中国がイメージ向上できない3つの理由

今日はこの話題です。
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1.中国に対する世界各国の印象


9月28日、アメリカのシンクタンク、ピュー・リサーチ・センターは中国の習近平政権下の中国に対する世界各国の印象について調査した結果を公表しました。

それによると、調査対象19ヶ国のうちアメリカなど10ヶ国で、中国の印象を「好ましくない」と回答した割合が過去最高を更新・継続。トップは日本の87%で、オーストラリア86%、スウェーデン83%、アメリカ82%、韓国80%など先進国を中心に悪化しています。

更に、オランダ(75%)、カナダ(74%)、ドイツ(74%)、英国(69%)、フランス(68%)、イタリア(64%)、スペイン(63%)などでも「好意的でない」との見方が広がる一方、ギリシャ(「好意的」44%、「好意的でない」50%)やイスラエル(「好意的」46%、「好意的でない」48%)では、見方の偏りが小さくなっています。

日本人の中国に対する印象は、2000年代初頭から過去20年間、世界の中で最も否定的な国の1つとして推移しています。尖閣諸島を巡る問題が深刻化した2013年には、中国を好ましく思わない日本人は93%に上ると、2020年以降に状況はまた悪化し、2021年時点で中国に好意的な日本人は12%しかいません。

アメリカは、2011年時点では、「好意的」42%、「好意的でない」40%と、どちらかと言えば中国に好意的だったのですけれども、2012年以降、好意的でないアメリカ人のほうが多くなりました。特に2018年以降、中国に対する印象は急激に悪化。2021年時点で中国を好意的に捉えているアメリカ人はわずか16%にとどまっています。

ピュー・リサーチ・センターは、中国を脅威と感じる国々が増えたとしている。習主席が中国の軍事力や経済力を強化したことで、これらが深刻な問題と捉えられるようになったと分析。武漢ウイルス禍で中国に対する否定的な見方が広がったほか、アメリカやカナダ、オーストラリア、韓国、日本、欧州諸国では、中国が人権を尊重していないことを問題視する声が過半を占めています。

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2.習近平の中国イメージ向上命令


調査報告の主席執筆者ローラ・シルバー氏は「先進国全体で、習氏の国際問題対応への信頼度は極めて乏しく、中国全般への見方も非常に否定的だ」と指摘していますけれども、こうした対中世論の悪化は、習近平指導部も気にしているようで、昨年あたりからイメージアップに努めるよう方針を打ち出しています。

昨年5月31日、習近平主席は共産党の最高意思決定機関である中央委員会政治局で、中国の国際的イメージの向上を厳命しました。

新華社通信によると、その主な内容は次の通りです。
コミュニケーション手段(マスメディアやSNSなどを指すと思われる)を発達させ、中国に関する国際的な言説に、中国の声を届かせること。
中国共産党が中国人民の幸福のみを追求していることを海外に広く知らしめること。
中国の活動を説明できる、中国自身の言説やナラティブを育成すること。
信頼され、愛され、尊敬される中国のイメージを作るために、中国文化の海外輸出を加速させること。
中国が国際的な問題にこれまで以上に責任と役割を果たすこと。
一極主義と覇権主義(アメリカを指す)に反対すること。
人の往来を盛んにすることで中国を理解する友人の輪を大きくすること。
習近平指導部になって、他国に高圧的に接する、いわゆる「戦狼外交」を繰り広げておきながら、よくもまぁこんなことを言えるものだと思います。

9月29日、中国外務省の報道官は定例会見で、この調査結果について問われると、「少数の先進国で行われた調査であり、世界人口の90%近くを占める途上国の見解を代表していない……習主席は14億人の国民から高く支持されている指導者であり、国際社会でも名声を得ている」と言い訳していますけれども、やはり先進国は、素直に中国を「好ましくない」と思っているという結果になりました。


3.信頼され、愛され、尊敬されない国


習近平指導部は「信頼され、愛され、尊敬される中国のイメージ」を作るために、色々な方策を厳命していますけれども、そこに”嘘”や”押し付け”があればそのイメージも台無しになります。

なぜなら、そこには、文化や情報を受け取る側の「自由」が存在する余地をなくしていくからです。

11月2日、中国証券監督管理委員会の方星海副主席は、香港で開催中の国際金融サミットに動画メッセージを寄せ、「日々の職務で外国の投資家と接しているが、中には中国の出来事に関する国際メディアの報道を読み過ぎている人がいると懸念している……多くのメディア報道は、つまり、中国をあまりよく理解しておらず、近視眼的でもある。国際メディアを読み過ぎない方がいい」との見解を示しました。

