政府の第8波対策とは対症療法である

今日はこの話題です。
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1.グリフォンにケルベロス


武漢ウイルス感染の第8波が到来したと囁かれ始めました。

11月15日、東京での新規感染者が1万1196人となり、9月14日以来、1万人を上回り、直近7日間の平均を前週と比べると約1.3倍となり、北海道でも先週から過去最多の更新を繰り返し、この日初めて1万人台となりました。

各地で増加傾向になるなか、「すでに第8波に入っている」とする専門家もいます。

ここ最近言われているのは、海外で増えている「グリフォン」や「ケルベロス」と呼ばれる新しい変異株です。

これらは、フランスでは50%以上、アメリカ・ニューヨークでは20%ほどを占める「BQ.1」系統の株と、シンガポールやインドで70%ほどを占める「XBB」系統の株からの変異株です。

「BQ.1」からさらに変異した「BQ.1.1」は「ケルベロス」とも呼ばれています。オミクロン株「BA.5」から複数の特徴的な変異が見られるそうです。また、シンガポールなどで主流となっている「XBB」系統は、「BA.2」から派生した2つの異なる系統が交わってできた変異株です。

最新の報告では日本国内ではオミクロン株の「BA.5」系統が96%を占めているものの、今月9日の厚労省の専門家会合では10月中旬の段階では約1%しかない「BQ.1」系統が、このペースで増え続ければ11月1週目で約10%、さらに12月1週目には約80%になるという推定値が発表され、今後複数の変異株が混在したまま流行することも考えられるとの見解が示されています。


2.政府の第八波対応策


こうした中、11月11日、政府の新型コロナ分科会は第8波の対応策を取りまとめました。

その内容は次の通りです。
1.ワクチン接種の更なる促進
・「オミクロン株対応ワクチン」について、初回接種を完了した全ての12歳以上の者に対する接種を進めることが必要。
・ BA.4-5対応型ワクチンの接種も開始されたが、BA.1対応型ワクチンとBA.4-5対応型ワクチンいずれも従来型ワクチンを上回る効果が期待され
るため、いずれか早く打てるワクチンの接種を進めることが必要。最終接種からの接種間隔については、5か月から3か月に短縮されたことを
受け、接種を希望するすべての対象者が年内にオミクロン株対応ワクチンの接種を完了するよう呼びかける。
・未接種の方には、できるだけ早い時期に初回接種を検討していただくよう促していく。
・小児(5~11歳)の接種については、初回接種とともに追加接種を進める。
・小児(6か月~4歳)の初回接種が薬事承認され、特例臨時接種に位置づけられたことを踏まえ、初回接種を進める。

2.検査の活用
・第17回新型コロナ分科会における提言に基づき、国と自治体は検査ができる体制を確保し、検査の更なる活用が求められる。
・高齢者施設等について、従事者への頻回検査(施設従事者は週2~3回程度)を実施する。
・有症状者が抗原定性検査キットで自ら検査を行い、陽性の場合に健康フォローアップセンター等で迅速に健康観察を受けられる体制整備の更な
る推進が必要。
・OTC化されインターネット販売もされている抗原定性検査キットについて、一層利活用を進める。

3.保健医療提供体制の確保
・国の支援のもと、都道府県等は、主に以下の病床や発熱外来等のひっ迫回避に向けた対応が必要。
・確保病床等の即応化や、病床を補完する役割を担う臨時の医療施設等の整備に加え、宿泊療養施設や休止病床の活用など、病床や救急医療
のひっ迫回避に向けた取組
・入院治療が必要な患者が優先的に入院できるよう適切な調整、高齢者施設等における頻回検査等の実施や医療支援の更なる強化
・後方支援病院等の確保・拡大、早期退院の判断の目安を4日とすることの周知など転院・退院支援等による病床の回転率の向上
・病室単位でのゾーニングによる柔軟で効率的な病床の活用等の効果的かつ負担の少ない感染対策の推進
・オンライン診療等の活用を含めた発熱外来の拡充・公表の推進、「発熱外来自己検査体制」整備の更なる推進
・受診控えが起こらないよう配慮の上、例えば無症状で念のための検査のためだけの救急外来受診を控えることについて、地域の実情に応じ
て地域住民に周知。併せて、体調悪化時などに不安や疑問に対応できるよう、医療従事者等が電話で対応する相談窓口を周知するとともに、
こうした相談体制を強化
・職場・学校等において療養開始時に検査証明を求めないことの徹底

