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1.日米防衛相会談
9月15日、浜田防衛相は、訪問先のアメリカ国防省でオースティン国防長官と初めて対面で会談しました。
会談の冒頭、オースティン長官は「台湾海峡や日本周辺海域での中国による挑発的な行動は地域に不安定をもたらす、前例を見ないものだ。日本の防衛に対するアメリカのコミットメントは揺るぎない」と述べました。
これに対し、浜田防衛相は「ロシアのウクライナ侵略、中国の弾道ミサイルの日本近海への着弾、中ロの共同演習など懸念すべきことが起きている。力による一方的な現状変更をいかなる地域でも許してはならない」とし、中国が台湾への圧力を強めていることを踏まえ、台湾海峡の平和と安定の重要性を確認するとともに平和的解決を促すことで一致しました。
会談の概要は防衛省のサイトで掲載されていますけれども、両閣僚は、海上自衛隊鹿屋航空基地への米空軍無人偵察機MQ-9の一時展開を巡って意見を交わしています。
これは7月29日、政府が海自の鹿屋航空基地をアメリカ空軍無人偵察機MQ-9の一時展開に提供すると閣議決定したことを受けて進めている計画です。
アメリカ軍に提供するのは管制塔や格納庫、整備場など7棟と、全ての滑走路や誘導路、駐機場の約269万9000平方メートル。目的は「MQ-9の飛行運用と、その支援業務を実施するため」とし、提供期間中は日米地位協定の関連条項が適用されます。使用期間は「日米合同委員会承認の日から撤収までの間」としています。
これについて、会談の概要では次の様に記されています。
両閣僚は、情報収集、警戒監視及び偵察(ISR)能力の強化が、日米同盟の抑止力・対処力の強化にとって重要であることを確認した。かかる観点から、両閣僚は、米空軍無人機MQ-9の海上自衛隊鹿屋航空基地への一時展開に向けた進捗を歓迎した。浜田防衛大臣は、MQ-9の一時展開は、自衛隊における無人機によるISR活動の深化に資する旨を述べた。両閣僚は、MQ-9を含む日米のアセットが取得した情報を日米共同で分析することで一致した。防衛相日米防衛協力課によると、鹿屋の一時展開が概要に明記されたのは初めてのことだそうですから、その力の入れ具合が分かるというものです。
2.鹿屋に配備されるMQ-9リーパー
9月13日、防衛省は、今回の海自鹿屋航空基地でのMQ-9の一時展開について、部隊の運用開始が10月下旬以降になると明らかにしました。
計画では8機を1年間配備し、MQ-9を運用する米兵ら最大200人が市内のホテルに宿泊します。防衛省日米防衛協力課によると、既に鹿屋入りしている準備部隊とは別に、本隊の一部が近く現地に入り、10月上旬から機体を搬入し組み上げるとのことで、10月下旬までに部隊の鹿屋入りも終える予定です。テスト飛行の時期は未定とし、地元が求めている公開は調整中としています。
この部隊について、防衛省日米防衛協力課は当初「アメリカ空軍戦闘コマンド所属」としていたのですけれども、「アメリカ軍の運用に関わり明らかにできない」と説明を後退させ、開始時期がずれ込んだことには「当時は確定的な準備期間を言えなかった。作業は問題なく進んでいる」と説明しています。
一時展開は海洋進出を強める中国を念頭に、南西諸島の警戒監視態勢の強化が狙いとされ、滞在する米兵らに公務外の行動制限はないそうで、アメリカ軍は7月下旬に市と県の計画容認を受けて現地で準備作業を開始しています。
3.ハロップとスイッチブレード
防衛省が無人機導入を進めているのは偵察用だけではありません。
複数の政府関係者によると、防衛省は、2023年度に島嶼部防衛強化の為、攻撃型無人機を自衛隊部隊へ試験導入する方向で調整しているそうです。
2025年以降に海外からの調達と国産を合わせ、数百機規模の攻撃型無人機を配備する方針を打ち出し、南西諸島を中心に配備する計画を立てているとのことです。
有事の際には、島に近づく敵の艦艇や上陸を試みる敵の部隊への攻撃に使うことを想定し、駐屯地や基地の警戒監視にも活用する見通しのようです。
今回、試験導入が検討されているのは、イスラエル製の「ハロップ」やアメリカ製の「スイッチブレード」などです。