中国の四大商業銀行の一つである中国銀行の劉金頭取は、不動産市場の負債問題に関するコメントの中で方氏の発言に触れ、「過度に心配することはない。方氏が言ったように、否定的な報道にはあまり接しない方がいい」と述べた。

過去1年半の間に中国の不動産部門では巨額の債務不履行が表面化し、多くは国際メディアが先駆けて報道していますけれども、中国の国内メディアは政府統制下にあり、否定的な論調や重要問題に関する報道を封じるための検閲が広く行われていることは事実です。

自由のない国からの検閲された情報をいくら発信しても、それで自由のある国から「信頼され、愛され、尊敬される」ことは難しいのではないかと思います。


4.中国の海外警察サービスセンター


9月12日、スペインの非政府組織(NGO)「セーフガード・デフェンダーズ」が、「110 overseas(海外の110番)~常軌を逸した中国の国境を超えた取り締まり」と題された報告書で、中国が国際法や他国の主権を無視して、アメリカや欧州、アフリカ、南米、日本などに「海外警察サービスセンター」と呼ばれる独自の警察拠点を築いていたことが明らかになりました。

報告書によれば、中国福州市と青田市の2つの公安当局が、5大陸21カ国で計54の警察拠点を構築。アイルランドのダブリン、オランダのロッテルダムとアムステルダム、イギリスのロンドンとグラスゴー、スペインはバレンシアとマドリードに3ヶ所、アメリカ、カナダ、ナイジェリア、そして日本も東京都千代田区に拠点が置かれているとしています。

最初は公安当局が海外で不法な活動をしたり、逃亡した詐欺犯などを摘発する活動が発端だったようなのですけれども、やがて直接、海外に拠点を設けて、容疑者に接触し、中国に帰国するよう「説得」する活動に発展した。もちろん、中国共産党の”説得”は、ほとんど”脅迫”と同義です。

たとえば「中国に帰らなければ、両親や親族が大変な目に遭うぞ」と脅し、応じなければ、実家に「ここは詐欺の巣窟だ」などと記した看板を立てられ、警察の捜査対象であることを付近の住人に知らせる、あるいは子供を学校に行かせない、といった手段が使われるようです。

親族は警察に協力する義務を負っており、協力しなければ、彼ら自身が処罰の対象になり、親族が住む家の電力や水道が遮断される場合もあるそうです。犯罪に関連する不動産や資産は当然のように、没収されました。

その結果、2021年4月から22年7月までの間に23万人の中国人が「自発的に帰国」し、司法処分を受けたとされています。

この報告書は10月25日にオランダのメディアが報じ、その後、BBCなども追随して、世界に波紋を広げました。オランダ外務省の報道官は「中国警察の非公式出先機関が存在するのは違法」と語り、当局が調査に乗り出しています。

中国側は「海外在住の中国人のための行政サービス・ステーション」と否定していますけれども、中国は自分が勝手に作った法律を、外国にいる外国人にも適用して、他国の主権を侵害しています。これで「信頼され、愛され、尊敬される中国」などと宣っているのですから、臍で茶が湧くどころか、蒸発しそうです。


5.中国がイメージ向上できない3つの理由


国際政治学者の六辻彰二氏は、中国が情報発信を通じて国際的イメージを向上させることには三つの限界があると指摘しています。それは次の通りです。
(1)中国メディアは政府の影響が強すぎるため、中国のネガティブな側面にほとんど触れず、その経済成長や国際協力(最近でいえばワクチン外交も含まれるだろう)などを美化した内容になりやすい。どの国であれ、自国を過度に賛美する者は他者から信頼を得にくい。

(2)アメリカが説く「自由」や「民主主義」(それが多少なりともバイアスの強いものだったとしても)と比べて、中国が発する情報には一般市民にまで届くメッセージや理念に乏しい。また、中国文化はアジア以外で馴染みが薄い。そのため、「中国の魅力」として宣伝材料になるのは経済成長の実績などに限定されるが、それを伝えられても、中国との交流で利益を受けるエリート層や知識層以外の一般市民にとって、中国へのイメージを向上させるきっかけにはなりにくい。

(3)中国企業が世界中に拡散するにつれ、中国政府の指令が末端にまで及びにくくなっており、中国政府の意向と無関係に中国企業が進出先の法令を無視するなどして、中国全体のイメージを悪化させるきっかけになりやすい。
六辻氏は、このような構造的限界は、習近平体制のもとでも基本的に変わらないとし、中国政府系シンクタンクの研究者は「国際的にみてカンフーを教わる人よりヨガや禅をやる人の方が多い」とこぼしていたと述べていますけれども、今回のピュー・リサーチ・センターのアンケート結果はそれを裏打ちしているように思いますね。


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