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1.高市氏の自民党総裁選正式出馬表明
9月8日、自民党の高市早苗・前総務相は国会内で記者会見し、自民党総裁選への立候補を正式に表明しました。出馬表明は岸田文雄・前政調会長に続き2人目で、複数候補による選挙戦が確定しました。
高市氏は約1時間50分にわたる会見で、戦略的な財政出動、早期治療による重症者&死者の極小化、ロックダウン可能な法整備、NHK改革、新たな日本国憲法制定など、自らの政策について説明する冒頭発言に48分費やすなど、政策をしっかりと訴えました。
更には、記者の揚げ足を取ろうとする質問にもがっつりと保守正論で打ち返し、逆に質問している側のレベルが浮き彫りになるという凄まじさです。
この記者会見にネットでは、高市氏に絶賛の嵐。一方、マスコミには切り取り報道だ、歪んでいるなどと批判が集中しています。
会見を見る限り、高市氏は相手の真の姿をそのまま映し出す、「鏡」のような存在ではないかと思う程です。
2.岸田さんは河野さんに対抗できない
当初は推薦人20人を集められるかどうかというポジションだった高市氏は、安倍前総理が支持する意向を示したことを切っ掛けに最初のハードルを越えて出馬にまで漕ぎつけた訳ですけれども、これについて、政治ジャーナリストの田崎史郎氏は、「安倍氏が20人そろえた。高市氏はそれほど苦労せず、安倍氏が舞台を作った……高市さんは総裁になろうとして人脈を作ってきた方ではないんですね。総裁になりたいんだったら、いろいろな人と付き合いながら貸し借り関係を結んで、自分がいざ立つ時には応援してねとやっていくものなんですけど、そういう努力を高市さんはやってこなかった。推薦人も高市さんの力では、おそらく数人しかいないと思います。そこへ安倍さんが『これくらい人数を貸してあげるよ』とやってらっしゃる」とその背景を明かしています。
そして、安倍前総理が高市氏を支持する理由として「自民党の今の課題は前から申し上げているように、自民党支持層の6割しか選挙で自民党に投票していないということ。これを7割8割に上げていかないといけないんですけど、一番問題になるのは保守層の中で非情に固い保守層の方々が政権から離れて行っているのが大きな原因じゃないかと見方がある。その保守層に弾を打ち込んで活性化して、総裁選を通じてさらに衆院選までやって頂こうという気持ちが、高市さんの擁立に作用しているんだと思います」と述べています。
更に、総裁選では、岸田氏と河野氏の二人の有力候補にと見られていることについて、「仮に2人だけの論戦になった場合、岸田さんはハッキリものを言う河野さんに対抗できない。岸田さんは大人しいし、紳士なので相手を攻撃するようなことはしない……岸田さんは突けないが、高市さんは突ける。議論を戦わせる必要なキャラクターと考えている」と述べています。
なるほど、確かに靖国参拝にせよ、憲法にせよ、皇室にせよ、明解にきっぱりと言い切る高市氏ならば、河野氏相手でもがっつりと論戦するだろうと思われます。
3.総裁選へ軌道修正
それどころか、既に、河野氏や岸田氏は、高市氏の主張に引っ張られ、自らの主張を修正ないし、右寄りにずらし始めています。
9月8日、河野氏は都内で記者団の取材に応じ、原発政策に関して「再生可能エネルギーを最優先に取り入れるのが基本だが、足りないところは安全が確認された原発を当面使っていくことはある……いずれ原発はなくなっていくだろうが、あした、来年やめろと言うつもりではない」と述べました。
河野氏といえば、「脱原発」が持論だったのですけれども、総裁選の支持拡大を狙い軌道修正を図ったとみられています。
更に、皇室についても、政府の有識者会議が旧宮家の男系男子の養子縁組を選択肢の一つと位置付けた中間整理について「非常に現実的ないい方向性を示しているので、その結果を尊重することに全く異論はない……天皇陛下は国民広くから支持されるのが大事だ」と述べ、尊重する意向を示した。
