

1.ウクライナについて、一度も触れていないのは、私の気のせいでしょうか?
昨日のエントリーで取り上げた東方経済フォーラムでのプーチン大統領の演説ですけれども、その後の質疑応答で、ウクライナ戦争いついての質問も飛び出しています。
RBC‐TVの司会者イリヤ・ドローノフ氏は「ウクライナについて、一度も触れていないのは、私の気のせいでしょうか?」と前置きし、次のように質問しました。
おそらく2種類の影響を指摘することができるでしょう。経済的な面では、銀行システムや自動車メーカーなどの製造業があったのに、突然ロシアを離れてしまうなど、私たちの普段の生活スタイルが変化していることが挙げられます。また、道徳的な面では、この問題で家族がバラバラになり、国境を隔てた親戚が口をきかなくなるなど、いろいろなことが起こっています。これに対し、プーチン大統領は次のように答えました。
私たちの国にとって、2月24日以降、国家として何を得て、何を失ったとお考えでしょうか?
私は、私たちは何も失っていないし、これからも失うことはないだろうと思っている。私たちが得たものについては、主に主権を強化したことであり、これは現在起きていることの必然的な結果だと言える。ウクライナの地で、ロシア兵の命も、武器弾薬も相当失っていると思いますけれども、プーチン大統領にとっては、それは数には入っていないようです。
実際、世界でもロシア国内でも、ある種の二極化が起こっている。なぜなら、不必要なもの、有害なもの、前進を妨げるものはすべて捨て去ることができるからだ。私たちは勢いを得て、発展のペースを加速させるだろう。なぜなら、現代の発展は主権にのみ依存するからだ。すべてのステップは、私たちの主権を強化することを目的としている。これが第一のポイントだ。
第二に、そして最も重要なことは--私はこれをもう一度強調したいが--私たちは敵対行為という点では何も始めていない、それを終わらせようとしているだけなのだ。
実際に敵対行為が始まったのは2014年、正常な平和的発展を望まず、次々と軍事作戦を仕掛けて自国民を抑圧しようとした人々が引き起こしたウクライナのクーデターの後、ドンバスに住む人々を8年間大量虐殺の対象としたのだ。
ロシアは、この問題を平和的に解決しようと何度も試みた結果、この決断を下した。つまり、潜在的な敵対者の行動と同じように、軍事力を使って解決しようとしたのだ。私たちは意識的にこれを行い、すべての行動はドンバスに住む人々を支援することを目的としてきた。これは私たちの義務であり、最後までやり遂げるつもりだ。最終的に、これは我が国を強くするものなのだ。内部からも、外交政策上の地位からも。
プーチン大統領は得たものとして「主権」を挙げていることを考えると、あるいはプーチン大統領にとっての得失の対象は「主権」だけであって、その他のものはどうでもよいのかもしれません。
2.敗走するロシア軍
プーチン大統領が得たものとして挙げた「主権」とは、いうまでもなく、これまでの侵攻で獲得した東部および南部の占領地のことだと思いますけれども、ここにきてそれら「主権」も危うくなってきています。ウクライナの反攻です。
9月11日、ウクライナのゼレンスキー大統領は、ウクライナ北東部ハリコフ州の南部にある重要拠点イジュームをロシア軍から奪還したと発表しました。ロシア国防省も10日、イジュームとバラクレヤに展開していたロシア軍部隊を東部ドネツク州方面に"再配置"すると、事実上の撤退を発表していますので、ほぼ間違いないものと思われます。
AP通信によると、ウクライナ軍幹部は街の中心部で撮影したとみられる動画をSNSに投稿し、「周辺は破壊されているが、全てを取り戻した。イジュームは過去も現在もこれからも、ずっとウクライナのものだ」と語ったと伝えています。
イジュームはロシア軍が人員や物資を戦線に送る拠点として利用していた軍事的要衝です。ここが奪還されたとなると、ロシア軍はそれ以上の侵攻は難しくなります。
ロシア軍の撤退はそれだけではありません。
翌12日、イギリス英国防省はロシアがウクライナ東部ハリコフ州のオスキル川以西の州全域から軍の撤退を命じた可能性が高いと発表し、「ウクライナの急速な成功はロシアの全体的な作戦計画に大きな影響を与える」とコメントしています。
10日、アメリカのシンクタンク、戦争研究所はロシア軍が統制の取れていない形で敗走していると分析。ウクライナ軍参謀本部はも、ハリコフ州で大きな損害を受けたロシア軍の一部兵士が軍服を脱ぎ捨てて私服姿になり、地元住民らの間に紛れ込んで脱走を試みる事例も報告したそうです。
3.声東撃西の計
それにしても、なぜここまでロシア軍は崩れ、敗走の憂き目に遭ったのか。
前・陸上自衛隊東部方面総監の渡部悦和氏によると、南部へルソン州でウクライナ軍が攻勢を開始した為、東部ドンバス地域から精鋭部隊を抜いてへルソンに回したのだそうです。
それでハルキウのロシア軍に大きな穴が開いたところをウクライナ軍に突かれて総崩れとなり、今回の大戦果に繋がったのだそうです。
それにしても、弾薬や食料を全部置いて、軍服を脱いで逃げるなど潰走もいいところです。抵抗らしい抵抗すらできず逃げだすなど、ウクライナ軍はどれだけの大攻勢をかけたのだ、どこにそんな兵力があったのかとも思うのですけれども、ネットでは、ロシア軍兵士が使用しているSNSに実際の戦線よりもずっと奥までウクライナ軍が辿り着いたデマ情報を流し、ツイッターにもそれを裏付けるかのような偽情報を拡散。更に足の速い軽車両で少人数編成の部隊が後方撹乱して信憑性を持たせるなどが相まって、本当にウクライナ軍が後方に来ていると信じ込んだロシア軍が浮足立って、我先にと逃げ出したというのですね。
まるで兵法三十六計の「声東撃西の計」に近いものがあるように思います。
「声東撃西の計」とはその名のとおり、東で声を発してそちらにいると見せかけ、実際は西を撃つ、陽動作戦の一種ですけれども、士気が高く、統率の取れた相手には通用しないと言われています。
それが今回、ここまで綺麗に計略が嵌まったということは、それだけロシア軍が統率されてなかったということではないかと思います。
当然ロシア軍も体制を立て直して反撃を試みるでしょうけれども、士気を挙げ、統率をきちんと取るところから始めないと、今回のような敗北をまた経験することになるのではないかと思いますね。
ここ数日間ウクライナの快進撃が凄過ぎてみんな目を回してたのだけど、今日になってその全貌とカラクリが明らかになって来て唖然としております。
— うぃっちわっち(丁稚) ℗ (@Witchwatch99) September 11, 2022
ひと言で言うと「みんなウクライナに騙されてた(ツイッタ民含む)」
リプで解説します。
この記事へのコメント