ゼロコロナを放棄した中国の感染爆発

今日はこの話題です。
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1.中国のゼロコロナ緩和十ヶ条


12月7日、中国国務院聯防聯控体制総合グループは「新型コロナウイルス流行の予防・抑制対策の一層の最適化・実施に関するお知らせ」を通知し、これまでの厳しい規制を緩和する新たな10ヶ条の措置を発表しました。

その10ヶ条は次の通りです。
1、リスク領域を科学的かつ正確に分類することです。建物、ユニット、フロア、および世帯に応じてリスクの高いエリアを描写し、住宅地、コミュニティ、道路 (タウンシップ) などのエリアに勝手に拡大してはなりません。あらゆる形態の一時封鎖を採用してはならない。

2、核酸検出をさらに最適化することです。行政区域によって全従業員の核酸検査は実施されておらず、核酸検査の範囲と頻度はさらに削減されています。防疫作業の必要に応じて、抗原検出を行うことができます。核酸検査は、関連する規制に従って、リスクの高いポジションの従業員とリスクの高い分野の担当者に対して実施され、その他の担当者は徹底的な検査を受けることをいとわない。老人ホーム、福祉施設、医療機関、保育所、小中学校などの特別な場所を除き、核酸検査陰性証明書は不要で、健康コードのチェックもありません。重要な機関、大企業、および一部の特定の場所では、予防および制御手段を独自に決定できます。核酸検査の陰性証明書と健康コードは、地域間移動者に対してチェックされなくなり、上陸検査は行われなくなります。

3、分離方法の最適化と調整です。感染者は入院し、科学的な方法で治療する必要があります.無症候性の感染者と自宅隔離の対象となる軽症の患者は、通常、自宅で隔離されるか、治療のために自発的に集中隔離を選択できます. 自宅隔離期間中は健康観察を強化し、隔離6日目と7日目に核酸検査Ct値35以上で2回連続で隔離を解除し、状態が悪化した場合は別の病院に移す。治療が間に合うように指定された病院。自宅隔離の条件を満たしている濃厚接触者は、5日間の自宅隔離の対象となるか、自主的に集中隔離を選択することができ、5日目に核酸検査が陰性になった後に隔離が解除されます。

4、リスクの高い場所に「クイックシールとクイックリリース」を実装することです。5 日間連続して新しい感染がない高リスク地域は、時間内に封鎖を解除する必要があります。

5、大衆が医薬品を購入するための基本的なニーズを確保することです。全国の薬局は通常どおり営業し、勝手に閉鎖してはなりません。解熱剤、咳止め、抗ウイルス剤、風邪治療剤などの市販薬のオンラインおよびオフラインでの購入は制限されません。

6、新型コロナウィルスの高齢者へのワクチン接種を加速することです。すべての地域は、可能な限り多くの接種を受けるという原則を堅持し、 60~79 歳の人々の予防接種率の増加に重点を置き、80 歳以上の人々の予防接種率の増加を加速し、特別な手配を行う必要があります。高齢者向けのグリーン チャネル、一時的なワクチン接種場所、移動式ワクチン接種車などの手段を設定して、ワクチン接種サービスを最適化します。レベルごとに接種禁忌の識別に関する訓練を実施し、医療スタッフが接種禁忌を科学的に判断できるように指導する必要があります。詳細な大衆科学の宣伝、社会全体を動員して高齢者のワクチン接種の動員に参加させ、地域は高齢者の予防接種への熱意を動員するための奨励策を採用することができます。

7、キーポピュレーションの健康状態の調査と分類管理を強化することです。草の根医療・保健機関の「ネットワークの底」とかかりつけ医の健康の「門番」の役割を十分に発揮し、循環器・脳血管疾患、慢性閉塞性肺疾患、糖尿病、管轄内の腎臓病、腫瘍、免疫機能障害およびその他の疾患と新型クラウンウイルスのワクチン接種状況を把握し、階層的かつ分類さ​​れた管理の実施を促進する。

