読売に忖度するワイドショーと伸び悩むネットフリックス

今日はこの話題です。
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1.読売に忖度するワイドショー


9月10日、プロ野球・ジャイアンツの坂本勇人選手が一般女性を妊娠させ、堕胎を要求していたことなどを、「文春オンライン」がスクープしています。過去の性加害行為が報道され、CMやテレビ番組を軒のみ降板することになった香川照之氏がテレビなどで散々叩かれたのとは打って変わって、ワイドショーの扱いは低調です。

これについて文春自身が、読売からテレビ局に圧力が掛かっているのだと記事にしています。

それによると、全国ネットで放送されているあるワイドショーのスタッフが、全員が共有するグループチャットに「文春に出てた巨人坂本選手のネタ、取り扱いNGです。巨人からこれを扱ったら、長嶋さん関連の情報を渡さないとなっているそうです…」とメッセージを出したようで、プロ野球選手の不祥事に対するメディアの忖度が常態化している実態をあらわになったとしています。

もっとも、これまでは、「取り扱いNG」のメッセージが届くことはあっても、それだけだったのが、今回は「もし扱ったら長嶋さんの情報が入らなくなる」という異例の"交換条件"がついていたことから、上層部は想像以上にナーバスになっているとも書いています。

実際、大手新聞やテレビ局の巨人の番記者たちの間では、坂本のスキャンダルは触れてはいけない"タブー"になっていて、試合後の原辰徳監督の囲み取材でも、誰も坂本選手の件について質問しなかったそうです。


2.沸き起こるガーシー現象


ただ、今のご時勢、それで収まる時代でもなくなってきているのも事実です。

9月17日、NHK党の「ガーシー」参院議員は、ツイキャス生配信で、坂本選手の報道についてユーザーの質問に答えるかたちで「もう完全に読売に忖度してるんでしょ。今、マスコミを持ってるからね。テレビ局も新聞紙も……もう一発食らったらアカンやろな……俺の知り合いの女の子が坂本と付き合っとってさ。結構、話聞いてると、どうしようもない奴みたいやけど……まあ、どうしようもないよな、坂本はちょっと…」とその忖度振りを批判しつつ、それだけでないことも匂わせています。

まぁ、ガーシー氏が参院議員に当選してからというもの、大王製紙元会長・井川意高氏の暴露など、ガーシー議員以外の人からの暴露がちらほら出るなど「ガーシー現象」が起き始めているようにも見えます。

坂本選手の件にしても、既に示談が成立しているにも関わらず、この話が飛び出してくる。しかも被害者女性の友人からということですから、たとえ過去の話で、当事者間で話がついていても、「ダークなことは許さない」という"ホワイト革命"が着実に進行している印象を受けます。

ワイドショーが坂本選手の件を報道しない裏で、ネットではガーシー現象で告発が行われている。

その意味では、坂本選手の件に世論が大きく反応してくるようであれば、ネットの情報配信が一般マスコミにどこまで迫っているのかを測る一種のバロメータになっているのかもしれません。




3.辞めすぎて経理がいない


こうした中、マスコミ、特にテレビ業界で人材の流動化が起こり始めているようです。

4月29日、お笑いタレント・東野幸治氏は、同じくお笑いの千原ジュニア氏のユーチューブ「千原ジュニアYouTube」にゲスト出演して、フジテレビが募った早期退職の実情について語っています。

東野氏は テレビやネットなどお笑い界を取り巻く環境の変化の話題で「純粋にお笑い番組を今地上波でやってるかって言ったら、なかなか厳しいやん。なら、ユーチューブとか、ネットフリックスやアマゾンプライムになっちゃうってところがある」と指摘。続けて「だから、テレビなんてフジテレビも途中で辞めていく人が100人超えでしょ? 『え!100人超えてんの?』みたいな」と発言。「100人超えてんすか!?」と驚く千原ジュニア氏を横目に、東野氏は「俺が聞いた話、ホンマかどうか知らんけど、120人ぐらい……4年ぐらい前は4~5人やってん。『少ないな…』っと思って、2次募集したら『ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれ』と。だから、経理の人が辞めすぎて、計算する人が今いてないって。っていうぐらいの、沈みゆくテレビ、地上波みたいな、現状はそんな感じよ」と明かしました。

これに千原ジュニア氏は「でも、何されるのかって言ったらほぼほぼ制作会社立ち上げたり。全部メディアやから、違うところに行きはるってことですもんね」と口にしていました。

4年くらい前に4~5人だったのが、今年になって100人越えとは、それだけ業界が傾いていると感じている人が多いということでしょう。

なんでも、この3月一杯で希望退職したなかには、田代尚子氏、境鶴丸氏、野島卓氏、佐藤里佳氏など往年の名物アナや、名物プロデュサーなどが名を連ねたそうです。




4.会員減のネットフリックス


東野氏や千原ジュニア氏が他のところにいっちゃうと指摘したネットフリックスですけれども、必ずしも前途洋々という訳でもないようです。

ネットフリックスが7月19日に発表した2022年第2四半期(4~6月)決算によると、会員数は前四半期から約97万人減となる約2億2067万人で、2四半期連続での減少となりました。会員数が2四半期連続で減少するのは上場以来初のことです。

なぜこうなったのかについて、2つの原因が指摘されています。「武漢ウイルス禍の影響」と「地域による違い」です。

武漢ウイルスがパンデミックを起こし始めた2019年の第四四半期から2020年の第二四半期辺りの時期にネットフリックスの会員数が少し増えているのですけれども、これが武漢ウイルス禍に入って映像配信の利用者が急増した結果だとされています。

