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1.領土拡張を追い求めてはならない
12月14日、安倍元総理は、台湾やアメリカ、日本のシンクタンクなどが台北で開催した国際フォーラム「日米欧三極インド太平洋安全保障対話」でビデオ講演しました。
安倍元総理は、スピーチの冒頭で、李登輝元総統の台湾の民主化への貢献を偲ぶとともに、アメリカのジョー・バイデン大統領の「民主主義は絶えず強化され、更新されるべきだ」という言葉を引用しました。
安倍元総理は、台湾、アメリカ、日本には共通の重要な議題がある。自由、人権、法の支配、民主主義への信頼を決して失わないこととし、「台湾とその民主主義をめぐる脅威があるとき、それは我々全員、特に日本に対する切実な挑戦である」と述べ、アメリカ軍と日本の自衛隊は、ずっと、緊密な関係にあり、今、その関係はさらに緊密になっていると強調。
そして「我々3者は、海底、海面、空域からサイバー、宇宙空間まで、すべての領域で能力を高める努力を止めないこと」と、知識と技術をより効果的に共有する新しい方法を呼びかけました。
更に、「中国に対しては、領土拡張を追い求めてはならないと強く言うべきだ。隣国を挑発したり、しばしば追い詰めたりする行いは控えるべきだと言うべきだ……中国のような巨大経済国が軍事的な冒険をすれば、控えめに言っても自殺行為になりかねない」と発言。台湾や沖縄県の尖閣諸島、南シナ海の周辺で軍事活動を活発化させている中国を強く牽制すると共に、日米台などの民主主義陣営の結束を呼び掛けました。
また、安倍元総理は、台湾がWHO(世界保健機関)などの国際機関に参加できるようにすべきとの考えを示しました。
もう殆ど台湾を国家として扱っているかのような発言です。
2.台湾は日本の一部ではない
この安倍発言に中国はピリピリしています。
12月15日、中国国務院台湾事務弁公室の馬暁光(ば・ぎょうこう)報道官は記者会見で、「台湾は中国の一部であり、日本の一部ではない」と反発。そして「日本の右翼政治屋に厳正に告げる……軍国主義の衣鉢を継いで中国の主権や領土を破壊すると妄想し、勝手気ままに『台湾独立』勢力を支持するのならば、それは見込み違いだ」と牽制しました。
先日の安倍元総理の台湾有事は日本有事だ発言には「頭から血を流す」と下品な罵倒をしたかと思ったら、今度は「右翼政治屋」ときました。元総理とはいえ、政府から離れた一議員でしかない安倍元総理に対して、ここまで反応するとはやはり相当痛い発言だということです。
「しかるべき時に、適切な判断をする云々……」などと、実質何も言ってないに等しい岸田総理と比べて実に明解な発言です。
一部ネットでは"安倍無双"とまで呼ばれているようですけれども、政府見解から離れることが出来ない総理・閣僚とは違って自由に発言できるとなると、ここまで踏み込める。考えようによっては、これはこれで良いと見ることも出来るかもしれませんし、その分岸田政権の情けなさ、発信力の無さが露呈したといえるかもしれません。
3.有事なら自衛隊派遣
11月2日、台湾のシンクタンク、台湾民意基金会は「両岸(台湾と中国)の軍事危機下における台湾の民意」と題した世論調査の結果を公表しました。
調査は10月18日から20日にかけて、20歳以上を対象に固定電話にかけて実施。有効回答は1075件でした。
その結果、中国による台湾侵攻がいずれは起きると思うかという問いに対し、「そう思わない」が64.3%、「そう思う」は28.1%でした。2019年の調査では、「そう思わない」が77.4%、「そう思う」が16.0%でしたから、台湾進攻が在り得ると思う人が増えてきています。
そして、有事の際、アメリカが軍を派遣して台湾を支援すると思うかという問いでは、「あり得る」が65.0%、「あり得ない」が28.5%だったのに対し、日本が軍事的に支援すると思うかについては、「あり得る」が58.0%、「あり得ない」が35.2%という結果となっています。
