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1.アメリカ下院議員団が台湾を訪問
11月25~26日、アメリカの下院議員訪問団が台湾を訪問しました。
訪台したのは、マーク・タカノ議員、エリッサ・スロトキン議員、コリン・オールレッド議員、サラ・ジェイコブス議員、ナンシー・メイス議員と連邦議会スタッフら17人です。
訪台した米下院議員は、蔡英文総統を訪問したほか、外交部の呉釗燮部長が主催する歓迎レセプションに出席しました。
歓迎レセプションで、外交部の呉部長は、タカノ下院議員ら一行の訪問について、緊密で友好的な台米関係を象徴するものだと述べ、米台関係は盤石であり、アメリカは台湾における民主主義の成功や、台湾がアメリカにとり経済及び安全保障分野における重要なパートナーであることなどを評価していると指摘。台湾は引き続きアメリカとのさらなる提携関係強化と国際社会に貢献できることを期待していると述べました。
これを受けて、タカノ議員は、台湾の人々の民主主義を守ろうとする勇気と決意や、特に台湾が性的少数者の権利保障に取り組んでいることを高く評価し、台湾が人権を非常に重視していることの表れであると応えました。更に地域安全保障情勢や、米台の安全保障及び経済分野での協力などについて、活発な意見交換が行われたようです。
一行は、退役軍人に関する事務を取り扱う国軍退除役官兵輔導委員会の馮世寬主任委員を訪問し、米台関係における重要事項について意見交換。台湾北部、桃園市のイノベーションハブ、虎頭山創新園区など、台湾の先端産業なども視察しました。
2.バルト三国の訪台
アメリカ議会の議員による台湾訪問は、今月で2度目。今年になってからは3度目です。
1回目は6月、上院の超党派議員団が米軍輸送機で訪問先の韓国から台北入りし、武漢ウイルスのワクチン供与を発表、蔡英文総統とも会談しました。
2回目は11月9日から11日。ジョン・コーニン上院議員、マイク・クラポ上院議員、マイク・リー上院議員、トミー・タバービル上院議員、トニー・ゴンザレス下院議員、ジェイク・エルジー下院議員の計6名ら13人がアメリカ軍輸送機C40-Aでマニラから台湾入りし、蔡英文総統、国家安全会議の顧立雄秘書長を表敬訪問。外交部の呉釗燮部長とオンライン会談を行い、国防部の邱国正部長とも会談し、米台関係の重要な議題について意見交換を行っています。
そして今回の訪台。元議員ではなく、現職議員ですからね。これだけ訪台を繰り返せば、アメリカが台湾を強く支持しバックアップしていることを世界に強くアピールしました。
台湾に接近しているのはアメリカだけではありません。
11月28日、エストニア、ラトビア、リトアニアでそれぞれ親台議連を率いる国会議員ら10人が台湾を訪問しています。これら3国の議員らは、蔡英文総統と会談し、12月初旬に米NGOなどと共催するフォーラムにも参加するとのことです。
ただ、これら3国は台湾とは正式な外交関係がなく、中国と国交を維持しています。
そこで、台湾が展開する他国との議員外交に応じる形を取ることで、中国を過度に刺激するのを避けつつ、台湾との関係強化をめざす考えとみられています。
3.日台交流サミット
翻って日本はというと、まだ政府レベルでは、表立った動きはありませんけれども、地方レベルでは日台交流は活発化しています。
11月12日、神戸で「第7回日台交流サミット」が行われました。
「日台交流サミット」は、日本各地の台湾に友好的な地方議会議員らと台湾との交流を促進することを目的として、2015年に石川県で初開催され、以降、毎年定期的に開催され行われています。
一昨年に富山で行われた日台交流サミットでは、台湾のWHO参加への支持が表明され、昨年、石川県で行われたサミットで採択された『富山宣言』では、台湾のWHO参加への支持が表明されました。
もっとも、今回の神戸でのサミットはすんなりと行われた訳ではありません。
というのも、中国が開催させまいと圧力を掛けていたのですね。
なんでも、駐大阪中国総領事館の職員を名乗る人物から、主催者らに対し、中止要請などの電話が複数回あったのだそうです。
サミットの実行委員会事務局長を務めた神戸市の上畠寛弘市議会議員は、中国総領事館政治部主任から中止を要求してきたとツイッターで暴露しています。
上畠議員は「日台の絆は不滅です。中共に屈しない!」とツイートして、台湾への支持を強調しました。
実際、サミットは中止されることなく開催された訳ですけれども、過去最多の約510人が参加。中国側の圧力によってむしろ参加者は増えたのだそうです。