4.新型コロナウイルスと季節性インフルエンザの同時流行に備えた対応
・同時流行下に多数の発熱患者等が生じる場合も想定し、各地域の実情に応じて、発熱外来の強化や発熱外来がひっ迫する場合に備えた電話
診療・オンライン診療の強化と治療薬の円滑な供給、健康フォローアップセンターの拡充と自己検査キットの確保、相談体制の強化等を進める。
・都道府県は、地域の実情に応じた外来医療体制の強化等の体制整備の計画を策定する。
・また、国民各位への情報提供と、重症化リスク等に応じた外来受診・療養への協力や抗原定性検査キット・解熱鎮痛薬の早めの準備の呼びか
けなどに取り組む。
・併せて、感染した場合にもできる限り重症化を防ぐため、新型コロナとインフルのワクチンについて、接種対象者への接種を進める。
・なお、感染者数が膨大となり医療のひっ迫が生じる場合や、ウイルスの特性に変化が生じ病原性が強まる等の場合には、住民や事業者に対す
る感染拡大防止や医療体制の機能維持に関する更なる協力の要請・呼びかけや、行動制限を含む実効性の高い強力な感染拡大防止措置等
が考えられ、状況に応じた対応を行うことが必要。

5.サーベイランス等
・発生届の範囲の限定、届け出項目の重点化、多くの感染による検査診断・報告の遅れ、受診行動の変化などにより、現行サーベイランスの精度
の低下が懸念され、発生動向把握のため、実効性ある適切なサーベイランスの検討を速やかに進めることが必要。
また、変異株について、 ゲノムサーベイランスで動向の監視の継続が必要。

6.効果的な換気の徹底
・第17回新型コロナ分科会における提言に基づき、屋内での換気が不十分にならないよう、効果的な換気方法の周知・推奨が必要(エアロゾルを
考慮した気流の作り方、気流を阻害しないパーテーションの設置等)。

7.基本的な感染対策の再点検と徹底
・以下の基本的感染対策の再点検と徹底が必要。
・場面に応じた不織布マスクの正しい着用、手指衛生、換気の徹底などの継続
・3密や混雑、大声を出すような感染リスクの高い場面を避ける
・飲食はできるだけ少人数で、飲食時以外はマスクを着用する
・咽頭痛、咳、発熱などの症状がある者は外出を控える
・医療機関の受診や救急車の利用については目安を参考にする
・自宅などにおいて抗原定性検査キット・解熱鎮痛薬を準備する
・できる限り接触機会を減らすために、例えば、職場ではテレワークの活用等の取組を再度推進するなどに取り組む
・イベントや会合などの主催者は地域の流行状況や感染リスクを十分に評価した上で開催の可否を含めて検討し、開催する場合は感染リスク
を最小限にする対策を実施する
・陽性者の自宅療養期間について、短縮された期間中は感染リスクが残存することから、自身による検温などの体調管理を実施し、外出する際に
は感染対策を徹底すること。また、高齢者等重症化リスクのある方との接触などは控えるよう求めることが必要。
・症状軽快から24時間経過後または無症状の場合の、食料品等の買い出しなど必要最小限の外出の許容について、外出時や人と接する時は
必ずマスク着用、人との接触は短時間、移動に公共交通機関は利用しないなど、自主的な感染予防行動の徹底が必要。
第8波の対策と銘打っている割には、ワクチン推進、検査、医療体制確保に換気、マスク、3密回避など、「インフルエンザの同時流行に備えた対応」以外は、これまでと大して変わりません。