河野氏は過去に女系天皇を容認する姿勢を示していましたから、これも主張を引っ込めた形です。
また、岸田氏も産経新聞のインタビューで、憲法改正について、緊急事態条項新設や自衛隊明記などに意欲を示し、女系天皇反対や原発再稼働にも触れています。
ただ、台湾有事にどうするかと問われ「最善を尽くす」とかウイグル人権弾圧問題についても「発信を強めていく」とか、踵に重心を残したような発言が目立つ印象です。この点、高市氏がウイグル問題について、対中非難決議をするべきだと明解に述べているのとは対照的です。
あるいは、支持を広げるために無理して発言しているのかもしれませんけれども、高市氏の存在が、河野氏、岸田氏をして持論を引っ込めたり、今まで言わなかったことにも踏み込まざるを得なくさせている時点で、かなり影響を与えていることは間違いありません。
その意味では、田崎史郎氏が指摘する、安倍前総理が高市氏を支持することで、総裁選で議論させ、保守層を取り戻そうとしているという狙いは見事に当たっていることになります。
4.高市氏の勝ち筋
9月4日、自民党は、党員・党友を対象に実施した総裁選の情勢調査を行ったとNewsポストセブンが報じています。
調査は「【1】菅総理が辞退されたことで自民党に活性化が生まれると思いますか?」「【2】総裁選挙で派閥の力が大きな影響を持ちます。あなたはどう思いますか?」「【3】報道その他で立候補が予想される中であなたは誰に投票したいと思いますか?」の3項目で行われたそうです。
まぁ、党本部が知りたいのは3問目の「誰に投票しますか」だとは思いますけれども、2問目は派閥の締め付けの是非を問い、1問目は菅総理辞任が総選挙の勝利に結びつくかを探っているような質問であり、色々と思惑含みの調査だと思います。
一番肝心な3問目について、記事では、党員の支持1位は石破氏で、東京、千葉、埼玉など31都道府県で単独トップに立ち、全体の得票率は29%。2位は河野氏で地元の神奈川、大阪など8府県で単独トップで全体の得票率は21%、3位の岸田氏は地元の広島、福岡など4県で単独トップで全体の得票率は19%。4位が高市氏で地元・奈良で単独トップで全体の得票率は8%、以下、5位野田氏、6位下村氏となっています。
これについて、竹下派のあるベテラン議員は、「党員票では岸田より河野や石破のほうが強い。議員票でも、中堅若手議員には"総選挙の顔"には岸田総裁より河野総裁のほうが有利と考えている者が多いから、派閥の引き締めは利かなくなっている」と述べていますけれども、実際、最大派閥の細田派や麻生派でも中堅若手が自主投票を求め、派閥の締め付けは利かなくなっているとも言われています。
一部には、そうしたことから、安倍前総理、麻生副総理は、岸田氏、河野氏、石破氏の戦いになった場合、票が割れて誰も1回目の投票で過半数を取れない事態を想定し、岸田氏を2位以上にして、決戦投票に持ち込む作戦に切り替え、決選投票で中堅若手議員の票が河野氏らに流れても、細田派、麻生派、岸田派、竹下派など主流派の大勢がまとまれば岸田氏が勝てると算段を踏んでいるとも囁かれているそうです。
これでは、まるで高市氏が"捨て駒"のような扱われ方になってしまうのですけれども、自民党の党員・党友調査のとおりにいけば、支持率8%の高市氏に勝ち目はありません。
もし、勝ち目があるとすれば、事前予想を裏切って、高市氏が党員投票で大量得票して決選投票に持ち込むことくらいしかないのではないかと思います。
ただ、出馬記者会見での高市氏の発言の切れ味をみると、あるいはその「まさか」が起こってしまうかもしれない事を期待したいところですね。
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