台湾はアメリカのみならず、日本も有事に支援してくれると考えているのです。
ある日本のワイドショーで台湾に関するアンケートで、日本は「台湾有事に軍事的にかかわるべきか」という設問に対し、「関わるべき」が71%、「関わるべきでない」が18%という結果が出ていたように思いますけれども、有事において台湾の6割が日本が軍事支援してくれると思っていて、日本は7割が台湾を軍事支援すべきという結果。なるほど、これでは、中国が「台湾は日本の一部ではない」と発狂する訳です。
4.時を稼いでどういう利益があるのか
"安倍無双"は勿論、台湾問題だけではありません。
12月13日、安倍元首相はBS日テレの番組で、北京冬季五輪への「外交ボイコット」について、「中国に対する政治的メッセージは日本がリーダーシップをとるべきだ。時を稼いでどういう利益があるのか。日本は結局、物事を決められないのではないかと思われてはならない」と述べ、対中政策に関しても「中国とどう対応していくかが21世紀最大の課題だと首脳会談でも訴えてきた……欧州は中国と遠いので人権状況や南シナ海、東シナ海で起こっていることはひとごとだ。でも、ひとごとではないとずっと言ってきた……日本の今までの主張とあまりにも乖離することがあれば、今後日本の主張に耳を傾けてくれるかどうかだ」と述べました。
要するに、岸田政権があまりにも、安倍・菅路線から外れてしまうと海外の国々はそっぽを向くぞ、と警告した訳です。
安倍元総理の発言は、当たり前の指摘にしか過ぎませんけれども、岸田総理が何も発信しないままでいれば、海外が、安倍元総理の発言が、日本の意思なのだと受け取るようになるのではないかとさえ思えてきます。
12月16日の参院予算委員会で、立憲民主党の白真勲氏から「北京五輪に行きたい気持ちがあるのか、行きたくないのか」と問われた岸田総理は、「今のところ私自身が参加することは予定しておりません」と答えました。
白氏は「もしかしたら北京五輪に金正恩氏が来るかもしれない……いいチャンスだと思いませんか。中国の人権状況をアピールする立場からも、そういうテーブルを用意してくるんじゃないかと思う」と重ねて質問したのですけれども、これに岸田総理は「仮定に基づいて申し上げるのは控えなければならないと思います……北京五輪への出席あるいは対応の問題と、北朝鮮問題においてあらゆるチャンスをとらえるという問題、これは別々の問題であると認識している」と躱しました。
岸田総理の言葉を信じれば、岸田総理は北京五輪にはいかないことになります。一部で囁かれている閣僚も送らない「外交ボイコット」に踏み切ることも、あるいは既に胸の内にはあるのかもしれません。
仮にそうだとすると、なぜすぐにそれを表明しないのか。安倍元総理は「時を稼いでどういう利益があるのか」という表現でボイコット表明を促しています。
これについて、元中国共産党員で帰化した中国人ジャーナリストの鳴霞氏は、日本が北京冬季五輪をボイコットするなら中国国内の邦人企業に制裁を加えると脅しているのだそうです。
その真偽は分かりませんけれども、いかにも中国共産党ならばやりそうなことです。
もし、これが本当であれば、政府は水面下で被害を最小限にすべく動いている可能性がありますし、なんとなれば中国共産党とも裏交渉しているかもしれません。であれば、今、時を稼ぐことは、在中邦人企業の被害を最小限に食い止めるという"利益"はあるのかもしれません。
いずれにせよ、今のところ、来年2月には北京冬季五輪が行われることになっています。時を稼ぐにも限界があります。邦人企業を守ろうとするあまり、他国からの信用を失ってしまえば、どちらが国益に資するのか分からなくなってしまいます。
岸田総理がいつ、国の対応を発表するのか。それが国益になっているのか。しっかり見ていきたいと思います。
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