けれども、ネットフリックスは「コロナ禍の状況は特殊でありカオス」、「この上昇は短期のもの」といわゆる「需要の先食い」だとIR資料の中で説明していました。

武漢ウイルスパンデミックが落ち着いてきた、その先食いが終わった結果延びが横這い、あるいは現象したという訳です。

もう一つの「地域による違い」ですけれども、ネットフリックスのユーザー数の増加は地域によってかなり違うのだそうです。

アメリカはずいぶん前からユーザー数が頭打ちであり、中南米も伸びが止まり始めていました。2016年以降、ネットフリックス会員の伸びを支えてきたのは、主に欧州、中東とアジアでした。

世界全体では会員数が減少したネットフリックスですけれども、日本を含むアジア太平洋圏に限定すると会員数は伸びており、前四半期比108万人増となる約3480万世帯となっています。

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5.離脱するZ世代


地域ではユーザーの伸びにバラツキがあるネットフリックスですけれども、年代別、性別でみると、また別の傾向が見えています。

アメリカの調査会社「Global Wireless Solutions」の調査によると、いわゆるZ世代(1990年代半ばから2010年代生まれの世代)の女性の解約、そしてサービスをスマートフォンで視聴するモバイルユーザーの減少が目立つことが明らかになりました。

なんでも2019年1月~2022年6月の約3年半の間で、18〜24歳の女性モバイルユーザーの26%がネットフリックスを解約。さらに2019年1月と2022年6月を比較すると、18~24歳の女性ではモバイルでの視聴時間が39%減少、25~34歳の男性では33%減少したという結果となっています。

「Global Wireless Solutions」のポール・カーターCEOは「ほとんどの人にとって、スマートフォンはエンターテインメントやレジャーの世界への主要な入り口となっています。そのため企業にとって、消費者がどのような基準でスマホで視聴するコンテンツを探しているかを理解することは、未だかつてないほど重要となりました」とコメントしています。

ネットフリックスは、1月に実施した値上げに伴う解約が一段落する2022年第3四半期(7~9月)には100万人規模の会員増加を見込んでいて、更に、節約志向の強い消費者を引きつけるため、7月13日にはマイクロソフトとの提携を発表。2023年初頭に広告付き低価格プランを追加すると発表しています。

広告付きプランの導入により、ネットフリックスでは「長期的には、料金の引き下げに伴う会員の大幅な増加、加えて広告収入による利益成長が可能になる」とし、不正にパスワードを共有するユーザーについても、8月からはパスワード共有に追加料金を請求する新機能を中南米5ヶ国で開始するとしています。

これは、中南米が「アカウントを共有して使っているユーザーが多い」とネットフリックスが指摘されている地域でもあるからで、複数の家庭で1つのアカウントを共有するというのを防ぐ狙いのようです。


6.席取りゲームのネット配信事業


既にアメリカなど、ユーザー数が踊り場に達した地域では、今後、他の映像配信との競争に晒されることになります。

Amazonの「Prime Video」、Disneyの「Disney+」、Appleの「Apple TV+」をはじめとする競合サービスの乱立・躍進、更にはウクライナへの侵攻を続けるロシアからの事業撤退といった理由も挙げられています。

実際、家庭内では1つの契約しかしないわけではなく、いくつかの事業者が併存して使われるのが現状のようです。もちろん、無限に契約してもらえるわけではなく、いくつか「家庭内で契約してもらえる席」があり、その席にどの事業者が座るかを争っているのが現実です。

アメリカ市場では、一般に3つから4つの席があると言われています、2020年に「Disney+」などの映像配信事業者が増加し、一気に競争状況が厳しくはなったものの、ネットフリックスはユーザー数を減らさずにいられました。

それでも、いつまでも席に座っていられる保証はなく、実際、直近ではユーザー数が減っている訳です。

これらのことを加味すると、ネットフリックスが収益の安定もしくは拡大を維持するには、「これ以上ユーザー数が減らない、もしくは増える」状況を作るしかなく、先述した広告付き低価格プランも「有料である」ことでユーザーを辞める人々を引き止める策だとされています。

また、広告を出す側もネットフリックスのユーザーがどんな広告を見たかを分析し、ユーザーに合わせた広告を打ちたいという広告を出す側の事情も当然絡んでいるものと思われます。

更に、ネットフリックスは既存のユーザー離れを食い止めるだけでなく、新規ユーザーの獲得も睨んでゲーム事業にも力を入れ始めています。

ネットフリックスは、2021年11月から、パズルゲーム「真実の物語」やカードゲーム「カードブラスト」など、合計20タイトル以上のスマホ向けゲームを展開。これらゲームはApp StoreやGoogle Playでダウンロードでき、アプリ内課金はなく、広告も表示されないものの、ネットフリックスの会員でないとプレーできないそうです。

ただ、それで会員が増えるためには、そのゲームがどうしてもやりたいと思わせるものでなくてはならず、どこまでそういった優れたゲームコンテンツを生み出せるのかがカギになります。

こうしてみてくると既存のテレビメディアは、旧態依然とした番組作りのままでは相当厳しい時代になることが予想されます。

ネットフリックス・プロダクション部門の日本統括ディレクターの小沢禎二氏は「現在のネットフリックスでは『Local for Local』(地域のために地域で)が合言葉になっている」とコメントしています。

これは、海外でも通じる、世界で売れることを軸に据えるのではなく、「まずは制作している地域でヒットすることを狙い、それが結果的に世界でもヒットする」やり方を考えるという意味なのだそうです。

メディアが多様化し、視聴者が好むコンテンツも多様化する今、忖度しまくって、取り扱いNGのコンテンツを増やせば増やすほど、それが却って自分の首を絞めることに繋がっていくようにも思えますね。


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