機能しない官邸と決断の決め手になる世論

今日はこの話題です。
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1.総額48兆円


11月2日、防衛省は、令和5年度から5年間を対象とした中期防衛力整備計画に盛り込む経費に関し、総額48兆円前後と見積もっていることが明らかになりました。

これは、現行の中期防の約27兆4700億円に対し、約1.7倍の規模になります。

中期防衛力整備計画(中期防)とは、5年間の防衛費の見積もりや必要な防衛装備品の数量を定めるもので、外交・安全保障の基本方針である「国家安全保障戦略」やおよそ10年間の防衛力のあり方と部隊数の整備目標などを決める「防衛大綱」に基づいて纏められます。中期防衛力整備計画はその計画に必要な予算規模を裏づける役割を果たしています。

岸田総理は昨年12月の所信表明演説で国家安保戦略を22年末までに改定すると表明。2019~2023年度の現中期防は5年間の予算総額は27.5兆で、前回2014~2018年度の中期防24.67兆から1割程度しか増額されていませんでした。

現中期防は弾道ミサイルへの対処や離島防衛に重点を置いていたのですけれども、今回、防衛省は7月頃から必要経費の精査に着手。敵ミサイル拠点などを攻撃する「反撃能力」としての活用を念頭に、長射程ミサイルの実戦配備を目指すほか、無人機導入や宇宙・サイバー・電磁波を利用する「領域横断作戦」や、弾薬や装備品の部品確保や老朽化した施設整備の修繕、輸送力・補給力の向上など、幅広く積み上げた結果、今後5年間で約48兆円の経費が必要だと結論づけた訳です。

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2.迎撃弾保有数六割


10月21日、防衛省は弾道ミサイル防衛(BMD)で用いる迎撃ミサイルなどの保有数が、必要な数の6割程度にとどまるとの試算を明らかにしました。防衛省が弾薬の充足率を公表するのは異例のことです。

自衛隊のBMDは、海上のイージス艦から発射するSM3ミサイルと、地上配備型の「地対空誘導弾パトリオット(PAC3)」の2段構えですけれども、技術の高度化により、1基当たりの価格は上昇傾向にあります。一方、弾薬の予算額は過去30年間、ほぼ横這いで推移。迎撃ミサイルの充足率を試算した結果、6割程度しかなかったことが明らかになり、防衛省の担当者は「抑止の観点で問題の上、事態が起こった場合に迎撃部隊が十二分な対応をできないことになる」とミサイル開発を進める北朝鮮や中国を念頭に、攻撃を受けた場合に十分な迎撃態勢が取れない可能性があるとしています。

もちろん、これは、先述した中期防衛力整備計画の予算の裏付けでもありますし、2023年度予算案編成を前に、拡充の必要性を訴える狙いがあるのでしょう。


3.自己改革と合理化に取り組むべきだ


11月4日、鈴木財務相は閣議後の会見で、防衛省が令和5年度からの中期防の予算を総額48兆円程度と見積もったとする一部報道について、「防衛費については規模ありきではなく、新たな国家安全保障戦略などを策定し、これらをもとに予算編成をする中で内容、規模、財源を一体的に検討していく方針だ……防衛省自身も自己改革と合理化に取り組むべきだ……国民的な議論を積み上げ、理解と納得を得ることが大変重要だ……防衛費は恒常的に必要な経費であり、歳出歳入の両面から検討を進め、安定財源を確保することが重要だ」と、予算の大幅な増額を求める動きを牽制しました。

けれども、ロシア・ウクライナ戦争でも明らかになったように、今の戦争は目に見える部分でも、ミサイルや無人機が飛び交い、目に見えないところではサイバー、電磁波が駆使される時代です。

つまり、今回の中期防で防衛省が「反撃能力」、「領域横断作戦」、「弾薬・兵站」の確保を上げて見積もった予算は、「自己改革と合理化」の果てに積み上げたものであって、机の前で踏ん反り返って適当に書いたものである筈がありません。

まぁ、防衛省に対して、戦車なんぞ買わずに歩兵携行式多目的ミサイル「ジャベリン」で対抗すればいいなんて宣う財務省が、国防のことなど分かっているとは思えません。「自己改革と合理化」なんていうセリフは、天下りを完全撤廃するなど、まず自分達がそれをやってから口にすべきではないかと思います。


4.焦りの財務省


先日政府が総合経済対策を閣議決定しましたけれども、予算規模の調整で、財務省が勝手に緊縮予算で動いていたことがバレ、自民党から激しく詰問され、泡食って予算を積み上げたことが報じられました。

この時、鈴木財務相は「与党の議論を無視して財務省の考えを押し通すということは毛頭考えていない……あらぬ軋轢を生んでもいけない」などと釈明していましたけれども、防衛省に対し「自己改革と合理化に取り組め」なんていうのは、財務省の考えを押し付け、あらぬ軋轢を生むのではないですかと問い詰めたくなります。

まずは、各省庁からの予算見積もりが出揃ってから、政府が調整していくべきものだと思いますけれども、その前の段階でなぜ財務省が出張ってくるのか。

先の総合経済対策にしても、財政支出をするという裏で政府税制調査会が消費税を将来的にアップすべしだとか、自動車の走行距離に応じた「走行距離税」を検討すべきだなどちう発言があったと、まるで今から増税の流れを作らんばかりの話が出ていますけれども、どこか財務省に今のうちに緊縮財政と増税を決めておきたいという焦りがあるような印象を受けます。

たしかどこかのネット番組で、岸田政権はもう先が長くないから、財務省はいまのうちに政府に決めさせておこうと「駆け込み増税」を狙っているのではないか、と発言していましたけれども、あるいはそうかもしれません。




