

1.旧統一教会と接点の国会議員は179人
9月8日、自民党は、衆参両院の議長を除く所属する国会議員379人に、旧統一教会側との関係について書面で報告させた結果を取りまとめ、茂木幹事長が記者会見で公表しました。
茂木幹事長の冒頭発言は次の通りです。
それでは、会見をはじめさせていただきます。旧統一教会及び関連団体との関係について、わが党所属衆参国会議員から事実関係を確認し、そのとりまとめを終えましたので、概要をご説明いたします。わが党所属衆参国会議員379名全員から確認をしております。このように、関連団体も含めた会合に祝電を送ったり、秘書が代理出席したりしたケースを含め、教会側となんらかの接点があったと報告した議員は、全体の半数近くにあたる179人だったとした上で一定以上の関係を認めた121人については、氏名も公表しました。
まず、わが党の質問項目、ご存じだと思いますが、質問1の「会合への祝電・メッセージ等の送付」から、最後の質問8の「旧統一教会及び関連団体への選挙支援の依頼、及び組織的支援、動員等の受け入れ」まで、1つでも該当するとの回答があった議員は179名です。なお、一定の接点があった議員、政治資金規正法上、要公開の対象議員、そして選挙支援を受けた議員については、配布資料の通りであります。
なお、念のため申し上げると、わが党の質問項目と各マスコミ等のアンケート調査では質問の内容が必ずしも同じではありません。そのため、例えば、わが党では「国会議員本人が出席した会合」に含めているものが、他のアンケートでは、選挙における支援等に区分されているケースもあり得ると思います。
それでは、個別項目ごとに、説明をいたします。
質問1、「会合への祝電・メッセージ等の送付」があったのは97人、328件です。なお、ビデオメッセージでの送付は20件です、
質問2、「広報紙誌へのインタビューや対談記事などの掲載」があったのは、24人、48件です。
質問3、「旧統一教会関連団体への出席」について、質問3の(1)「議員本人ではなく、秘書が出席した」のは76人、245件です。質問3の(2)「議員本人が出席したが、あいさつ等はなかった」のは48人、98件です。 質問3の(3)「議員本人が出席し、あいさつした」のは96名です。この96名は配布資料の通りですが、その大半は当時、旧統一教会の関連団体であるとの認識はなかったとのことです。質問3の(4)「議員本人が出席し、講演を行った」のは20名です。この20名は配布資料の通りですが、その大半は当時、旧統一教会の関連団体であるとの認識はなかったとのことです。
質問4、「旧統一教会主催の会合」に出席したのは10名です。この10名は配布資料の通りですが、その多くは、当時、旧統一教会主催の会合であるとの認識はなかったとのことで、今後、旧統一教会とは一切関係を持たないことも確認しています。
質問5、「旧統一教会及び関連団体に対する会費類の支出」があったのは49名です。このうち、政治資金規正法上、要公開の対象議員は24名で、配布資料の通りです。なお、1件あたりの会費は1万5千円というのが多く、この5年間の年平均支出総額は全議員分で約25万円です。
質問6、「旧統一教会及び関連団体からの寄付やパーティー収入」で寄付もしくはパーティー収入があったのは29名で、このうち政治資金規正法上、要公開の対象議員は4名で、配布資料の通りです。なお、29名の一人1回平均は、約39,000円。2万円のパーティー券にすると、2枚分ということになります。
質問7、「選挙におけるボランティア支援」を受けたことがあるのは配布資料の17名です。これらの議員については、党の方針に従い、今後、旧統一教会とは一切関係を持たないことを確認しています。なお、この項目については、「ボランティアの方の思想・信条等は確認していないのでわからない」との回答が一定数ありました。
質問8、「旧統一教会及び関連団体への選挙支援の依頼、及び組織的支援、動員等の受け入れがあった」のは配布資料の2名です。この2名については、党の方針に従い、今後、旧統一教会とは一切関係を持たないことを確認しております。
私からの説明は以上ですが、結果を重く受け止めています。素直に反省し、今後は旧統一教会と一切関係を持たないことを党内に徹底していきます。また、被害の防止策、被害救済にも、政府と連携し、しっかり取り組んでまいります。
それは次のとおり。
自民党が公表した“一定以上の関係を認めた”121人の氏名みてのとおり、関係団体に出席、統一教会の会合に参加、選挙でのボランティアなど、かなり細かいところまで調査、公表しています。
・統一教会関連団体の会合への出席「議員本人出席で挨拶有り」
<衆議院>
