岸田総理の中国名指し批判について

今日はこの話題です。
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1.中露を名指し批判


11月13日、岸田総理はカンボジアのプノンペンで開催された東アジアサミット(首脳会議)に出席しました。

サミットにはASEAN(東南アジア諸国連合)や日本、アメリカ、ロシア、中国、韓国の首脳らが出席したのですけれども、この中で岸田総理は、地域情勢として、ロシア、中国、北朝鮮を厳しく批判しました。

これについて、外務省のサイトでは次のように説明しています。
2 地域情勢
(1)ウクライナ情勢
 岸田総理大臣から、ロシアによるウクライナ侵略は、国際法に違反する行為である旨述べた上で、力による一方的な現状変更の試みは、世界中のどこであっても決して認められない旨強調しました。また、ロシアの核兵器による威嚇は断じて受け入れられず、ましてや使用はあってはならないと強調し、77年間の核兵器不使用の歴史がある中、仮に今回核兵器が使用されることがあれば、それは人類に対する敵対行為であるとして、そうさせないよう、国際社会全体として明確なメッセージを発していく必要があると訴えました。
 他の参加国からも、ロシアによるウクライナ侵略を非難する旨の発言がありました。
(2)東シナ海・南シナ海、台湾、香港及び新疆ウイグル自治区等
 岸田総理大臣から、東シナ海では中国による日本の主権を侵害する活動が継続・強化されており、南シナ海でも軍事化や威圧的な活動等、地域の緊張を高める行為が依然続いていると指摘しました。また、本年8月のEEZを含む日本近海への弾道ミサイル着弾に言及した上で、台湾海峡の平和と安定も、地域の安全保障に直結する重要な問題である旨述べました。さらに、香港情勢及び新疆ウイグル自治区の人権状況に対する深刻な懸念を表明しました。加えて、地域における経済的威圧への強い反対を改めて表明しました。
 他の参加国からも、南シナ海における航行・上空飛行の自由の重要性、国連海洋法条約を始めとする国際法に沿った紛争の平和的解決の重要性等について発言があった他、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調する発言がありました。また、香港情勢や新疆ウイグル自治区等の人権状況に対する懸念の表明や、経済的威圧についても言及がありました。
(3)北朝鮮
 岸田総理大臣から、北朝鮮は、先月来、我が国上空を通過するものも含め、極めて高い頻度で弾道ミサイルを発射しており、これらは、国際社会に対する明白かつ深刻な挑戦であるとして、到底看過できない旨述べました。その上で、北朝鮮の全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルのCVIDの実現に向けて、国際社会が一体となり、安保理決議を完全に履行することが不可欠である旨指摘しました。更に、拉致問題の即時解決に向けて、各国に引き続きの理解と協力を求めました。
 他の参加国からも、北朝鮮による弾道ミサイル発射が極めて高い頻度で続いている状況に懸念が表明され、朝鮮半島の非核化及び安保理決議の完全な履行の重要性や、拉致問題の早期解決の支持に言及がありました。
(4)ミャンマー情勢
 岸田総理大臣から、悪化するミャンマー情勢への深刻な憂慮を表明するとともに、「5つのコンセンサス」の実施に向けたASEANの努力を引き続き最大限後押ししていく旨述べました。また、引き続きの人道支援に向け、暴力の即時停止と安全で阻害されない人道アクセスを強く求める旨述べました。
 他の参加国からも、ミャンマー情勢への深刻な懸念が表明され、「5つのコンセンサス」の履行の重要性が強調されました。
もうロシア、中国、北朝鮮と名指しで批判しています。

中国を名指しで批判したことについて、ジャーナリストの門田隆将氏は「支持率下落で“遂に”吹っ切れたか。」とツイートしていますけれども、ネットでは「口先だけ」とか「信用できない」などという声がある一方、「元から対中姿勢は厳しい」とか「今までに比べればよい」など微妙に評価する声もあります。




