増大する感染リスクにおびえる人民

今日はこの話題です。
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1.平安塩野義有限公司のゾコーバ


武漢ウイルス感染拡大が止まらない中国で、当局が医薬品の確保に乗り出しました。

12月23日、塩野義製薬は、国産初となる武漢ウイルス感染症の飲み薬として緊急承認された「ゾコーバ」について、中国との合弁会社である「平安塩野義有限公司」が、大手製薬グループ上海医薬の子会社「上薬控股有限公司」と、中国大陸地区における輸入・流通契約を締結したと発表しました。

塩野義製薬は中国でゾコーバの承認申請に向けて当局に資料を提出しており、承認取得後に迅速に販売を開始。「上薬控股有限公司」はゾコーバの独占的な中国への輸入と医薬品卸への販売を担うようです。

塩野義製薬は中国国内での生産について年内に準備を整え、来年の生産開始を目指しているとしています。

更に、中国医薬健康産業は12月14日、アメリカ・ファイザー社の武漢ウイルス経口治療薬「パクスロビド」を中国本土で輸入・販売する契約を結んだと発表しています。

「パクスロビド」については、今年2月、国家医薬品監督管理局が、緊急審査を経ての輸入を条件付きで承認し、3月9日に、中国医薬健康産業が中国大陸市場での販売権を獲得したと発表していました。

それが今になって、また輸入販売契約を結ぶなど、3月からこのかた何をやっていたのかと思わなくもないですけれども、今現在、治療薬の確保・流通に躍起になっていることだけは間違いないようです。

実際、販売契約が発表された週には、早くも中国のオンライン医薬品販売会社が、初めて一般向けにパクスロビドの販売を開始しています。


2.戦狼の攪乱


けれども、治療薬を慌てて輸入したところで、数と流通の問題はすぐに解決する筈もありません。

12月24日、香港メディアは、中国外務省の趙立堅報道官が感染し、自宅で療養しているとみられると伝えています。

それによると、趙報道官の妻が、SNSに「あなたは1週間以上も発熱が続いている。消炎剤や風邪薬、解熱剤も買えない」などと投稿。その後、近所の人に解熱剤をもらった
と書き込んだそうですけれども、投稿はすでに削除されているとのことです。

これに対し、ネット上では、「幹部に薬がないなら一般市民だって手に入らない」、「彼も薬が買えないとは思わなかった」などの声が上がっているそうですけれども、共産党幹部ですら薬が手に入らないなど俄かに信じ難いのですけれども、医薬品の枯渇といい、まるで直前までゼロコロナ解除を想定していなかったのではないかと疑いたくなります。

一部メディアによると、武漢ウイルス感染は共産党高官にまで浸透しているようで、19日、「Radio Free Asia」は、ゼロコロナ緩和前から北京で感染が広がり、多数の退職した高官が死亡したと伝えています。

また、中国人民解放軍総合病院(301病院)の発熱クリニックの現在の流行に関する会議議事録によると、現在、クリニックを訪れる人の数は通常の10倍であり、重症化率は高齢者の死亡率は10%を超え、高齢者の重症化率は約10%、超過死亡率は約10%.5%となっているとのことです。


3.新規感染者発表も取りやめ


そんな状況にも関わらず、中国当局は感染状況の隠蔽に走りました。

12月25日、中国国家衛生健康委員会は、毎日行っていたウイルス感染者と死者の人数公表を同日から取りやめると発表しました。発表では取りやめの理由に触れておらず、今後は中国疾病予防コントロールセンターが「コロナ関連情報を研究と参照用に提供する」としています。

そんな中、東部・浙江省の政府は25日、一日あたりの新規感染者が100万人を超えていると発表しました。浙江省は人口およそ6500万で多くの日系企業が拠点を置いているのですけれども、省の保健当局は、この年末年始に感染がピークとなり、一日あたりの新規感染者は最大で200万人に上る見通しだとしています。

また、遡って23日には山東省青島市の衛生当局幹部が、新規感染者が1日あたり49万~53万人で推移しているとの見方を示し、広東省東莞市の保健部門も感染者が1日あたり25万~30万人の規模で増えていると明らかにしています。

今後、省レベルでも感染状況が発表されないようになるのかもしれませんけれども、世界保健機関(WHO)は加盟国に感染者数や死者数などのデータを毎週報告するよう求めています。

中国政府の感染状況発表取りやめはWHOの要求に背を向けることになり、国際的な批判が集まることが予想されます。


4.ゲノム解析も禁止


中国の隠蔽は感染状況だけではありません。

中国政府が11月下旬、中国内に拠点を置く民間の受託解析企業に対し武漢ウイルスのゲノム配列の解析を当分の間、行わないよう通知していたことが関係者の証言で明らかになりました。

もっとも、中国の保健当局は遺伝子解析や分析を続けるとみられ、民間企業や研究機関が自主的に遺伝子解析することに制限をかけるようです。

中国政府はこれにより、国内で新たな変異株が発生した場合などに、国内外の世論に与える影響を最小限に抑える狙いがあるのではないかと見られていますけれども、世界からみれば、かえって変な疑いを掛けられることにもなりかねず、逆効果だと思います。

