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1.江沢民の死去
11月30日、中国の江沢民・元国家主席が上海で死去したと報じられています。96歳でした。
江沢民氏は、ここ数年、たびたび 体調の悪化が伝えられてきたのですけれども、2019年10月に行われた 建国70年を祝う軍事パレードでは両脇を支えられながら天安門に登壇する姿が確認されていましたけれども、 公の場に姿を現したのは これが最後でした。
江沢民氏は前任の鄧小平氏の路線を引き継ぎ、国家主席として10年間、中国が経済大国となる 基礎を築きました。退任後も長老として大きな影響力を維持していましたけれども、習近平体制になってからは、 『江沢民派』とされる 幹部たちが次々と 政治腐敗撲滅キャンペーンの餌食となり、 急速に力を失っていきました。
ただ、ゼロコロナ抗議活動が中国全土に拡がる中での、江沢民氏の訃報は様々な憶測を呼んでいます。
中国事情に詳しい有識者はツイッターで続々と反応。元朝日新聞記者のジャーナリスト、峯村健司氏は「このタイミングでの死去発表には意図を勘繰らざるを得ません」と述べれば、元産経新聞記者のジャーナリスト、福島香織氏は「白紙革命の大鎮圧と江沢民の死去発表は関係している?」との仮説を示しました。
また、日本経済新聞の滝田洋一編集委員も電子版のコメント欄で「ゼロコロナ政策への抗議デモの波が広がるなか、しつらえたようなタイミングで発表された長老の死です」と述べています。
更に、中国通のルポライター、安田峰俊氏も「このタイミングでの死去は、ともすれば非常に大きな意味を持ち得る気がします。不用意な連想を書けば、1989年4月の胡耀邦の死去のような」とツイートしています。
やはりタイミングがタイミングだけに、識者も裏があるのではないかと訝っているようです。
2.十日間で鎮圧せよ
ゼロコロナ抗議活動は、大学生の中にも広がっています。
しかもこの反ゼロコロナ運動はたった数日であっという間に中国各地に広がりました。そのため、中国当局は「外国勢力の介入」だなどと宣伝することも出来ず、余計に神経を尖らせているようです。
事態の深刻さを意識した当局は、清華大など北京市内にある大学宿舎に住む学生らが自分の故郷に帰るためのバスを手配。武漢ウイルス対策を建前に、事実上、学生が学内や北京の街頭での抗議活動に参加するのを阻止しようとしているという話もあります。
これは、天安門事件の際、当局がとった北京の学生を田舎に強制的に帰す対応と同じです。つまり、当局はそういう認識でいるということです。
もっとも、中国政府は「『白紙革命』は、あと10日間で断固、阻止する。世界人権デーの12月10日に向けて最大級の警戒態勢を敷いている。上層部内に異なる意見はないし、今後も割れない。それが、あの大きな事件との違いだ」と、共産党の上層部は白紙革命の「鎮圧」に自信を示しているそうです。更に、別の共産党上層部の周辺からは「党の末端での執政能力、危機コントロール能力をみくびらないほうがよい」という声もあるとのことです。
天安門事件を知るものは、鎮圧と聞けば、あのときと同じように、戦車を持ち出しては若者を撃ち殺していくのかなんて思ってしまいそうですけれども、今の中国は得意のビッグデータを駆使した危険人物の特定、追跡などお手の物でしょうから、そういう形で、斬首作戦的にリーダーを狙い撃ちで捕まえるのかもしれません。
3.消えた動態清零
一方、中国政府はゼロコロナ政策を見直すのではないかという見方もあります。
11月30日、政府の対コロナ政策を担当する孫春蘭副首相は、北京で国家衛生健康委員会および専門家らと会合を開き、「オミクロン株の病原性は比較的弱く、ワクチン接種も進み、新型コロナに対する政府の知見も蓄積されている。このためコロナとのわれわれの闘いは新たな段階にあり、新たな課題に向き合っている」と語りました。
会合後の発表文によると、孫副首相はゼロコロナを意味する「動態清零」という言葉を使用しなかったそうです。更に国家衛生健康委などの機関が行った前日の説明でも、当局者らはこの言葉に全く言及しない一方で、高齢者らにワクチン接種を促したと言われています。
今回の孫副首相の発言は、武漢ウイルスがもはやそれほど深刻ではないことを政府として初めて認めたものと捉えるのみならず、厳格な「ゼロコロナ」政策へのさらなる変更に道を開くのではないかと期待の声も上がっています。
既に、広州市の一部や重慶市の中心部など、さまざまな都市がこれまでの制限措置を緩和しつつあります。
孫副首相の発言について、コンサルティング会社であるテネオ・ホールディングスのマネジングディレクター、ガブリエル・ウィルダウ氏は「孫氏の発言は非常に重要そうだ。ゼロコロナ政策を忠実に実施するよう地方政府に命じる中央政府の司令塔の一端を担っているためだ……副首相として中国共産党中央の元政治局員として言葉を慎重に選んでいる孫氏が『動態清零』という言葉を用いなかったのは偶然ではあり得ない」とコメントしています。
4.中国は戦争と動乱の時代に入った
逆に、弾圧を強めるという意見もあります。
ジャーナリストの鳴霞氏によると、今回の抗議活動に習近平主席は激怒。中国政府はデモに対し、人民解放軍を派遣。各大学の構内にも入っては、学生リーダーやその周辺から2000~3000人も逮捕していると述べています。
鳴霞氏は、既に、警察が市民に向かって発砲したという話もあるとした上で、習近平主席は天安門以上の虐殺をする可能性があると指摘しています。
また、評論家の石平氏は、抗議デモの参加者が掲げる「白紙」について、既に反独裁・反習近平のシンボルになりつつあるとした上で、そのうち「白色」そのものが運動のシンボルになる可能性があるとまで指摘しています。
石平氏は、中国政府は鎮圧か譲歩かで揺れているとしながらも、もし譲歩してしまったら、運動が更に勢いづくのみならず習近平主席の求心力が失われることから、絶対に譲ることはないだろうと述べています。
石平氏は、たとえ、武装警察なので、今回の運動が鎮圧されたとしても、経済的苦境を切っ掛けとしてより広範囲な革命運動が生まれる可能性すらあるとし、習近平主席は政権崩壊の危機を回避するために、台湾侵攻を前倒しするのではないかとさえ述べています。
中国は戦争と動乱の時代に入ったと石平氏は述べていますけれども、やはりそんな時代が本格的にやってきたと見るべきなのかもしれませんね。
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