今年は頼清徳副総統がビデオメッセージを寄せ、中国の政治的圧力に負けず開催されたことに祝意を表し、会合には謝長廷・駐日代表が出席したほか、齋藤元彦・兵庫県知事、久元喜造・神戸市長、片山さつき・参議院議員、和田政宗・参議院議員、今井絵理子・参議院議員ら国会議員、各地の地方議員、台湾との交流のある日本の来賓らが出席しました。
今回のサミットで採択された「神戸宣言」では、日台間の経済、文化、教育、医療などの分野の交流の促進や、日台の外交・安全保障政策の為に「日台関係に関する基本法」の速やかに制定することが提言され、また、世界保健機関(WHO)、国際民間航空機関(ICAO)、国際刑事警察機構(ICPO)などの国際機関への台湾の参加実現に向けて日本の取り組みを強化することや、CPTPPに加入申請した台湾の加盟に向けて日本による働きかけを強化することも盛り込まれました。
更に、人類が新型コロナウイルスに打ち勝つ為、日本と台湾が相協力して、人類福祉に貢献することも提言されました。
また、近いうちに現在、神戸市の「日華親善神戸市会議員連盟」という名称を「日台友好神戸市会議員連盟」に変えるそうです。
このように地方議員レベルとはいえ、日本もしっかりと台湾支持を打ち出しています。
4.中国の恫喝
同じような中国の妨害は、どうやらアメリカ下院議員の訪台でも行われていたようです。
25日に台湾入りしたアメリカ下院議員5人のうちの1人であるエリッサ・スロトキン議員は、「中国大使館から訪台中止を求める無遠慮なメッセージを受け取っていた」ことを台湾到着後間もなくツイッターで明らかにしています。
一体、どんな"無遠慮"なメッセージだったかは分かりませんけれども、中国に対する印象が悪くなったことだけは分かります。
戦浪外交か何だか知りませんけれども、日台交流サミットといい、アメリカ下院議員といい相手の感情を逆撫でするだけで、逆効果になっているようにしか見えません。
それでも中国は反発しています。
11月26日、中国軍は、「台湾海峡の現在の状況に対応するために関連する行動が必要だ。台湾は中国の領土の一部であり、国家主権と領土を守ることはわが軍の神聖な使命である」と「戦闘準備」に向けたパトロールを実施したと発表しました。
また、28日には台湾南西部の防空識別圏に中国軍機27機が進入しています。台湾国防部によると、27機には戦闘機「殲16」8機が含まれていたそうで、台湾の中央通信社は、空中給油機「運油20」も防空識別圏内で初めて確認されたと報じています。
中国としては一生懸命恫喝をしているのでしょうけれども、それで台湾が屈するとも思えません。
5.中国の三戦は一戦になった
アメリカ国防省は2010年8月に「中華人民共和国の軍事および安全保障の進展に関する年次報告」を出し、その中で中国政府が仕掛ける「戦わずして勝つ」手段として「世論戦」、「心理戦」、「法律戦」の三戦があるとしています。
この三戦について報告書では次のように説明しています。
「世論戦」:中国の軍事行動に対する大衆および国際社会の支持を築くとともに、敵が中国の利益に反するとみられる政策を追求することがないよう、国内および国際世論に影響を及ぼすことを目的とするもの。日台交流サミットやアメリカ下院議員の訪台中止の圧力、および台湾海峡付近の「戦闘準備」に向けたパトロールなどは、この三戦に当てはめると「心理戦」に当たるのではないかと思われますけれども、もはや日米には効かなくなっているように思います。
「心理戦」:敵の軍人およびそれを支援する文民に対する抑止・衝撃・士気低下を目的とする心理戦を通じて、敵が戦闘作戦を遂行する能力を低下させようとするもの。
「法律戦」:国際法および国内法を利用して、国際的な支持を獲得するとともに、中国の軍事行動に対する反発に対処するもの。
消えた中国人テニス選手の彭帥氏が失踪したことが世界的な話題になるなど、中国は人権問題で世界中から責め立てられていますけれども、これなどは逆に「世論戦」で押し込まれていることになりますし、英語教育を取り締まり、「習近平思想」を学ばせたりしているのは「法律戦」の観点からは国際的支持を得られるとは思えません。
その意味では中国は三戦を掲げてはいるものの、現実には「心理戦」という一戦しか使えなくなっているのではないかという気がしてきます。
ただ、それだけに中国は「心理戦」に物凄くエネルギーを掛けて工作してくるともいえ、国会議員を始めとして対中の矢面に立つ人は今まで以上に、中国の心理戦工作に注意した方がよいのかもしれませんね。
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