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1.ウクライナ東部と南部で住民投票開始
9月23日、ウクライナ東部のドネツクとルガンスク、および南部のへルソンとザポロジエの一部地域でロシア編入を問う住民投票が始まりました。
投票は27日迄の4日間なのですけれども、ロシアのインタファクス通信は地元選挙管理当局の話として、初日に投票した住民の割合はザポロジエで20.5%以上、ヘルソン15%だったと報じました。ロシアが設置したヘルソンの選挙管理委員会のマリーナ・ザハロワ委員長は「投票初日としては十分だ」と述べています。
また、ロシア国内に移住したこの地域の住民のための投票所が首都モスクワに設置されているほか、モスクワと第二の都市サンクトペテルブルクでは、政府支持者が住民投票と戦いの遂行を支持する集会を開いているようです。
これら4州はいずれもロシアの完全な支配下にはなく、制圧地域はドネツク州で全体の60%前後にとどまるのですけれども、ロシアが支配下に置くウクライナ領土は9万平方キロメートル余りで、全体の約15%ながら、はハンガリーやポルトガルの国土に匹敵する面積になります。
「住民投票」について、21日、メドベージェフ前大統領は「住民投票が行われ、ドンバスなどの領土はロシアに受け入れられるだろう」とSNSに投稿し、投票結果を根拠としてロシアが一方的にこの地域の併合を進める可能性を示唆。ロシアのマトビエンコ上院議長も23日「住民投票は、正当性について誰もが疑問の余地がない方法で行われると確信している」と主張しています。
これに先立ち、ロシアの前の大統領で、安全保障会議のメドベージェフ副議長は21日、「住民投票が行われ、ドンバスなどの領土はロシアに受け入れられるだろう」とSNSに投稿し、投票結果を根拠としてロシアが一方的にこの地域の併合を進める可能性を示唆しました。
2.全てはもう決められている
これだけ聞くと普通に住民投票するかのように見えるのですけれども、日本人がイメージする投票とは少し違うようです。
東部ルハンシク州に住む45歳の女性によりますと、ルハンシク州では、ロシア側の当局者が投票用紙を持って住宅や職場を回り、その場で投票を行うよう促し、そして、住宅や職場で投票できなかった人は、投票期間の最終日の今月27日、投票所に足を運び、投票するよう指示しているということです。
なんでも、投票用紙には『ロシアの一部となることを支持するか』という質問が書かれていて、イエスかノーにチェックするのだそうです。
女性は「投票所には行きたくないが、もし彼らが私の家や職場に来たら、投票します……すべてはもう決められているとみな、分かっています。私は投票所には行かないと思いますが、ほかの人たちは投票したがっているようにみえます」と答えています。
また、BBCによると、南部エネルホダルでも、兵士が個別訪問し、ロシア編入に賛成か反対かをその場で口頭で答えさせた上で。兵士がその答えを記入した用紙を持ち帰ると報じています。
更に、南部へルソンでも、街の中心部に投票箱を持ったロシア兵が立ち、住民の投票を集めているようです。
ロシアの国営タス通信は、戸別訪問での票の回収は「安全のため」だとしていますけれども、確かに家にロシア軍兵士がやってきて、その場で投票しろと迫られたら怖いと思いますし、投票用紙の秘匿性にも不安があります。
なにより「全てはもう決められている」のであれば、住民投票など形だけのことで、ロシア編入の大義名分が欲しいだけということになります。
3.偽の住民投票は明確に非難されるはずだ
当然ながら、この住民投票にウクライナ強く反発しています。
9月22日、ウクライナ・ルハンシク州のハイダイ知事は「ロシア軍は占領に反対するデモ隊に発砲したあと、大勢の人をバスで連れてきてロシア軍を歓迎する住民だと称したことがある」と述べ「住民投票」だとする活動もみせかけにすぎないとの見方を示しました。
また、ウクライナのゼレンスキー大統領は、23日の定例演説で「全世界が偽の住民投票に間違いなく真っ当な反応を示すだろう。偽の住民投票は明確に非難されるはずだ」と批判。22日に公開した動画でも「占領地での偽の住民投票という茶番は、2014年にクリミアで起きたことと同じだ」と強く反発しています。
更に、ゼレンスキー大統領は21日の演説でも住民投票の実施方針を「騒音」と一蹴した上で、「前線の状況は明らかにウクライナが主導権を握っている」と連日批判しています。
