旧統一教会の政府調査に踏み出す岸田政権

今日はこの話題です。
画像

 ブログランキングに参加しています。よろしければ応援クリックお願いします。


2022-10-17 201301.jpg


1.旧統一教会の政府調査方針表明


10月17日、岸田総理は衆院予算委員会で自民党の宮﨑議員の質問に対し、「政府としては、旧統一教会に対する宗教法人法に基づく質問権の行使による事実把握、実態解明などを進めていかなければならない」と調査を実施するため「質問権」を行使することを表明。さらに被害者救済に向けた相談体制の強化、今後に同様の被害を生じさせないための消費者契約の法制度の見直しも進めることも明らかにしました。

岸田総理は「閣僚を含む多くの議員が旧統一教会や関連団体と接点を有していたことが明らかになり、国民の政治への信頼を傷つけたことに対して率直にお詫び申し上げる」と述べました。

この日、岸田総理は、首相官邸で永岡文科相に対し、旧統一教会について「質問権」を行使し、調査を行うよう指示、永岡文科相はその後、記者団に対し「着実に執行できるよう手続きを進める」と述べ、「質問権」の行使について、基準を明確化する考えを示した上で、宗教や法律の専門家などによる会議を設置し、25日にも検討を開始するとしています。


2.霊感商法に関する有識者検討会


旧統一教会の問題を巡っては、消費者庁の霊感商法に関する有識者検討会が行っており、17日に霊感商法などの救済や対策に関する提言を公表した報告書を公表しています。

その報告書から、総論と旧統一教会への対応等について引用すると次の通りです。
1.総論
① 旧統一教会については、社会的に看過できない深刻な問題が指摘されているところ、解散命令請求も視野に入れ、宗教法人法(昭和 26 年法律第 126 号)第 78 条の2に基づく報告徴収及び質問の権限を行使する必要がある。
② 霊感商法等による消費者被害の救済の実効化を図るため、取消権の対象範囲を拡大するとともに、その行使期間を延長するための法制上の措置を講ずるべきである。
③ 寄附に関する被害の救済を図るため、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成 18 年法律第 49 号)第 17 条(寄附の募集に関する禁止行為)の規定を参考にしつつ、寄附の要求等に関する一般的な禁止規範及びその効果を定めるための法制化に向けた検討を行うべきである。
④ 相談対応に関しては、より多くの関連分野の専門家とも連携を図り、特にこどもの立場に立って、児童虐待等からの保護はもちろん、いわゆる宗教二世に対する支援を行う必要がある。⑤ 周知啓発・消費者教育に関しては、消費者被害に関する情報を迅速に公表するとともに、消費生活センターの存在の周知を強化し、また高校生を含めた消費者教育の過程で霊感商法等に関する情報を伝えることが重要である。

2.旧統一教会への対応等
宗教法人法第 81 条に基づく解散命令については、団体としての存続は許容されるとはいえ、法人格を剥奪するという重い対応であり、信教の自由を保障する観点から、裁判例にみられる同条の趣旨や要件についての考え方も踏まえ、慎重に判断する必要がある。

また、宗教法人法第 78 条の2に規定する報告及び質問に関する権限は、解散命令の事由等に該当する疑いがあると認められるときに、宗教法人法の規定に従って行使すべきものとされ、これまで行使した例はない。しかし、これらの消極的な対応には問題があり、運用の改善を図る必要があるとの指摘があった。

旧統一教会については、旧統一教会を被告とする民事裁判において、旧統一教会自身の組織的な不法行為に基づき損害賠償を認める裁判例が複数積み重なっており、その他これまでに明らかになっている問題を踏まえると、宗教法人法における「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をした」又は「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をした」宗教法人に該当する疑いがあるので、所轄庁において、解散命令請求も視野に入れ、宗教法人法第 78 条の2第1項に基づく報告徴収及び質問の権限を行使する必要がある。

このように報告書では、旧統一教会に対し、宗教法人法における「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をした」又は「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をした」宗教法人に該当する疑いがあるとして質問権を使うよう提言しています。


3.関係あった政治家のリークをしてくる可能性


旧統一教会について政府が「質問権」を行使し、調査をすることについて、旧統一教会はテレビの取材に「法人の『解散命令』に該当するような行為は行っていないと認識しております。なお10月14日付で日本政府が『解散命令』の請求は十分慎重に判断すべきと発表しています」との返答しています。

