新たな総合経済対策と姑息な財務省

今日はこの話題です。
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1.新たな総合経済対策


10月28日、政府は新たな総合経済対策を閣議決定しました。

財政支出39.0兆円程度、事業規模71.6兆円程度で、うち、補正予算の一般会計歳出は29.1兆円となっています。

対策では、電気やガス、ガソリン代などの高騰に対し、標準的な家庭で来年1月から9月までの総額で一世帯あたり4万5000円程度の負担軽減策を導入します。また、妊娠した女性に10万円相当の出産準備金を支給する施策なども盛り込まれます。

また、「人への投資」の関連政策を5年間で1兆円に拡充するとしています。

官民が連携して社会人が学び直す「リスキリング」をすすめ、転職までを一気通貫で支援する制度を新たにつくり、成長性のある分野に労働力を移動するための指針を来年6月までにとりまとめるとし、更に、年末に策定する「資産所得倍増プラン」の一環として、「NISA」の抜本的拡充や恒久化、個人型確定拠出年金「iDeCo」の改革などについて検討し、来年度の税制改正で結論を得るとしています。

これらは、10月18日に党政務調査会が政府に提出した提言がもとになっています。

提言は「(1)物価高騰の克服」、「(2)円安への対応」、「(3)構造的な賃上げと成長のための投資・改革の実現」、「(4)国民の安全・安心の確保」の4つを柱とするもので、基本的考え方として、「昨今、国難、歴史的難局という言葉がよく聞かれるが、この状況を国難と呼ぶからには、その対策も、国難に打ち勝ち、国民の安心に足る規模と内容とが重要である。今般の経済対策の策定、補正予算の編成に当たり、必要な施策については、躊躇することなく積み上げる」という基本姿勢をはじめに確認する。」と謳っています。

羽生田政調会長は国会質問で「必要なのは、言葉でなく抑止力」と述べましたけれども、国難というからにはそれに見合った対応をするべきだ、という提言の文言にも羽生田政調会長の思いが反映しているようにも感じられます。




2.岸田の電話


18日に提出された提言案をうけ、政府は政調に対策案を提示。政調はこれについて24日と26日に全体会合をして議論しました。

26日の会合には100人以上の議員が出席し、熱い議論が交わされたようです。40人近くの議員が発言し、その殆どは、補正予算の規模を大きくして国民生活に対する不安を取り除いてほしいという意見でした。予算規模は最低でも30兆円、本来なら50兆円規模が必要であるという意見も数多く出されたようです。

けれども、この時、事件が起こりました。

萩生田政調会長の携帯電話を鳴ったのですね。相手は岸田総理でした。

慌てて別室に移った萩生田政調会長に岸田総理は「26兆円でいいよな?」と確認したのだそうです。

これに萩生田政調会長は「総理、待ってください。規模感ついては、今まさに議論している最中です。なんで今、そんなことを言わなきゃいけないのですか」と答えました。

会議の場に戻ってきた萩生田政調会長が、岸田総理からの電話のことを話すと会議は、あちこちから「ふざけるな」。「なに考えてるんだ」、「まだ何も決まっていない」と怒号が飛び交い大紛糾。同時に確認を入れた岸田総理の行動に対しては積極財政派からも納得の声が上がりました。

ジャーナリストの須田慎一郎氏によると、この日の14時39分頃、官邸に鈴木財務大臣、茶谷財務事務次官、新川主計局長が訪れ、岸田総理に補正予算は25兆1000億でどうですかと報告。岸田総理もそれで握ったらしいのですけれども、一応、岸田総理が25兆円でいいのか羽生田政調会長に連絡を入れたというのが真相だったようです。一部には、鈴木財務相は25兆円で政調会長も了解済みと報告したという噂まで出る始末。本当であればとんでもないことです。

怒り心頭の萩生田政調会長は、会議後、新川主計局長を党本部に呼び出して「ふざけるな。何勝手なことをやってるんだ」と激しく𠮟りつけたのだそうです。新川主計局長はこのままではまずい。財務省が槍玉にあげられると慌てて予算を積み上げ、29兆1000億という予算案を作ってきたのだそうです。




3.姑息な財務省


もし、岸田総理が羽生田政調会長に確認の電話を入れなかったら、あのまま財務省案が通ってしまったのかと思うとぞっとするのですけれども、18日、羽生田政調会長は、党政務調査会の提言を岸田総理に手渡した後、記者団に昨年冬の補正予算と同等の30兆円規模を目指して「しっかり積み上げていきたい」と述べていましたから、おそらく30兆円という数字はその時に岸田総理に伝えていたものと思われます。