2.吹っ切れたとはいえない岸田総理

第2回ASEANグローバル対話が行われました。

岸田総理はこちらにも出席しています。そのときの発言概要は次の通りです。
(1)日本とASEANは、半世紀に亘り、心と心の繋がる真の友人として地域の平和と安定、繁栄のために協力し、アジア通貨危機、インド洋大津波、東日本大震災、新型コロナ感染拡大といった大きな危機の際には、互いに手を差しのべてきた。
(2)日本は、ASEAN一体性・中心性を一貫して強く支持し、「ASEAN包括的復興枠組」の実施を支援しており、コロナ禍からのASEAN各国の経済回復に寄与すべく、総額2950億円の財政支援円借款を供与している。日本はこれからもASEANと共に、ポスト・コロナ時代の包摂的で強靱で持続可能な回復を目指して歩んでいく。
(3)日本は連結性、保健、気候変動、防災、食料安全保障、人的交流といった幅広い分野で日・ASEAN間の協力を強化していく。
(4)来年が日ASEAN友好協力50周年の歴史的節目であり、東京で特別首脳会議を開催し、日ASEAN関係の将来のビジョンを共同で打ち出したい。
このように岸田総理はASEANへの経済支援として、円借款2950億円の供与などを表明したところ、各国から日本の支援を評価する声が相次いだようです。

岸田総理の発言について、マスコミは、ASEANでの経済的な影響が強まっている中国を念頭に、日本からASEANに対し質の高いインフラ投資などをすることで日本の影響力を高める狙いがあると指摘しています。

つまり、岸田総理は、ASEANグローバル対話、東アジアサミットと連続で対中牽制発言をした訳です。現在19日で調整が進められている日中首脳会談がこのまま行われるのであれば、これら岸田総理の発言を了解した上で会うことになりますから、日本の主張を一定程度飲ませた形になります。

その意味では、一連の対中強硬発言は、外交テクニック的な成分が多く、門田隆将氏が指摘するように「吹っ切れた」とは必ずしも言えないのではないかと思います。

なぜなら本当に「吹っ切れた」のなら、先日、G7外相会談で、"媚中"発言をしてG7外相の顰蹙を買ったとされる林芳正外相を更迭してしかるべきであると思うからです。


3.日米首脳会談


この日、岸田総理は第2回ASEANグローバル対話、東アジアサミットを終えた後に、日米首脳会談を行っています。

会談の概要は次の通りです。
1 冒頭、両首脳は、ロシアによるウクライナ侵略、北朝鮮の度重なる挑発行動、東シナ海・南シナ海における力による一方的な現状変更の試みの継続等により、我々を取り巻く安全保障環境は厳しさを増しているとの認識を共有しました。その上で、両首脳は、強固な日米関係が地域及び国際社会の平和と安定に果たすべき役割は大きいとの認識を共有し、日米同盟の抑止力・対処力の一層の強化を図るとともに、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた取組を推進し、地域及び国際社会の平和と繁栄を確保すべく日米で協働していくことで一致しました。

2 両首脳は、地域情勢について意見交換を行いました。
(1)両首脳は、中国をめぐる諸課題への対応に当たり、引き続き日米で緊密に連携していくことで一致しました。また、両首脳は、地域の平和と安定の重要性を確認しました。
(2)両首脳は、北朝鮮による前例のない頻度と態様での弾道ミサイル発射は断じて容認できないことで一致した上で、国連安保理決議に従った北朝鮮の完全な非核化に向け、引き続き日米、日米韓で緊密に連携していくことを確認しました。また、岸田総理大臣から、拉致問題の解決に向けた米国の引き続きの理解と協力を求め、バイデン大統領から、全面的な支持を得ました。
(3)両首脳は、ロシアによるウクライナ侵略について、引き続きG7を始めとする同志国と結束して、強力な対露制裁及びウクライナ支援に取り組んでいくとともに、グローバル・サウスへの働きかけを強化していくことで一致しました。また、両首脳は、ロシアによる核の脅しを深刻に懸念しており、断じて受け入れられず、ましてやその使用は決してあってはならないことを確認しました。

