政調会長への風圧はかなり強うございます

今日はこの話題です。
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1.年内現金一括も選択肢


12月13日、衆院予算委員会で、今年度の補正予算案の審議が始まりました。

質問に立った、自民党の高市政調会長が「現金10万円を一括給付すべきだといったご指摘がございます。地方自治体の負担を軽減するという観点から、本日現在、どのような方策を総理がお考えなのか」と問いかけると、岸田総理は「年内からでも、先行分の5万円の給付とあわせて10万円の現金を一括で給付する形で今回の対策の内容を実行する、こうしたことも選択肢の一つとしてぜひ加えたい」と答え、地方自治体が希望すれば年内に全額現金10万円を一括給付することを認める意向を示しました。

これまで政府は原則として年内に現金5万円を給付し、来春にクーポン5万円分を配布すると説明していたのですけれども、これには党内外から反対の声が上がっていました。

12日、自民党の西村康稔・新型コロナウイルス感染症対策本部長は出演したNHKの番組で、「現金5万円を春の分ももらった方が使い勝手がいいし、(クーポンは)自治体の負担、事務費もかさむ。自治体の判断で現金でもいいし、この冬に上乗せすればいいんじゃないか。基本的に自治体の自由度を高く認めて対応すべきだ」と自治体の裁量で行うべきだとの考えを示していました。

実際、自治体では、一律現金支給の声が上がっています。

3日、群馬県太田市の清水聖義市長は「クーポンはまことに使いにくい。いっそ、全部現金で配るとしよう‼と決めた」とツイッターに投稿し、市の担当者に指示を出し具体的な準備に入っているそうです。

また、9日、大阪市の松井市長が「クーポンがいいと言う人は、誰もおらん。市町村長に任せてほしい……聞いてほしいよ。クーポンでやりたい市長はいるのか」と自治体の大半はクーポン配布に消極的だと強調しています。

これに対し、政府は「一部を使い道を限定したクーポンにすることで、子供のために確実におカネが使われるようになる」と政策効果を強調したのですけれども、これが「聞く力」なのか、日和ったのか。先日の国際線新規予約の停止と撤回のように、三歩進んで二歩下がる的なやり方が目立ちます。




2.財政を根本から議論しようとしている財政政策検討本部


この日の質問では、その他にも鋭い質問を次々と浴びせ、ネットでは「聞きたいことを全部聞いてくれた」と評価の高い高市政調会長ですけれども、積極財政派としても知られています。

11月29日、自民党の政務調査会は、従来の財政健全化を目的とした財政再建推進本部を、積極的な財政出動も含めた財政全般を検討する「財政政策検討本部」に改編しました。

本部長にはこの組織の設置を提案した西田昌司参院議員が就き、顧問には高市早苗政調会長、古屋圭司政調会長代行、世耕弘成参院幹事長および宮沢洋一税制調査会長が就任。最高顧問には安倍晋三元総理が就きました。

本部長の西田参院議員や高市政調会長、そして安倍元総理とこれらの有名どころの顔ぶれを見ると、積極財政派が幅を利かせると思いきや、宮沢税調会長は緊縮財政派、財政健全化派であり、副本部長以下の役員人事でも積極財政派と緊縮財政派が混在しています。

設置の目的は「財政出動の是非について多角的に検討し、実体経済に即した財政政策の在り方を多角的に議論し、日本を再び成長軌道に戻すための提言をまとめること」とあり、積極財政一辺倒だけでなく幅広く財政政策を検討するという組織となっています。

12月1日、この財政政策検討本部が第一回目となる役員会を開きました。

役員会では、西田昌司政調会長代理・本部長は「日本の財政はどうなっているのかはっきり見えていない。財政再建派も経済再生派も両論を話してもらい、何が正しいのか事実ベースで押さえていきたい」と挨拶。また、安倍元総理も「コロナ禍で傷んだ経済を回復させ、先進国の中で最も守っている。積極的な財政出動の成果でもあるのではないか」と語りました。

