ブログランキングに参加しています。よろしければ応援クリックお願いします。
1.防衛増税反対93%
12月9日午後から10日朝にかけて、夕刊フジが、ツイッター上で、防衛費増額をめぐり財源を「増税」で賄うことの是非について緊急アンケートを行いました。
その結果は29%が「絶対反対」、64.4%が「まず税収増や防衛国債の発行などを検討すべきだ」と回答し、実に合わせて93.4%が反対する結果となりました。とりわけ、増税反対の声の中には「増税しか思いつかない能力の低い#財務省#霞ヶ関官僚#政治家の給与から財源を確保すればいい」とか、「増税のために防衛費を人質に取るな」など、痛烈な意見が相次いでいます。
更には、「政府や行政が身を削れ」、「巨大なムダ、不必要な政策を洗い出しそのカネを防衛費に充てるべき」、「税収増へ景気回復の努力を怠るな」、「防衛国債に後ろ向きなのはなぜ?」、「財務省が嫌がる『ふるさと納税』のように『防衛納税制度』をつくれば」など政府に知恵や工夫を求める声も寄せられています。
2.反論の場も無いのか
12月10日、岸田総理は記者会見を行い、防衛増税を口にしましたけれども、この日、高市経済安全保障相は岸田総理が防衛費増の財源として増税の検討を指示したことについて、「普段は出席の声がかかる一昨日の政府与党連絡会議には、私も西村経済産業大臣も呼ばれませんでした。国家安全保障戦略には経済安全保障や宇宙など私の坦務分野も入るのに。その席で、総理から突然の増税発言。反論の場も無いのかと、驚きました」とツイートしています。
高市経済安保担当相は、一昨日の政府与党連絡会議に呼ばれなかったと述べていますけれども、12月8日に行われたのは「政府与党政策懇談会」であり「政府与党連絡会議」ではありません。
政府与党連絡会議は、1993年8月までの自民党政権時に、毎週水曜日に行われていた会議ですけれども、その目的は、内閣と与党の情報交換でした。内閣側からは首相・外相・蔵相・通産相・官房長官・同副長官らが、自民党側からは幹事長・総務会長・政調会長・国会対策委員長・幹事長代理らが出席。更に自民党の各派閥から代表者が出ることが慣例となっていました。
一方、政府与党政策懇談会は、政府の予算など、重要政策を決定する節目に、政府と与党の意思統一を図るために開かれるもので、政府側から内閣総理大臣、副総理兼財務大臣、内閣官房長官、内閣府副大臣、内閣官房副長官、与党からは、自民党から副総裁、幹事長、総務会長、政務調査会長、選挙対策委員長、参議院議員会長、参議院幹事長、公明党からは代表、幹事長、副代表、政務調査会長、参議院会長、参議院幹事長が出席して、首相官邸で開催されます。おおむね15分程度で終了することから、了解事項の確認の意味が強いとされていますけれども、政府与党連絡会議が自民単独政権下でのものであったのに対し、政府与党政策懇談会は連立与党下で行われるものとなっています。
ただ、出席者の面々は、重要閣僚と党の重役で、高市経済安保担当相も、西村経産相もメンバーではありません。これが政府与党連絡会議だと通産相が呼ばれていましたから、その絡みで経済安全保障相も呼ばれるべきだという論も成り立つかもしれませんけれども、政府与党政策懇談会である以上、呼ばれなくても「建前」の上では文句はいえません。
それでも、この日の政府与党政策懇談会の議題は「 防衛3文書に関する「与党国家安全保障戦略等に関する検討ワーキングチーム」の協議状況」と「 財源確保について」であることから、浜田防衛相が出席していることを考えると「安保」という名目で、高市経済安保相と西村経産大臣を呼ぶことも出来なくはなかったと思います。https://www.kantei.go.jp/jp/singi/s_kondan/pdf/r041208_gijisidai.pdf
普段は出席の声がかかる一昨日の政府与党連絡会議には、私も西村経済産業大臣も呼ばれませんでした。国家安全保障戦略には経済安全保障や宇宙など私の坦務分野も入るのに。その席で、総理から突然の増税発言。反論の場も無いのかと、驚きました。
— 高市早苗 (@takaichi_sanae) December 10, 2022
3.あらゆる選択肢を排除しない、国債もだ
12月11日、与党・自民党の三役として、19年ぶりに台湾を訪問した萩生田光一政調会長は、日本と台湾の関係をテーマにした会合で講演を行いました。
この中で、萩生田政調会長は、「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事である」という安倍元総理の言葉に言及したうえで、台湾への軍事的な圧力を強める中国を念頭に「力の行使による一方的な現状変更はあってはならない」と述べ、日本、台湾、アメリカの間の連携のさらなる強化を訴えました。
そして、日本の取り組みを紹介し、「NATO諸国と同様のGDP比2%以上を念頭に、5年以内に防衛力の抜本的な強化を進めていく。財源は、歳出改革のほか、場合によっては、国債償還の60年ルールを見直して、償還費をまわすことも検討に値する。2027年以降、さまざまな知恵を絞るが、一定の安定した財源を確保するうえで、税の在り方も、党の中で議論が始まった」と、増税の可能性に含みを持たせました。
講演後、萩生田政調会長は防衛費増額の財源について「5年間、日本の防衛力を高めるための必要な財源は、あらゆる選択肢を排除しない。国債もだ」と、当面は新規の国債発行による財源確保もあり得るとの考えも示しています。
