国民の責任発言と揺れる自民党

今日はこの話題です。
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1.国民の責任発言を修正した岸田総理


12月14日、自民党は党のホームページで、岸田総理が13日の役員会で防衛費増額に伴う財源の一部を増税で賄う方針を示した際に「今を生きる国民の責任」と発言したと幹部が紹介した内容を「今を生きるわれわれの責任」に修正しました。

件のホームページの該当部分は次の文章です。
一方、今、議論しているのは、新たな脅威に対し、ミサイル、戦闘機等の防衛能力を抜本強化し、日本人の暮らしと命を守り続けるという話。責任ある財源を考えるべきであり、今を生きる我々が、自らの責任として、しっかりその重みを背負って対応すべきものである。自らの暮らしを守り、国を守るという国民一人一人の主体的な意識こそが何より大切なことは、ウクライナの粘り強さが示している。このことも十分念頭に置いて議論を進めていただきたい。役員の皆さんのご協力を改めてお願いする。こうしたお話がありました
マスコミは、岸田総理はこの部分を「国民の責任」と発言したと伝えていました。

これは、政府関係者によると、事前に用意した発言案には「国民」と記されていたそうで、役員会後、茂木幹事長が記者会見で岸田総理発言を紹介した際、事前に用意されていた発言案に沿って「国民の責任」と説明したため、マスコミはそれを引用して報じたようなのですね。

けれども、岸田総理は「国民の責任」とした当初案に対して、これでは上から目線になる、として実際に発言したときには「我々の責任」と言い換えたようです。

これについて政府は、国が上から責任を押し付ける意味では全くないと釈明していますけれども、すくなくとも、この文章の当初案を考えた人物は、そのような意識があったのではないかと言われても仕方ないと思います。その意味では「上から目線」だと感じて発言を修正した岸田総理には若干なりとも国民目線の感覚があったことになります。




2.なんだかんだ言っても結論は同じ


けれども、今は、一旦報じられたことはあっという間に拡散していきます。

ツイッターでは、#国民の責任というハッシュタグが作られ拡散。「30年、国を豊かにすることに失敗した政府に言われたくない」、「連帯責任に言い換えただけじゃねぇか(ꐦ°᷄д°᷅)💢」、「自民党殿 #国民の責任 とは,政策遂行に対する責任を放棄されたのでしょうか?」など炎上しました。

そして、岸田総理が「国民の責任」を「我々の責任」に言い換えていたと報じられた後も「なんだかんだ言っても結論は同じ。幼稚な修正など受け入れられません。修正するなら防衛費だろう」、「我々の社会では一度でも口から出た言葉は修正出来ません。謝罪してから訂正するのが筋です。一般の声は聞こえないようですね」、「嫌われる勇気、はない」、「詰んだな」など、厳しい声が飛びかいました。

挙句の果ては、岸田総理が自らの功績を記したツイートには、過去最多となる1万5000件以上のリプライが寄せられています。

件のツイートは「今年の漢字が発表されましたが、私の今年の漢字は「進」です。歴史を画するような様々な課題に対して、悪質な献金被害の救済新法や防衛力の抜本強化、新しい資本主義の具体化などを、一つ一つ進めており、また、来年も進めていきます」と岸田政権の重要課題と来年への決意を述べたのですけれども、これに対し、「重要なのは方向です」「『税』の方がいいんじゃないですか?」、「応援コメントがほとんど無い。ある意味凄い」、「明らかに国民を馬鹿にしすぎでは? 国民に責任転嫁するってどういう考えなの??」とフルボッコになっています。

兵庫県明石市の泉房穂市長も引用リツイートで「『一つ一つ進めており、来年も進めていきます』と書いておられるが、これだけ支持率も下がり、増税に対する批判も続いているのに、平然と『進めていきます』と書ける気持ちが理解できない」と国民感情との乖離を指摘していますけれども、そう批判されるもの無理からぬところです。




3.内閣府の税収試算


その問題となっている防衛増税ですけれども、党内でも批難轟轟です。

12月13日、増税による財源確保に慎重な立場である自民党の城内実衆院議員らが呼びかけ会合を行い、自民議員20人程度が出席しました。

出席者によると、参加議員からは「増税方針を決めるまでの岸田首相の決定プロセスはあまりに乱暴だ」などの批判や、「増税する税目などを税調幹部だけで一方的に決めるようなことになれば政局になる」との声があり、中には、「内閣不信任案に値する」といった批判まで飛び出したそうです。

