

1.マスクの反論
この程、ツイッター社のイーロン・マスクCEOは、ツイッターの従業員との講演のスライドを公開しました。
マスク氏は、ツイッターの買収は、ユーザーがソーシャル、ショッピング、支払いをすべて一ヶ所で行えるようなプラットフォーム、中国のWeChatのような「何でもありのアプリ、Xを作るための加速器」であると述べ、ソーシャルネットワークで複数のサービスをひとつに融合させた「エブリシングアプリ」に変えるというビジョンを見せています。
マスク氏は、新規ユーザー登録数が過去最高で、過去7日間で1日平均200万人を超えたと報告。一方、10月17日から11月13日の間に、ヘイトスピーチのインプレッションが減少していると述べています。
ニューズウィークなど一部のマスコミは「ツイッターは社会に憎しみを垂れ流す泉と化している」などと、ツイッター買収以降、ヘイトスピーチが増加したと報じていましたけれども、マスク氏は、それを真っ向から否定した形です。
もっとも、マスク氏が構想していたユーザーの認証制度も裏目に出て、有名人や企業を装った偽アカウントが登場し混乱を引き起こしています。
マスク氏は計画の延期を決め、12月2日に開始されると報じられていますけれども、今のところ、ツイッターは企業にはゴールド、政府にはグレーのチェック、個人にはブルーのバッジという具合に混乱を避けるため、異なるバッジを割り当てる予定だそうで、マスク氏は「すべての認証済みアカウントは、チェックが有効になる前に手動で認証される」と述べています。
2.ツイッターを注視するバイデン政権
左派マスコミはマスクCEOのツイッター改革によって、ヘイトスピーチがより拡散されるようになるのではないかという声を上げているのですけれども、この問題は、アメリカ政府も注目しているようです。
11月28日、ホワイトハウスのジャン・ピエール報道官は会見で記者の質問に次のように回答しています。
記者:ツイッターについて質問です。 スタンフォード大学の研究者が、Twitterが誤報の媒介とならないようにするという意味で、今が正念場だと言っています。 イーロン・マスクが、ますます多くの購読者がオンラインになっていると言っていますが、あなたはそのことを心配しているのでしょうか? そのことを懸念しているのですか? どんなツールがあるのでしょうか? ホワイトハウスの誰がこれを本当に追跡しているのでしょうか?このように、ジャン・ピエール報道官は、ソーシャルメディア企業には、個々のコミュニティに向けられた暴力を防ぐ責任があると述べています。
ジャンピエール報道官:これは私たちが目を光らせていることです。 私たちは、ソーシャルメディア・プラットフォームに関して、誤報や憎悪に対処し、行動を起こし、行動を起こし続けることは彼らの責任であると、常に明言してきました。
繰り返しになりますが、私たちは皆、この事態を注視しています。 私たちは皆、現在起きていることを監視しています。 みなさんが報告していること、そして私たち自身、Twitterで起きていることをこの目で見ています。
しかし、繰り返しになりますが、ソーシャルメディア企業は、暴力を煽るようなユーザーによるプラットフォームの利用を防ぐ責任があり、特に、我々が見てきたように、個々のコミュニティに向けられた暴力を防ぐ責任があります。 大統領はそのことを明確に指摘してきました。 今後もそうし続けるでしょう。 そして、私たちはこの状況を監視し続けるつもりです。
3.シャドウ・バンのようなキュレーション
アメリカ政府あるいは左派マスコミの一部はツイッターに対して、いわゆる「キュレーション」をしろと言っている訳ですけれども、これについて、マスクCEOは11月19日、ツイッターポリシーを修正しています。
マスクCEOは、「新しいツイッターのポリシーは言論の自由だが、リーチ(どのくらいの人の目に触れるか)の自由ではない」とし、ネガティブなツイートやヘイトツイートについては、最大限リーチを抑え、収益化も無効。広告は表示されず、それ以外の収益もツイッターには入らないと宣言しました。
マスクCEOはこれらのツイートは「探さなければ見つからない以外は、インターネットの他のコンテンツと同じ」と述べ、これはアカウント全体ではなく、個々のツイートに適用されると説明しています。
マスクCEOはこれに基づいてこれまでに凍結されたいくつかのアカウントを解除していますけれども、スパムをプッシュしたり法律に違反したりしているアカウントは、依然として禁止されるとしています。
ネガティブなツイートやヘイトツイートについて、他の人から見えにくくするという今回のポリシーは、いわゆる「シャドウ・バン(ソーシャルメディアの運営側が悪質なユーザーのアカウントの投稿をタイムライン等に表示させないように設定して、半ばアカウント凍結に近い状態にする措置」に似た措置だと思いますけれども、駄目なものは人の目に触れさせないという意味では「キュレーション」をしているともいえます。
一方、アカ・バンのように、完全に発言の機会を奪うものではありませんから、建前上「言論の自由」を守りつつ「ヘイト投稿」は規制するという折衷案的なものは感じます。ただ、これでアメリカ政府が納得してくれるかは分かりません。
アカ・バンにせよ、シャドウ・バンにせよ、何らかの「キュレーション」を行うであろうことは避けられません。であるならば、その「キュレーション」の基準となるものが何になるのか開示すべきと思いますし、それが時代や価値観によって変わるのであれば、それもまた追随しつつ、公開していかなければならないと思いますね。
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