これについて、対策分科会の尾身茂会長は「感染拡大につながるような行動というのを短期間何とか回避する」とし、「厳格なところから少しずつ実態に合わせて、効率的にできる保健医療体制に適宜アジャストしてきた。今求められるのは、実態に合う効率的なシステムに替えることだ。5類にしたからといって感染拡大を阻止できるわけではない……レベル3と4をどう定義するのか。感染者数なのか、医療のひっ迫なのか。今回は明らかに、最大のポイントは医療の負荷、あるいはひっ迫度だという総意になった……この2年半で多くを学び、ワクチンや抗原検査があり、医療の整備をしてきた。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置を出さずに、医療機能不全を避けるべきだ」と、フェーズによっては大人数の会食やイベントへの参加を慎重に考えるよう呼びかけています。

尾身会長のいう「実態に合う効率的なシステムに替えることだ」というのは、要するに「対症療法しかできない」ということです。積極的な感染撲滅は無理だと白状しているのに等しいのではないかと思います。


3.ワクチン接種しかない


11月10日、尾身会長は、BBT(富山テレビ:Best Broadcast Toyama television)の単独インタビューに応じ、いま必要な感染対策や新型コロナの収束の見通しについて次のように語っています。
【第8波の対策は?】
尾身茂会長「第8波と言われているが、これから間違いなく拡大する。そのときに社会経済は止めようとする対策はやらない方が良いと思う。今回は(行動制限を要請する)緊急事態宣言や重点措置を出しても意味がないと思う。一番はワクチン。若い人は換気の悪いところではマスクをするということ」

【3年間の対策の方針は?】
尾身茂会長「日本がいまだにマスクをして他の国より遅れているという声がある。しかし日本の人口10万人あたりの死亡率は圧倒的に低い。ロックダウンをやる国もあった。スウェーデンは最初から感染を許容しようという国。中国はゼロコロナ政策。スウェーデンと中国は両極端。日本は当初から両極端の中間をいくことにした。日本の文化が中庸ということではなく、この病気をゼロにすることはできないという我々の判断。ある程度感染を抑えながら、死亡者を減らしていくという作戦をとった」

【感染症法上2類・5類の議論は?】
尾身茂会長「2類から5類にすると言っても、今は2類そのものをやっているわけではない。現実的には5類に近い。法律を変えれば、すべてが解決するというわけではなく、オミクロン株の特性に合わせて何が求められるかという議論をすべき。今もっと必要なことは、ワクチンをしっかり打ってもらいたい。高齢者は進んでいるが、比較的若い年代は思ったより進まない。これをどうやったらわかってもらえるかという方に政府は全力を尽くすべき」

【新型コロナ収束の見通しは?】
尾身茂会長「ワクチンはこれから比較的早く開発できる。新しい株がきても。しかしワクチンがあってもウイルスはまた変わる。コロナのパンデミックが収束して、文字通り普通の生活に戻るためには、薬。100%効かなくても、安くてどこでも手に入るタミフルのような薬。感染して重症化する前に服用して重症化、死亡を防げる。こういう治療薬が出てくるとガラッと変わる」
尾身会長は、100%効かなくても、安くてどこでも手に入る薬があれば、状況はガラリと変わるが、それがない今はワクチン接種しかないと述べています。


4.過半を超えた接種しない層


第8波の到来が指摘される中、大阪大学の宮坂昌之名誉教授は、第8波の拡大を抑える鍵は「ハイブリッド免疫」と「ワクチンの追加接種」の2つだと述べています。

「ハイブリッド免疫」とは、武漢ウイルス感染による抗体と、ワクチン接種による抗体の両方を持っていることで、この免疫を持っている人の割合が多ければ、第8波を低く抑えられるとしています。

そして、もう一つの鍵とされる「ワクチンの追加接種」ですけれども、日本国内で9月から始まったオミクロン株対応ワクチンの接種率は、11月15日段階で全人口の約10.4%にとどまっています。

宮坂名誉教授は「変異株への置き換わりがあっても、ワクチンの追加接種はそれなりの効果がある……政府はしっかりとデータを示して、ワクチン接種のメリットをもっと国民に説明していくべきだ」と接種を推奨しています。

前述のインタビューで尾身会長は、若い世代のワクチン接種が進まないと述べていますけれども、若い世代以外でも、ワクチン接種には消極的になっているというデータもあります。

