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1.中国のネットゲーム制限
中国の文革2.0が進んでいます。
8月30日、中国国家新聞出版署は、未成年者(18歳未満)のオンラインゲーム利用制限に関する通知を出しました。その内容は大きく次の3点です。
・ゲーム企業に対してオンラインゲームの実名登録と実名ログインを厳格に実行することを求めるもの。これによって未成年者にゲームサービスを提供できる時間が金、土、日曜および祝日の午後8時から9時までに制限される。中国は2019年に未成年のプレー時間を休日3時間、それ以外は1時間半に制限していたのですけれども、新聞出版署は「未成年の心身の健康を守る」として、プレー時間をさらに短縮し、今回の規制となったものです。
・各レベルの出版管理部門に対して、ゲーム企業による関連措置の実施状況への監督・検査を強化し、問題があれば法に基づき厳格に処理することを求めるもの。
・家庭や学校などに対して、共同で未成年者を管理するよう積極的に指導し、法に基づき未成年者を保護する責任を履行するよう提案するもの。
それでもユーザーの中には、未成年であるにかかわらず、家族の身分情報を使って登録して制限を破ってプレーしていたことが発覚。
9月8日には、中国共産党中央宣伝部や政府の国家新聞出版署などが、テンセントや網易(ネットイース)など国内のオンラインゲームを運営するIT大手側に、未成年がゲーム中毒になることを防ぐ措置を講じるよう厳命しました。
党と政府は運営会社に未成年がゲーム中毒に陥るのを防ぐ重要性と緊急性を深刻に認識するよう求め、「未成年へのサービス提供時間短縮の徹底」「アカウントのリースや売買の禁止」「性的な表現や残酷なシーンを含む不適切な内容の審査」などを指示。ユーザーを中毒にさせるルールや設計の変更を求めました。
更に、党や政府の関係部門が監督や検査を強化するとし、通報窓口も設けて違反があれば厳しく罰すると伝えています。
通報窓口と言葉を変えていますけれども、要するに"密告制度"を作るということです。
実際、文化大革命の時期、中国では友達同士や同僚の間、そして家族同士に至るまで互いの監視と密告がかなり盛んでした。その結果、人間不信となり、自殺者も出ました。生き残った者も今でいうPTSD症候群を発症し、長く悩まされてきたとも言われています。
これら、習近平政権の第二の文革政策は、後々中国人民に禍根を残すことになるのではないかと思います。
2.衝撃を受ける中国ゲーム業界
習近平主席が残す禍根は無論、それだけではありません。もっと直接的なものとして経済的ダメージが考えられます。
当然ながら、当局のゲーム規制によって、中国国内オンラインゲーム会社の株価は急落。テンセント・ホールディングスと網易(ネットイース)の時価総額は、合わせて600億ドル(約6兆6000億円)余り減少したと報じられています。
また9日に、香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)は、当局が新たなオンラインゲームの承認を一時減速する見通しと報じると、株価の下げは加速。市場は当局の規制に敏感になっています。
当局のゲーム規制に対し、テンセントのゲーム事業を担当するテンセントゲームズは公式に「当社は2017年から現在まで、未成年者のゲーム依存症防止メカニズムを自発的に整備し、各種の新技術、新機能および新たな措置を積極的に取り入れてきた。今後も監督部門の最新規定に基づいて、未成年者の保護と事業の発展に取り組んでいく」との意向を発表。
また、網易(ネットイース)も「私たちは未成年者の保護に対して積極的に行動しており、健全なネット環境を作り上げるよう努力している。今後も国家新聞出版署の最新の通知、要求を厳格に遵守していく」と表明。他の中国ゲーム企業も、最新通知を遵守するとの公式声明を続々と発表しています。
もっともこの規制によって、ゲーム企業の経営が傾くのかというと、そうでもないという見方もあります。
テンセントが8月18日に発表した2021年第2四半期決算によると、売上高1381億元(約2兆3500億円)のうちゲーム事業による売上高は430億元(約7300億円)で、3割程です。しかも決算報告によると、中国におけるゲーム事業の売上高に占める割合は、12歳以下が0.3%で、16歳以下が2.6%と決して大きくはありません。
更に、テンセントゲームズは既に、海外事業の比率が3割近くを占めており、この比率を5割まで増やすことを目指すとしています。要するに海外に逃げてそちらで稼ごうという訳です。
