岸田総理の行動原理とは何か

今日はこの話題です。
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1.連日会食する岸田総理


10月31日、岸田総理は、東京・東麻布の中華料理店で二階俊博元幹事長と会食しました。二階元幹事長との会食は今年4月1日以来、約7ヶ月ぶりのことで、岸田派の根本匠事務総長と二階派の林幹雄会長代行、自民の元宿仁事務総長が同席しました。

内閣支持率が低下する中、政権運営への助言や協力を求める狙いだったと見られていますけれども、出席者によると、二階氏が首相に「政権をしっかり支えるから、思い切ってやった方がいい」と激励する場面もあったようです。

昨年夏の自民党総裁選で、岸田総理は「党役員は1期1年、連続3期までとすることで権力の集中と惰性を防ぎたい」と発言し、二階氏と険悪になるなど、必ずしも両者の関係は良いとはいえないのですけれども、今回の会食では、岸田総理側から声を掛けたそうです。

勿論、その背景には、政権運営に対する自民内の不満の高まりがあります。旧統一教会との接点が判明した山際・前経済再生相を更迭したものの。自民幹部からは「後手に回った」との受け止めが大勢のようです。

総理周辺は「政権安定のため、二階氏との対立は避けなければならない」と見ているようで、配慮せざるを得ないという事情があります。

更に、29日には麻生副総裁と東京都内のホテルで1対1で会食しています。麻生副総裁とサシで会食するのは昨年10月の政権発足後初めてのことで、岸田総理は、総理経験者の麻生副総裁の存在を「ありがたい」と周囲に漏らすなど、頼りにしているようで、麻生副総裁も手紙や電話などで助言をしているそうです。


2.連携を密にしていきましょう


また、岸田総理は連立を組む公明党にも気を配っています。

28日夜、岸田総理は、松野博一官房長官と、公明党の山口那津男代表や石井啓一幹事長、高木陽介政調会長ら公明党幹部と東京都内の日本料理店で会食。会食では、この日閣議決定した29兆円の総合経済対策の着実な実施や年末の安全保障関連3文書の改定に向けた与党協議のほか、旧統一教会問題への対応や霊感商法などの今後の被害救済に向けた与野党協議も話題になったようです。

会食後、山口代表氏は記者団に「いろいろお話しさせていただきました。決定ができてよかったですねという話をしました」と答えています。関係者によると「会合は和やかな雰囲気で行われ、総理の機嫌は非常に良く経済対策をまとめてほっとしていた」とのことで、経済対策の取り纏めにあたっては、それなりにプレッシャーとなっていたのかもしれません。

岸田総理は公明にも心配りしたのは、旧統一教会を巡って、宗教法人法に基づく解散命令の要件の法解釈について公明に事前説明せず、公明党内から「丁寧さが足りない」との不満も上がっていたからだと見られています。

岸田総理はこの会食で「連携を密にしていきましょう」と呼びかけたそうですけれども、通常、連立与党との交渉窓口は幹事長が担当したかと思います。それが総理自ら出張らなければなかったということは、意外と公明との仲が上手くいってないのかもしれません。


3.麻生副総裁の訪韓


11月1日、自民党の麻生太郎副総裁が11月2日から3日までの日程で韓国を訪問し、尹錫悦大統領と会談する方向で調整していることが明らかになりました。

麻生副総理は尹大統領といわゆる徴用工問題について議論し、差し押さえられた日本企業資産の「現金化」は認められないとする日本側の立場を重ねて強調する一方、軍備拡大を続ける中国や弾道ミサイルの発射を繰り返す北朝鮮の脅威に対峙するため、自衛隊と韓国軍の連携の正常化に向けて協議すると見られています。

岸田総理は29日に麻生副総裁と会食していますけれども、おそらく、この席で訪韓について議論したものと思われます。

岸田総理は、今月インドネシアで開かれるG20サミットなどの場で尹大統領との会談を検討しているそうですけれども、今回の麻生副総裁の訪韓がその為の露払いだったとするならば、麻生副総裁は岸田総理の名代として外相役をやることになります。

だとすると、今回訪韓するのが、なぜ林芳正”外相”ではないのかという疑問も湧いてきます。

一つ考えられることは、韓国との会談内容が、林芳正"媚中"外相経由で中国に流れることを避けたのではないかという点です。

林外相の"媚中"ぶりは既に広く知られているところですし、アメリカは相当警戒しているとも囁かれています。

あるいは、アメリカからの要請か何らかの情報を得て、韓国と連携して対処しなければならない事態が起こったとも考えられます。


4.総理の孤独


内閣支持率が低下する中、与党に岸田総理を支えようという空気がないという指摘もあります。

10月30日、ABEMA「ABEMA的ニュースショー」に出演したジャーナリストの青山和弘氏は、岸田総理の周辺の人物は「岸田総理が何を考えているか本当に分からない。総理の突然の判断に振り回されている感じだ」と漏らしていると述べ、「飲みに行っても、記者会見と同じようなことしか言わずに、“この人本当はどういうふうに思っているのかな?”というのがスタッフさえ分からない状況」と指摘しました。

また、旧統一教会をめぐる問題に関して、岸田総理が旧統一教会と関係を持たない私が責任を持って問題解決していきたい、と断言したことを取り上げ、「解散命令を出すのは裁判所なので、岸田さんがいくらやると言っても、できない可能性もある……被害者救済法案も野党も一緒に話し合うことにしちゃったので、野党側の抵抗…野党は政局も絡めてきますので、非常に危険な状態」とコメントしています。

