武蔵野市の外国人に住民投票認める条例案否決

今日はこの話題です。
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1.武蔵野市の外国人に住民投票認める条例案否決


12月21日、東京都武蔵野市議会本会議で日本人と外国人が同じ条件で参加できる住民投票条例案が採決され、賛成11、反対14の反対多数で否決されました。過半数は13で、態度を明確にしていなかった無所属議員2人が反対に回ったことで否決となった形です。

条例案を巡っては、国籍要件などを争点に市議会内で賛否が伯仲。13日の総務委員会では賛否が同数となり、委員長裁決で可決されていました。

本会議では、条例案に反対した自民党系会派の道場秀憲市議が「憲法や地方自治の本旨から、外国人の住民投票権は一定の基準が必要だ」と訴える一方、立憲民主党系会派の藪原太郎市議は賛成の立場から「人権は最も配慮すべきで、差別はあってはならない。市に暮らす人たちに意見表明の機会を保障する」との議論が交わされたようです。

これについて、毎日新聞は「今回の反対意見に説得力のあるものはなかった。外国人の居住要件が3カ月では短いというなら何カ月ならよいのか」と成蹊大の武田真一郎教授のコメントを報じていますけれども、13日の総務委員会では、亜細亜大学非常勤講師で「武蔵野市の住民投票条例を考える会」代表の金子宗德氏が反対意見の陳述をしています。

その主な反対理由は次の通りです。
1)現状の武蔵野市においては、常設型の住民投票条例を制定してまで市民の判断を仰ぐべき喫緊の課題が見当たらない。

 平成27年9月15日に「地方自治の尊重を政府に求める意見書」という意見書が武蔵野市議会で採択されているが、その内容は「米軍辺野古新基地建設反対」の意見書だ。これは国家の安全保障に関する問題であり沖縄県名護市から遠く離れた武蔵野市議会が云々することに何の意味があるのか。さらに言えば、多くの市民は、こうした意見書が市議会で採択されたことを知らない。


2)外国籍を含め3か月以上住民基本台帳に登録されれば投票権が付与されるため、選挙の有権者と、住民投票の投票者が異なるため、国民主権原理に基づく二元代表制と整合しない。

武蔵野市のウェブサイトには、「本市の住民投票制度は、投票結果に法的拘束力がありません。投票結果がそのまま市の意思決定となるものではなく、投票結果を踏まえ、国民である有権者から選挙で選ばれた市長と市議会議員が市の政治を決定する二元代表制の仕組みに何ら変わりはありません」とあるが、市当局が発行した「自治基本条例逐条解説」には「住民投票条例の結果には実質的な拘束力が生まれるものと考えられる」とあり、矛盾している。現実政治の観点からすれば、住民投票条例の結果には「実質的な拘束力」がある。


3)市民に対する広聴・広報が不十分である。

令和3年3月に市当局が行った住民アンケートは、回答数が509件とその数が少なすぎる上に、回答者の世代的内訳と武蔵野市民の世代的内訳との相関性が見られない。標本が市民全体の傾向性を正しく反映していないということは、住民投票条例案に関するアンケートは統計学的に無価値であり、これを論拠とする如何なる主張も意味を持たない。
今回否決された条例案について武蔵野市のホームページでは、「条例案について住民アンケートを取って周知している。住民投票は意見表明の場であって、法的拘束力はない」と説明していますけれども、金子宗德氏の反対陳述を見る限りでは、全くそんなことはありません。

下左図は件の市民アンケートの年代別割合で、下右図は武蔵野市の「住民基本台帳による町丁別・年齢(各歳)別人口」から筆者が作成した武蔵野市民の世代的内訳ですけれども、30代40代の人口は14~16%程度であるのに対し、アンケートでは30代40代が23~27%と倍近くになっています。確かにアンケート標本は市民全体の傾向性を正しく反映していない可能性があると思います。

統計学的に意味がないアンケートをもとに、実質的な拘束力がある住民投票条例を法的拘束力がないと主張する。そして過去には、「米軍辺野古新基地建設反対」の意見書を採択している前科がある。

説得力がないどころかアリアリで、しかも怪しさ満載です。

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2.再提出を検討する松下市長


本会議を傍聴した金子宗徳氏は、「市民の声を受け、市議会は良識ある判断をしてくれた。市長には条例案をゼロベースで見直してほしいし、私たちも引き続き注視していきたい」と述べていますけれども、武蔵野市の松下玲子市長はこの結果で終わりにはしていません。

松下市長は本会議閉会直後に臨時の記者会見を開き、次のように述べました。
ただいま、定例会に提案した武蔵野市住民投票条例が市議会で賛成少数、賛成11、反対14という結果となりました。結果を重く受け止めております。この間、議会での説明や市民へのパブリックコメント、市民への無作為抽出アンケートなどを行い、さまざまに意見をうかがってまいりました。まだまだ意見が足りない、もっと周知を行った上で、制度を制定すべきだという声だと受け止めている。

住民投票条例は昨年3月、武蔵野市議会で全会一致で可決した自治基本条例の19条に基づいています。常設の住民投票制度を確立するには、別途、条例を定める必要がある。結果を受け止めながら、今後さらなる検討を重ねてまいりたいと思います……反対された最大会派の自民党からも外国籍を反対するものではなく、一定の要件を必要であると明確におっしゃっていたので、今後市として検討し、議会の皆様や市民のみなさまのご意見を聞きながら再度考えたい
全然諦めていません。





