防衛増税を口にした岸田総理とざわつく自民党

今日はこの話題です。
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1.国民にご協力をいただくことを考えている


12月10日、岸田総理は記者会見を行い、防衛費増額の財源について「必要となる約4分の3は、歳出改革などの努力で賄う道筋ができた」とした上で「残りの4分の1について国民にご協力をいただくことを考えている」と、増税への協力を求めました。

ただ、増税のタイミングに関しては「現下の経済状況などを踏まえて2027年度に向けて複数年かけて、段階的に実施する。開始時期については柔軟に対応していく」と直ぐの増税はしないと含みを持たせています。

更に前日の12月9日、鈴木財務相が、閣議の後の記者会見で「財源確保に向けて工夫や努力を行い、それでも足りない部分を国民の皆様に税制でお願いしなければならない。国民の皆様にご理解をいただけるように今後の決定プロセスにおいても丁寧に説明をしていく必要がある」と述べました。

政府・与党は防衛費の増額では、歳出改革や剰余金を活用しながらも、不足する1兆円余りの財源を賄うため、2027年度に向けて段階的な増税を検討することにしています。

不足する財源を補うための増税は、法人税を軸に検討が進められるとみられているのですけれども、鈴木財務相は、税目や歳出改革の具体的な中身について「歳出・歳入両面での財源確保の内容の具体的な検討を年末に向けて詰めていきたい。今の時点で『これだ』と申し上げられる段階ではない」と明かしませんでした。

一方、与党内から財源を国債で賄うべきだという意見については「一般論としてだが、国債を安定的な財源と位置づけるのは難しい」と、国債は将来世代に負担を先送りすることだとして、防衛費の財源とすることには否定的な見方を改めて示しました。




2.企業への増税は慎重に


今回の防衛増税について、松野官房長官は、閣議のあとの記者会見で「国家安全保障戦略などの策定過程でも、新たな装備品の導入と、既存の装備品の延命や能力向上の適切な組み合わせなど、費用対効果の向上を図るべく検討を進めている……こうした取り組みを通じ、防衛装備品の調達の効率化や合理化など、コスト縮減のための取り組みを着実に推進していく」と、政府の対応への理解を求めました。

また、浜田防衛相も閣議後の記者会見で「国家の責任としてまずは歳出改革に最大限努力することは当然だ。防衛省・自衛隊においても防衛装備品の調達の効率化や合理化など、コスト縮減のための取り組みを着実に推進する考えだ」と理解を求めています。

防衛増税については、政府・与党の間で法人税増税を軸に検討が進められる見通しとなっているのですけれども、西村経産相は、9日の閣議後の会見で「中長期的な財政健全化の重要性は十分理解をしているが、経済界が過去最高水準になるような投資への意欲を示し、賃上げについても多くの企業が意欲的な方向性を示している。この5年間が日本経済再生に向けたラストチャンスだ……まさに大胆な投資へのスイッチを押そうとするときに、水を差すようなことにならないよう、このタイミングでの増税については慎重にやるべきだと考えている」と、企業への増税については慎重に対応すべきだという考えを示しました。

元々、防衛増税については、12月8日に岸田総理が与党に増税の検討を指示したのが発端です。岸田総理は、来年度は増税をせず、令和9年度以降に約4兆円の財源確保が必要になると説明。そのうえで4分の3を歳出改革、決算剰余金、国有資産の売却益などを活用する「防衛力強化資金(仮称)」の創設などで賄い、残り1兆円超を増税で賄う考えを表明しています。

これに対し、西村経産相は翌9日に、この発言をした訳です。しかも、これは、鈴木財務相が増税の話をしたその日です。

つまり、岸田総理の増税検討指示を受け、鈴木財務相が増税の話をし、西村経産相が増税に反対した。思いっきり閣内不一致です。まだ閣議決定前ですから、岸田総理が西村経産相に発言を撤回させるなりなんなりする必要がありませんけれども、西村経産相が増税の閣議決定の署名を拒否するようであれば、更迭か内閣総辞職が視野に入ってきます。