ゼレンスキー大統領は9月7日のビデオ演説で、「ウクライナの立場はこれまでと同じで、我々は全く譲るつもりはない……偽りの住民投票の道を進めば、ウクライナや自由世界との交渉の機会を自ら閉ざすことになる」と警告していたのですけれども、プーチン大統領によれば、ゼレンスキー大統領は交渉に応じないということですから、今更交渉停止と警告されても関係ないのでしょう。
4.仮定の話には入りたくない
ウクライナでロシアへの編入を問う「住民投票」が始まったことについて、アメリカも反応しています。
9月23日、ホワイトハウスのジャン・ピエール報道官は、プレスブリーフィングで、記者から「ロシアや住民投票の実施に関与している人々に対して、新たな制裁やその他の対応など、何らかの追加コストを課すことを検討しているのか」と問われ次のように答えています。
今日投票が行われている間に、つまり、明らかに今後5日間の間に、私が傾注したいことが2つあります。また、この日、ホワイトハウスは「ウクライナにおけるロシアの偽りの住民投票に関するバイデン大統領の声明」を出しています。その声明は次の通りです。
もしロシアが併合に踏み切れば、私たちは同盟国やパートナーとともに、これらの行動に対してさらなる迅速かつ厳しい経済的コストを課す用意があります。
本日のG7首脳声明で述べたように、アメリカはこの領土や-ウクライナの一部以外には認めません。なぜなら、この領土はウクライナの人々のものだからです。 私達は、世界中のパートナーとともに、ロシアが発表するどのようなでっち上げの結果であっても拒否します。
大統領が国連で述べたように、また、あなた方が非常に明確に、非常に大胆にお聞きになったように、これらの住民投票は国際法の明白な違反であり、国際システムを支え、国連憲章の基礎となっている主権と領土の完全性の原則に対する冒涜です。
私達は、ウクライナの人々とともに断固として立ち上がり、彼らが自国の領土を守り、自由を守るのを助けるために、歴史的な規模の安全保障支援を提供し続けます。
米国はウクライナの領土をウクライナの一部以外として認めることは決してない。ロシアの住民投票は見せかけであり、国連憲章を含む国際法に著しく違反し、力によってウクライナの一部を併合しようとする偽りの口実である。我々は同盟国やパートナーと協力し、ロシアにさらなる迅速かつ厳しい経済的コストを課すつもりだ。バイデン大統領もジャン・ピエール報道官も、ウクライナ東部と南部の4州での住民投票を「でっち上げの偽りの投票」だとした上で、その結果を認めないだけでなく更なる経済制裁を行うと明言しています。
アメリカは世界中のパートナー、そして国連憲章の中核的な教義を尊重するすべての国とともに、ロシアが発表するいかなるでっち上げの結果も拒否する。我々は、ウクライナ国民を引き続き支援し、ロシアの侵略に勇敢に抵抗する彼らの自衛のために安全保障上の支援を提供する。
これら住民投票が「でっち上げ」ということについて、先述のジャン・ピエール報道官は次の様に述べています。
私たちは、これらの国民投票が操作されることを知っています。 私たちは、ロシア当局が住民投票の投票率や賛成率に目標を設定していることを示す情報を持っています。ただ、この発言に元になった記者質問は「もしロシアがウクライナのこれらの地域を併合した場合、特にウクライナがそれらの地域でアメリカの武器を使用した場合、アメリカをより危険な状況に追い込む可能性はありますか?」というものだったのですね。
例えば、いくつかの地域では、ロシアへのセッションの投票率と支持率に必要な数字をすでに75%以上に設定していると伝えられています。
このように、ロシアは見せかけの国民投票の実施を急いでいますが、これは自信や強さを示す行為ではありません。 全く正反対です。 私たちは声を大にして言い続けていきます。
これに対し、ジャン・ピエール報道官は、投票が違法なものであると力説し、記者の肝心の質問には、「仮定の話には入りたくない」と回答を拒否しました。
まぁ、これはプレスブリーフィングで答える内容ではないかもしれませんけれども、その仮定が事実になったときにどうするかは当然、考えておくべきだと思いますし、同盟国および西側諸国もそれに備えておく必要があると思いますね。
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