8、社会の正常な運営と基本的な医療サービスを確保することです。非高リスク地域は、人の流れを制限してはならず、作業、生産、またはビジネスを停止してはなりません。医療関係者、公安、輸送および物流、商業スーパーマーケット、供給保証、水、電気、暖房、および基本的な医療サービスと通常の社会活動を保証するその他の担当者は、「ホワイトリスト」管理に含まれており、関連する担当者は良い仕事をしています個人保護、予防接種、健康監視において、正常な運用を確保する. 医療サービス、基本的な生活用品、水、電気、暖房などを提供し、通常の生産と作業秩序を維持するために最善を尽くし、大衆によって提起された緊急の問題を解決する.タイムリーな方法で、流行の状況下で大衆の基本的な生活ニーズを効果的に満たします。

9、流行に関連するセキュリティの保証を強化することです。非常口、ユニットドア、コミュニティドアをさまざまな方法で塞いで、医療や緊急脱出などへの公衆のアクセスを妨げないようにすることは固く禁じられています。独居高齢者、未成年者、妊婦、障害者、慢性疾患患者等の利便性を確保するため、地域と専門医療機関とのドッキングの仕組みの構築を推進する。閉鎖された職員、患者、最前線のスタッフのケア、ケア、心理カウンセリングを強化します。

10、学校の伝染病の予防と制御作業をさらに最適化することです。すべての地域の学校は、科学的かつ正確な予防と制御の要件を断固として実施する必要があります.伝染病のない学校は、通常のオフライン教育活動を実施する必要があります.キャンパス内のスーパーマーケット、食堂、スタジアム、図書館は通常どおり営業する必要があります. 疫病が蔓延している学校は、危険地域を正確に描写する必要があり、通常の教育と生活秩序は危険地域の外でも保証されなければなりません。
このように「10ヶ条」では、「高感染リスクエリアを建物、住戸単位とし、むやみに団地や地域の全体に拡大しないこと(第1条)」、「医療福祉機関や教育機関を除く一般の場所でPCR検査の陰性提示を不要とすること(第2条)」、「条件を満たした無症状感染者、軽症患者の自宅隔離を認めること(第3条)」など、これまでの厳しいゼロコロナ政策を緩和するものとなっています。

この、10ヶ条について中国のSNS上では「マイルストーン的なトピックだ」と歓迎する声が多く出ており、「もっと早くやるべきだった」「ちゃんと徹底されるかが心配」とのコメントも寄せられる一方、一部では全面的な規制緩和を憂慮するユーザーもいるようです。


2.中国全土で感染爆発


ところが、このゼロコロナ政策が緩和されるや否や感染が拡大しています。

中国メディアなどによると、北京市内の病院では、発熱の外来患者を受け付ける窓口に多くの市民が行列をつくり、中には6時間以上も並び続けた人がいたと報じられています。

現在、北京では市民の定期検査が廃止され、医療従事者などに対象が絞られたことから、公式発表の新規感染者数は急減。10日の市内の新規感染者は1661人と、国による対策緩和発表前日の3974から42%減少したことになっていますけれども、実際の感染者数ははるかに多いとみられています。

実際、11日には北京の発熱外来に1週間前の16倍にあたる2.2万人の患者が訪れ、救急センターの電話着信量も急増。9日には24時間の着信量は3.1万件で、通常の6倍に達したといわれています。

病院や救急センターはすでに負荷に耐えられず、北京の各病院の霊安室もすでに満杯で遺体を安置する場所がないというニュースすら流れているそうです。

これにより、北京の宅配業者の配達員も感染するなどしたため、宅配便の荷物は山積み状態。北京の街は封鎖解除したにも関わらず、道に歩行者も車もなく、地下鉄にも、首都に向かう列車にも乗客がおらず、ショッピングモールにも客がいない一方、薬を買う人たちは寒風の中で長蛇の列を作り、多くの薬や医療用品が品切れになっているそうです。

この状況にキャピタル・エコノミクスのアジア担当チーフエコノミスト、マーク・ウィリアムズ氏は「ゼロコロナ政策からの移行で個人消費はいずれ正常化するが、感染リスクの高まりで対面型消費は経済再開後も数カ月抑制されるだろう」とコメントしています。