テンセントの劉総裁は「業界全体が心配しているのは、未成年者がゲームという娯楽に依存することだ。監督機関がさまざまなゲームの総プレイ時間を制限する方法を見つけ出せれば、この問題の解決がより一層進むだろう」と述べ、実施する側から見れば総プレイ時間の管理は可能だとした上で、ゲーム依存の問題が解決されればゲーム業界への批判も解消できるとの見方を示しています。
3.抵抗する悪俗圏
ただ、ゲーム時間だけ監督できれば、それでよいのかというとあながちそうとも言えないかもしれません。
中国は既に物凄い監視社会になっています。
中国では全国民にICチップが埋め込まれた顔写真入りの身分証が発行され、その常時携帯が義務付けられています。鉄道・航空機・ホテルなどの利用時に提示した身分証の情報は公安部に送られ、国内移動の履歴はすべて当局に記録されています。
そこでは、氏名・顔写真・身分証番号・誕生日・干支・性別・民族区分・結婚状況・旧名やあだ名・身長・身体的特徴・血液型・最高学歴・政治的背景・職業・戸籍上の住所といった詳細な個人情報に紐付ける形で、出入国記録をはじめ、鉄道や飛行機の予約と利用履歴、ホテルの宿泊履歴、銀行口座情報などが記録されているとされています。
更に、中国の警官は最末端の人員にいたるまで、「警務通」と呼ばれるスマホ状の移動端末が配備され、端末に身分証番号を打ち込めば、クラウド上にあるデータベースから当該人物の戸籍情報や顔写真が表示され、瞬時に相手の身元を調べられる仕組みになっているそうです。
つまり、中国人民は一人一人は、当局にずっと追跡されている訳です。ジョージ・オーウェルのディストピアSF小説「1984年」を地でいく世界です。
4.全体主義無神論国家になってはならない
それでも、この超監視社会にも諸刃の剣の部分があることが分かってきました。
中国版ウィキリークスの存在です。
中国人民は全て18桁の身分証番号が割り当てられているのですけれども、最初の6桁が戸籍登録地の地域番号で、次の8桁が生年月日。残る4桁は認証番号で、そのうち1桁は性別で決まるとされています。
問題はこの身分証番号は国家指導者にも割り当てられていることで、2018年頃から、各種の手段で入手した党高官や一族の機密情報をインターネット上に暴露する行為を通じて党体制に反抗する、「悪俗圏」と呼ばれる若いネットユーザーグループが登場しました。
彼らによって、2018年9月に習近平主席の身分証番号が特定されたそうです。
「悪俗圏」のあるユーザがいうには、、習近平主席の戸籍登録地や誕生日・性別は公開されていることから、既に18桁の身分証番号のうち15桁は予測可能になっていて、不明であるのはたった3桁に過ぎず、推定は簡単なことなのだそうです。
そして、その推定した身分証番号が本物かどうか確かめるために、テンセントなどのウェブサービスに新規ユーザー登録してみるのだそうです。テンセントの利用者登録システムは、中国公安部のデータと直結している為、例えば、習近平主席の身分証番号を入力すると、自動的に公安部のデータを参照して『**平』と名前の一部が表示されたのだそうです。
随分と脇が甘いですね。
そして、「悪俗圏」達の反党行為はエスカレートします。
「悪俗圏」の仲間でアメリカにいるグループが、何人かの仲介者を挟む形で、一般警官を買収。「警務通」端末で検索して表示された個人情報を買い取っていきました。
このようにして、党高官や家族の本名とパスポート番号が暴露されました。
有名どころでは、習近平主席の娘である習明澤氏の身分証番号や携帯電話番号を入手し、出入国管理系統のデータからは、習明澤氏の顔写真とパスポート、香港マカオ通行証の番号を割り出し、携帯番号がネットに晒されたそうです。
「悪俗圏」には複数のオンラインの拠点があり、明確な組織は存在しないのですけれども、在米中国人が運営する『紅岸基金会』や香港の政府職員や警官の個人情報を暴露する『老豆搵仔』、大量の中国共産党員のドキシングを続ける『孤児展覧館』など、類似のサイトやTelegramチャンネルが多数存在しているようです。
「悪俗圏」は、「党高官や家族の本名とパスポート番号が明らかになれば、アメリカをはじめ海外の情報機関がこれをチェックする。党高官が家族を海外に逃していることや、隠し財産なども明らかになる」と語り、党体制にダメージを与えることを目的としているようです。
まぁ、「悪俗圏」の活動が中国共産党を直接打倒するとは思いませんけれども、情報流出を嫌った中国共産党指導部が情報コントロールをより強化しようと更に規制を強めていくことも予想されます。
暗黒の全体主義無神論国家、中国。日本はそんな国にならないよう神々を敬い、自由と民主をしっかりと把持すべきだと思います。
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