逢沢一郎 赤澤亮正 東国幹 池田佳隆 石橋林太郎 石原宏高 石原正敬 伊東良孝 稲田朋美 井林辰憲 井原巧 大岡敏孝 尾崎正直※ 小田原潔 鬼木誠 菅家一郎 神田憲次 北村誠吾 工藤彰三 熊田裕通 國場幸之助 小寺裕雄 小林茂樹 小林鷹之 小林史明 坂井学 佐々木紀 柴山昌彦 島尻安伊子 鈴木馨祐 関芳弘 高木宏壽 高鳥修一※ 高見康裕 武田良太 武村展英 谷川とむ 田野瀬太道 田畑裕明 塚田一郎 土田慎 土井亨 中川貴元 中川郁子 中曽根康隆 中西健治 中根一幸 中野英幸 中村裕之 中山展宏 西野太亮 萩生田光一 鳩山二郎 平井卓也 深澤陽一 古川康 細田健一 宮内秀樹 宮崎政久※ 宮澤博行 務台俊介 宗清皇一 村井英樹 盛山正仁 保岡宏武 柳本顕 山際大志郎 山田賢司 山本ともひろ 若林健太
※「崎」は「たつさき」※「高」は「はしごだか」
<参議院>
青木一彦 生稲晃子 石井浩郎 井上義行 猪口邦子 上野通子 臼井正一 江島潔 加田裕之 加藤明良 北村経夫 古賀友一郎 こやり隆史 櫻井充 佐藤啓 高橋克法 豊田俊郎 永井学 船橋利実 星北斗 舞立昇治 三宅伸吾 森屋宏 山本順三 若林洋平 渡辺猛之
・統一教会関連団体の会合への出席「議員本人出席で講演」
<衆議院>
赤澤亮正 甘利明 石破茂 伊東良孝 大岡敏孝 小田原潔 北村誠吾 木原稔 佐々木紀 谷川とむ 中谷真一 中山展宏 古川康 宮澤博行 務台俊介 山際大志郎 義家弘介
<参議院>
井上義行 猪口邦子 衛藤晟一
・「旧統一教会主催の会合への出席」
<衆議院>
逢沢一郎 上杉謙太郎 木村次郎 柴山昌彦 萩生田光一 穂坂泰
<参議院>
磯崎仁彦※ 井上義行 三宅伸吾 森まさこ
※「崎」は「たつさき」
・「旧統一教会及び関連団体に対する会費類の支出」のうち、政治資金規正法上、要公開の対象議員
<衆議院>
青山周平 池田佳隆 伊藤信太郎 伊東良孝 井上信治 上野賢一郎 大岡敏孝 奥野信亮 小田原潔 鬼木誠 加藤勝信 神田憲次 木村次郎 高木啓 高木宏壽 武田良太 田畑裕明 寺田稔 中川郁子 萩生田光一 平井卓也 平沢勝栄 松本洋平
<参議院>
上野通子
・「旧統一教会及び関連団体からの寄付やパーティー収入で寄付もしくはパーティー収入有り」のうち、政治資金規正法上、要公開の対象議員
石破茂 下村博文 高木宏壽 山本ともひろ
・「選挙におけるボランティア支援」
<衆議院>
岸信夫 木村次郎 熊田裕通 斎藤洋明 坂井学 高鳥修一※ 田畑裕明 田野瀬太道 中川貴元 中村裕之 深澤陽一 萩生田光一 星野剛士 若林健太
※「高」は「はしごだか」
<参議院>
北村経夫 こやり隆史 船橋利実
・「旧統一教会及び関連団体への選挙支援の依頼、及び組織的支援、動員等の受け入れ」
<衆議院>
斎藤洋明
<参議院>
井上義行
2.岸田総理と茂木幹事長が対立
もっとも、この調査は党所属議員の自己申告に基づくもので、党内からは「十分とは言えない」との声が上がっていたそうです。
調査結果についても、当初は6日の公表を予定していたのですけれども、8日にまでズレこんでいます。その理由についてある党幹部は、「報告に曖昧な記述があり、再提出を求める必要が出てきた」と述べていますけれども、関係者によると、「議員名を全て公にするかで党首脳部の意見がまとまらなかったことも大きい」という事情もあったようです。
岸田総理は教団との接点が判明した179人全員の議員名を公表する一方、会合出席など関わり方ごとの内訳は議員数のみにとどめる案を挙げたのですけれども、茂木幹事長らは議員名の公表は関わり方の深かった数十人程度にとどめるべきだと訴えて譲らなかったそうです。
これに対し岸田総理は「一部でも議員名を伏せれば、国民の理解を得られない」と懸念する一方で議員名を全面公開すれば、新たな名前が浮上した場合に対応に苦慮しかねないとの不安もあったことも事実です。
岸田総理は6日から7日にかけて、茂木幹事長を中心に党役員の人数を絞ったり増やしたりしながら3回にわたって協議。ようやくまとまったのが121人の名前を公表する「折衷案」でした。
それでも、党内からは「残る約60人は誰だと追及されるのは間違いない」との声があがり、閣僚経験者は「最初に小さく見せようとした安倍晋三元総理の国葬経費と同じ。最終的に全議員名を公表せざるを得なくなるのではないか」と漏らしています。
また、教団関連の会合に出席した細田博之衆院議長らは会派離脱中との理由で対象に含めず、関わりが深かったとされる安倍元総理も、地方議員も調査の対象外としていますから、このあたりも野党から追及されるかもしれません。
3.議員事務所に苦情殺到
調査結果の発表の翌9日、氏名が公表された121人の議員は支援者らへの説明に追われました。2021年の衆院選で支援を依頼した斎藤洋明衆院議員は「現在は問題のない団体という認識だった。今後は関わりを持たない」と宣言。事務所に苦情の電話やメールが殺到しているという中堅議員は「地元の支援者から熱心に誘われ、関連団体の会合に出てしまった。大打撃だ」と語っていますけれども、茂木幹事長もコメントしているように、大半の議員が、問題ある団体だと認識していなかった状況であった訳です。
