ウクライナ親露地域はロシア編入を選んだ

今日はこの話題です。
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1.ロシア編入の住民投票結果


9月28日、ウクライナ東部ドネツク、ルガンスク両州と、南部ヘルソン、ザポロジエ両州のうち、ロシアが占領している地域で、23~27日にかけて行われたロシア編入への「住民投票」で、4地域の「選挙管理委員会」は「圧倒的多数」が編入に賛成したとする暫定開票結果を公表しました。

暫定開票結果によると、賛成率はドネツク州99%(投票率97%)、ルガンスク州98%(投票率94%)、ヘルソン州87%(投票率79%)、ザポロジエ州93%(投票率85%)となりました。

どこかの全人代を思わせる凄まじい得票率ですけれども、これで形の上では住民はロシア編入に賛成したことになります。

この結果を受け、親ロシア派「ドネツク人民共和国」のトップは、「待ちに待った瞬間が訪れた。『ドンバスはロシアだ』と言えるようになった」と述べ、同じく親ロシア派「ルガンスク人民共和国」トップも「『ルガンスク人民共和国』のロシア編入をプーチン大統領にご検討願う」とコメント。

一方、ロシアのメドベージェフ国家安全保障会議副議長は、交流サイトに「ロシアにようこそ!」などと書き込んだようです。

早速、3つの州の親ロシア派などのトップは、編入を要請する書類を公表し、東部2州のトップは、プーチン大統領に会いにモスクワに向かったそうです。

2014年3月のクリミア併合の際には、プーチン大統領は「住民投票」を行ったわずか数日後に、併合を発表しました。

ロシアでは30日に連邦議会が開かれる予定であることから、ここでプーチン大統領が演説し、4州の併合を発表するのではないかと見られています。


2.国連憲章に残忍な方法で違反している


当然ながら、この住民投票についてウクライナおよび西側は反発しています。

27日夜、ウクライナのゼレンスキー大統領はロシアが武力で制圧した地域を併合しようとしているとし、「国連憲章に残忍な方法で違反している……占領地でのこの茶番は、住民投票の真似事とさえ呼べない……ウクライナ国内の占領地にいる人々をロシア軍に動員し、祖国と戦わせようとする、あまりにシニカルな試みだ」と述べました。

27日にウクライナを訪問したフランスのカトリーヌ・コロンナ外相は、投票を「見せかけ」だと批判。

アメリカのブリンケン国務長官は、ロシアによる併合を西側諸国は決して認めないと改めて強調し、ロシアは「素早く厳しい追加的なコスト」を払うことになると警告しました。

また、前日の26日、イギリスのクレバリー外相は「銃口を突き付けられた状態での住民投票は自由でも公正でもない。決して結果を認めない」とする声明を発表。ドネツク州など4州の親ロ派幹部をはじめとする33人と住民投票に関わったPR会社や、政府文書の製造などを担うサービス会社に対し、イギリスへの渡航禁止や資産凍結などに対し新たな制裁を発動しました。

更に、27日に開かれた国連安全保障理事会の緊急会合でも、ロシアの一方的な併合を非難する意見が相次ぎました。

アイルランドが「土地を奪う露骨な行為」、フランスが「茶番」、ノルウェーが「偽りの口実」と表現し、ケニアやメキシコも国連憲章違反を訴え、国連のディカルロ事務次長は、「民意を正しく反映しているとは言えない。国際法上、合法とはみなされない」と住民投票の正当性を否定しています。

中でも、アメリカのトーマスグリーンフィールド国連大使は「絶対に認めない」と発言。会合後、報道陣に対し、ロシアの併合は「無効」との決議案を安保理に提出する用意があると説明し「今週中、遅くとも来週初めには出したい」と明かしています。

対するロシアのネベンジャ国連大使は、住民投票は地域の人々がウクライナ政府を拒んだ結果だと主張。「もし、ウクライナ政権が過ちや戦略上の誤算を認識せず、市民の利益のために動くことを始めなければ、この過程は必然的に進んでいくことになる」とし、さらなる住民投票の実施も匂わせています。


3.戦争党の思い通り


ここにきてロシアが部分的動員やウクライナ東部、南部での住民投票を承認・編入する動きを見せていることについて、アメリカのニューヨーク・タイムズ紙は、「安全保障機関や国防省、右派メディア、政治家などで構成される『戦争党』は、過激なナショナリズムを掲げ、クレムリンのウクライナ政策を弱腰と批判する。動員令と4州併合は、『戦争党』の思い通りの展開だ」と分析しています。