更に、青山氏は自民党の閣僚経験者への取材で、松野官房長官が全く機能していないという声も聞かれたと紹介。松野氏の入閣について「自分が総裁選に勝つために、応援してくれた安倍さんに配慮する形で、安倍派の松野さんを入れた」と述べ、そのため松野氏には、「岸田さんを体を張って支えようという気がない。仕事は淡々と誠実にはやる方なんですけど、矩を超えて一生懸命やろうという姿が見えない……とりまとめ役なのに、機能していないので、岸田さんが答弁を取り間違えちゃって翌日、撤回しちゃったり、目配せが利いていない」とも指摘しています。

青山氏は、自民党内も「助けに行こうという機運がなくなっちゃって、ただ見てるだけという状況になっている」という空気が漂っているとし、官邸の機能不全状態に「そんな場合じゃないんですけどね。この日本の国難の状況は」と警鐘を鳴らしています。

これが本当であれば、政権末期の様相を呈しているという他ありません。

筆者は、7月12日のエントリー「安倍ロスの衝撃と追われる者」で、安倍元総理を失った岸田総理は、今後真の意味で総理の重圧を感じてくるのではないか。全ての最終責任は総理の肩に掛かってくる。誰も助けてくれず、孤独感を覚えるのではないか、と述べたことがありますけれども、あるいは、今まさにそのような状態になっているのかもしれません。


5.リアクションのバランサー


10月8日、『NewsBAR橋下』に出演した嘉悦大学教授の高橋洋一氏は、「岸田さんの頭の中は人事のことしかない。政策はほとんどない」とした上で「政策があって人事をするタイプと、人事しかない人がいる。岸田さんは後者だ。参院選のあとは改造人事で頭がいっぱいだから、すべてそこに結びつけて行動していた。ひどいなと思ったのは、中国が日本のEEZ内に(ミサイルを)撃ち込んだ時、国家安全保障会議(NSC)を開くのが常識だが、事務方の人に聞いたら『開こうと思っていたけど、改造人事があるから動けなかった』と。本当がどうかわからなかったのでいろいろな人に聞いたけど、ほぼそうだった。こんなのは見たことない」と述べています。

これを受けて橋下徹・元大阪府知事は「安倍さんは、集団的自衛権の限定的行使の時に法制局の長官を引っ張ってきて、政策を実現するための人事だとして批判を浴びたことがある。ただ、安倍さんが例外だったのであって、党をまとめるための調整があった今までの自民党のスタイルに戻ったのかなと思うが、やはり政策を実現するための人事をやってほしい」と答えると、高橋氏は「私がいた小泉政権と安倍政権、菅政権はみんな先に政策。“この政策をやりたいから、これを“とすごくわかりやすかった。例えば、小泉さんは郵政民営化というと『竹中平蔵』と言うわけだ。政策があっての人事なんだけど、岸田さんは違う……私は政策なんか何もないと思っている」と手厳しく批判しています。

国家運営している以上、100%政策がないとは思いませんけれども、確かに高橋教授のいうように、「この政策をやりたい」というのが岸田総理から見えてこないのは否定できません。。小泉元総理の「郵政民営化」や安倍元総理の「戦後レジームからの脱却」といった、その総理を象徴する明確なスローガンは何かと問われても出てこないのですね。

新しい資本主義だの、成長と分配の好循環だの、インベスト・イン・キシダだの、数多くの言葉を踊らせていますけれども、どれも岸田総理を象徴するものとはいえません。

3月20日のエントリー「現状維持第一の岸田政権の危険度」で述べましたけれども、岸田総理の動きは、自分からアクションを起こすのではなく、何か事が起こってから、あるいは要請や提言を受けてから反応するという「リアクション」の政治スタイルの気がしてなりません。

ところが、他人の要請や提言は、人それぞれで、多種多様です。それこそ要請と要請が相反してぶつかることだってあります。

そんなとき、岸田総理は「足して2で割る」ではないですけれども、ちょうどよい塩梅の「着地点」を見つけて、バランスを取っていく選択をする傾向があるのではないかと見ています。

内閣人事が派閥均衡型であるのは元より、先日の経済対策も、当初財務省寄りの緊縮予算だったのが、羽生田政調会長に押し込まれて増額しています。

9月20日、岸田総理は国連本部での一般討論演説で、ロシアのウクライナ侵攻に対し「国連憲章の理念と原則を踏みにじる行為だ。断じて許してはならない」と名指しで厳しく批判しました。

岸田総理は、対ロシアに限っては、やけに強硬発言し、G7や、対米追従姿勢が目出つ印象があるのですけれども、もしかしたら、林外相が"媚中"であるが故に、アメリカその他西側各国から疑念の目で見られていることを感じ取っていて、それとのバランスを取るために、殊更、ロシアに対して強硬姿勢を取って見せているのではないかとさえ思えてきます。

ただ、バランスを取るだけのリアクション政治では、状況に流され、ただ対応していくだけにもなりかねません。それに加えて誰も助けてくれない「孤独」な状態に岸田総理があるのだとすると、それで正しい判断が出来るのか非常に不安です。

こうしたいという政策がないまま、バランスを取ることだけを選択し続けると、その場限りの政策となり、ぐるぐると迷走することだってあるからです。

そう考えると、今の岸田総理には、しっかりとした国家観を持った上で先を見通せる人が傍にいて助言する必要があるのではないかと思いますね。



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この記事へのコメント

  • 深森

    岸田総理の行動原理、「安倍元総理を殺されたことへの敵討ち」要素が大いに入っていますね。
    2022年11月03日 07:52