ハロップは、自律的に電波放射に目掛けて進める対レーダー無人航空機(ドローン)で、敵防空網制圧に最適化され、戦場を徘徊し、目標に自爆攻撃するように設計されていて、対レーダー誘導システムを使用した完全に自律モードか、人間参加型モードを取ることができるようです。目標と交戦中でない場合は、基地に戻って自ら着陸もできます。
ハロップは全長2.5メートル。偵察時間が9時間、航続距離が1000kmもあります。地上または海上のキャニスターから発射されますけれども、空からの発射にも対応しているようです。
一方、スイッチブレードは、アメリカ陸軍の殺傷性小型飛翔弾薬システムとして開発されたドローンで、人員や非装甲車両などソフトターゲットを標的とする「スイッチブレード300」、戦車など装甲車両を標的とする「スイッチブレード600」のほか、非武装型の「ブラックウイング」があります。
スイッチブレードは、歩兵が背負って運べるほどのコンパクトな兵器で、迫撃砲の様な筒状のランチャーから発射された後、機体は、折り畳まれていた翼を展開して固定翼機の様な形態で電動モーターの推進力で飛行します。 コントローラーで遠隔操作でき、スイッチブレードの機首部分に搭載された高性能カメラから送られた映像で偵察活動も可能です。 弾頭を搭載した攻撃型は、最終的に歩兵が偵察映像で敵を確認して指令を送り、敵に向かって自爆攻撃を行います。攻撃には人工知能(AI)等は介入せず、攻撃の判断は全て人間が行うようです。
防衛省はこれら攻撃型無人機を、自衛隊部隊でそれぞれ有用性を確かめ、本格的な配備を目指すとしています。
4.ドローンの活用に関する質問主意書
これまで自衛隊が保有する無人機は、警戒監視や情報収集用にとどまっていたのですけれども、今回の攻撃型ドローンの試験導入は抑止力を一歩進めた感があるのですけれども、実は政府は、今年の6月の段階では攻撃型ドローンの導入を計画していませんでした。
6月2日、立憲民主の井坂信彦衆院議員は、政府に対し「自衛隊におけるドローンの活用に関する質問主意書」を提出しています。その内容は次の通り。
自衛隊におけるドローンの活用に関する質問主意書これに対し政府は6月14日に答弁書を提出していますけれども、その内容は次の通りです。
今般のロシアによるウクライナに対する侵攻においては、両軍が様々な用途でドローンを活用している。
二○二○年九月に発生した、ナゴルノカラバフ地域におけるアゼルバイジャンとアルメニアの戦闘において、無人機による戦果が世界に衝撃を与えた。アゼルバイジャン軍の戦法は、旧式の複葉機を無人飛行させ、囮として防空システムを反応させることにより対空攻撃拠点を発見し、その対空攻撃拠点にドローンによる攻撃をしかけるというものであった。その結果、人的被害を最小化しながら防空システムを破壊し、制空権を奪ったのである。使用されたドローンは、偵察と攻撃の複合機能を持つバイラクタルTB2と、レーダーを探知して突撃する自爆型のハーピーであり、多大な戦果を挙げたといわれている。この戦闘の結果を踏まえて、各国ではドローン戦争の時代到来として戦略の見直しを図っているといわれている。
我が国の自衛隊における無人機の活用については、予算計上され一部導入及び研究が行われている。また無人偵察機隊の編成も行われている。しかしながら、アメリカでは十年以内に千機以上の戦闘用ドローンを購入するともいわれており、世界各国が取り組む無人機の活用戦略からは大きく後れを取っている。
自衛隊の機能として攻撃に特化したドローンの運用は難しいとしても、偵察、迎撃、救助、輸送、囮、電子戦など、今後は無人機を活用した戦略が重要になると考え、以下質問する。
一 現在、自衛隊が保有するドローンについて、使用目的別の機数はどのようになっているか。
二 令和三年五月二十一日の安全保障委員会における岸防衛大臣の答弁では、「攻撃型のドローンにつきましては、現時点で具体的な取得計画はございません。」としている。偵察などと併せて防衛のために攻撃もできる複合型ドローンの取得について、政府の見解はいかがか。