3 岸田総理大臣から、日本を取り巻く安全保障環境が一段と厳しさを増す中、本年末までに新たな国家安全保障戦略を策定すべくプロセスを進めている旨述べ、我が国の防衛力を抜本的に強化し、その裏付けとなる防衛費の相当な増額を確保する決意を改めて示したのに対し、バイデン大統領から、力強い支持を得ました。
両首脳は、IPEF及び経済版「2+2」に係る進展を歓迎するとともに、地域の経済秩序や経済安保に対する米国の関与がますます重要となっているとの認識を共有し、岸田総理大臣から、戦略的観点を踏まえ、米国の早期のTPP復帰を改めて促しました。また、岸田総理大臣から、米国による環境配慮車両への優遇措置に対する我が国の考えを伝達しました。

4 両首脳は、2023年のG7広島サミットの成功に向けて、引き続き日米で緊密に連携していくことで一致しました。
筆者は11月13日のエントリー「岸田総理の外遊と台湾有事」で、岸田総理の外遊日程で14日が空いていることから、この日に日米首脳会談を行うのではないかと述べましたけれども、前日13日に行った形です。

上述の日米首脳会談の概要での地域情勢で、中国・北朝鮮・ロシアのウクライナ侵攻について話し合われたとなっていますけれども、注意したいのは、中国が一番上に来ている点です。

東アジアサミットでは、ウクライナ、中国、北朝鮮の順だったのが入れ替わっています。つまり、日米の関心事としては中国が一番だということです。ただ、2番目に北朝鮮が来ているところをみると、むしろ日本からの要求でこの優先順位になった可能性もあります。

いずれにせよ、中国をめぐる諸課題への対応には、日米で緊密に連携していくことを確認していますから、14日の米中首脳会談のことも話し合われたのではないかと思います。


4.引退する者の言葉など安易に信用してはならない


米中首脳会談に当たって、中国は激しくアメリカを牽制しています。

10日、中国外交部の趙立堅報道官は定例記者会見で、「両国元首は今、さまざまな形で常に連絡を取っている。中国側はバリ島での首脳会合開催というアメリカ側の要望を重視しており、現在双方はこの件について調整を行っている……台湾問題は中国にとって核心中の核心である。『一つの中国』の原則は中米関係の政治的基礎の基礎であり、中米間の三つの共同コミュニケは中米関係を守る最も重要な政治文書である。現在、アメリカ側がすべきことは、『一つの中国』の原則を空洞化したり歪曲したりすることをやめ、他国の主権と領土保全を尊重し、内政に干渉しないという国際関係の基本準則を厳守し、中米間の三つの共同コミュニケと『一つの中国』の原則に立ち戻ることだ」と指摘しました。

更に、「中米の経済・貿易関係の本質は互恵とウィンウィンである。アメリカは経済・貿易問題の政治化、道具化、イデオロギー化をやめ、実際の行動をもって市場経済のルールおよび国際貿易体系を維持しなければならない。そして、意見の食い違いを適切にコントロールし、互恵協力を推進し、誤解や誤った判断を避け、中米関係を健全で安定した発展という正しい軌道に戻すよう努力することを期待している」と強調しました。

また、13日の東アジアサミットに出席した中国の李克強首相は、現在の国際情勢について「安全保障状況は安定せず、エネルギー、食糧、金融リスクが高まり続けている」と指摘し、「デカップリングは避けるべきで対立に向かってはいけない」とアメリカを牽制しています。

そして、「中国は東アジアの永続的な平和と安定の実現に協力する用意がある」と、安全保障の面でも関係を強化する準備があると強調しました。

要するに「一つの中国を守れ、対中規制をやめろ、デカップリングをやめろ、中国は東アジアの平和と安定に協力する」といっているのですけれども、引退が決まっている李克強首相に「平和と安定の実現に協力する用意」と言われても、習近平主席によって反故にされる可能性を考えると、素直に信じることは危険だと思います。

もっとも、「岸田総理の外遊と台湾有事」でも触れましたけれども、今回の米中首脳会談では、共同声明を出さないとされていますから、おそらく互いに自分のいいたいことだけ言って終わるのではないかと思いますね。


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