水落炎天の中国

今日はこの話題です。
画像

 ブログランキングに参加しています。よろしければ応援クリックお願いします。


2022-08-31 092903.jpg


1.水が落ちた古跡


中国で大旱魃が発生しています。

中国では最高気温35度以上の猛暑日が観測史上最長の70日以上続き、40度を超す地域もあります。記録が残る1961年以降で「最も暑い夏」となっており、中央気象台は18日付で浙江、江西、湖南、貴州、四川各省や重慶市などに旱魃警報を出しました。

8月は本来、河川の増水期なのですけれども、国内最大の淡水湖である江西省の鄱陽湖や2番目に大きい湖南省の洞庭湖やは高温と少雨で面積が縮小しています。

漢詩の舞台としても有名な洞庭湖は、旱魃で水位は観測史上最低になり、衛星画像では、琵琶湖の4倍以上あった湖は川のような姿となり、鄱陽湖も面積が前年同期比で琵琶湖3個超分の約2200平方キロ減り、4分の1に縮小しています。

鄱陽湖も中央部の小さな島に建ち、普段は、水に浮かんでいるように見える落星墩(らくせいとん)古跡も、湖底にある基礎部分から完全に干上がり、小山のようになっている有様です。

長江の一部や支流でも水のない場所が目立ち、各地で水不足が発生。中国水利省によると、長江流域の6省などで80万人以上が飲料水不足に陥っているとのこと。更に江西省当局は、歴史的旱魃で約400万人の生活用水にも影響が出ているとしています。

長江流域の農業生産は中国全土の3分の1を占めるのですけれども、この猛暑と水不足で農産物に甚大な被害が出ており、近隣の農家からは、立ち直るのはもはや難しいのではないかと不安の声も上がっています。

ロイターによると、農業省は農家に対してコメを収穫・貯蔵するとともに、今後数週間は、穀物の生育強化のために対策をとるよう呼びかける緊急の通達を出し、旱魃で大きな被害を受けている地域では、サツマイモなどの晩秋の作物に切り替えるよう勧めています。

2022-08-31 092901.jpg



2.工業生産停止


中国を焦がす熱波は、四川省から中国東岸まで広がり、重慶など8ヶ所では気温が45度を記録。重慶郊外で森林火災を引き起こしました。

更に、エアコンの利用が増えて電力不足も深刻化しているのに加え、四川省などでは水力発電用のダムが干上がり、多くの都市で計画停電や電気使用制限がかけられています。

アメリカのニューヨーク・タイムズ紙は、電力不足により工業生産が打撃を受け、四川省では、フォルクスワーゲンが従業員6000人を抱える成都工場を1週間半閉鎖、トヨタは組立工場の操業を一時的に停止したと伝えています。

また、重慶でも、いすゞ自動車、デンソー、パナソニック、ヤマハ発動機などの日本企業の工場を全面停止、あるいは一部停止。さらに台湾の大手電子機器メーカー、フォックスコンと、世界最大の電気自動車バッテリーメーカー、寧徳時代新能源科技(CATL)も近くの工場での時短操業により、生産を削減しています。



3.明かりの消えた店舗


四川省の電力使用抑制は、工業生産だけに留まりません。

当初、四川省政府は、家庭用と市民生活に影響を及ぼす商業分野への電力供給を優先するとして、工業分野の企業に電力の使用停止を求めていたのですけれども、電力逼迫により、商業施設にも対象が拡大しました。

成都市内の大型ショッピングモールや百貨店などでは、8月18日から照明の停止やエレベーターの運行削減、冷房の電力負荷軽減や停止、一部フロアの閉鎖など、使用電力を通常時の約70%以上削減するよう求められ対応しています。また、通達に反して節電を実施しなかった商業施設は強制的に電力供給を停止されたそうですから、いかにもかの国らしい対応です。