10月1~3日に東京都は武漢ウイルスワクチンについて、インターネットでアンケートを実施しています。

アンケートは20~70代の都民を、年齢別の人口比を考慮して無作為に抽出し1000人から回答を得ました。ワクチンの接種歴などの設問では、4回24.2%、3回48.4%、2回12.0%、1回0.3%で、未接種は15.1%で、そのうち「おそらく接種しない」「絶対に接種しない」とした人は9.4%でした。

そして、1、2回接種し、3回目は「今後おそらく接種しない」「絶対に接種しない」「分からない」とした人に理由を尋ねたところ、「副反応がつらかったから」「ワクチンの効果に疑問がある」を選んだ人がそれぞれ3割を超え、「副反応が心配」は2割強、「重篤な健康被害が心配」と「感染しても自分は重症化しないと思うから」がそれぞれ1割強という結果となりました。

更に、ワクチンの1、2回接種した人に3回目の接種の意向を尋ねたところ、接種しないと回答した人が57.7%に上りました。

また、未接種の人で接種しないまたは未定とした人に理由を聞くと、「副反応が心配」が4割弱で最も多く、「ワクチンの効果に疑問がある」が3割強、「ワクチンの重篤な健康被害が心配」は3割弱となっています。

都は接種率を向上させるためには、3回目接種の意義や副反応への対応について情報を発信する必要があると分析。小池百合子知事は都の大規模会場は予約なしで接種できることを強調し「体制は整っている。接種にご協力いただけるように、さまざまな呼びかけや工夫をしたい」と述べていますけれども、副反応が辛い割に効果がないと感じている人にどのような情報発信をするのか。これまでのように単に「大切な人を守るため」だけでは難しいのではないかと思います。


5.現場と乖離する分科会


11月18日、参議院厚生労働委員会が行われ、尼崎の長尾クリニックの長尾和宏名誉院長が参考人として招致され、「感染症法の改正」について、発言しました。

その模様はネットにアップされていますけれども、長尾院長は、「感染症法の改正」について次の6点を挙げました。
・保険機能と医療機能の分離
・地域包括ケアシステムの活用
・人生会議(もしものときのために、あなたが望む医療やケアについて前もって考え、家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取組)の励行
・介護施設における医療提供体制の確立
・死亡診断書の改定
・感染症分類の見直し(2類、5類)
流石に現場の医師だけあって「実情に即した対策」を述べられていますけれども、やはり、注目すべきは「ワクチン後遺症」や「イベルメクチン」についても話していることです。これまで、このあたりの話題はほとんど封殺に近い状況でしたから、よく話せたなと思いますけれども、そういう流れが出来つつあるのかもしれません。

もっとも、長尾院長が指摘した「ワクチン後遺症」や「イベルメクチン」については、その後の質疑でほぼ取り上げられることなく、長尾院長は自身のブログで「肝腎の質問は、僕以外の参考人ばかり。ちゃんと質問して頂いたのは東徹議員くらい。それ以外は抽象的な話ばかり。今、目の前で起きていることには委員さん達は全く関心がないようだ。特にワクチン後遺症やワクチンヤコブには全く関心すらないようだ。サッカーに喩えるなら、長尾にボールが渡らないように委員間でボールを回すだけのように感じ、怒りが湧いた」と憤りを露わにしています。

長尾委員長は、イベルメクチンについて、興和の治験では効果がなかったとの報告があったことに触れた上で、「300人くらいの患者に投与したところ、非常によく効いて、副作用もない」と発言しています。こちらは、現場で結果です。

さらに、長尾院長は、コロナ後遺症やワクチン後遺症にもイベルメクチンは6割から7割の効果があるとも述べています。

先述の尾身会長は、富山テレビのインタビューで「100%効かなくても、安くてどこでも手に入る薬があれば、状況はガラリと変わる」と述べていますけれども、”安くてどこでも手に入る”イベルメクチンに対する、治験と現場の見解の乖離の激しさは気になります。

このままいけば、一般の人は、国の意見と、町医者の現実との間で揺れ、あるいはどちらかの選択を迫られ、その結果、政府への信頼も揺らぐような気もしてきます。

もはや、ワクチン接種が進まないという現実があります。政府も単純に「打て打て」だけではなく、町医者など現場の意見も取り入れた上での情報発信が必要ではないかと思いますね。




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