5.首相の決断を後押しするのは世論だ


10月31日、自民党の小野寺五典安全保障調査会長は産経新聞のインタビューで、安全保障に関する党の考え方に国民の理解が得られるよう努める考えを示しました。主なやりとりは次の通りです。
インタビュアー:国家安全保障戦略(NSS)などの「安保3文書」に関する与党協議が始まった
小野寺安保調査会長:「安全保障の問題にしっかり対応しなければという認識は両党で一致している。ただ、詰めなければいけない点はたくさんあると思うので、そこは時間をかけてしっかりやっていきたい」

インタビュアー:NSSの下に「国家防衛戦略」を策定するという自民の提言に、公明党の合意は得られているか
小野寺安保調査会長:同じ認識を持って議論をしている

インタビュアー:日本への攻撃を躊躇させる「反撃能力」に関しては
小野寺安保調査会長:予断を持って答えることはできないが、国際法の中で禁じられている先制攻撃は行わないということだけは一致している

インタビュアー:反撃能力の攻撃対象については両党の考えに隔たりがある
小野寺安保調査会長:まだ交渉していないが、自民の提言の基本は『弾道ミサイルなどを撃たせないためにどのような対処をするか』だ。もちろん専守防衛の範囲内で行う

インタビュアー:攻撃対象に相手国の司令部機能は含まれるのか
小野寺安保調査会長:「例示を求められても、『撃たせないためにどこを食い止めたらいいか』という範囲だとしか言えない。安全保障の手の内を明かすことにもなりかねない」

インタビュアー:政府の有識者会議が安全保障関連経費に海上保安庁経費などを加える枠組みを検討し、防衛費の「水増し」への警戒感は根強い
小野寺安保調査会長:水増しは決してあってはならない。日本は自らを守る気がないのではないかという間違ったメッセージを与え、むしろ紛争につながる

インタビュアー:防衛力強化への首相の姿勢が後ろ向きになったという見方もある
小野寺安保調査会長:この話は党総裁選での首相の公約からスタートした。それが衆院選と参院選でそれぞれ自民の公約になり、国民の支持を受けたと私たちは理解をしている。そして、3文書の見直しも首相の指示を受けてやっている。当然、首相はそれなりの決意と思いを持っていると信じている……反撃能力について与党として結論を得て、政府がそれを受けた形で一定の方針を決め、そして、防衛装備移転三原則なども形になっていけば、相当の実績だ。

インタビュアー:防衛力強化の成否は最後は首相の決断一つだ
小野寺安保調査会長:首相の決断を後押しするのは世論だ。だから私も時間があれば全国各地へ講演に出向き、メディアでも考え方を正確に伝えようと努力している
このように小野寺安保調査会長は、防衛力強化は総理の公約であり、それを後押しするのは「世論」だと述べていますけれども、これは裏を返せば、「世論」の後押しがなければ実現しないということを示唆しているように思います。

翻ってみれば、防衛省が弾薬が必要数の6割しかないと暴露してみたり、財務省が防衛省に、自己改革と合理化をしろ、というなど、官邸のコントロールが効いていないようにさえ見えます。

果たして岸田政権がどこまで続くのか分かりませんけれども、もし官邸が機能していないのであれば、なおさら「世論」が政権を後押しして防衛力強化と財務省の横暴を抑えるようにしなければならないのではないかと思いますね。


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この記事へのコメント

  • 深森

    「防衛費の水増し/真水」論については、最低限でもNATO基準を押さえている必要があるかと。
    巨額が動き出しただけに、ポジショントークが急増した分野になっています。
    世論には「世論操作」もございます。
    当然、どこかの某国からの、死にもの狂いの「情報工作(雑音)」も入るかと。

    油断すると
    「必要性の低い部門が割り込んだり、意味不明な新設部門が増殖したりして、無駄にカネを食って肥え太っただけ」
    というような、国防上マイナスの方向へ流されますので、とことん熟考・注意いただきたい部分であると思います。

    (財務省は、ムダ金や乱用の常態化を非常に警戒しています。まして対象が対象です。
    大量に導入した武器や先端機器の運用管理が、どれだけ大変になるか考えてみてください。盗難や流出・横流しも警戒しなければなりません。
    財務省がビシバシ文句を付けるのも当然です)


    (1)「NATO基準なら1.24%」 防衛相、防衛費GDP比で/日本経済新聞2022年1月14日
    >岸信夫防衛相は14日の記者会見で、2021年度の防衛費の国内総生産(GDP)比は北大西洋条約機構(NATO)の基準で1.24%になると説明した。
    国際的な基準で計算すればGDP比1%を超すと示し、増額を求める国際社会に理解を求める狙いがある。
    (自民党は2021年衆院選の公約にNATOの2%目標を念頭にして「防衛関係費の増額をめざす」と記述)

    (2)島田前防衛次官「海保は防衛費に入らず」 NATO定義で/日本経済新聞2022年11月7日
    >島田和久前防衛次官は(中略)日本の防衛費を北大西洋条約機構(NATO)基準でとらえた場合、海上保安庁の予算は「該当しないのではないか」と述べた。
    軍事戦術の訓練を受け、軍隊としての装備を保有するといった要件にあてはまらないと分析した。「『NATO定義の国防費だと海保が入る』と言ったことはない」と言明した。
    (島田氏は「日本の防衛に直接関わる経費ではないとことわったうえで安全保障に関連する経費として海保を足した」と経緯を説明した)


    今のところ防衛費の見解については、大きく分けて(1)と(2)のバージョンがある模様ですね。
    この点で、議員や派閥の分裂・対立があるようですが(世論を巻き込んで…)。
    どれを正しいとするかは、お任せします。
    2022年11月09日 17:16