経済の停滞から脱却するために、ゼロコロナを緩和してウィズコロナに移行した筈なのに、逆に経済が低迷してしまう。ウィズコロナの準備が十分ではなかったのでしょうけれども「、なんとも皮肉な話です。


3.責任追及を恐れて緩和しなかった現場


今回のゼロコロナ緩和は、例の白紙デモが引き金になったとも言われていますけれども、中国中央政府からの制限緩和の指示自体は11月11日に一度出ています。

これは、20ヶ条からなるもので、中国問題グローバル研究所所長の遠藤誉氏によると、次の通りです。
 1.濃厚接触者に対して、これまで行ってきた<「7日間の集中隔離」+「3日間の在宅隔離」>(=<7+3>)を、<5日間+3日間>(=<5+3>)に調整する。
 2.濃厚接触者を適時正確に判定し、濃厚接触者との(二次的)接触者まで追跡しない。
 3.コロナ感染ハイリスク地域から外に出た人を「7日間、集中隔離」から「7日間、自宅隔離隔」へ。
 4.高リスク、中リスク、低リスク地域の三段階分類を高リスク、低リスク地域の二段階分類にする。
 5.高リスク職業の人員を7日隔離・自宅隔離から5日間自宅健康観察へ。
 6.PCR検査は正確に重点的に、範囲の拡大をしない。
 7.入国航空路線のサーキット・ブレーカー制度を取り消す。チェックイン48時間以内2回PCR検査を1回へ。
 8.入国する重要商務関係者、スポーツ関係者はバブル方式で。
 9.入国者のPCR検査Ct値基準、一度感染した人は自宅隔離期間3日内に2回PCR検査。
 10.入国者の隔離期間も<7+3>から<5+3>へ調整。
 11.医療資源建設を強化し、ベッド数や重症ベッドを用意し、治療資源を増やす。さらに各分類の治療方案、各種症状厳重度の感染者の入院基準、医療機構に感染が発生した時の方案を準備する。
 12.ワクチン接種を早める。特に高齢者のワクチン接種を推進する。
 13.コロナ関連薬品の備蓄を早める。
 14.老人、妊婦などを重点的に守る。
 15.検査、報告、調査などの処置を早める。
 16.「層層加碼」の取り締まりを強化し、むやみに封鎖することを禁止する。
 17.封鎖隔離されている人々の生活保障を強化する。
 18.学校の防疫措置を最適化する。
 19.企業と産業パークの防疫措置を改善する。
 20.滞留人員(出張先などで突然封鎖を受け身動きできなくなっている人々など)を分類し、秩序をもって開放すること。
中身は今回の10ヶ条と左程変わらず、入国者に関する項目が増えている程度に見えます。にも関わらず、何故、改めて今回の10ヶ条を出したのか。

11月の20ヶ条うち第16条に「層層加碼」の取り締まりを強化し、むやみに封鎖することを禁止する、とあります。

これは、一層ずつ下のレベルに行くたびに割り増しして封鎖を厳しくするということを意味していて、たとえば中央政府が「A」という程度の封鎖指示を出したとすると、そのすぐ下の行政レベルは「A+α」の厳しさで封鎖を要求し、さらにその下の行政レベルになると「A+α+α」というように、次々と上乗せされ「A+α+α+α+α+‥‥」という具合に、際限なく厳しくなっていくという現象のことをいうのだそうです。

第16条ではこれを禁止していたのですけれども、先述の遠藤誉氏は、末端の現場は万が一緩和政策が失敗して感染が拡大した時の責任を取らせられるのを恐れて、この「緩和指示」を実行してこなかったと指摘しています。

いくら上が指示を出したとて、下がそれを守らないのであれば、指示を出した意味が全くありません。

今回の10ヶ条ではどんな手を使ったのか分かりませんけれども、一応、現場は指示に従って、緩和しました。けれども、その結果が「感染拡大」であれば、そらみたことかと、またぞろ「ゼロコロナ政策」に戻らないとも限りません。

末端は責任を取らされると恐怖に怯えているかもしれませんけれども、逆にいえば、どの末端から責任を取らせられるかによって、今回の緩和指示がどのレベルから下りてきているのか、ある程度、目安がつくのかもしれませんね。


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