また、財源確保策として、東日本大震災からの復興特別所得税の仕組みを転用する案については、「税の目的外使用だ」といった指摘や、増税の検討そのものを問題視し「防衛費に悪い印象を与えるための財務省の陰謀だ」といった意見も出たとのことです。

更には、会合で、萩生田光一政調会長について「増税を明確に否定していない」などと、萩生田氏の姿勢に対する不信感の声もあがったそうですから、相当なものです。

これは、防衛増税を議論している自由党の税制調査会でも同様で、多数が反対したようです。

ここでの反対意見について、自民党の青山参院議員は自身のブログで次のように述べています。
「防衛増税に反対する立場から、2点に絞って、発言します」

▼ひとつ。
 実は内閣府の試算によると、来年度から2027年度まで、つまり総理が毎年度1兆円分増税すると突如として岸田総理が仰ったあいだ、最低でも毎年度9000億円、うまく行けば2兆4500億円の税収増があるのです。
 どこに増税の必要があるのですか ?
 財務省は、同じ政府の内閣府がことし7月に経済財政諮問会議に正式に提出したばかりの試算を、否定するのですか ?

 ひとつ。
 アメリカが前政権のときおよそ7兆円もの国防費の増強をして、トランプ大統領 (当時 ) が「歴史的拡大」と胸を張ったとき、増税の議論が一切無かった。
 歳出の改革で賄いました。
 なぜか。
 トランプ大統領だったから独特のやり方をした・・・いえ、違います。
 国防は国家の任務の基本中の基本であり、その費用を増やすからといって、受益者負担の話のように増税を求めることはしない、それが国際常識だからです。
 国防を受益者負担の1項目のように扱えば、日本は国家と言えなくなります。

▼議論の全体像は、またあらためて、お話をしますが・・・

・・・今日も、防衛増税への反対論が圧倒的に多かったです。
 閣僚にもふたり、反対論。
 高市経済安保担当大臣と西村経産大臣ですね。
 長時間の議論のなかでは賛成論も、もちろんありました。しかし客観的に、間違いなく少数派です。
青山議員が「内閣府がことし7月に経済財政諮問会議に正式に提出したばかりの試算」とは、7月29日提出の「中長期の経済財政に関する資産」のことと思われます。

この報告では、日本の全要素生産性が今の0.5%から1.4%程度まで上昇する「成長実現ケース」と、全要素生産性が0.6%程度で推移する「ベースラインケース」の2つのケースに分けて試算しています。

報告書のP.7~P.8に「国の一般会計の姿」という表があり、ここの税収等の欄をみると、経済成長ケースで2022年から順に70.7兆円、72.3兆円、74.9兆円、78.2兆円、81.1兆円と推移。ベースラインケースでも、同じく2022年から70.7兆円、72.3兆円、72.7兆円、74.5兆円、75.3兆円と推移しており、確かに1兆円程度であれば、この税収増だけで賄えるようにみえます。




4.揺れる自民党


こんな異論反論だらけの状態で果たして、どうやって纏めるというのか。

自民党幹部によると「この件で事前の根回しはなかった」とか「これを埋めるために、こうしたいというなら分かるけど。何もやってないうちから、税の話をするのはおかしくないか」の不満の声や党のベテラン議員からも「岸田政権の力が弱いからだよ。政権支持率が高い時に、ここまで身内から異論は出ないでしょ」との指摘もあるようです。

ただ、党内には、明確な“ポスト岸田”という存在が居ないことや、国政選挙がしばらくないことなどを背景に“岸田降ろし”といった、政局の雰囲気はないようです。

自民・公明は与党として15日にも、増税案をまとめる予定なのですけれども、果たしてどうなるのか。自民党税制調査会の宮沢洋一会長は幹部会合後、記者団に増税案について「全員賛成をしていただいた」と、大筋合意したことを明らかにしたと報じられていますけれども、後々禍根を残すかもしれませんね。

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