

1.岸田総理の外遊
11月11日、岸田総理はASEAN諸国など外遊に出発しました。
外務省によると、外遊日程は次の通りです。
11月11日 本邦発外遊で岸田総理はカンボジアで、3年ぶりに対面で開催されるASEAN関連首脳会議に出席。続いてインドネシアで、G20バリ・サミットに出席した後、タイで4年ぶりの対面開催となるAPEC首脳会議に出席する予定となっています。
プノンペン着
12日 ASEAN+3首脳会議
日・ASEAN首脳会議
13日 東アジア首脳会議(EAS)
同日 プノンペン発
同日 バリ着
15-16日 G20バリ・サミット
17日 バリ発
同日 バンコク着
18-19日 APEC首脳会議
19日 バンコク発
同日 本邦着
ASEAN関連首脳会議では、ASEAN関係の更なる強化を確認するとともに、ロシアによるウクライナ侵略、北朝鮮による前例のない頻度と態様での弾道ミサイル発射を含め、地域・国際社会の喫緊の課題等に関する議論を深め、関係国との連携強化を確認。G20バリ・サミットでは、食料・エネルギー安全保障や、国際保健といった重要課題について、日本の立場と取組を積極的に発信するとともに、G20各国首脳と議論。そしてAPEC首脳会議では、アジア太平洋地域の経済回復に向けたコミットメントを示し、自由で開かれた、公正な貿易体制の維持・強化に向けた議論を主導するとともに、世界のエネルギー・食料需給のひっ迫や市場の不安定性を引き起こすなど、世界経済及びアジア太平洋地域の発展に甚大な影響を及ぼしているとの認識をAPECの首脳レベルにおいて共有するとしています。
2.日中首脳会談を行うための2つの条件
11月12日、岸田総理は、東南アジア訪問に合わせた2国間の首脳会談に関して「中国、韓国は開催の方向で調整を進めている……通常の会談形式をめざして調整したい」と明かしました。
特に、中国との対面の首脳会談が行われれば3年振りとなるのですけれども、19日にタイの首都バンコクで、行う方向で最終調整に入ったようです。
会談で、岸田総理は習近平主席に対し、沖縄県の尖閣諸島をめぐる問題や台湾情勢などについて日本の立場を主張し、大国としての責任を果たすよう求めていくと同時に、協力できる分野では協力する用意があるという考えを伝えるものとみられています。
一方、今年が日本と中国の国交正常化から50年の節目となることも踏まえ、「建設的かつ安定的な関係」を双方の努力で構築していく方針を確認したい考えとしています。
この日中首脳会談は日本から呼びかけたそうですけれども、これについてジャーナリストの長谷川幸洋氏は「日本の方から頼んで、会ってもらう必要があるのか」と苦言を呈した上で、2つの条件を突きつけるべきだとし、次のように述べています。
百歩譲って会うのであれば、条件が2つある。長谷川氏は、対露批判の共同声明と中国が日本国内に設置した警察の出先機関の説明と退去を要求すべきだとし、これが出来なければ総理の資格はない、と手厳しく批判しています。
1つ目は、日中間の話だけでなく、ウクライナで侵略戦争を続けているロシアに対して、「国家主権を侵害する戦争を直ちに止めて、ロシア軍は全面撤退せよ」と要求する共同声明を出すべきだ。
なぜ、そんな話をするのか。
11月4日にドイツのオラフ・ショルツ首相は習氏と会談して、「ロシアによる核の使用、または威嚇に反対する共同声明」を出したからだ。ショルツ氏の訪中には、「人権弾圧を続ける中国を訪れ、総書記3選の祝意を述べている場合か」といった批判が出ていた。
これは確かに、もっともな批判だ。ショルツ氏には、経済界の代表たちが同行していた。経済的利益を計算した面もあるに違いない。
一方で、習氏からロシアの核使用と威嚇を牽制(けんせい)する発言を引き出したのは、大きな成果と認めざるを得ない。米国のジョー・バイデン政権も、かねて「ウラジーミル・プーチン大統領に核の使用を思いとどまらせるには、中国とインドが必要だ」とみていた。
逆に言えば、ショルツ氏は、そんな米国の思惑を逆手にとった、と言えなくもない。
習氏の側にも、したたかな計算があったはずだ。
米国の中間選挙で、対中強硬路線をとる共和党の躍進を見越したうえで、米国に恩を売るかたちにした。「オレがプーチンを牽制するから、中国には手加減しろよ」というサインを送ったのだ。
岸田首相は習氏に会うなら、ロシアの侵攻停止に何をすべきか、何ができるか、よく考えて対話すべきだ。
いま、世界中が核戦争になる事態を心配している。「世界平和と日中友好」のようなきれい事の念仏を唱えるだけなら、意味はない。
次に、中国が日本を含めた21カ国に警察の出先機関を設置していた問題である。これは、スペインの非政府組織(NGO)「セーフガード・ディフェンダーズ」が発表した報告書で明らかになった。
