43兆円に増額される防衛費

今日はこの話題です。
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1.総額43兆円


12月5日、岸田総理は、2023年度から5年間の防衛費の総額を43兆円とするよう浜田靖一防衛相、鈴木俊一財務相に伝えたと報じられました。現行の27兆4700億円程度から1.5倍を超える大幅な増加です。

政府は、年末に策定する来年度から2027年度までの「中期防衛力整備計画(中期防)」に盛り込む方針で、今後、与党との協議を踏まえて正式に決定する見通しです。

また、岸田総理は防衛費の増額に向けた今後5年間の財源について、歳出改革や剰余金、税外収入の活用、税制措置などを含め、年末に一体的に決定するよう、鈴木財務相に指示しています。

11月28日、岸田総理は、総合的な防衛費を2027年度に国内総生産(GDP)の2%程度に増額するよう鈴木俊一財務相と浜田靖一防衛相に指示していました。

具体的には「予算は財源がないからできないということではなく、様々な工夫をした上で必要な内容を迅速にしっかり確保」、「27年度に防衛費とそれを補完する取り組みを合わせ、現在のGDPの2%に達するよう予算措置を講ずる」、「強化された防衛力は、27年度以降も維持強化する必要があり、27年度に向けて歳出・歳入両面での財源確保の措置を一体的に決定すること」の3点で、防衛省は当初「5年で48兆円ほど」を主張していたのを、財務省などとの調整を経て43兆円を要求となっていました。

従って、今回の岸田総理の指示は、防衛省の要求を了解したことになります。


2.与党との協議を進めて政治決着する


先月28日、岸田総理が防衛費をGDP2%程度に増額を指示した翌29日、鈴木財務相は記者会見で次のように述べています。
【質疑応答】

問)昨日、官邸で岸田首相から防衛費についての指示があったかと思います。改めて首相からどのような指示があったのかということと、その受け止めについて教えてください。総理指示には歳出改革についても触れていますが、具体的な歳出改革策として検討していることを教えてください。

答)昨日、総理から、防衛力の抜本的強化に関する指示がありました。
 具体的に申し上げますと、現下の安全保障環境を踏まえ、防衛力を抜本的に強化する。中核となる防衛費については、5年内に緊急的にその強化を進める必要がある。そのための予算は、財源がないからできないということではなく、様々な工夫をした上で、必要な内容を迅速に、しっかり確保する。令和9年度において、防衛費とそれを補完する取組をあわせ、現在のGDPの2%に達するよう予算措置を講ずる。他方、抜本的に強化された防衛力は、令和9年度以降も将来にわたり、維持・強化していく必要がある。国家の責任として、まずは歳出改革に最大限努力するとしても、これを安定的に支えるためのしっかりした財源措置は不可欠。このため年末に、1つとして、緊急的に整備すべき5年間の中期防衛力計画の規模、2つとして、将来にわたり、強化された防衛力を安定的に維持するための、9年度に向けての歳出・歳入両面での財源確保の措置、これを一体的に決定する。こうした原則のもとで、与党との協議を進めて、政治決着する、との指示をいただいたところであります。
 具体的な歳出改革の内容につきましては、現在、検討を進めている最中でございますので、ここでコメントすることは控えますが、いずれにせよ、昨日の総理の指示に基づいて、有識者会議の提言も踏まえつつ、与党ともよく連携をして、防衛力強化の内容・規模・財源、これを一体的に検討してまいりたいと思っております。

問)どうしても言葉として、財源がないからできないという言葉がどうしても印象に残ってしまったので確認なんですけれども、これはいわゆる国債の発行も視野にということでよろしいんでしょうか。

答)必要な内容かどうかという点については、引き続き、実効性、実現可能性などの観点から、防衛省に精査をしていただく必要があると思います。これは防衛力強化の中身についてでありますが、総理の指示は、こうした工夫をしても、なお必要とされる防衛力の強化について、財源制約を理由として渋るということがあってはならない、まずは必要性に重きを置くべきという方針を言ったものと考えます。その上で、財源につきましても、総理の指示のとおり、防衛力を安定的に支えるための措置は不可欠であって、しっかり検討してまいりたいと思います。
 昨日の財源がないから渋るなということが、必ずしも今おっしゃったような国債ということにはつながらないと思います。いずれにしても、今、検討の最中でありますから、年末に向けてしっかりとした安定的な財源を見つけていくと、それから歳出改革もしっかりやっていくと、こういうことだと思います。
鈴木財務相は、岸田総理からの指示内容を示した上で「与党との協議を進めて、政治決着する」と言われたと明かしています。

