漂流する軽石

今日はこの話題です。
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1.軽石の行方


8月13日に噴火した小笠原諸島の海底火山である福徳岡ノ場から発生した大量の軽石が九州や沖縄を中心に多大な被害をもたらしています。

国土交通省などによると、両県の100ヶ所以上の漁港や港湾で軽石が確認されたとのことで、沖縄県の纏めでは、今月10日時点で県内の漁船105隻がエンジントラブルを起こし、全体の半数以上の1570隻が出漁を自粛しているとのことです。

軽石はさらに黒潮に乗って本州に接近し、すでに高知沖や伊豆諸島にも到達していると報じられていますけれども、軽石が今後、どこへ漂流するか警戒感が強まっており、関係機関が注意を呼び掛けています。

海洋研究開発機構のチームが8月に噴火した小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」の周辺に1万個の粒子を散布した場合の漂流状況を、スーパーコンピューターを使ってシミュレーションしたところ、軽石は黒潮などの海流により、11月上旬にかけて四国付近の沖合を進み、11月末頃には千葉県や神奈川県など関東地方の沖合に達するとの予測を出しています。

実際、四国沖では10月30日に高知県の足摺岬の沖合146キロ、翌31日には室戸岬の沖合207キロで、数十キロ四方の範囲で軽石が漂流しているのを海上保安庁の航空機が確認しています。

この結果に海洋研究開発機構は、「シミュレーションと矛盾しておらず、おおむね予測通りといえる」と分析しています。

ただ、シミュレーションは海流が中心で、風向きなどは考慮されていないのですけれども、東海大の山田吉彦教授は「海面を漂う軽石は風の影響を受けやすい。これから冬にかけて北西からの季節風が強くなるため、軽石の多くは太平洋側に流れ、日本列島から離れていくのではないか」と述べています。


2.三十五年前も噴火していた


軽石とは、火山から噴出したマグマが急速に冷えてできた岩石です。内部からガスが吹き出て小さな穴が無数に開き、白色、淡褐色、淡灰色などの明るい色をしています。

密度が小さいため水に浮き、脆い性質がある為、しばらくは海面を漂った後、徐々に砕けて小さくなり、やがて海底に沈んでいきます。ただし完全に消滅するまでには1~2年はかかるとされています。

産業技術総合研究所によると今回の噴火は戦後最大級の規模といい、噴出物の量は少なくとも約1億立方メートルに上ったと推定されているのですけれども、沖縄県が今回の軽石の成分を分析した結果、カドミウムなどの有害物質は国が定める土壌環境の基準値以下だったとのことです。

海底火山は、日本国内では伊豆諸島、小笠原諸島に多いそうなのですけれども、今回のような噴火は100年に1回あると言われています。

実際、35年前にも今回と同じ福徳岡ノ場で噴火が発生し、噴火の約4ヶ月後に沖縄各地の海岸に軽石が大量に漂着したことがあります。

この時の軽石を調査した琉球大学名誉教授の加藤祐三氏は、両方の軽石を見比べ「詳細な成分分析はしていないが、灰色で黒いごま状の粒があるなど特徴が一致しているので同じマグマ由来だとみて間違いないだろう」と述べています。


3.科学技術が足枷になる


今回の軽石で多くの船が出漁できなくなっている訳ですけれども、エンジンの冷却に海水を使っているのがその理由のようです。

今の船のエンジンは、海水を取り込んでフィルターで濾過したものをエンジンの冷却水として使用しているのですけれども、この濾過装置に細かい軽石が詰まり、冷却効率が落ち、オーバーヒートの要因になるのだそうです。

実際、軽石が漂流している沖縄では、フェリーの海水取り込みフィルターに軽石が付着していたそうで、欠航を余儀なくされています。

では、漁ができないのなら養殖でというと、それも簡単ではありません。

沖縄県うるま市、宮城島の池味漁港では漂着した軽石の影響で、生簀で養殖していた「スギ」などおよそ500匹の魚が死にました。水質の悪化による酸欠や軽石がエラに入り込んで呼吸が困難になったことが原因とみられるようです。

軽石は、今週末にも、まとまって伊豆諸島に接近する可能性があると予測されているのですけれども、既に、東京都の伊豆諸島の一部の島で少量の軽石が見つかっているそうで、東京都は、大量の軽石が港に流れ込むと撤去に時間や多額の費用が必要になるとして、大量漂着の恐れがあると判断した場合は港の入り口にオイルフェンスを張るなど、対策をとる準備を各自治体や漁協と調整しながら進めています。

沿岸では養殖をしているところも多数あると思いますけれども、オイルフェンスなどの対策を進め、被害を最小限に食い止めていただきたいと思いますね。


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