北朝鮮のミサイルと五段階の伝言ゲーム

今日はこの話題です。
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1.北朝鮮のICBM


11月3日、北朝鮮は朝7時台から8時台にかけ、少なくとも3発の弾道ミサイルを、東方向に向けて発射しました。落下したのはいずれも日本の排他的経済水域(EEZ)外で、飛翔距離等については、防衛省は次の推定を発表しています。
1)7時39分頃、北朝鮮西岸付近から発射し、最高高度約2000km程度で、約750km程度飛翔し、朝鮮半島東側の日本海に落下。当該ミサイルはICBM級の可能性があります。
2)8時39分頃、北朝鮮内陸部から発射し、最高高度約50km程度で、約350km程度飛翔し、朝鮮半島東岸付近に落下。
3)8時48分頃、北朝鮮内陸部から発射し、最高高度約50km程度で、約350km程度飛翔し、朝鮮半島東岸付近に落下。
なお、日本列島を超えて飛翔する可能性があると探知したものについては、その後、当該情報を確認したところ、探知したものは日本列島を超えず、日本海上空にてレーダーから消失したことが確認されました。
防衛省は北朝鮮の弾道ミサイル発射について、関連する安保理決議に違反するものとして強く非難し、アメリカとも緊密に連携して、情報の収集・分析及び警戒監視に全力をあげるとし、浜田防衛相は「北朝鮮はきのうも23発以上のミサイルを発射し100発以上の砲撃を行ったとの情報に接しており、防衛省として緊張感をもって警戒監視にあたっていく」と述べています。

また、岸田総理も官邸で取材に応じ、「私のほうからは国民の皆さんに対する情報提供、安全の確認など指示を出している。これまでにない高い頻度でミサイルの発射が繰り返されている。断じて容認することはできない。朝鮮半島において緊張の高まりをみてとれることから、早急に国家安全保障会議を開催したいと考えている」と述べていますけれども、連日連夜のミサイル発射を目の当たりにしている国民としてみれば「考えている」ではなく、「国家安全保障会議を開催し、関係省庁に支持を出した」という答えを聞きたいと思ってしまいます。

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2.火星17型は失敗


今回、北朝鮮が長距離弾道ミサイルなどを発射したことについて、アメリカのホワイトハウスは声明で「北朝鮮によるICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射を強く非難する……今回の発射は今週、相次いだ弾道ミサイルの発射とともに国連安保理の複数の決議に違反し、言語道断だ。不必要に地域の緊張を高め安全保障をめぐる状況を不安定にするものだ」と北朝鮮を非難し、国際社会に対して連携を呼びかけました。

また、アメリカのインド太平洋軍も「われわれは弾道ミサイルの発射を認識しており、韓国や日本などの同盟国と緊密に連絡をとりあっている。今回の発射はアメリカの国民や領土、それに同盟国に差し迫った脅威を与えるものではないと判断しているが引き続き、状況を注視していく」との声明を発表しています。

このようにアメリカは北朝鮮が発射したミサイルにICBMが含まれていたとしているのですけれども、韓国の公共放送KBSは、このICBMを「火星17型」と推定し、飛行に失敗した模様だと伝えています。


3.訂正されたJアラート


今回の北朝鮮のミサイル発射について、政府は日本列島を越える可能性があるとして、宮城・山形・新潟の3県にJアラートを発出し、警戒を呼び掛けたのですけれども、結果として日本列島を越えず 日本海上空にて消失したことが確認されたとして、Jアラートを訂正しています。

これについて、「Jアラートの情報が間違っていたのではないか」と記者から問われた松野官房長官は「ミサイルが発射されたその軌道上の計算において、日本上空の通過の可能性があればその時点でJアラートは発令するもの……Jアラートは、国民にミサイルの落下物などの危険性を、速やかに知らせるために発令するもの」と答えていますけれども、確実に落下時点が計算できるまでまってからJアラートを出しても、逃げる時間も対応する時間もありませんから、発射直後の早い段階でアラームを出すのは正しい対応だと思います。

ただ、実際は、速やかにアラートが出た訳ではなく、ミサイルが日本上空の通過予想時刻の後になってから出されました。当然ながら、これは後で問題となりました。

この件について、自民党の会議で批判が相次いだそうですけれども、自民党の小野寺元防衛相によると、防衛省から「飛翔体の消失についての評価や検討に時間がかかり、Jアラートを出すのが遅くなった」との説明があり、これに対し、自民党議員からは「国民への伝達は正確性よりも迅速性を重視すべきだ」などの批判や注文が出たそうです。

さらに、政府からは、自治体に電子メールで情報を一斉送信する「エムネット」でも、本来、記載すべきだった県名を入力しないまま「ミサイルがの方向に発射された」といった文面を、そのまま送信してしまったというミスが相次いでいたことが報告されています。


4.五段階の伝言ゲーム


今回は被害がなかったからよかったものの、もし、本土に落下する軌道だったとしたら、ミサイルが上空にきてからJアラートを出しても間に合いません。

政府は、今回の経験を活かして、次回からはもっと早く連絡するようになるとは思いますけれども、そもそも連絡経路そのものに無駄があるのではないかという指摘もあります。

経済評論家の上念司氏は、現時点では、まずミサイル発射についての情報を「情報本部」がキャッチした後、防衛省に伝達。そして、防衛省から内閣危機管理室に連絡されてから、消防庁へ、そして最後に各自体に伝えられるという「5段階の伝言ゲーム」で流れるのだそうです。



仮に、情報本部・防衛省・危機管理室・消防庁・各自治体それぞれで1分づつ消費したら、それだけで5分かかってしまいます。10分や15分で着弾するミサイルに対し、5分のロスは流石に大きすぎます。

上念氏は、伝達経路を見直して情報本部から同時に消防庁、防衛省、内閣危機管理室に流せばどうかと提案していますけれども、確かにそうすることでアラートを出すまでの時間は短縮できます。

国民の危機意識を高めるためにも、弾道ミサイルと着弾までの時間はもとより、日本の防衛体制の実情についても、政府はもっと広報し、国民に周知徹底させることを考えるべきではないかと思いますね。

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