また、記者から、財源がなければ国債発行するのかと問われた鈴木財務相は、必ずしもそうではないとし、財源を見つけていくとしています。


3.防衛力の抜本的強化が達成できる水準


今回の岸田総理の防衛費43兆円支持を受け、翌6日、浜田防衛相は会見でこれについて質問を受け次のような回答をしています。
Q:防衛費に関してお伺いいたします。昨日の総理指示で、次期中期防5年間の総額について、43兆円とするよう指示がありました。これまでの中期防の額から比べると1.5倍以上の規模になりますけれども、改めてですね、どうしてこれだけ増やす必要があるのかという背景事情や、具体的にどういったものに使いたいかという内訳についてお考えをお願いします。

A:防衛費の規模等については、昨日、総理から私と財務大臣に対して、調整中の次期5年間の中期防の規模については、抜本的強化を進めるための必要な内容をしっかり確保するため、与党とも協議しつつ、積み上げで約43兆円とすること、令和9年度以降、防衛力を安定的に維持するための財源及び5年から9年度の中期防を賄う財源の確保について、歳出改革、剰余金や税外収入の活用、税制措置など、歳出・歳入両面の具体的な措置について、年末に一体的に決定すべく、調整を進めることとの御指示をいただいたところであります。総理から御指示いただいた中期防の規模は、防衛力の抜本的強化が達成でき、防衛省・自衛隊として、役割をしっかり果たすことができる水準と考えております。防衛省としては、今後、総理の指示に沿って調整を進めてまいりたいと考えておるところであります。

Q:関連して、これまでも総理の指示もそうですけれども、あくまで積み上げで総額が決まるということをおっしゃっていて、事実上、総額が43兆円ということはある程度積み上げもできているのかなと思うんですけれども、その具体的な中身についてどういったことを今、考えているのか、お考えをお願いします。

A:我が国の平和と安全を最終的に担保するのは自衛隊だと考えておりますが、この観点から、我が国が直面する厳しい現実に向き合って、将来にわたり我が国を守り抜くため、防衛力の抜本的強化を実現すべく、整備すべき装備品等の自衛隊の能力の在り方について検討を進めております。具体的には、スタンド・オフ防衛能力、そして総合ミサイル防空能力、無人アセット防衛能力、領域横断作戦能力、指揮統制・情報関連機能、機動展開能力、持続性・強靱性といった分野を中心に強化するとともに、防衛生産・技術基盤、人的基盤等の要素を重視して、必要な内容をしっかりと積み上げてきたところであります。いずれにせよ、防衛省としては、積み上げを行ってきた防衛力の内容と、防衛費の規模等に係る総理の御指示を踏まえ、今後、内容・規模の詳細について、年末までに最終的な調整を行っていきたいというふうに考えております。

Q:関連で次期中期のこの総額についてなんですけれども、今朝のですね、鈴木財務大臣の会見の中で、43兆円を上限として総理から指示があったという御発言がありました。今もですね、昨日の官邸の財務大臣の発言でもですね、上限という言及はなかったと思いますが、大臣の御認識はいかがでしょうか。

A:いずれにしても、約43兆円ということを申し上げておりますし、その中でまだこれから議論をしなければならない、与党との調整等もありますから、その意味では私が昨日申し上げたのは、約43兆円ということだったので、総理からの指示でその中で、今後まだ議論する余地があって、年末までに調整するということだと私は思っております。
このように、細かい所はまだ調整が必要であるものの、43兆円の積み上げにより「防衛力の抜本的強化が達成できる」水準だとの認識を示しています。


4.暫定的な財源としての国債発行


報道では43兆とこれまでの予算から大幅に増額されいることがクローズアップされていますけれども、そもそも43兆で足りるのかということは脇に置くとして、国民として気になるのは、財源は、増税して賄うのかという点です。

これについて、12月5日、ジャーナリストの須田慎一郎氏がニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演し、次のように述べています。
須田)もう1つ大きな問題になりそうなのは、財源をどこからどういう形で手当てするのか、まだ決着がついていません。財務省やいまの官邸サイドは、それを増税の方向に持っていこうとしているのではないかと思います。

飯田)有識者会議などでも増税の話ばかりが出てきて、具体的には東日本大震災の復興増税のようなスキームでどうか、というような話も出てきています。

須田)あれは内閣官房の有識者会議ですよ。内閣官房というのは、間違いなく財務省の仕切りです。財務省のひも付きの有識者会議であることは、政府・与党のなかではわかってしまっています。