10日の政府与党政策懇談会には萩生田政調会長も出席していましたから、財源をどうするかの話題も出ていた筈です。にも関わらず、財源について、あらゆる選択肢を排除しないと述べているのですね。確かに10日の懇談会は17:30~17:55とわずか25分間の会議でしたから、財源をどうするかについて、そこまで細かい話はなかったのかもしれません。
4.いまだに吹かない岸田降ろしの風
12月8日、自民党の各派閥の事務総長らが、東京都内の中国料理店で会食し、各派が結束して岸田政権を支えることを確認しました。会食には、安倍、茂木、麻生、岸田、二階、森山の各派のほか、谷垣、石破両グループからも参加したそうです。
これについて、ジャーナリストの山口敬之氏は、秀吉の刀狩りよろしく、今回の会合が政権を派閥単位で支えてきましょうという枠組みになったのは派閥単位で壊れかねないからだとし、派閥に支えられているだけの岸田政権はこの手の会合をしては「必ず支える」という言質を取りにいかなければならない状況にあると説明した上で、これだけ岸田内閣の支持率が急落しているにも関わらず、未だに岸田降ろしの風が吹いていないのは大派閥が降ろしに行っていないからだと指摘しています。
実際岸田総理は、先月24~27日に掛けて、自民党の麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長、萩生田光一政調会長、世耕弘成参院幹事長と、立て続けに会談。防衛費増額について話し合ったとされています。
わずか4日で中枢とこれだけの面会を重ねたのは異例のことで、閣僚経験者は「安倍政権では、なかったことだ」と漏らしています。
5.茂木の野望
そこまで、党内に気を使っている岸田総理が、今回不意打ち的に増税を口にしたのはなぜか。あるいは、萩生田政調会長を始めとして、党幹部含めてすべて承知の上で"プロレス"をやっている可能性も考えられます。
要するに、国民を宥めるために、萩生田政調会長や安倍派が殊更に反対してみせるポーズを取っているのではないかということです。現に萩生田政調会長自身、防衛国債発行を主張する一方で、あらゆる選択肢を排除しないと、増税を否定はしていません。
もし、プロレスではなかった場合、もう一つの可能性として、茂木幹事長が糸を引いていることもあり得ます。
先日来、自民党は国民民主を連立に引き入れるのではないかと報じられていますけれども、先述の山口敬之氏によると、この「自公国連立」説をリークしたのは茂木幹事長なのだそうです。なんでも、茂木幹事長は公明党と全くソリがあわないそうで、逆に、国民民主の玉木代表とは相性が良いのだそうです。
そこで、国民民主と組むというポーズを取って、公明党の発言力を弱め、言うことを聞かそうとしているというのですね。12月1日に公明党が、政府の「敵基地攻撃能力」保有方針を了承したのも、これが効いたのではないかとも囁かれています。
この自公国連立構想について、公明党関係者は「連立など簡単に組めるものではない。あり得ない」と反発。党重鎮も「そんなことをしたら連立崩壊だ」と怒り心頭。更に支持母体である連合の幹部も「国民を支援する民間労働組合は反対する。連立が決まれば国民は分裂するだろう」と厳しく受け止めています。
こんなことは誰でも分かる筈なのに、茂木幹事長が敢えて仕掛ける理由は何か。
もしかしたら、これは茂木幹事長が次か、次の次の総理を目指しての実績づくりのために仕掛けたのかもしれません。
10月28日、総合経済対策を巡って、財務省が抜け駆けしたのが発覚して、萩生田政調会長が激怒。一夜にして予算を25兆円から29兆円規模にまで上積みさせました。これで萩生田政調会長は大いに株を上げました。
一方、このままでは、萩生田政調会長が、次期総理候補1番手になってしまうと、焦った茂木幹事長が、巻き返しを図るために、自らの実力を誇示し、萩生田氏を超える実績を積もうと今回の仕掛けをしたのではないか。
茂木幹事長は、防衛力強化に関して、公明党に「敵基地攻撃能力」保有を認めさせる一方、党内から反発を受ける増税もすることで、その力を見せつけようとしているのではないかということです。
更に、茂木幹事長は、党内にその剛腕ぶりを見せつけるのは勿論のこと、財務省にも力を見せつけて一種の脅しをかけているのではないかとさえ。
今回、政府が増税が必要としたのは防衛費増額5兆円のうち1兆円です。政府全体の予算規模や外為特会の益などを考えるとこの1兆円はどうにでもなる額だと思われます。にも関わらず、政府は1兆円を増税で賄おうとしている。
茂木幹事長は、党内からも国民からも反発の買う増税という政策を通してみせることで、財務省に”貸し”をつくって、次期総理へのバックアップを得ると同時に、「俺のいうことを聞かないと何もできないぞ」と釘を刺しているのではないかということです。
今回、安保3文書をまとめ上げ、防衛力増強のための財源も確保したとなれば、茂木幹事長の株は萩生田政調会長のそれと肩を並べるか超えたと見做される可能性が出てきます。ゆえに、岸田総理の背中を押して、防衛増税をゴリ押ししているのではないか。
防衛力を強化するのは必要だとは思いますけれども、それを政局の道具としてあまり使って欲しくはないと思います。
この記事へのコメント
うたか
政府は金を出したくないから自分で他から奪えであり
自民党が緊縮のためによく使う新自由主義そのままで
財務省好みのやり方では?
本来やるべきは赤字国債を増発して地方交付税を増やすべきである