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1.イーロン・マスクのツイッターCEO退任
12月20日、ツイッターのイーロン・マスクCEOは、「私はこの仕事を引き受けてくれる馬鹿げた人を見つけ次第、CEOを辞任するつもりだ……その後、私はソフトウエアとサーバーのチームを運営するだけだ」と、ツイッター社の最高経営責任者(CEO)を退くと表明しました。
マスクCEOは10月下旬にツイッターを買収して以来、次々と経営改革を進めてきました。
マスクCEOはサブスクリプションサービスのTwitter Blueをリニューアルして青い認証済みバッジの購入や、広告の半減といった特典を打ち出したほか、従業員の大量解雇を行って経費削減に努めるなどの改革を行いました。
12月18日、ツイッターは「ツイッター上で特定のSNSについて無料で宣伝することを禁止する」新たな利用規約を発表。他のソーシャルメディアを宣伝するためだけのアカウントを削除するほか、フェイスブック、インスタグラム、マストドン、トゥルース・ソーシャル、トリベル、ノストル、ポストといった競合SNSへのリンクやユーザーネームを含むコンテンツを排除するとしました。
マスクCEOはユーザーからの質問に、「気軽にたまにリンクを共有するのは構わないが、絶え間なく無料で競合を宣伝するのはおしまいだ。極めて不条理だ」と答えていました。
翌19日に、ツイッター社の安全対策アカウントが、この競合SNSの宣伝を主目的とするアカウントの開設や使用を禁止すべきかどうかの規約について、アンケートをとったところ、回答した約32万7000票のうち87%が「ノー」と答えました。
この結果を受けて、マスクCEOは、「今後は大きい方針変更については前もってアンケートをとる」とツイートし、「謝る。二度とこうしたことは起きない」と投稿しました。
そして、マスクCEOは、この次のツイートで、自身の進退に関するアンケートを行ったのですね。
この日マスクCEOは、ツイッターユーザー1億220万人のフォロワーに対し、「自分はトップを降りるべきか? この投票の結果に従う」という説明と共に、「はい」と「いいえ」の2択のアンケートを開始したのですね。
このアンケートには1750万人以上が投票し、そのうち57.5%がマスクCEO退任に「イエス」と答えました。アンケート終了直後には本当に退任するのかどうか怪しむ向きも一部あったのですけれども、マスクCEOは自ら退任を宣言した訳です。
2.彼はそれを所有しているのだ
ただ、アメリカのインターネットメディアの「The Intercept」は、「イーロン・マスクがツイッターのCEOになるかどうか、誰が気にする?彼はそれを所有しているのだ」という記事で次のように述べています。
・ ツイッター社は、Covid-19に関する虚偽または誤解を招く情報を抑制するための政策を終了したと発表した。これは、節度なき言論の場としてソーシャルネットワークを作り直すという、マスク氏の極論的なミッションの一部である。まぁ、この記事はイーロン・マスクCEOに対してネガティブな内容ではあるのですけれども、マスク氏がツイッターのオーナーである以上、誰がCEOになろうが、依然としてマスク氏のコントロール下にあるという指摘はその通りだと思います。
・投票が行われ、イーロン・マスクはツイッターのCEOを退任することになった。
・これを書いている時点では、マスク氏が実際にこれを実行するかどうか、実行するとしたらいつなのか、確認はとれていない。もしそうなら、いつになるのか?しかし、誰がそんなことを気にするのか?最終的には、ほとんど、あるいはまったく違いがない。
・このような時、資本主義の仕組みを思い出すことが重要だ。企業を所有する人々が、その企業の行動を決定する。このオーナーは通常、取締役会を雇い、その取締役会が会社の最高経営責任者を雇う。取締役会は、CEOの業績が気に入らなければ、CEOを交代させる。オーナーは、取締役会を気に入らなければ、取締役を交代させる。
・もちろん、これよりもっと複雑な場合もある。株式公開企業、つまり誰でも株式市場で現在の価格で株を買うことができる企業では、所有権が極めて拡散していることが多い。
・現在、アメリカの多くの企業の筆頭株主は、バンガード社のようなインデックスファンドであり、そのインデックスファンドは何百万人もの人々によって所有されている。このため、「プリンシパル・エージェント問題」と呼ばれる、プリンシパル(この場合、会社のオーナー)がエージェント(経営者)に対してコントロールを及ぼすことが困難な状況がしばしば生じる。