また、関わりのあった議員の氏名公表を巡って、岸田総理と茂木幹事長が対立していたことも考えると、こうなることは最初から分かっていた筈です。
にも関わらず、公表に踏み切ったということは、その後の対策も用意していると考えられます。
今回の記者会見で茂木幹事長は、今後、党所属議員が依然と旧統一教会と関係を続けていたら、何かペナルティを与えるのかとの問いに次のように答えています。
まず、党の方針として、明確にこれを決めさせていただきました。それは順守をしてもらわなければならないと思っております。同時に、確実にそういったことが順守出来るように、例えばそれぞれの議員事務所でも、秘書任せというか、事務所任せにしないで、議員本人が本当に出ることが適切な会合なのかどうか、きちんとチェックするような態勢を整える。また、党としても、こういった問題についてアドバイス機能を強化する。そのために党改革実行本部、私が本部長を務めておりますが、それを基にタスクフォースを作りまして、色んなアドバイスも出来るような機能の充実をしていきたいと、こんなふうに考えているとこでありまして、その上で、このような方針を決めております。重い決定だと思っております。そういった党の方針に、従えない、こういう議員はいないと確信をしておりますが、もしそういう方がいらっしゃる場合には、同じ党では活動できない。このように考えております。茂木幹事長は旧統一教会との関係を断つ方針を打ち出し、従えなければ離党勧告する旨の発言をしていますけれども、実際問題としてどうやって、それをやるのかという問題があります。
9月8日、岸田総理は、地方議員にも「関係を持たない方針を徹底してもらう」と表明していますけれども、党関係者によると、地方には1万人を超える自民系議員がおり、党本部の方針が浸透しきれるかどうかは分かりません。
自民党は、党改革実行本部にタスクフォースを設置し、議員が適切な会合かどうかなどをチェックできるように体制を整備する方針を出していますけれども、党内からは「応援してくれる人に信仰する宗教を聞いたり、『その宗教ならお断りだ』と言ったりできるはずがない」と、もっともな声も上がっています。
4.断ち切れない現状
この自民党が示した方針に困惑する党員もいます。
自身も旧統一教会の関連団体の会合に参加していたことなどを公表している長尾敬・前衆院議員は「私も組織人なので党の決定には従わないといけない。同時に今回の決定をうけて現場で有権者と接して行く中で、どうそれを履行していいか少々困惑している……色んな方が出入りするので1人1人に『どのような宗教を信仰していているのか?』と聞かないといけないのか。それぞれの人が信じているものについて、人権侵害に、わたしが先方の心を傷つけてしまうことがあるのではないか。そう思うと、どう現場で対応していいか今困惑している……反社会的団体とは何ぞや、そして社会的に排除するための法律をつくるべきだと思います。まずはそこからです」と関係を断ち切る"法的根拠"がほしいと訴えています。
議員が、関係を断ち切ると口でいうのは簡単ですけれども、向こうからやってくる場合にはそれを拒絶しなければならなくなります。
これまで、旧統一教会関係者は彼ら自身から各議員にアプローチを掛けていたのが実態のようです。
近畿地方のある自民党府県連で数十年間にわたり働いていた元職員は「国会議員の事務所は選挙前になると必ず、ほとんどの事務所には電話はいっていた。普段付き合いないのに、急に選挙になったら手伝うことありませんか、というのは統一教会だけ……10人くらいいたうちの3~4人が統一教会の人単独ではなく複数で来られる。「家庭連合」とおっしゃっていた。自分も名称変更は知らなかった」と述べています。
そして更に「弱い候補者に受け入れてもらいやすかったんで、そういうところに集中していた。しつこい、毎日のように『何かありませんか』って選挙事務所にかかってくる……新人だったり、選挙普段から活動していなくて、"手伝ってくれる人が少ない弱い候補者"、"比例でしかひっかからない候補者"は、結構、すぐ頼んで」と内情を語っています。
このように、向こうからしつこくアプローチしてくる相手をどうやって断るのか。確かに何らかの"法的根拠"がなければ対処は難しいのではないかと思います。
関連団体からの寄付の受け取りなどがあった石破茂・元幹事長は「関係を断つ理由を明確にしなければいけない。来春に統一地方選を控え、信者なら公認や推薦はしないと言えば、憲法問題にぶつかる」と指摘していますけれども、具体的にどうするのかまで指針を出し、徹底するくらいでないと、中々難しいのではないかと思いますね。
この記事へのコメント