そのうちの1国であるオランダの外務省は「中国警察の非公式機関が存在するのは違法」と表明し、当局が調査に乗り出した。報告書は日本の施設について、「東京都千代田区神田和泉町○○」と所番地と電話番号も明記している。
中国共産党の中央統一戦線工作部(UFWD)が関与しているからには、詐欺などの容疑者だけでなく、汚職官僚や政治犯の摘発にも関わっているはずだ。中国警察が日本の同意なしに、日本で活動すれば国家主権の侵害である。岸田首相は直ちに実態を調べたうえで、習氏に説明と退去を求めるべきだ。
それができないようなら、総理の資格はない。
3.米中首脳会談
このタイミングで急に日中首脳会談という話が出てきたのは非常に唐突な印象がありますけれども、筆者はアメリカからの要請ではないかと見ています。
なぜなら、アメリカも中国と首脳会談を行うからです。
10月10日、ホワイトハウスはバイデン大統領と中国の習近平国家主席がインドネシアで今月14日、初めての対面での首脳会談を行うとの声明を発表しました。
声明では「米国と中国の間のコミュニケーションラインを維持し、深めるための努力、責任ある競争管理、そして特に国際社会に影響を与える国境を越えた課題に関して、我々の利益が一致する場合には協力することについてと、様々な地域的及び世界的課題について議論する」と述べていますけれども、会談では台湾情勢やウクライナ情勢などが議題として取り上げられるほか、弾道ミサイルの発射を続けている北朝鮮問題についても話し合われるようです。
バイデン政権の高官は、記者団に「会談を通じて大統領は両国関係の基盤をつくることが極めて重要だと考えている」と、対話を続ける環境づくりだとしていますけれども、共同声明などを出す予定はないとのことですから、もとより合意など求めていないことが窺えます。
筆者は、この時、アメリカは中国に対し、台湾進攻をした場合、アメリカは介入すると伝えるのではないかと思っています。そして、その結果を岸田総理に伝え、台湾については日米共同歩調を取ると確認するのではないかと思います。
岸田総理は、米中首脳会談の結果を踏まえた上で、習近平主席に台湾進攻時は日米で連携して当たる、と念押しする。そのためにこのタイミングで日中首脳会談を行おうとしているのではないかということです。
冒頭で、岸田総理の今回の外遊日程を載せましたけれども、13日にバリに到着して、15日からG20サミットとなっていて、何故か14日が空いているのですね。
この14日は、まさにバリで米中首脳会談が行われる日です。おそらくこの14日に公式か非公式か分かりませんけれども、日米で情報交換および台湾問題に対する対応の詰めが行われるのではないかと思います。
あるいは、外務省は岸田総理の外遊日程をわざわざホームページで公開したのも、国民に対して「察しろ」と言っているのかもしれません。
4.近づく台湾有事
無論、この流れは中国も分かっている筈です。
11月9日、中国の孔鉉佑駐日大使は、オンラインで記者会見し、日中首脳会談について「実現すれば両国関係、ひいては地域の発展をリードする重要な役割を果たす」と前向きな姿勢を示す一方、日本政府に、台湾問題で「『一つの中国』原則を100%順守し、実際の行動で中日関係の大局を守る」よう求め、更に台湾問題を巡る日本メディアの報道も「一方的かつ主観的」だと断じ、「台湾海峡の緊張をあおることを避けるよう希望する」と述べています。
つまり、台湾問題に口を出すなと牽制している訳です。
中国の”牽制”はそれだけではありません。
10日午前、防衛省は、無人機とみられる機体1機が沖縄県の尖閣諸島の周辺を飛行したと発表しました。機体は東シナ海の上空を尖閣諸島の方向に向けて北から南に直進。尖閣諸島の北、およそ80キロの地点で反転したあと、中国大陸の方向へ向かったということで、飛行コースなどから中国機と推定されるとしています。
空自はスクランブル(緊急発進)して対応し、領空侵犯はなかったということですけれども、防衛省が日本周辺での中国の無人機や、無人機と推定される機体の飛行を公表するのはことし5回目で、警戒と監視を続けています。
孔鉉佑駐日大使が台湾に口を出すなと言った翌日にこれです。つまり、台湾有事には尖閣も同時に進攻するというサインだと捉えることも出来るのではないかと思います。
こうしてみると、台湾有事は意外と近いのではないか。日本政府のみならず、国民一人一人も有事の心づもりをしておく必要があるのではないかと思いますね。
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