・401(k)に加入している人は、ほぼ間違いなくアメリカの大企業の株をほんの少ししか持っていないが、その会社の経営には何の影響力もないし、知識さえもないのだ。企業の経営者は常にこのような力学を利用して、会社の所有者を犠牲にして(言うまでもなく、経営者以外の従業員も犠牲にして)自分たちを豊かにしているのだ。
・また、メタ社のような変則的な企業構造も存在する。メタ社はクラスA株を保有しており、この株式は公開され、コーポレート・ガバナンスに関する事項でそれぞれ1票の議決権を有している。そして、過去1年間で、メタ社のクラスA株の価値は70%近くも下落した。通常の企業であれば、メタ社のクラスA株の約13%しか保有していないマーク・ザッカーバーグは、株主の反乱に直面し、CEOを解任される可能性が高いだろう。しかし、メタ社には公開されていないクラスB株もあり、1株あたり10票の議決権がある。ザッカーバーグは、メタ社のクラスB株の90%を所有しており、最終的に会社の活動に対して約60%の議決権を持つことになる。したがって、彼は自律的であり、解雇されることはない。
・しかし、ツイッターの場合は、そのどちらも当てはまらない。ツイッターは非上場企業であり、証券会社に電話して株式を購入することはできない。株式の種類は1つだけだが、マスク氏はその大半を所有しているので、それで構わない。彼は、誰を会社の経営者に任命するのも自由だ。買収した後、彼は自分を指名した。しかし、たとえ今、彼がこの世論調査を守って他の人を雇ったとしても、最終的な責任者は彼であることに変わりはない。新CEOの業績が気に入らなければ、理由の如何を問わず、CEOを交代させることができるのだ。
・主な問題は、単にツイッターが純粋にビジネスとしてダメだということだ。
・この架空の人物(新CEO)は、マスク氏が直面したのとまったく同じ問題に直面することになる--ただし、マスク氏が毎日毎秒首に息を吹きかけてくることを除いては。主な問題は、ツイッターが純粋にビジネスとして悪いものであるということだ。2013年に上場して以来、年間利益を上げたのは2018年と2019年の2回だけだ。2020年には10億ドルを失い、2021年にはさらに2億2200万ドルを失った。マスクはこのお金の穴を利用し、120億ドルを借りて買収を完了することでさらに吸引力を増し、借金の利子で12億ドルの年間追加コストを会社に発生させたのだ。
・マスク氏は、マスク氏以前の時代にはTwitterの収益の90%を提供していた広告主を脅かすことで、ツイッターに内在する問題を悪化させたことは事実だ。理論的には、有能な新CEOは、ツイッターの広告顧客のところに行って、彼らに言うことによって時間を戻そうとすることができる。前任のCEOは父親から精神的な傷を負わされ、深い悩みを抱えた変人だ。彼に対するあなたの懸念は間違いなく理解できるが、幸いにも彼はもう関係ないのだ。
・マスク氏はもう関係ないが、その場にいた誰もが、会議が終わる前にツイートで新CEOが解雇されるかもしれないことを知っていたはずだ。
・そして、現在のツイッターでは、他にもっともらしい収入源は見当たらない。Twitter Blueのユーザーは毎月8ドルを会社に送金しているが、広告の半分しか見えていない。また、ユーザーの獲得と確認にコストがかかっている。新しい青いチェックマークが付くたびに、同社がかろうじて収支を合わせているのはもっともな話だ。
・信じられないことに、ゲームジャーナリストであり、地球温暖化を否定する、極めて変わった人物であるIan Miles Cheong氏は、マスク氏にこのことを話したとき、完全に正しいことを言った。
・つまり、ツイッターが生き残るには、まったく別の会社に変身するしかないだ。それは不可能ではない。例えば、マスク氏がCEOに就任する前、ツイッターはアダルト系SNS「OnlyFans」の競合になる可能性を探っていた。アダルトコンテンツクリエイターサイトの今年の純収益は25億ドルと予想されており、そこには大きな資金がある。
・一方、そうなれば、ほとんどすべての大口広告主がこのプラットフォームから逃げ出すことは確実だ。そして、マスク氏の多くの右翼的なファンやテスラの株主にとっては、驚きとなることは間違いないだろう。
・つまり、ツイッターが直面しているすべての激震は、他の人間には解決できそうもない構造的な問題であり、むしろ -そう思いたくなるほど-マスク氏個人に固有の欠陥なのだ。この壁のレンガを別のレンガに置き換えても、おそらく資本主義の津波に押し流されることになるのだ。
・とはいえ、ツイッターが市民による言論と自由な発言の場として強化されるような、ひとつの可能性のある道があるかもしれない。残念ながら、この方向だけは、マスク氏が進むことはないだろう。
3.彼は価値を創造したとも、破壊したとも言える