三 無人機は航空機分野だけに留まるものではない。人的被害の最小化を考えると、車両や船舶の無人機を活用することも考えられるが、政府の見解はいかがか。
四 無人機の有効活用には、操縦とシステム管理が重要になってくる。自衛隊におけるドローン操縦士の育成と、システム管理ができる人材の育成について、どのように進めていくつもりか。
五 令和四年一月三十一日、自衛隊のF-一五戦闘機が墜落し、搭乗していた二名のパイロットの死亡が確認される痛ましい事故が発生した。原因は調査中であるが、空間識失調が推測されている。日常的な訓練が大事なのはもちろんであるが、ドローンによる偵察や、ドローンが訓練時の仮想敵を担うことで、パイロットの負担軽減が考えられるが、政府の見解はいかがか。
六 偵察用ドローンや輸送用ドローンは、災害時の活用が期待される。災害時専用のドローンだけでなく、軍事用ドローンを災害時にも活用することで日頃の訓練の成果が発揮できると考える。このように今後の無人機活用は、複合的にかつ効率的な運用をすべきと考えるが、政府の見解はいかがか。
右質問する。
衆議院議員井坂信彦君提出自衛隊におけるドローンの活用に関する質問に対する答弁書
一について二の回答で「偵察とともに攻撃を実施できる無人化された装備品の取得について具体的な計画はない」とはっきり答えています。けれども、前述した試験導入予定の機体のうちアメリカ製の「スイッチブレード」は、偵察も攻撃もできるドローンです。6月に計画がないといっておいて、9月にいきなり試験導入するなんてことは普通できませんから、実際は6月、あるいはもっと前の段階から水面下で動いていたのではないかと思います。あるいは、時期からみれば、岸前防衛相の置き土産ではないかと思います。
自衛隊では、令和四年三月現在で、小型無人機(重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律(平成二十八年法律第九号)第二条第三項に規定する小型無人機をいう。以下同じ。)を約千機保有しているが、情報収集をはじめとする様々な用途で使用しており、お尋ねについて一概にお答えすることは困難である。
二について
お尋ねの「複合型ドローン」の意味するところが必ずしも明らかではないが、現時点で、御指摘のような偵察とともに攻撃を実施できる無人化された装備品の取得について具体的な計画はない。
三について
お尋ねに関し、無人化された装備品の導入により、搭乗員の生命及び身体に対する危険や負担を局限できると考えており、無人・自律型車両の研究や無人水中航走体の研究開発等について着実に取り組んでいる。引き続き、無人化された装備品についての我が国の防衛における重要性、技術動向や各国の運用状況等を踏まえつつ、無人化された装備品の着実な整備と積極的な活用を推進する考えである。
四について
お尋ねの「システム管理」の意味するところが必ずしも明らかではないが、自衛隊の保有する小型無人機の操縦者等の育成については、小型無人機を運用する部隊等において、運用上の所要に応じて行っているところであり、引き続き適切に行っていく考えである。
五について
お尋ねに関し、無人化された装備品の導入により、搭乗員の生命及び身体に対する危険や負担を局限できると考えている。
六について
お尋ねに関し、無人化された装備品について、着実な整備を進め、我が国の防衛に必要な警戒監視活動等の実施、災害対応等への積極的な活用を推進する考えである。
既に外国ではハロップやスイッチブレードは実戦投入されて実績も挙げていますし、十分に導入を考えるに値すると思いますし、SFチックな妄想をすれば、大型輸送機に大量の攻撃型無人機を搭載してやって「空中空母」に出来るのではないかとさえ思えてきます。
攻撃型ドローンを積んだ大型「空中空母」を戦闘機で護衛してやれば、空の空母打撃群が出来上がってしまいそうです。
まぁ、そこまで一足飛びにいかないでしょうけれども、攻撃型ドローンの発達は、空母打撃艦隊が"空中打撃艦隊"へと進化していく流れを生んでいくかもしれませんね。
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