飯田)財務省のひも付きの有識者会議であるということが。

須田)特に反発しているのは自民党サイドで、そんなもの容認できるわけがないではないか、というところです。これについては問題を1つ先送りにしてしまった。防衛3文書の議論と税制改正の議論が並行して進んでいたので、増税というところで結論付けてしまって、自民党税調に回されたら、自民党税調の宮沢洋一会長は財務省のひも付きですから。そこで決められてしまうのではないかという相当な危機感があったのです。

飯田)結局、反対しそうなところの議論を迂回していって、増税に賛成するところばかりに諮り、「皆さんに諮りました」という形にしていく。それは怒りますよね。

須田)やはり増税の議論は、政権や首相に相当なパワーがなければ党内で押さえつけられませんし、世論の協力も得られません。ここに関して言えば、岸田政権が弱体化していてよかったのではないかと思います。

飯田)いろいろな調査がありますけれども、現在の支持率は3~4割くらいです。統一地方選も近く、こんな議論をしていて大丈夫なのでしょうか。

須田)それよりも、増税を強行したら党内政局になります。

飯田)その前に。

須田)要するに岸田おろしになります。そういうリスクは冒せないのだろうと思います。

飯田)フジテレビの番組では、木原副長官の「当面は増税ではなく、予算の組み替えなどで対応していく」という発言がありました。少し風向きが変わってきていますか?

須田)トーンダウンですよね。強行できないということです。当面ではなく、これについては防衛国債の発行や、埋蔵金もあります。あるいは、本来であれば必要のない将来の国債消化に向けての国債積立金も使えるではないか、というような議論がいま自民党内で噴出しているのです。

飯田)いろいろなところに財源はあるのに、なぜ増税ありきなのかという話に当然なりますよね。

須田)増税を行うということは、景気・経済の足を引っ張るということです。むしろそういうことをせずにGDPを成長させていく、景気を拡大させていくことによって、税収増を図る方が王道だろうと思います。

飯田)国債の話になったときに、ある官僚に言われたことがあります。1つ気をつけなくてはいけないのは、「短い年限の国債としてつなぎ的に使い、結局は償還に増税が必要だ、という話をされたら同じだ」と言われました。防衛国債も償還年限をどうするかで決まってきますよね。

須田)そうですね。加えて、本当にそれをある種の赤字国債的な扱いにするのかどうか。「償還をどうするか」という議論もしなくてはなりません。そうすると、建設国債という色合いで考えてみることも必要ではないかと思います。

飯田)建設国債はインフラが残り、それをみんなが使うということで、償還期間が長くて60年になっています。

須田)しかも、赤字国債の範疇には入らないことになりますから。インフラは残るわけですし、現役世代も将来世代もそれを共有する。1つの世代に負担を押し付けるという理論も、防衛予算については馴染まない話ではないかと思います。

飯田)国家の安全ですとか。

須田)おっしゃる通り。

飯田)そういうものがないと、将来世代は生まれてきませんよね。

須田)いま生活している我々だけではなく、日本の国土の安全を保障していくことは、全世代の国民が負担すべき話ではないかと思います。

飯田)確かに建設国債と言うと、具体的なものが残らなければいけないと捉えがちですけれども、安全保障も無形のインフラですものね。

須田)それがあってこその国ですから。

飯田)どう議論されていくのか。財源の話が現場で必要なものの話からの積み上げになっていかないですよね。


須田氏によると、防衛費増の財源として増税をしたくても、党内政局となって岸田おろしになるから踏み込めないというのですね。

須田氏は、岸田政権が弱体化しているから、その点はよかったと述べていますけれども、一つ気になるのは、ある官僚の言葉として、財源に国債を使ったとしても「短い年限の国債としてつなぎ的に使い、結局は償還に増税が必要だ、という話をされたら同じだ」という指摘です。

これについて産経新聞特別記者の田村秀男氏は「自民党内にはさすがに増税に反発する議員も少なくない。財務官僚はそれを計算済みで、暫定的な財源としての国債発行を黙認する可能性が強い。その場合、財務官僚は国債償還の財源として5年以内の消費税増税案を岸田政権に仕掛けるだろう」との自身の読みを述べています。

けれども、須田氏が指摘するように、昨今の状況下で増税など、景気の足を引っ張ることにしかなりません。

これらを考えると仮に、防衛国債を出して、増税はしないなどと政府から発表されたとしても、その発表に「当面」という枕詞がついていないか、そして、防衛国債の償還期限が3年とか5年とかいった短い年限になっていないかなど厳しくチェックしておくべきではないかと思いますね。


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