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1.日中首脳会談
11月17日、岸田総理は、タイのバンコクで中国の習近平国家主席と会談しました。
会談は、予定の時間をオーバーして、およそ45分間行われました。
両首脳の冒頭発言と、外務省のサイトに公表されている会談概要は次のとおりです。
【冒頭発言】日中首脳が対面会談するのは2019年12月以来およそ3年ぶりで、岸田総理と習主席が会うのは初めてのことになります。両政府は夏から国交正常化50年である2022年の会談を調整してきたのですけれども、積極的に働きかけたのは日本側で、中国より早く会談日程を発表していました。
岸田総理 現在、日中関係は様々な協力の可能性とともに多くの課題や懸案に直面している。同時に日中両国は地域と国際社会の平和と繁栄にとってともに重要な責任を有する大国だ。建設的かつ安定的な日中関係構築を双方の努力により加速していくことが重要だ。
習主席 両国関係の重要性は変わっておらず、今後も変わらない。戦略的な角度から両国関係の大きな方向性を把握し、新時代に合致した関係をつくりたい。
【会談概要】
岸田総理大臣から、昨年10月の電話会談では「建設的かつ安定的な日中関係」の構築との大きな方向性で一致した、その後国交正常化50周年を迎える中、新型コロナはあるものの両国間交流は着実に回復している、現在、日中関係は様々な協力の可能性とともに多くの課題や懸案にも直面しているが、日中両国は地域と国際社会の平和と繁栄にとって共に重要な責任を有する大国である、課題や懸案があるからこそ率直な対話を重ね、国際的課題には共に責任ある大国として行動し、共通の諸課題について協力するという「建設的かつ安定的な日中関係」の構築という共通の方向性を双方の努力で加速していくことが重要である旨述べました。習主席からは、日中関係には幅広い共通利益や協力の可能性がある、日中関係の重要性は変わらない、岸田総理と共に新しい時代の要求に相応しい日中関係の構築していきたい旨述べました。
岸田総理大臣から、尖閣諸島を巡る情勢を含む東シナ海情勢や、本年8月の中国による EEZ を含む我が国近海への弾道ミサイル発射等日本周辺における中国による軍事的活動について深刻な懸念を表明しました。同時に、日中防衛当局間の海空連絡メカニズムの下でのホットラインの早期運用開始、日中安保対話等による意思疎通の強化で一致しました。また、岸田総理大臣から、台湾海峡の平和と安定の重要性を改めて強調し、中国における人権や邦人拘束事案等について我が方の立場に基づき改めて申し入れるとともに、日本産食品に対する輸入規制の早期撤廃を強く求めました。
岸田総理大臣から、中国が確立された国際ルールの下で国際社会に前向きな貢献を行うことを期待する旨述べた上で、両首脳は、経済や国民交流の具体的分野で互恵的協力は可能であること、環境・省エネを含むグリーン経済や医療・介護・ヘルスケアの分野等での協力を後押ししていくことで一致しました。同時に、岸田総理大臣から、そのためにも透明・予見可能かつ公平なビジネス環境の確保を通じて日本企業の正当なビジネス活動が保障されることが重要である旨述べました。また、両首脳は、両国の未来を担う青少年を含む国民交流をともに再活性化させていくことで一致しました。両首脳は、日中ハイレベル経済対話及び日中ハイレベル人的・文化交流対話の早期開催で一致しました。
岸田総理大臣から、気候変動、開発金融等の国際的課題について、国際ルールに基づき共に責任ある大国として行動していく必要性を強調しました。ウクライナ情勢について、中国が国際の平和と安全の維持に責任ある役割を果たすよう求めました。さらに、ロシアがウクライナにおいて核兵器の使用を示唆していることは極めて憂慮すべき事態であり、両首脳は核兵器を使用してはならず、核戦争を行ってはならないとの見解で一致しました。北朝鮮については、岸田総理大臣から核・ミサイル活動の活発化について深刻な懸念に言及しつつ、安保理を含め、中国が役割を果たすことを期待する旨述べました。また、拉致問題の即時解決に向けた理解と支持を求め、両首脳は引き続き緊密に連携していくことを確認しました。
両首脳は、引き続き首脳レベルを含めあらゆるレベルで緊密に意思疎通を行っていくことで一致しました。
2.意図せぬ衝突は避けたい
会談について、日本側は対話を通じた「安定的な関係」の構築をめざすことで一致したとのことですけれども、そこには台湾有事リスクを踏まえ意図せぬ衝突を避ける狙いがあるとされています。