節電要請を受けた商業施設は、完全に冷房を停止して店内に大きな氷塊と扇風機を持ち込んむなど、涙ぐましい努力で営業を続けるところもあったのですけれども、8月19日に照明やネオン、LEDパネルなどを用いた屋外広告や看板、ライトアップの点灯を原則全て禁止する通達が出ると、繁華街では街頭が薄闇状態のなかで、店舗を営業する事態となったそうです。

四川省はもともと、省内電力供給用発電源の約85%を水力発電に依存していて、石炭や石油による火力発電施設はそれほど多くありません。

四川省政府などによると、今回の電力不足は、記録的な猛暑で電力需要が増加したことに加えて、降雨量不足によって発電量が低下したことが要因としていますけれども、四川省がピーク調整に対応し得る代替電源をほとんど持っていなかったことが今回の事態を招いたとも指摘されています。

四川省政府は、今回の事態を受け、電力供給インフラ整備を加速させる措置を相次いで発表。王暁暉・省書記は8月17日に国家電網四川省電力を視察し、同社に対して、合理的な送電網の整備やピーク調整電源の確保など安定的な電力供給システムを早急に整備、構築すべきと、事実上の政策指導を行っています。

また同日、省政府と重慶市政府が共同で「四川・重慶エネルギーのグリーン・低炭素・高品質発展促進共同行動方案」を発表、両地区が共同で新エネルギー開発拠点を整備し、蓄電設備の設置や風力や太陽光といった再生可能エネルギーの開発を加速させるとしいています。

ただ、ベース電源たる水力発電の代替に天候任せのクリーンエネルギーを持ってきても、安定したエネルギー供給とはなりえず、効果は望めないのではないかという気がします。




4.雨降らしドローン


けれども、クリーンエネルギーやなんたらで、電気だけなんとかできたとしても、それで作物が実る訳でも、飲料水が出来上がる訳もありません。水そのものが不足しているという根本的な問題が残っています。

これに対し、四川省では人工降雨の取り組みに着手しました。

通常、雨は、氷点下15℃以下の低温の雲の中で発生した氷晶が核となって周囲の水蒸気を吸収して雪片となり、雲中を落下して成長しながら、途中で溶けて雨粒になったのが降ってきたものです。

従って、雨を降らせるには雲の中に氷の粒を作る必要があります。

そこで、雲に無理くり雪片の核となるような物質を散布してやって、雨を降らせる可能性を高めてやるというのが人工降雨です。

氷晶を作るための核にはドライアイスやヨウ化銀が使われるのですけれども、ドライアイスはそれ自身で温度を下げ、氷晶をつくるのに対し、ヨウ化銀はそれ自体が氷の結晶とよく似た形と性質を持っていることから、ヨウ化銀をそのまま種として氷晶をつくるという違いがあります。

国営中央テレビによると、四川省北部と南東部で8月25日午前に大型ドローン2機が飛行し、29日までに最終的に6000平方キロメートルを対象にヨウ化銀などを雨雲に散布。人工的に降水量を増やす作業を行いました。

その甲斐があったのか、重慶の一部と四川省の一部地域で雨が降ったようです。

重慶気象局は26日の記者会見で、「重慶の22の地区と郡の暑さと旱魃状態は、重慶が強化された大量の雲の播種操作を行った後、木曜日からわずかに緩和された……市は人工的に降水を誘発する機会を増やしたいと考えている」と述べたそうですけれども、劇的に状況が改善することは考え難く、多くの専門家は「焼け石に水」とみています。

去年は洪水、今年は旱魃と、天災が収まらない中国ですけれども、洪水被害は元より、旱魃による食糧不足、電力不足も深刻な問題です。ウクライナ戦争も続いていることを考えると、特に今年後半から来年にかけて、世界的な食糧問題が起こってくるかもしれませんね。

2022-08-31 092902.jpg



  twitterのフリーアイコン素材 (1).jpeg  SNS人物アイコン 3.jpeg  カサのピクトアイコン5 (1).jpeg  津波の無料アイコン3.jpeg  ビルのアイコン素材 その2.jpeg  

この記事へのコメント