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1.対中配慮が過ぎれば外交の体をなさない
12月3日、自民党の保守系グループ「日本の尊厳と国益を護る会」は総選挙後初の総会を開きました。
総選挙で8人の護る会の議員が落選したのですけども、新しく入られる衆議院議員が相次いだことで、衆参両院で67人と解散直前と同数の陣容となったそうです。
総会のテーマは「総選挙後の体制について」、「北京五輪について」、「先の国会で採択されなかった中国の人権弾圧非難決議」、「東京都武蔵野市の住民投票条例案」の4つだったのですけれども、その中で北京五輪については、北京冬季五輪への「外交的ボイコット」を表明するよう岸田文雄首相に求めることを決定しました。
護る会は「中国が重大な人権弾圧を重ねる中、外交使節団を北京冬季五輪に派遣すれば、人権弾圧を容認することになる。同盟国米国も含めて外交ボイコットへの参加を呼び掛ける積極姿勢に転じるべきだ」と、中国政府によるウイグル自治区などでの深刻な人権侵害行為を踏まえた措置だと訴えていますけれども、態度を明確にしていない政府に対し、国際社会とともに中国に強い態度で臨むよう促す狙いがあるとも見られています。
総会後、護る会の青山繁晴代表は記者団に「対中配慮が過ぎれば外交の体をなさない。現在の首相の姿勢は間違いだ」と批判し、常任幹事の山谷えり子元拉致問題担当相も「人権侵害状況を放置したまま、五輪という平和の祭典を開くこと自体いかがなものか。積極的に外交的ボイコットを検討すべきだ」と主張しています。
2.媚中派と言われるのは不本意だ
岸田政権が中国寄りだと批判されていることについては、岸田総理の耳にも入っているようです。
12月3日、岸田総理は、自民党岸田派に所属していた左藤章・前衆院議員、大西宏幸・前衆院議員と東京都内のホテルで会食しました。
その場で、岸田総理は「媚中派と言われるのは不本意だ。林氏は中国に行くとは一言も言っていない」と保守派から「中国寄り」と指摘される林芳正外相の起用を念頭にしたかと思われる不満を口にしたことを、会食後、大西氏が記者団に明らかにしました。
12月3日のエントリー「世論の逆風に動揺する岸田政権」で、岸田総理が林外相を任命した件で、あまりの逆風に動揺しているという話を紹介しましたけれども、やはり、会食で岸田総理が愚痴を零すほど逆風が吹いていることは確かなようです。
林外相は「中国に行く」とは言っていないかもしれませんけれども「招待を受けた」と発言したことは事実です。こんな発言をすること自体が問題視されているのですね。こんな発言はあの"シェイシェイ茂木"氏だって言いませんでした。
そもそも、"シェイシェイ茂木"と揶揄されるようになった経緯を見ていたなら、こうなることは容易に想像できた筈です。
ただ、先述の青山繁晴参院議員によると、中国が岸田政権に対し、水面下でアメリカを取るか中国を取るのか選べ。日本がどちらを選んだのかは、それは北京五輪を支持するかどうかで判断する、と物凄い圧力を掛けているのだそうです。
3.中国で開催される全ての大会を中止する
12月1日、女子テニス協会(WTA)のスティーブ・サイモンCEOは、中国の前の副首相に性的関係を迫られたことなどを告白したあと、行方が分からなくなったと伝えられている女子プロテニスの彭帥氏の問題を巡り「中国の指導者たちはこの非常に深刻な問題に信頼できる方法で対処していない……香港含む中国で開催されるすべての大会を直ちに中止する」との声明を公式ホームページで発表しました。
声明では、「彭選手の居場所は明らかになったが、彼女が安全で自由かということや、検閲されたり強制や脅迫されていることに深刻な疑問を抱いている」としたうえで、現在の状況を踏まえて「来年、中国で大会を開催した場合、すべての選手やスタッフがリスクに直面する」と大会を開催した場合の安全性に懸念を示し、「彭選手とすべての女性に正義がもたらされることを願っている」と述べ、テニス界における中国の経済的な影響の大きさよりも、人権問題が優先する姿勢を明確に示しました。
この決定に女子テニス界の往年・現役のスター選手から支持する声が相次ぎました。
女子テニス界の伝説とも呼ばれるビリー・ジーン・キング氏は「中国と世界の人権を守るために強い態度を取ったことに拍手を送ります。WTAは、歴史の正しい側に立って選手を支えている」とツイッターに投稿。男子世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチ氏も「WTAの姿勢を全面的に支持する」と後押ししました。
また、四大大会の女子シングルスで、18回の優勝を誇るマルチナ・ナブラチロワ氏も「WTAは、勇気ある姿勢でお金よりも原則を優先し、世界中の女性のため、とりわけ彭帥選手のために立ち上がった」と対応を評価しています。
