尿素に苦しむ韓国と中国依存の危険性

今日はこの話題です。
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1.尿素売ってほしい


11月3日、イギリスのグラスゴーで開かれたCOP26(第26回気候変動条約締約国会議)で、韓国が中国とインドネシアに尿素輸出支援を要請したことが明らかになりました。

韓国環境部の韓貞愛(ハン・ジョンエ)長官は、インドネシア環境森林相と「最近台頭している尿素水供給不足を解消するため輸出量拡大など積極的な関心と支援を要請する」との環境協力了解覚書を交わし、4日には中国生態環境省の趙英民次官と会い、尿素輸出ができるよう中国側の積極的な協力を求めました。

なぜ、尿素輸出を求めたのかというと、中国が先月から尿素輸出に制約を掛けたからです。

中国は尿素水の原料となる尿素の最大生産国で、今年1~9月の中国の尿素輸出量の47.5%が対インド、14%(564000トン)が対韓国です。

韓国も尿素輸入のほぼ全てを中国に依存していて、その割合は実に97.6%に及びます。

従って、その中国が尿素の輸出制限を掛けると、中国依存度が高すぎる韓国は途端に不足する羽目になったという訳です。

中国は石炭から尿素水を抽出しているのですけれども、中国は例の電力不足により、石炭をそちらに回さなければならず、尿素はその割を食った形です。


2.尿素SCRシステム


尿素水が不足すると何に影響するのかというと、排気ガスです。

大型トラックやバスなどには低燃費でパワーがあるディーゼルエンジンが使われていますけれども、ディーゼルエンジンが軽油を燃焼することによって生成される排気ガスには、二酸化窒素(NO2)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、亜硫酸ガス(二酸化硫黄:SO2)など人体に害をおよぼすものが含まれています。

これらは大気汚染につながることから、排出ガス規制が課され、特に窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)には削減のための取り組みが行われてきました。

そういった背景から、ディーゼルエンジンを使用しながらも、有害な排出ガスを浄化する「尿素SCRシステム」が採用された車が使われるようになっています。

尿素SCRシステムとは、アンモニアを使って窒素酸化物(NOx)を減らす排気ガス浄化システムのことで、「SCR:Selective Catalytic Reduction」は「選択的触媒による還元」という意味です。

尿素SCRは、エンジンをよく燃える高温設定にして粒子状物質を減らし、排気管側に触媒を取り付けて窒素酸化物を低減することで、排気ガスを浄化します。

窒素酸化物は窒素と酸素の化合物ですから、窒素酸化物から酸素を取り除くことで無害な窒素に変えることができます。

けれども、実際の排気ガス中には未燃燃料や一酸化炭素だけでなく、酸素も多く含まれているため、未燃燃料や一酸化炭素はこちらの酸素と結合してしまいます。従って、排気ガス中の成分だけでは、窒素酸化物から酸素を取り除くことは出来ません。

そこで使われるのが、アンモニアです。アンモニアは窒素酸化物の酸素と結合する性質があり、窒素酸化物にアンモニアを吹きかけることで化学変化を起こして窒素(N2)と水(H2O)に還元されます。

けれども、アンモニアは可燃性物質のためそのまま車に載せるのは危険です。そこで、まず無害な尿素水の形でタンクに貯蔵しておきます。尿素水はエンジンの排熱で加水分解されるため、尿素水を排気ガスに吹きかけることで、アンモニアガスになります。この尿素水から発生させたアンモニアガスを使って、排気ガス中の窒素酸化物を浄化するシステムが尿素SCRシステムです。

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3.流通が止まる韓国


尿素SCRシステムはコストがかからないため、ディーゼルエンジンに適用するメリットは大きく、韓国では、2015年以降に製造されたディーゼル車には、この尿素SCRシステムを搭載することを義務付けられています。

現在、韓国の国内車両およそ2600万台のうちディーゼル車は1000万台と推算され、このうち排ガス規制「ユーロ6」が適用されたディーゼル車は約400万台で、うち200万台は貨物車です。

尿素水は、尿素に超純水を混ぜて作られますけれども、ディーゼル車に使われると、車種や走行状況によって異なるものの、おおよそ1000キロ走ると約1リットル減るとされています。

韓国では1年間の車両輸送用として必要な尿素は8万トン、尿素水にして約8000万リットルになります。

なんでも韓国のディーゼル車は尿素水がないとエンジンが掛からないようになっているそうで、このまま尿素水が手に入らないとなると物流がストップしてしまいます。

既に、京畿道安養市内の生コン工場など、尿素水不足のため運行できない車両が出始めているようです。

そこで韓国政府は、ベトナムから車両用の尿素200トンを緊急輸入することで合意。オーストラリアからも、尿素水を既存の2万リットルに加えて7000リットルを追加導入することにしました。

更に韓国国防省は、軍が備蓄する尿素水を民間に一時貸与する案を関係省庁と協議。検討中の物量は尿素で200トン、尿素水にすると約20万リットルだそうです。

これでも全然足りません。

韓国政府は、ロシア、インドネシア、サウジアラビア、カタール、マレーシア、モンゴルなど複数の国と協議し、尿素1万トン程度を輸入することを協議していると明らかにしています。


4.中国への依存度を下げよ


翻って日本はというと、尿素の原料であるアンモニアの80%程度を国内で生産していて、中国から原料輸入はしていません。原料は、オーストラリアとインドネシア、台湾の3ヶ国から年間確保量の23%を輸入しています。

更に、日本は元々軽油車が少なく、尿素水の主な用途は、産業用です。日本は昨年、必要なアンモニア96万2814トンのうち77%の74万3231トンを国内で生産。 宇部興産(36万トン)、三井化学(31万トン)、昭和電工(12万トン)、日産化学(12万トン)の4社で91万トンの生産能力を持っています。

韓国外交省関係者によると、尿素調達交渉相手には日本も含まれているそうですけれども、ある韓国企業の関係者は「日本が尿素水を作っているが自給自足がようやく可能なレベルであり、他の国に輸出するほどの状況ではない」とし「このため、韓国政府が要請しても積極支援は難しいだろう」と指摘しています。

この現状について、大林大学自動車学科のキム・ピルス教授は「自国でも供給が不足し輸出を禁止した中国やインドネシアはすぐには尿素水を韓国に売らないだろう。……2~3ヶ月後にロシア産の尿素水がくるまでは高くても尿素水完成品を各国から輸入できるよう助けるのが現実的な政府の役割だ」とコメントしています。

こうしてみると、物資を一国に依存し過ぎることの危うさがよく分かります。

チャイナリスクが増々高まる中、日本とて中国への依存度を下げていく努力が増々必要になってくるかと思いますね。


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