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1.我が国の自立的な安全保障体制の構築に向けて
12月9日、国民民主党の玉木代表は岸田総理大臣と会談し党で纏めた安全保障政策を提言しました。
提言の冒頭で示された骨子の見出しは次の通りです。
〇自分の国は自分で守るどれも必要かつ妥当なものかと思います。中でも筆者が面白いと思ったのは、「自分の国は自分で守る」の項で、具体策として「現実的平和主義を基本理念に、『近くは現実的に、遠くは抑制的に、人道支援は積極的に』を安全保障政策の原則」としている点です。
〇専守防衛の堅持
〇自衛のための打撃力
〇防衛力の強化
〇アクティブ・サイバー・ディフェンス(ACD)の採用
〇「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」の見直し
〇イージスアショアの再検討とミサイル防衛の強化
〇自衛官等の処遇、勤務環境の改善
〇国内の防衛生産・技術基盤の強化
現実的と抑制的がそれぞれ何を指しているのか分からないところもありますけれども、どことなく「遠交近攻」の原則に乗っ取った安全保障を匂わせます。つまり、中朝韓といった隣国には毅然と対応し、欧米豪印あたりとは誼みを結ぶといったところでしょうか。
会談終了後、玉木代表は「政府与党でまもなく発表される安保関連3文書に先立ち、国民民主党が掲げる安全保障政策を直接総理に説明し、活発な意見交換を行った」と述べ、岸田総理も「かなり重なる部分があり、吸収できるところは吸収したい」と応じました。
2.四十三兆円方針で過不足ない
政府は防衛予算について5年で43兆円とする方針を打ち出していますけれども、12月7日、自民、公明両党は、防衛3文書改定に向けた実務者協議を開きました。
会合では国家安全保障戦略など年内改定予定の防衛3文書の概要についても政府側から説明があり、43兆円方針で過不足ないと判断したと、自民党の熊田裕通議員と公明党の浜地雅一議員が説明しています。
複数の関係者によると、相手のミサイル発射拠点などを叩く「反撃能力」については、長射程のミサイルの関連経費に5兆円程度がかかることを想定していて、国産のミサイル開発などを行うとしています。
また、自衛隊が戦闘を継続する能力が不足していると指摘されるなか、弾薬の確保や弾薬庫の新設の経費も盛り込まれ、更に、サイバー分野の専門要員を大幅に増強するとしています。
ただ、各年度ごとの歳出見通しは政府側から示されなかったようです。
これまでの実務者協議では、軍事力を増強する中国に関する安全保障上の情勢認識で自公両党に差があったのですけれども、現状の調整状況については自公双方ともコメントを控えています。
もっとも、12月2日に自公は敵基地攻撃能力を保有することで合意していますから、ようやく普通の国の防衛力整備に向けて動き出したことは間違いないといってよいかと思います。
3.一二式改
焦点の「反撃能力」について、長射程のミサイルの関連経費に5兆円ということですけれども、これは8月31日に防衛省が決定した2023年度予算の概算要求で盛り込まれていたものです。
防衛省は陸上自衛隊が運用する「12式地対艦誘導弾」の射程を伸ばした能力向上型の開発を進めており、このうち地上発射型については量産を開始するとし、当初2026年度ごろから始めるとしていた計画を前倒しするとのことです。
現行の「12式地対艦誘導弾」は、敵の艦艇に向けて地上から発射する三菱重工業が開発した国産の誘導ミサイルなのですけれども、2012年度から調達が開始されたことから「ひと・に」式と呼ばれているのだそうです。
現在の射程は百数十キロとされ、南西地域の防衛体制を強化するため、宮古島のほか、鹿児島県の奄美大島、熊本市に配備されています。今年度中には石垣島にも配備される計画です。
防衛省は、この「12式地対艦誘導弾」の能力を大幅に向上させ、敵の射程圏外からでも攻撃できる、最新の「スタンド・オフ・ミサイル」に改良しようとしています。
防衛省関係者によると、将来的には今の10倍程度、1000キロ以上の長射程を目指しているそうですから、配備する場所によっては、中国の沿岸部や北朝鮮の主要部を射程に収められるようになる。これにより、一定上の抑止力を発揮する筈です。
防衛省は、「12式地対艦誘導弾」の「能力向上型」だとしているが、飛行性能を大幅に上げるため、今はない大型主翼が取り付けられるなど、事実上の新型ミサイルだとも言われています。
国産の「12式地対艦誘導弾」が量産となれば、撤退企業が相次ぐ国内防衛産業の下支えにもなりますし、国内に生産基盤があれば、調達やメンテナンスが容易だというメリットもあります。
隣国の中国は、地上発射型で射程500~5500キロメートルのミサイルを弾道で1900発程度、巡航で300発ほど保有し、更に軍備増強を続けています。また、北朝鮮は、かつてない頻度で弾道ミサイル発射を繰り返しています。
それを考えれば、長射程のミサイルを配備して抑止力とするのは当たり前のことです。
政府は長射程の巡航ミサイルについて保有数を1000発規模にする検討をしているとも囁かれていますけれども、ある防衛族議員は「『反撃能力』保有を急ぐためには、現実的に”12式”が手っ取り早い。当面、数百発程度の保有が必要ではないか」との見方を示し、また、防衛省幹部は「日本が『反撃能力』を持つことになれば、北朝鮮にとっても『自分たちも日本に攻撃されるかもしれない』ということになり、抑止力としては一段上のレベルになる。今は、日本は『反撃能力』を持っていないので、北朝鮮は『日本から攻撃されるおそれはない』と考える」と指摘しています。
抑止力の有無は、ことほど左様に、国の存亡に関わります。国民民主党の玉木代表ではないですけれども、近くは現実的な抑止力を持、遠くは抑制的に親交を深めていく防衛力の強化を速やかに進めるべきだと思いますね。
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