これについて、旧統一問題に詳しいジャーナリストの鈴木エイト氏は、「これちょっとうがった見方かもしれないですけど……10月14日付で確かに岸田総理は閣議決定で『解散命令は難しい』というニュアンスの話をされていた。そこを教団側があえてこだわるということは、今後解散命令にどんどん進む流れになると、関係のあった政治家に関する何かしらのリーク、情報を出してくる可能性もある……ある種の脅しにもとれる、と私はちょっと見てる」と述べ、「かなり政治の中枢のところでも綱引きがあるんじゃないか。岸田さんが一歩進んだことをで、それを面白く思っていない、引き戻そうとしている人もいるはず。そこのパワーバランスがどうなっていくか、今後慎重に見ていく必要がある」と分析しています。

10月14日の「解散命令の請求は十分慎重に判断すべき」とする閣議決定は、立憲民主党の小西洋之参議院議員が質問主意書で「岸田政権は旧統一教会の何が社会的に問題だと考えているのか」とただすとともに、文化庁が宗教法人法に基づく「解散命令」の請求を裁判所に行っていない理由を問うたことに対する答弁です。

答弁書では旧統一教会について「悪質商法や親族の入信に起因する家族の困窮など、さまざまな問題が指摘されている状況を踏まえて、社会的に問題が指摘されている団体だと認識している」とした一方、「解散命令」の請求については「憲法の定める信教の自由の保障などを踏まえれば、所轄する庁の関与は抑制的であるべきで、法人格を剥奪する極めて重い措置の解散命令の請求は十分慎重に判断すべきだ」としています。

答弁書では旧統一教会の「社会的に問題が指摘されている団体」と認識するも、解散命令は慎重に判断すべきだとしています。

一方前述した霊感商法に関する有識者検討会の提言書では、「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をした又は宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をした宗教法人に該当する疑いがあるので、散命令請求も視野に入れた質問権限を行使する必要がある」としているのですね。

つまり、閣議では社会的問題があると指摘されても信教の自由の観点から慎重に考えるべきだとしていたのに対し、今回の報告書は
社会的問題がある疑いがあるので調べるべきだ、と対立していたのですね。

今回、岸田総理が報告書の提言を受け入れて、質問権の行使に踏み出す方針を明らかにしたということは、14日の閣議決定を半ばひっくり返している訳です。


4.喫緊の課題は経済問題


果たして、政府の質問に旧統一教会がどう答えるのか分かりませんけれども、たとえ質問したとしてもそれで岸田内閣支持率が回復するかどうかは分かりません。

FNNが10月15~16日に行った全国電話世論調査では、岸田内閣を「支持する」は、政権発足以来最低だった9月調査より1.4ポイント減って40.9%。「支持しない」は1.9ポイント増えて51.9%。9月調査に続いて不支持が支持を上回りました。政府関係者からは、「支持率が厳しい。下げ止まらない」、「浮揚するきっかけが思いつかない」などの声が上がっています。

また、岸田総理の旧統一教会をめぐる問題への対応を「評価する」は17.5%。「評価しない」は72.7%と、評価しない人が7割を超え、旧統一教会との接点が次々と明らかになった山際経済再生相が「辞任するべきだ」は69.6%で、こちらもぼぼ7割に達しています。

この状況では、質問の一つ二つで世論ががらっと変わるとは思えません。政府関係者は「解散命令の請求は、できれば大したものだが、他への波及が大き過ぎる」と話したそうですけれども、確かに解散命令程のインパクトがあれば、多少変わるかもしれません。

ただ、その時は、公安の監視対象になっている団体には解散命令を出さないのか、と他へ延焼する危険もあります。

そもそも、旧統一教会問題など、現在、山積する問題の一つに過ぎません。

嘉悦大学教授の高橋洋一氏は、喫緊の課題は経済問題であり、外為特会の評価益を吐き出すなど、真水で30兆円規模の物価対策を行うべきだと提言していますけれども、筆者もそう思います。

仮に、旧統一教会に解散命令を出して解散させ、一時的に支持率が上がったとしても、それが長続きするとも思えません。なぜなら、政府が必要かつ的確な手を打ち続けなければ現状維持できないと思うからです。

エネルギー問題、食糧問題、安全保障と直ぐにやらなければならないことばかりです。特に経済問題はそうです。

岸田総理は14日に総合経済対策の実施を表明しましたけれども、今日、出して明日効果がでるものでもありません。けれども、10月から色んなものが値上がりを始めています。今の時点で、現状維持できていないのですね。少なくとも経済対策で10月以前の状況に戻らないと中々支持率も上向かないのではないかと思います。

岸田総理も、あまり旧統一教会問題ばかり気にしていると、もしそれが片付いたとしても、その時にはどうにもならない状態になっているかもしれないことは頭の片隅に入れておいてもよいのではないかと思いますね。


  twitterのフリーアイコン素材 (1).jpeg  SNS人物アイコン 3.jpeg  カサのピクトアイコン5 (1).jpeg  津波の無料アイコン3.jpeg  ビルのアイコン素材 その2.jpeg  

この記事へのコメント