岸田総理は、東シナ海での中国の軍事活動や弾道ミサイルの発射には「深刻な懸念」を表明し、台湾海峡の平和と安定の重要性も改めて強調。さらにウクライナ情勢に関しては「ロシアは核兵器を使用してはならず、核戦争をしてはならないとの見解で一致した」と、核使用反対の認識を共有したとしています。
ただ、台湾問題については、習近平主席は「内政干渉は受け入れない……海洋と領土の問題は意見の相違を適切に管理しなければならない」と反発。会談後、岸田総理は習近平主席と「安全保障分野の意思疎通の強化で一致した」と述べ、外務・防衛当局の高官による「日中安保対話」の開催や緊急時に防衛当局間をつなぐ「ホットライン」の早期開設を申し合わせたとしていますけれども、とりあえず話し合いのパイプを繋いだだけですけれども、「意図せぬ衝突を避ける」のが狙いだとするならば最低限の目的は果たしたことになります。
もっとも、武漢ウイルスの影響で延期したままの習近平主席の国賓待遇での来日は議題にならなかったとのことですけれども、中国の”狼藉”を考えると当然だともいえます。
3.尖閣寸止め警告
11月15日のエントリー「岸田総理の中国名指し批判について」で、筆者は、岸田総理の中国名指し批判を取り上げ、その上で、日中首脳会談が行われれば、岸田総理の発言を了解した上で会うことになり、日本の主張を一定程度飲ませた形になると述べましたけれども、中国もすかさずやり返してきました。尖閣です。
11月15日午前7時20分頃、中国海警局の船4隻が尖閣諸島周辺の接続水域内を航行。その中に、これまでよりも大きい76ミリ砲を搭載した船が1隻含まれていることがわかりました。
これまで中国は30ミリ砲を積んだ船を派遣したことはありますけれども、76ミリ砲を積んだ船が接続水域内を航行するのは初めてのことです。76ミリ砲は主に軍事用に用いられており、中国海警局の船に搭載された中ではこれまでで最も大きな機関砲のようです。
岸田総理が中国を名指し批判したのは13日の東アジアサミットですから、中国はその2日後に海警局の船4隻を尖閣周辺に派遣してきた訳です。うち1隻に軍用機関砲を載せてきたということは武力行使も在りうるというメッセージにもなっているかと思います。
もっとも、領海ではなく接続水域を航行したということですから、直接日本と戦火を交える気はない、いわゆる「寸止め」で警告したともいえるかと思います。
4.篭絡された松下
それでも、中国は言っていることと、やっていることが違うのが当たり前の国です。
習近平は台湾問題に絡んで「内政干渉しない」などといっていますけれども、実際は目一杯やっています。「サイレント・インベージョン」という言葉も大分、巷間に知られるようになってきましたけれども、最近でも中国の「海外警察」が報じられました。
中国の「海外警察」については、11月6日のエントリー「中国がイメージ向上できない3つの理由」で取り上げましたけれども、すでにオランダやアイルランドなどは、違法拠点として閉鎖を命じています。他国に警察拠点を置くなんて、思いっきり「内政干渉」ですからね。当然です。
この「海外警察」は日本にもあり、自民党の松下新平参院議員が、登記されている問題の団体の常務理事である中国人女性と”密接”な関係にある上、この団体の「高級顧問」という役職に就任していたと報道され、話題となっています。
件の中国人女性は、福州十邑聯合の常務理事に就いている「呉麗香(仮名)」という40代の中国人女性。表向きは日本でナマコの貿易商を生業にしているのですけれども、松下議員は、呉氏を「外交顧問兼外交秘書」として雇い、名刺を持たせ、参院議員会館に自由に立ち入りできる「通行証」まで取得させていました。
呉氏は、松下議員の事務所の”外交顧問”として議員と行動を共にし、議員が外務省や経産省の役人を呼びつけて行わせるレクチャーにも同席するなどしていたとのことで、行政府の機密情報や立法府の重要事項が漏洩している危険性が懸念されています。
それだけでなく、松下議員自身も福州十邑聯合の”高級顧問”に収まっていたそうですから、ズブズブどころではありません。
こうしたことから警察庁関係者は「警視庁公安部はかねて呉氏との関係から松下議員を監視対象にしてきました」と語っています。
これは大変な問題ですし、徹底的に調査して、オランダやアイルランドのように日本にあるとされる「中国の海外警察」は閉鎖・解散させるべきではないかと思います。政府・国会は。、旧統一教会問題でやれ解散命令だなんだで騒いでいますけれども、そんなことより、こちらの方がずっと深刻なのではないかと思いますね。
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