更に、日本でも、元プロテニス選手で自身も女子テニス協会(WTA)のツアー大会で長年活躍した杉山愛氏も「選手の命を守ることを最優先に考えていると思うので、すばらしい決断だった。テニス界にとって10年余り前から中国の市場は大きなものになっていたが、それよりも大事なものが明確にされないことは受け入れられないという意思の表れだと思う」と支持を表明しています。
4.ボイコット・ドミノ
一方、国際オリンピック委員会(IOC)は、12月2日、声明を発表しバッハ会長が彭帥氏と2度目のビデオ通話を行ったと発表。人権団体から「中国のプロバガンダに加担している」と非難されているのも物ともせず〝彭は元気で安全〟の主張を変えず、北京五輪をやりたくて仕方ない姿勢を露わにしています。
それでも、女子テニス協会(WTA)が中国から撤退すると決断したことは、スポーツ界に大きな影響を及ぼすだろうとの見方が広がっています。
12月2日、イギリスのガーディアン紙は「China hits back at WTA as IOC says it has spoken again to Peng Shuai(中国がWTAに反撃、IOCが彭帥に再度話したと発表)」という記事で、中国のスポーツ情報サイト「チャイナ・スポーツ・インサイダー」の創設者であるマーク・ドレイヤー氏が「WTAの決定は、男子プロテニスツアーであるATPなどの他の団体にプレッシャーを与えるだろう。WTAは西欧でのモラルの戦いに勝利しており、他の組織が違うやり方をするのはかなり難しい」というコメントを紹介。
更に、女子テニス協会(WTA)のアンドレア・ゴーデンツィ会長による「私たちは、スポーツが社会にポジティブな影響を与えることができることを知っており、一般的に、グローバルな存在感を示すことが、機会を創出し、影響を与えるための最良のチャンスになると信じている」とのコメントも添えています。
記事では、女子テニス協会(WTA)のボイコット決定は、スポーツ団体の中国への対応に大きな変化をもたらしたと指摘し、国際テニス連盟(ITF)が発表した声明の中で、今後のイベントの話題には触れず、テニスの統括団体としてすべての女性の権利を支持するとし、「我々の最大の関心事は彭帥氏の健康だ。彭氏の申し立てには対処しなければならない。そのために行われている全ての努力を、公の場と舞台裏の両方で支援していく」と述べています。
「WTAは西欧でのモラルの戦いに勝利しており、他の組織が違うやり方をするのはかなり難しい」というマーク・ドレイヤー氏の指摘が本当であれば、テニスだけでなく他のスポーツにも中国ボイコットが波及していく可能性があります。
5.エネス・カンター・フリーダム
11月23日、アメリカ・プロバスケットボールNBAセルティックスのエネス・カンター選手は、CNNテレビのインタビューで、彭帥氏が訴えた性的暴行疑惑について「心が痛む……選手だけでなく世界の政府、国民が声を上げるべきだ」と述べ、女子テニス協会(WTA)が中国に真相調査を強く求めたことを「選手のために立ち上がった」と称賛し、返す刀で冬季五輪を推進する国際オリンピック委員会(IOC)を「恥を知るべきだ」と批判しました。
カンター選手はスイス生まれのトルコ系で、10代でアメリカに移住。会員制交流サイト(SNS)では、チベットのダライ・ラマ14世猊下の肖像や「ウイグルの人々に自由を」などのメッセージがかかれたTシャツ姿で、中国の習近平国家主席を「冷酷な独裁者だ」と非難しています。
また、「北京五輪にノーを」などと書かれたシューズを履いてプレーしていて、11月29日に取得するアメリカ市民権を機会に名字をフリーダム」に改名、正式名を「エネス・カンター・フリーダム」とするそうです。
これに対し、今のところ、中国側は「反論に値しない」と静観していますけれども、中国国内のインターネットではカンター選手の情報が検索不可能になり、公式戦映像を配信するIT大手テンセントもカンター選手が所属するNBAセルティックスの試合動画を削除するなど神経をとがらせています。
"ぼったくり男爵"ことバッハ会長は、それでも北京冬季五輪を強行するのだろうと思いますけれども、オミクロン株もありますし、どこまでマトモに開催できるのか暗雲が立ち込めてきているようにも思います。
岸田総理が"媚中派"と呼ばれることが不本意だと思うのであれば、それを払拭するだけの行動が説明が必要だと思います。日本の尊厳と国益を護る会のボイコット申し入れにどう応えるのか。中国からの圧力にどう返答するのか。踏み絵の時期が近づいてきています。
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