あるいは郵政解散よろしく、防衛増税を公約に解散に打ってでるのなら格好いいかもしれませんけれども、岸田総理にそこまでの腹があるのかは疑問です。


3.国防を受益者負担の観点で考えることが根本的に間違いです


防衛増税への反対の声は党内からも出ています。

8日、自民党の安倍派は党本部で総会を開いたのですけれども、そこで防衛増税が既定路線になりつつあることに中堅・若手議員から反対の大合唱が起きました。

彼らは、安倍元総理が「防衛費は次の世代に祖国を残していくための予算だ」として国債での対応を主張していたことを挙げ、国債を選択肢から排除する形の増税議論について、「アベノミクスの否定だ。海外流出促進税だ」などとの訴えや、昨年の衆院選や先の参院選で自民が公約に増税を盛り込んでいなかったとして、衆院解散を念頭に「大きな決断」も考えられるとの声もあがりました。

翌9日、自民党は、党の政調全体会議を行い、防衛費増額の財源について議論したのですけれども、ここでも紛糾しました。

会議は2時間以上に及び、「バカヤロー!」という怒声が階下に聞こえるほど白熱。松本洋平政調副会長によると、55人の議員が発言した中で、約40人が増税に異を唱え、十数人が増税を容認する意見を表明したそうです。

会議の様子については、青山繁晴参院議員が自身のブログで次のように明かしています。
▼総理が突如、天から降らせるように、すなわち議院内閣制において本質的に不可欠な与党との議論無くして、「防衛費が1兆円足りなくなるので、5年後に増税だ」と仰ったことに対して、自由民主党の政調全体会議がたった今、12月9日金曜の午後1時半から、開かれています。

 ご覧のように出席議員は非常に多く、しかも怒号が烈しく飛び交う会議になっています。
 果たして無事に、司会者に当てられるかもやや懸念していましたが、会議のほぼ冒頭に発言できました。
 しかし、そのあとに山のように議員が居て、そのすべての議員の背後に主権者・国民のみなさんがいらっしゃるので、おのれの言いたいことをすべて言おうとするのでは無く、発言内容をごく絞って、しかしあくまでも明快に述べました。

▼なるべく言葉の通りに以下に再現します。

「参議院の青山繁晴です。
 まず、国防を、受益者負担の観点で考えることが根本的に間違いです」

( ここで発言を遮ろうとする声あり )

「わたしの発言の途中です。遮らないでいただきたい。
 国家の根幹の任務は、国民を護ることにあります。受益者が負担するということではありません。

 また、総理と財務省は『安定財源が必要』と強調しましたが、安定的な財源というとすぐに、国民の懐を考えることも、大きな間違いです。

 総理と財務省によれば、防衛費で足りなくなるのは1兆円だそうです。その財源は、国民の苦しい懐に手を突っ込まずとも、充分に用意できます。複数の選択肢が現にあります。
 例えばひとつには、日本は諸外国に無い国債のルール、すなわち『60年で償還する』というルールを見直せば、総額では16兆円に及ぶ債務償還費からも、1兆円は充分に出てきます。
 また、防衛国債も発行することによって、国民に防衛にはいくらお金が掛かるかという認識を深めることにもなりますし、国内で円建て国債の1兆円の発行にどんな問題があるでしょうか。

 議院内閣制に基づいて、税金のあり方を詰めて議論するために、いま毎日、党税調とマルバツ会議 ( ※ あとで説明 ) で税を削り込み、国民の生活を護り、零細企業・中小企業の経営を立て直し、物価高に抗して景気を良くするために、会議に参加する議員それぞれが苦労しているのに、まるで天から降らせるかのように、総理の突然の発言で単年度1兆円もの法人税増税が決まってしまうなら、いったい何のための日々の努力でしょうか。
 自由民主党の議員は、中から、総理の発言に反対すべきです」

▼前述の通り、あとの議員の発言時間を確保するために、短めにここで発言を終えました。
 すると凄まじい拍手と「賛成っ」、「そうだ」、「その通り」という声に包まれました。

 ただし !
 違う意見の議員も居ます。多数派ではありませんが、居ます。
 それだからこそ、議論を重ねねばなりませぬ。
 その議論抜きで、総理が天から降らせるように「指示」なさることは、日本の議院内閣制のまつりごと ( 政 ) ではありませぬ。
その他にも、会議では、柴山昌彦元文部科学相は「唐突に党で議論していない金額が降りてきて、増税1兆円が必要で、年末までに決めろという主張は疑問に思う」と述べ、他にも「経済回復の途上なので、増税で景気を冷え込ませるべきではない」「選挙で公約として信を問うていない」などと異論が相次ぎました。