Bloomberg Mediaの前CEOで、元Atlantic Mediaの社長のジャスティン・B・スミス氏 とニューヨーク・タイムズの元メディア・コラムニストで、元BuzzFeed Newsの創設編集長のベン・スミス氏の二人が共同設立者として今年設立したネットニュース「Semafor」は、16日、「イーロン・マスクのチームはTwitterへの新しい投資家を探している」という記事を掲載しました。
それによると、マスクCEOの資産を管理するジャレッド・バーチャル氏は、見込みのある投資家に連絡を取り、マスク氏が10月に ツイッター社を非公開化するために支払った価格と同じ 54.20ドルでツイッターの株式を売り出したそうです。
バーチャル氏は「ここ数週間で、ツイッターへの投資を求める多数のインバウンド リクエストを受け取った……したがって、年末決算を目標に、当初の価格と条件で普通株式の追加の株式公開を発表できることを嬉しく思っている」と述べています。
なんでも、マスク氏の最初のツイッター買収に100万ドル未満の資金を出したテスラの投資家であるロス・ガーバー氏は、440億ドルの評価額で別の資金調達について連絡を受けたことを明かしたそうです。
これについて、ガーバー氏は、検討はしているが、どのような計画なのかはっきりさせたいとし、「彼はツイッターで価値を創造したとも、価値を破壊したとも言える。現時点では判断しかねる」とコメントしています。
これらの動きについてSemaforのリズ・ホフマン記者は、次のような見解を述べています。
・価値が急速に暴落している資産に全額を支払うよう投資家に求めるのは、難しいことだろう。このように、マスク氏はツイッター買収によって資金難に陥っていると指摘しています。
・マスク氏はツイッターを救い、ソーシャルメディアをきれいにするアイデアを持っているかもしれないが、それを実行するための資金が不足している。
・ツイッターはこの買収のために130億ドルの負債を抱え、年間約10億ドルの利払いが発生する。これは、ツイッターが昨年生み出した資金よりも多い額で、コンテンツを取り締まるマスク氏のほとんど何でもありのアプローチに嫌気をさした広告主が、このプラットフォームから逃げ出す前の話だ。
・マスク氏自身、財政難に陥っているようだ。彼は水曜日にさらに36億ドル相当のテスラ株を売却したが、これはおそらく負債を減らすためにツイッターにもっと資本を投入するためだろう。4月に「もう終わりだ」と発言して以来、テスラ株を売却するのは3度目だ。
・マスク氏自身は、ツイッターに過剰な支払いをしたことを認めており、現在、同じように支払いをするよう人々に求めている。
4.健全に議論できる共通のデジタル広場
では、そもそも、なぜ、そこまで資金を投じてマスク氏は、ツイッターを買収したのか。
これについて、マスク氏は10月27日に自身の考えを表明しています。
マスク氏は自身のツイッターで、買収の理由について憶測が多く流れているとし、「ツイッター買収の動機を共有したい」としてコメントを発表。Twitterを買収するのは、「暴力に訴えることなく、幅広い信条について健全に議論できる共通のデジタル広場を持つことは文明の未来にとって重要」と説明しています。
マスク氏は、現在のソーシャルメディアは、極右と極左のエコーチャンバーに分かれ、さらなる憎悪を生み、社会を分断する危険性があるとした上で、従来のメディアの多くは、アクセス数を追求して二極化をあおり、対話の機会が失われていると主張。こうした状況がツイッターを買収する背景にあり、人類のためでありお金もうけのためではないと述べています。
その一方で責任を負わずになんでも発言できる場にはできず、法に従い、全ての人を温かく迎える場でなくてはならない、とも語っています。
マスク氏は広告についての見解についても述べており、「関連性の低い広告はスパムだが、高い広告はコンテンツだ」と適切な広告はユーザーに喜びや情報を与えるとし、ユーザーのニーズに合致した広告を表示することが不可欠と語っています。
この時、マスク氏はツイッターは、ブランドを強化し企業を成長させる世界で最も尊敬される広告プラットフォームを目指す、とし、「素晴らしいものを一緒に築こう」と広告主に呼びかけていたのですけれども、現時点では広告主が、それに賛同するどころか逃げ出しているのが現状です。
仮に、マスク氏がツイッター株の大半を売却することができたとしても、そのときマスク氏は唯一絶対のツイッター社のオーナーではなくなります。必然的にツイッターのCEOも好き勝手できなくなります。
果たして、その時のツイッターはマスク氏の願った「幅広い信条について健全に議論できる共通のデジタル広場」になっているのか。まだまだ紆余曲折がありそうです。
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