また、拓殖大学特任教授で元時事通信モスクワ支局長の名越健郎氏は次のように述べています。 
・追い込まれたプーチン大統領は、反転攻勢に向けて危険な賭けに出たといえよう。
・4州併合により、ロシアの戦争形態が変わることになる。4州がロシアの一部になると、ウクライナのロシア領攻撃となり、主権国家間の戦争を意味する。
・プーチン大統領は憲法に沿って、「戦争状態」(戒厳令)を宣言し、戒厳令法に基づいて国家総動員令や戦時経済移行を発動するかもしれない。
・2020年の憲法改正では、「ロシア領土の割譲禁止」条項が新たに盛り込まれ、4州をウクライナに引き渡せば憲法違反となる。領土割譲の行為には最高10年の刑を科す刑法改正も行われた。
・ロシアは4州全域をロシアに編入する構えだが、ドネツク、ヘルソン両州でロシア側が実効支配するのは50~60%程度だ。
・ ウクライナ側は住民投票を「違法」と無視し、領土奪還作戦を強化する構えだ。ザポリージャ、ルガンスク両州でもウクライナ軍が失地回復に乗り出した。9月以降、「前線の状況は明らかにウクライナが主導権を握っている」とみられ、各戦線で攻勢に出ている。
・ 米CNNテレビは最近、「ヘルソン州のロシア軍2万人は補給が断たれて孤立し、投降を検討している。ロシア軍の総崩れもあり得る」とする米軍関係者の分析を伝えた。
・ 米国が5月に成立させたウクライナへの武器貸与法は、10月から本格運用され、米国防総省内に武器供与本部が設置される。今後、長射程ミサイルを含む破壊力の強い新鋭兵器が提供されそうだ。
・ 英独両国も現在、自国製兵器を使うウクライナ将兵の訓練を行っている。部隊は近く新鋭兵器とともに戦線に投入され、ロシア軍と対峙する。
・ロシア軍は2月以降の戦闘で7万~8万人の戦死者や負傷者、脱走者を出し、投入兵力の約半数を失ったと欧米軍事専門家はみている。老朽化した兵器や古くさい戦術、低い情報収拾力、士気の低い兵士では、欧米の最新兵器を備えるウクライナ軍に対抗できないだろう。
・ロシアの若手軍事専門家、パベル・ルージン氏は独立系メディアで、「動員は失敗するだろう。30万人も集めることはできない。兵士の戦意も低いし、装備もウクライナ軍に劣る」と指摘する。
・ 併合する4州で苦戦し、退却が続けば、プーチン大統領は領土を割譲することになり、右派勢力や「戦争党」から「憲法違反」と非難されかねない。
・苦境のプーチン大統領が頼るのが、「核の恫喝」だ。プーチン大統領は2月のウクライナ侵攻直後、核抑止部隊の警戒態勢を引き上げるなど核使用に言及したが、その後は「核のどう喝」を封印し、政権要人も核使用を否定していた。今回、再び核兵器使用に触れたことは、大統領の焦りやいら立ちを示している。
・ロシアの軍事専門家、パベル・フェルゲンハウエル氏は筆者らとのオンライン会見で、「破壊力の強い戦略核兵器の使用は、大統領、国防相、参謀総長の承認が必要だが、出力の小さい小型戦術核は、大統領が使用許可を出せば、現場の師団長クラスが攻撃目標や時期を決定できる」と述べ、ロシアでは小型核兵器使用のハードルが低いことを明らかにした。
このように軍事関係者や専門家は、動員されたロシア兵は装備や練度で劣り、士気も低いため、ウクライナ軍に太刀打ちできないだろうとみています。


4.止血には安いタンポンを使え


では、実際の動員兵はどういう様子なのか。

こちらのニューズウィークの記事によると、相当厳しい状況に置かれていることを示す動画がネットにアップされているようです。

ウクライナとロシアの様子を伝えているある投稿者は、1人の徴集兵が、「状況はさらに悪くなる、と警告された。今日は、トイレの使用が制限された……食料と水も与えられていない……まるでどんどん膨張する強制収容所のような様相だ」と不満を露わにする動画を投稿。

また別の動画では、シベリア南部のアルタイ地方にいる部隊の女性上官が徴集兵たちに向かって、「防護具と軍服は支給されるが、それ以外は何もない」とし、薬や止血帯を含めたあらゆるものを買っておけと話しているのを伝えています。

更に、撃たれた傷の治療には、女性用タンポンを使えとし、「銃弾による傷を負った場合は、傷口にじかに詰めれば、膨らみ始める……必ず安いタンポンを買うように……自分の身は自分で守れ」とも話しているそうです。

この動画が真実なのかフェイクなのか分かりませんけれども、本当だとしたら無茶苦茶です。これでは、この上官のいう「自分の身は自分で守れ」をやろうとしたら脱走、あるいは投降することを選ぶのではないかと思ってしまいます。

仮に、ロシア編入を希望している4州に、こんな兵士が送られてきたとして、ウクライナ軍の攻撃から州を守ることが出来るのかとても不安になります。

もし、彼らがウクライナ軍に蹴散らされ、あるいは続々と投降したりするようであれば、ロシアに編入されることで、護って貰えると希望した4州の期待は失望に変わるのではないかと思います。

となると、編入4州を守る為には、名越健郎・拓大特任教授が指摘するように「核の恫喝」しか手がない。核兵器使用のハードルが低くなってしまうのではないかと危惧します。

名越教授によると、出力の小さい小型戦術核は、大統領が使用許可を出せば、現場の師団長クラスが目標を設定できるということですから、その師団が苦境に陥れば、躊躇なく使ってしまいそうに思えます。その歯止めが大統領の使用許可しかないとなれば、小型戦術核はほぼプーチン大統領の胸先三寸で決まってしまうことになります。

4州編入はほぼ間違いないと思いますけれども、そうなった後、かなり厳しい状況になることは間違いないだろうと思いますね。




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