案の定、ネットでは「新しいの撒く準備かな」とか「新たな変異株が発生してもウチは知らん…とw もしかしたら、もう発生してる可能性もあるな」とか「なんかもう国家としての役割を放棄してないか」など疑念の声が上がっています。


5.新変異株の恐怖に震える中国ネット民


まだ噂の段階ですけれども、中国国内では、あらたな変異株が発生したのではないかとの声が上がっています。

12月23日、自由時報や捜狐新聞は、最近「新型コロナに感染した後、舌が黒くなって目がひどく腫れるなどの異常な症状が出た」と訴えるネットユーザーが急増していると報じました。彼らはウェイボー(微博)などのSNSに写真や動画を載せ、「新たな変異株が発生したのではないか」と主張しています。

例えば、天津市内のある男性が「全身が痛くて悪寒がする。まるで大きな手術を受けた後のようだ」として、舌のほとんどが黒くなり、歯の間からも黒い色が見えている動画を掲載しました。

また、安徽省に住むある女性も動画を投稿し、武漢ウイルス検査で陽性反応が出た後、高熱・声がかれる、嘔吐、下痢などの症状が出たと話す。その後、感染判明4日目から急激にやせ、唇と顔の皮膚がはがれ、顔が黒くなったと主張。「実の母親さえも私だと分からなかった」と述べています。

自由時報は「このような症状が相次いで見つかるや、中国のネットユーザーの間では『オミクロン株の感染が中国で広がる過程で新たな変異株が発生したのでは』という懸念が取りざたされている」と報じています。

日本でも武漢ウイルスに感染した後、回復したかのように見えても、様々な後遺症があると報告されていますし、"異常な症状"とはいえ、まだ断定はできません。その意味でも、ゲノム解析を民間にどんどんやらせて正体を明らかにしていく必要があるとは思います。


6.生肉を水道水で洗うな


ただ、やはりというか、中国政府が隠蔽すればするほど、人民の疑念はどんどん膨らんでいきます。

中には、オミクロンが変異したのではなく、人工的につくられた変異株がばら撒かれたのだという説まででているのだそうです。

ジャーナリストの鳴霞氏によると、共産党政府内の権力闘争絡みで、中国国内に120種類の変異株がばら撒かれたのだという風説だとか、北京市の水道の水をウイルス検査したところ、そこから武漢ウイルスが大量に検出されたという話まで出ているそうです。

これが本当かどうか分かりませんけれども、もし誰かが水源にウイルスをばら撒いたとしたら、まるで映画や漫画の世界です。これでは、あっという間に感染が拡がる筈です。

噂では北京市当局から生肉を水道水で洗うなとのお達しが出ているそうですけれども、開いた口がふさがりません。

鳴霞氏によると、最近、コウモリ由来のウイルスの著名研究者で「バットウーマン」の異名を持つ、石正麗氏が北京に派遣されたことを指摘し、水道水にウイルスが混入したことと関係があるのではないか怪しまれていると述べています。

鳴霞氏は、感染者の肺が真っ白になっていることから、2年前に発生した、初期の武漢株が未だに残っていて、それが拡がっている可能性もあるとも指摘しています。




7.日本渡航に必要な手続


日本は武漢株もデルタ株もオミクロン株も経験していますから、そこからの変異種であれば、さほど心配することはないかもしれませんけれども、25日のエントリー「感染を止められない隠蔽中国」でも取り上げたように一部からは入国制限すべきだとの声も上がっています。

ただ、今でも、全くノーチェックで入国させている訳ではありません。

在中日本大使館のサイトには12月19日付で「日本渡航に必要な手続」が規定されています。それは次の通りです。
 有効なワクチン接種(3回)証明書を保持している方は、日本渡航前にPCR検査を受ける必要はありません。10月11日から、世界保健機関(WHO)緊急使用リストに記載されているワクチン(中国製ワクチン含む)は「有効なワクチン接種(3回)証明書」と見なされます。

1.ワクチン接種証明書
 有効なワクチン接種(3回)証明書を保持している方は、日本渡航前にPCR検査を受ける必要はありません。10月11日から、世界保健機関(WHO)緊急使用リストに記載されているワクチン(中国製ワクチン含む)は、「有効なワクチン接種(3回)証明書」と見なされます。
 「有効なワクチン接種(3回)証明書」については、厚生労働省のHPを御覧ください。また、中国製ワクチンについては、微信(Wechat)上のミニプログラム「防疫健康碼国際版」で取得できる「国際旅行健康証明(International Travel Health Certificate)」を利用することをお勧めします。