そして、役員会では「議論すべき課題」として以下の項目が掲げられたそうです。
1 国債発行の意味すること(孫子の代にツケを残しているのか、返済不能になることはあるのか、国債とインフレの関係)
2 戦後のインフレの検証(多額の戦時国債発行が原因か、財産税は有効だったか、財政法が作られた背景)
3 貨幣と信用創造(貨幣とは何か、信用創造とは何か、日銀と国債の関係)
4 財政政策の機能(税は財源か、財政政策の限界、財政政策をコントロールする指標は何か)
5 過去の経済政策の検証(戦後の高度成長と所得倍増論、バブルと不良債権処理、バブル後の長期停滞の原因)
6 新しい資本主義に向けて(民間経済と公共政策、分配と成長、長期計画の必要性)
貨幣とは何かとか、税は財源かとか、これらを見る限り、かなり根本的なところにまで立ち戻って議論を進める姿勢が見て取れます。

財政政策検討本部は、年明け以降に提言をまとめ、政調会長に出すことにしていて、その提言には、新たな借金に頼らずに政策経費をまかなえるようにする「基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の黒字化」とは別の指標を検討すべきだとの意見も出たとのことです。




3.政調会長への風圧はかなり強うございます


ところが、この改変された「財政政策検討本部」が気にいらない人達がいるようなのですね。

12月11日、東京MXテレビの「東京ホンマもん教室」に出演した高市政調会長は「財政健全化を強く主張される方々が、総裁の周りを固めており、政調会長への風圧は今、かなり強うございます……党の「財政再建推進本部」という組織の名前を、悪意はなく、「財政政策検討本部」という名称に変えた。財政再建を議論してもいいし、積極財政を議論してもいいということ。名称を変えたことが官邸の耳に入ったらしく、政調の上に、別の総裁直轄本部として「財政健全化推進本部」を設置されてしまった」と述べています。

もう、高市政調会長に当てつけるかのような名前ですけれども、この「財政健全化推進本部」が早速7日に初めての役員会を開いています。

本部長には額賀福志郎元財務相が就任。麻生太郎前財務相、旧大蔵省出身の宮沢洋一税調会長、財務副大臣・政務官も務めた森山裕・前国対委員長ら財務省色の濃いメンバーが名を連ねました。

この日の役員会には岸田総理も出席し、冒頭、「財政健全化について考えていく姿勢は、責任政党である自民党にとっても大切な使命だ」と挨拶し、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を2025年度に達成する目標をめぐる議論が近く始まることに触れ、「本部でも議論をしっかり深めてほしい」と述べました。

額賀本部長は「財政再建の旗は下ろさず、経済再生、成長を成し遂げる基本的な考え方を発言してもらい誠に心強い……党内世論を盛り上げたい」などと応じています。同本部で考えをまとめて首相に提言するとしています。

また、この本部の最高顧問に就いた麻生副総裁は、一方の積極財政派の「財政政策検討本部」の最高顧問に安倍晋三元総理が就いたことに言及し、「こちらが安倍総理でこちらが麻生太郎。この二つを面白く掛け合わせてやろうというマスコミや党内のエサになるのは断固避けないといけない」などと語ったそうですけれども、どうせ「エサ」になるのなら、国民の餌になったほうがよいのではないかと思います。

というのも、先の総裁選では各候補が自身の政策を戦わせ、世論は大いに盛り上がりました。それも単なる物見遊山ではなく、それぞれの政策の良しあしにまで踏み込んでの盛り上がりだったように筆者には見受けられました。

であるならば、「財政政策検討本部」と「財政健全化推進本部」とそれぞれの議論の内容や提言を公開討論して広く世論に訴えるほうがより良いのではないかと思います。

密室でああだこうだで決まっていくよりはオープンな議論を見せて、世論を喚起すると同時に、財政政策の基礎知識や基礎データを広く国民に知っていただくことで、マスコミの変な誘導にも騙されなくなるのであれば、その効果は絶大です。

給付金をクーポンで配ろうとするだけでも、自治体や世間から反発されるのです。もっと大事な財政政策であれば猶更です。

そもそも、財政政策検討本部は積極財政も財政再建もどちらも扱うのに、財政健全化推進本部は財政健全がメインです。ベン図でみれば、財政政策検討本部が財政健全化推進本部を包含する形になります。

岸田総理にも聞くだけでなく、発信する方も積極的に検討していただきたいと思いますね。





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