ある閣僚経験者は政府の姿勢について周囲に「火事場泥棒だ」と酷評しています。




4.このままだと防衛が悪者になる


防衛増税について、佐藤正久元外務副大臣は記者団に「このままだと防衛が悪者になる。防衛力の抜本的強化の中身を国民に説明する前に増税というのは順番が逆だ」と語っていますけれども、まずは予算支出の見直し、組み換えをした上で、それでもどうしても足りないことが明らかになって初めて増税を口にすべきであり、それを「検討」している段階で増税と言い出すのは順番が逆です。

自民党の世耕参議院幹事長は、記者会見で「5年後の防衛費の財源の姿を、責任をもって示したいという岸田総理大臣の考え方は支持、評価したいが、まずは、歳出改革や税外収入などを最大化していくことをしっかり議論すべきで、今年中に、増税する税目などの結論が得られるほど、状況は熟していないのではないか……法人税は景気によって税収の上下が非常に激しく、安定的な財源としてふわしいのかということや、企業の賃上げなどの意欲を下げてしまわないかという懸念がある。国民に負担をお願いする以上は、丁寧に説明し、しっかりと理解と納得をしてもらったうえで進めていくことが重要だ」と述べていますけれども、まさにこの通りでしょう。

10月31日のエントリー「岸田総理の経済対策は日本を現状維持させるか」で、経済対策予算を巡って、まだ政調で議論しているのに財務省と鈴木財務相が抜け駆けして、岸田総理に話がついたと耳打ちして了解を得ようとしていたことがバレて騒然となった一幕について取り上げましたけれども、あれとやっていることは同じです。

たしかあの事件の後、鈴木財務相は政府と党で「あらぬ軋轢を生んでもいけない」などと釈明していましたけれども、今回も思いっきり「軋轢」を生んでいます。まったく学んでいません。


5.こんなことでは来年総理が代わってもおかしくない


こんな生煮えの段階で「増税」を口にして、閣内不一致のみならず、党との軋轢を引き起こしておいて、一体どうするのか。もしかしたら、これは「観測気球」ではないのかと考えたくなります。

「観測気球」とは、まだ検討段階の政策をリークすることで世論の反応を見る手法のことを指しますけれども、作家で国会議員のスピーチライターの松井政就氏は、政府が「国民の反応」を確認する術として次の3つを上げています。
(1)報道各社の世論調査:マスメディアは保守から革新まで幅広くあり、読者や視聴者にも違いがあります。国民のどの層がどんな反応を示したかの参考になります。

(2)メディアでの扱われ方:テレビなどの報道でどのように取り扱われているか、またオピニオンリーダーにどう認識されているかも参考にします。

(3)ネット上の反応:過去には、ネット上に投稿された「保育園落ちた日本死ね」という言葉が大きな話題となり、国会でも取り上げられ、待機児童問題の火付け役となったこともありました。
松井氏は、安倍政権が一度配布した“アベノマスク”も、予防効果に比べてコストがかかりすぎると、ネット上で批判が続出したことがきっかけで、さらなる配布が取りやめになった事例を挙げ、ネット上での反響で政策が修正されることも実際に起きているとし、一人ひとりが声を上げることは決して無駄ではないと述べています。

実際、ネットでも「外為特会を0にしてから出直して来い」とか「・外国人の生活保護廃止(最高裁の判決も出ているしね)、・日本の学生以上に留学生を優遇する予算、・男女共同参画費の無駄金、・外為特快の含み益 <= 何故これを使わん?、・財務省の使う見込みのない記念貨幣用の金地金保有、この辺を片付けてから物言えや ( ・᷄ὢ・᷅ )」とか「国民は、増税の丁寧な釈明や言い訳ではなく、特定の活動家が悪用する偽善的福祉予算、外国人への過剰サービスの廃止、政治家の副業利権などのムダ削減、その実行、その報告なんですよ」とか、批難轟轟です。

ただ、自ら記者会見をして防衛増税を口にした以上、簡単に引っ込めるとも思えません。

自民党の増税反対派は「こんなことでは来年総理が代わってもおかしくない」と述べたそうですけれども、もし、岸田総理が増税と引き換えに退陣することを考えていたのだとしても、そんな「立つ鳥後を濁しまくる」ようなことはさせてはいけないと思いますね。




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