プーチンの選択肢と何かを隠すザポリージャ原発

今日はこの話題です。
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1.物理的完全性が何度か侵害された


9月1日、ウクライナに侵攻したロシアが占拠しているウクライナ南部ザポリージャ原発の調査を行った国際原子力機関(IAEA)は、ザポリージャ原発を離れた後に記者会見を行いました。

その中で国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は、「我々はそこで4、5時間過ごし。私は多くのことを見てきたし、スタッフもそこにいて、サイト全体を見学することができた」と述べる一方で、「原発の物理的完全性が何度か侵害されたことは明らかだ。私は心配している、心配し続ける」と語っています。

グロッシ事務局長は「日曜日か月曜日まで施設に留まり、評価を続ける……私の専門家の何人か。いくつかの技術的側面の分析を行うために、そこで多くの作業を行うだろう」とIAEAの調査スタッフの一部が追加の情報収集のため引き続き原発に残ることも明らかにしました。

グロッシ事務局長は原発に滞在する人数は明らかにせず、「多くの質問と最初の観察、最初の評価を作成し、それらをより深く掘り下げてレポートを作成する予定だ」と述べていますけれども、ウクライナ国営原子力企業エネルゴアトムによると、ザポリージャ原発には5人の調査団員が残り、3日まで滞在する見通しのようです。


2.嘘かなぁ、どうかなぁ


欧州最大の原子力施設であるザポリージャ原発は、ここ数週間、砲撃が繰り返されており、ウクライナとロシアは互いに相手が砲撃したのだ、と攻撃の責任を互いに非難しています。

9月1日、ウクライナのゼレンスキー大統領は「ロシアはメディアが調査団に同行して原発に入ることを認めず、原発の周辺住民らを脅して調査団に虚偽の証言をさせようとした」と非難し、それでもIAEAが客観的な調査を完了し、原発からのロシア軍の撤収やウクライナ側による原発管理の回復を実現させることが重要だと述べました。

ザポリージャ原発には6基の原子炉があり、うち4基はこれまで停止していました。エネルゴアトムは、1日のロシア軍による砲撃後、5号機の安全装置が作動し、稼働を停止。更に停止中の2号機の予備電源も損傷し、ディーゼル電源が作動し、唯一稼働している6号機には問題はないとしています。

安全装置が作動したのは良かったと思いますけれども、グロッシ事務局長がいうように「原発の物理的完全性」は侵害されたのは間違いないようです。

ロシアの日刊紙「イズベスチヤ」のエミール・ティマシェフ特派員によると、現地住民がウクライナ軍による原発への継続的な砲撃を止めるようグロッシ事務総長に2万人以上の署名を手渡したそうですけれども、ゼレンスキー大統領が「ロシアが原発の周辺住民らを脅して調査団に虚偽の証言をさせようとした」と批判したのがこれを指しているのかもしれません。



3.プーチンの選択肢


IAEAが調査に入る前日の8月31日、ザポリージャ市に入ったグロッシ事務局長は、調査の目的として、施設の損傷の有無のほか、核物質の管理や緊急時の代替電源の状況、原発職員の労働実態などを確認すると述べています。

ザポリージャ市を訪問する前日の8月30日にウクライナ入りしたグロッシ事務局長は、ゼレンスキー大統領とキエフで会談を行っています。その際、ゼレンスキー大統領から、ロシア軍に占拠されているザポロジエ原発の調査だけでなく、原発とその周辺の非武装地帯化に向けた協力も求められていました。

この非武装地帯化について、ザポリージャ市入りしたグロッシ事務局長は「政治的な問題だ。我々の任務は原子力事故を防ぐという技術的なものだ」と賛否への明言を避けています。

今回のIAEAの調査について、早稲田大学社会科学部・社会科学総合学術院教授の有馬哲夫氏は「プーチンの選択肢。1.このまま侵略を続ける。2.サボリージャ原発などを破壊しウクライナを放射能汚染させる。1の選択肢だと敗戦かそれに近い泥沼にはまる。2.手に入らないウクライナを放射能汚染させて、撤退し、次の機会を待つ。面目を保てる。プーチンは2を考えている。IAEAが阻止しなくては」とその意義をツイートしています。

次の図はサポリージャ原発が放射能事故を起こしたときの放射能汚染予測ですけれども、ウクライナの南東部が汚染される予測となっています。

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これはこれで、ウクライナの南東部を「放射能汚染によって誰も近寄れない地」にすることで「緩衝地帯」にするといえなくもありません。けれども、かなり非人道的な手段です。

もし、本当に、プーチン大統領が原発破壊によるウクライナの放射能汚染を考えているのだとしたら、IAEAの調査団がザポリージャにいることそのものがその抑止になる可能性はあります。

実際、グロッシ事務局長は職員をザポリージャ原発に常駐させるという意向を示したという報道もあり、また、ロシアのウリヤノフ在ウィーン国際機関代表は、IAEAがザポリージャ原発に職員を常駐させる計画について、ロシア政府は歓迎していると述べていることを考えると、プーチン大統領が、本当にウクライナを放射能汚染させると考えているのかどうかは、まだなんともいえません。




4.ザポリージャは何を隠しているのか


一方、IAEAの調査にはザポリージャ原発の安全調査だけではないという指摘もあります。

防衛研究所の高橋杉雄・政策研究部防衛政策研究室長は、「IAEAが行う「査察」は、秘密に核兵器を開発していないかどうか確認するためのものです。なのでIAEAがザポリージャ原発で行おうとしている行動に「査察」の語を当てるのは不適当です。「調査」にした方がいいです」とツイートしています。



これについて、エコノミストのミハイル・カジン氏は、 Ukraina.ruポータルのインタビューで、「兵器級プルトニウムまたは濃縮ウランがトルコまたはウクライナのためにそこに保管されていることは多かれ少なかれ誰もが知っています。したがって、それを示すことはできません。なぜなら、誰がそこにそれを届けたのかという疑問がすぐに生じるからです」と述べ、それ故にウクライナ軍はザポリージャ原発を砲撃して、証拠隠滅を図っていると指摘しています。

ミハイル・カジン氏は「このウランまたはプルトニウムの大部分はフランスに属しているという意見があります。しかし、これはすべて憶測です。これを示すことができないことは理解しています。理論的には、それを撤去することはできますが、この場合、何も証明することは不可能です。その後、被告は、これはすべてロシアによる悪意のある挑発であり、これはすべて起こらなかったと言うでしょう。したがって、国際監視団が到着するまで、そこにとどめておくべきです」と述べています。

幸いにも原発は破壊されることなく、IAEAの調査団が到着・調査を行っています。もし、カジン氏の指摘が本当であれば、調査団は何かを見つけるのかもしれません。

まぁ、サポリージャ原発に、兵器級プルトニウムか濃縮ウランが隠されているとは俄かに信じ難い話ですけれども、IAEAのグロッシ事務局長は、今回の調査の直前の8月25日にパリを訪れ、マクロン大統領と会談しているのですね。

もちろんIAEAのサイトで報じられている会談の様子の記事には、「核兵器」の言葉など一つもありませんけれども、カジン氏が、ウランまたはプルトニウムの大部分はフランスに属しているという意見があると述べていることと合わせて考えると、もしそれらが見つかったときにはどうするかの善後策を協議したのではないかという疑念も湧いてこないでもありません。

こうしてみていくと、今回のIAEAのザポリージャ原発の調査は単なる原発の調査だけでなく、もっと重要な意味を含んでいるのかもしれませんね。





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