3.地方自治法176条


地方議会で一度否決された条例案を再審議できるかどうかについては、地方自治法176条で規定されています。それは次の通りです。
(議会の瑕疵ある議決又は選挙に対する長の処置)
第176条 普通地方公共団体の議会の議決について異議があるときは、当該普通地方公共団体の長は、この法律に特別の定めがあるものを除くほか、その議決の日(条例の制定若しくは改廃又は予算に関する議決については、その送付を受けた日)から10日以内に理由を示してこれを再議に付することができる。
2 前項の規定による議会の議決が再議に付された議決と同じ議決であるときは、その議決は、確定する。
3 前項の規定による議決のうち条例の制定若しくは改廃又は予算に関するものについては、出席議員の3分の2以上の者の同意がなければならない。
4 普通地方公共団体の議会の議決又は選挙がその権限を超え又は法令若しくは会議規則に違反すると認めるときは、当該普通地方公共団体の長は、理由を示してこれを再議に付し又は再選挙を行わせなければならない。
5 前項の規定による議会の議決又は選挙がなおその権限を超え又は法令若しくは会議規則に違反すると認めるときは、都道府県知事にあっては総務大臣、市町村長にあっては都道府県知事に対し、当該議決又は選挙があった日から21日以内に、審査を申し立てることができる。
6 前項の規定による申立てがあった場合において、総務大臣又は都道府県知事は、審査の結果、議会の議決又は選挙がその権限を超え又は法令若しくは会議規則に違反すると認めるときは、当該議決又は選挙を取り消す旨の裁定をすることができる。
7 前項の裁定に不服があるときは、普通地方公共団体の議会又は長は、裁定のあった日から60日以内に、裁判所に出訴することができる。
8 前項の訴えのうち第4項の規定による議会の議決又は選挙の取消しを求めるものは、当該議会を被告として提起しなければならない。
これは、議会の議決に対して、長に異議がある場合には、長は10日以内に議会に対しその理由を示して、改めて審議を求めるというものです。条例又は予算の議決を再可決するためには、議長も採決に加わった上で出席議員の3分の2以上の票が必要です。逆にそれに満たない場合はその議案は廃案となります。

この再議制度について、常磐大学准教授の吉田勉氏は、「旧憲法下で、本来政治の主体の官吏が、客体にすぎない住民の代表たる議会を信用せず、その行動の監督をし、予期しない方向へ進まないよう是正措置を確保したもの」と評されるほど、長の議会に対する不信感に端を発した制度として構築されたものといえる」と述べています。

吉田准教授によると、再議には、議決の結果に関して異議があるときに長の任意の判断で行使される一般的再議(任意的再議)と、議会の越権・違法な議決等に対して長が行使を義務付けられる特別的再議(義務的再議)とがあるのですけれども、昭和22年の地方自治法制定当時は、後者の特別的再議しか認められていなかったところ、翌昭和23年に議会との正常な均衡関係を図るという理由で一般的再議が導入されたとのことです。

もし、今回否決された条例案が再議されるとなると、松下市長が議会の採決を不服とする一般的再議ということになると思いますけれども、出席議員の2/3以上の賛成が必要になるなど更にハードルが上がることを考えると、今回の条例案は一旦、廃案として、なんらかの修正を施したのちに新たな条例案として議会に提出することになるかと思います。

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4.大量の外国人が住民票を移せば、それは通る


作家の百田尚樹氏は「武蔵野市は千票も取れば市会議員になれるという。つまり共産党員や立憲民主党員らが大挙して武蔵野市に住民票を移して、反対派の議員を2人落として賛成派の議員を2人通せば、この法案は通る。
次に外国人が優遇されるような法案の住民投票を行い、そこに大量の外国人が住民票を移せば、それは通る」とツイートし、警鐘を鳴らしていますけれども、今回の問題は単に延期されただけで、本質的な問題は何も解決していません。

松下市長は、今回の否決について「周知を行った上で、制度を制定すべきだ」という声として受け取ったと述べていますから、何らかの形で更なる周知を行うものと思われますけれども、たとえ、再び市民アンケートをとったとしても、「武蔵野市の住民投票条例を考える会」代表の金子宗德氏が指摘するように、偏りのあるアンケートであったなら何の意味もありません。

本会議を傍聴した金子氏は「市民の声を受け、市議会は良識ある判断をしてくれた。市長には条例案をゼロベースで見直してほしいし、私たちも引き続き注視していきたい」と述べていますけれども、筆者は、今回の条例案は、まるで家賃を3ヶ月払ったら、部屋の改装や増改築を好きにしていい、と言っているような気がして非常に違和感を覚えます。

まずは、常設の住民投票制度そのものが必要なのかどうかから議論を行い、拙速な結論は出さないようにしていただきたいと思いますね。




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この記事へのコメント

  • 弓取り

    重要な情報収集と分析で、とても勉強になりました。
    の条例案は、ありえないですね。
    市長や賛成議員のコメントなどが各所でも紹介されていますが、民主主義制度を軽んじ、武蔵野市民を愚弄しているとさえ感じます。
    2021年12月23日 21:38

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