おそらく岸田総理にも30兆円という数字が頭に残っていたのでしょう。だから確認の電話を入れた。このあたり、多少なりとも岸田総理の誠実さを感じないでもありません。

今回の財務省の振舞いは姑息に過ぎると思いますけれども、このやり口は何も今回だけではないようです。

ある自民党閣僚経験者は「アベノミクスで積極財政を推し進めた安倍さんが財務省を警戒していたのは有名ですが、その安倍さんが『一生の不覚』と言っていた出来事がありました。'15年に閣議決定した『骨太の方針』に、財務省が小さな但し書きで『社会保障関係費は過去3年間の増加が1.5兆円となっていることを踏まえ、その基調を継続させる』『国の一般歳出は過去3年間の増加が1.6兆円となっていることを踏まえ、その基調を継続させる』という二つの項目を書いていた。要するに『予算1.6兆円引く社会保障関係費1.5兆円で、社会保障費以外は3年間に1000億円しか予算は増やしませんよ』という理屈をまぎれ込ませていたのです。安倍さんはこれに気付かず閣議決定してしまった。亡くなる直前の会議でも『私は知らぬ間に財務省に財政規律を閣議決定させられた。もちろん責任は私にあるが、誰も気付かないような書き方をして、財務省はあまりに不誠実だ』と憤っていました。この制約は、岸田政権の『骨太の方針』でもまだ生きています」と述べています。

これについて筆者は6月7日のエントリー「骨太の方針2022に仕込まれた財務省の毒」で取り上げましたけれども、要するに、財務省は、分からないように書いて官邸を騙しているという訳です。




4.生かさず殺さずでいこう


昨年の総裁選で岸田総理は自身のユーチューブチャンネルのライブ配信に出演し、インターネット上で募った質問に答えたことがありました。

その中で、「『財務省の犬』『財務省のポチ』と言われているがご存じですか」と質問された岸田総理は「ご指摘は謙虚に受け止めますが、正直言って何でだろうなと…」と答えていました。

岸田総理が『財務省の犬』なのかどうかは脇に置くとしても、周囲が財務省だらけというのは皆が知る事実です。

前述した、茶谷栄治財務事務次官を始めとして、主計局次長から首相秘書官に入った宇波弘貴氏。木原誠二官房副長官、岸田派幹部で自民党税調会長の宮沢洋一氏は、旧大蔵省出身者で、彼らが経済政策を一手に引き受けていて、官邸スタッフによると、官邸をもっぱら牛耳っているのは、茶谷栄治財務事務次官なのだそうです。

ある岸田派議員は「岸田総理は同郷の宮沢さんに頼り切りだし、木原さんも大先輩には何も言えない。宮沢さんがこの夏の参院選で改選された後、財務官僚は宮沢詣でに行列を作っていました。宮沢さんも議員を次々に呼んで『税制は政治の要だぞ』などとしきりに講釈している。財政に関することは全部オレを通せ、というわけです……総理は経済の知識がないから、財務省との折衝を宮沢さんと林さんに任せているんです。今回打ち出したNISA恒久化やガソリン補助金は一見、税収が減って支出が増える財務省が嫌がりそうな政策ですが、財源が予備費なので痛くも痒くもない。岸田さんは『オレは財務省の言いなりじゃないぞ』と思っているかもしれませんが、実態は全部財務省に振り付けられて、適度に独自色が出るような形で踊らされているわけです……財務官僚は『岸田ほどやりやすい奴はいない』と言っている。抵抗してばかりの安倍さんや菅さんがようやく消えた。岸田総理は生かさず殺さずでいこう、と」などと述べています。


5.平易な言葉になるまで何度も書き直せ


こういうのを聞くにつけ、財務省は専門知識と専門用語を羅列して分からない者どもを煙に巻き、好き勝手やっているのではないかとさえ思ってしまいます。

逆にいえば、自民党の政調や部会は、そういう政策資料について、平易な言葉になるまで何度も書き直させ、それこそ中学生にでも分かる文章にならない限り受け取らないと突っぱねてしまえばいいのではないかと思います。

あるいは、そういう分からない言葉を読み下せる人物。例えば、嘉悦大学教授の高橋洋一氏にでも添削してもらって100点とるまでやり直させてもいいのではないかとさえ。

そうすれば、これまでチンプンカンプンだからと、財務省の言い分をそのまま垂れ流していたマスコミとて、財務省が何をしようとしているか分かるようになりますから、きちんと内容に踏み込んだ報道が出来るのではないかと思います。

その方が、旧統一教会がウンタラなんてことに時間を費やすより何百倍もマシです。

マスコミも権力と闘う気があるのなら、財務省のような権力とも大いに闘っていただきたいと思いますね。


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