目は人流抑制です。お盆シーズンが始まると同時に豪雨が日本全域を見舞っています。
気象庁によると、前線は20日頃まで停滞するとのことですけれども、要するにこれは、日本全国お盆まるまる大雨になるということです。
それも避難指示が出るどころか、観測史上最大の豪雨のレベルでです。
これでは、とてものんびり帰省するどころではありませんし、電車が止まってしまえば帰省もへったくれもありません。また、15日現在、小田原から熱海方面に抜ける道も軒並み通行止めのようですから、車での帰省も相当大変です。
そう考えていくと、今回の豪雨は、「お盆はみんなステイホームしなさい」と、人流抑制による武漢ウイルスの感染拡大抑止と医療崩壊はさせないという天意が働いているのではないかとさえ感じてしまいます。
少なくとも、どこかの知事がステイホームとか、帰省は諦めてくださいなどというよりも、よっぽど効き目はあるでしょうね。
4.中国人民が見つめる目
最後の一つについては、ちょっとこじ付けに過ぎるきらいもあるのですけれども、自然災害に対する政府の対応と国民の態度を世界に見せるという面もあるような気もします。
東日本大震災の時も、被災した日本人の様子が世界に発信されると、その冷静な行動に世界は驚きの声を挙げました。
報道も、降水量や警報、注意報の発令を随時流し、河の氾濫の危険についても淡々と伝えています。
先日、中国でも同じような豪雨に見舞われましたけれども、それに対する行政の対応が天地ほども違うのは誰の目にも明らかです。
少なくとも、現地の情報を封鎖、弾圧するような真似はしていません。
まぁ、今回の日本の豪雨がどこまで中国で報じられるか分かりませんけれども、中国の人民にとって、日本との行政対応の差を目の当たりにすることによって、中国共産党政府に対する不満が高まる可能性があります。
禍転じて福となすことが出来るかどうか。
来る総選挙に向け、今回の豪雨災害がその切っ掛けになるのかどうか、注目したいと思います。
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