2.PCR検査
 有効なワクチン接種(3回)証明書を保持していない方は、引き続き、出国前72時間以内にPCR検査を受け、医療機関が発行した検査証明書を提示する必要があります。検査を受ける際は、厚生労働省のHPで採取検体及び検査法を十分ご確認下さい。検体として、咽頭ぬぐい液(Throat Swab)は認められません。
 検査証明書へ記載すべき内容は以下のとおりです。これらの内容が記された「参考様式」(日本語・英語)(中国語)があるので御利用ください。「参考様式」を利用しない場合は、検査証明書に加え「検査申告書」を自ら作成してください。
 ア 氏名、生年月日
 イ 採取検体、検査法(「参考様式」に記載があるものに限る)
 ウ 検査結果、検体採取日時、検査証明書交付年月日
 エ 医療機関名
 当館管轄地域内で、日本渡航のためのPCR検査が可能な医療機関は、当館が把握している限りでは下記のとおりです(12月16日現在)。なお、当館としてこれら医療機関を推薦、斡旋するものではありません。検査予約の際には、検体(鼻咽頭ぬぐい液)を必ず確認してください。また、検査証明書の記載内容に記入漏れや誤字等の不備がないかどうか、必ずご自身でよく確認ください。(※:「参考様式」は使用しないので、検査証明書に加え「検査申告書」を自ら作成してください。)
【北京】
 ◦北京サンファイン国際総合病院(善方医院) 010-6413-6688
 ◦北京医院※ 010-8513-3224
 ◦協和医院※ 010-6915-6114
【天津】
 ◦天津利諾康医学検験実験室 159-0021-2757
【武漢】
 ◦武漢亜州心臓病医院※ 400-888-4027
【西安】
 ◦陝西九州医学検験有限公司 400-0560-963
【鄭州】
 ◦艾迪康※ 0371-5595-7301

3.「Visit Japan Web」
 検疫を円滑に行うため、日本入国前に「Visit Japan Web」の利用をお願いします。「Visit Japan Web」では、検疫、入国審査、税関申告の手続をあらかじめオンラインで行うことができます。

4.日本入国後
 新型コロナウイルスへの感染が疑われる症状がある方を除き、日本入国後の検査や待機は不要になっています。

5.日本政府からのお知らせ
 肉製品や果物・野菜等は日本に持ち込めません!
このようにワクチンを3回接種していれば、PCR検査しなくてよいとなっていますけれども、2回以下の人は72時間以内のPCR検査が必要となっています。中国のワクチン接種状況は「Our World Data」によると、100人あたり250回程度、つまり一人当たり2.5回。二人に一人は2回で終わっている訳です。なので、2回しか打っていない人はPCR検査をしないといけなくなりますし、武漢ウイルス感染を疑う症状があれば、入国後の検査や待機がまっています。

このように全くのスルーではないのですけれども、これまでを振り返れば、どんなに水際を頑張っても入ってくるときは入ってくる。それは避けられないと思います。その意味では、そこは割り切って、入ってきた武漢ウイルスが武漢株なのか、オミクロン株なのか、それとも未知の変異株なのか、遺伝子解析してその特徴を把握して、すばやく対応した方がよいかもしれませんね。

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この記事へのコメント

  • 深森

    記事を拝見しました。

    ・「新型コロナはタダの風邪」→「入国制限が必要、ゲノム解析(変異株)などの警戒も必要な危険な感染症である」

    ・「世界的にはコロナは沈静化している(日本も同じようにコロナ感染対策を止めるべき)」→「実は中国では正確な感染状況は分からない(中国で、この状況であるということは、コロナ感染対策を止めて人々の移動が容易になった大陸の国々である欧米・ロシア・その他の感染状況の統計は、どれくらい怪しいのか?)」

    ・結局のところ、新たなコロナ変異パンデミックが生じる危険性は今も存在するのであり、医学専門家の助言のもと安倍政権が決断し、それ以来つづいてきた日本の積極的なコロナワクチン政策は正しかった

    以前に筆者さまが明言されていた「新型コロナへの対応は何も必要ない(=ワクチン接種を進めるという安倍政権の決断は間違っていた)」というご意見は、現在は正反対ということで
    →「遺伝子解析してその特徴を把握して、すばやく対応した方がよい」、と言うことですね(=宮沢准教授の主張を支持しなくなった)
    2022年12月28日 07:45
  • 日比野

    深森さん。おはようございます。コメントありがとうございます。

    申し訳ありませんが、仰っていることの意味が分かりません。

    ・「入国制限が必要、ゲノム解析(変異株)などの警戒も必要な危険な感染症である」

    入国制限しても入ってくるものは入ってくる(多少は時間稼ぎになるが)ので、ゲノム解析して、その正体を掴むのが先

    ・「日本も同じようにコロナ感染対策を止めるべき」

    止めるべきとは一言も言ってません

    ・「日本の積極的なコロナワクチン政策は正しかった」

    正しかったかどうかの結論はまだ早いかと。
    ワクチン政策を続けているのに感染者数世界一、ワクチン接種と超過死亡の相関、その他、検証すべき問題が多々残っています。
    もっとも、中国のような感染爆発ではないという意味では成功なのかもしれませんが。

    ・遺伝子解析してその特徴を把握して、すばやく対応した方がよい(=宮沢准教授の主張を支持しなくなった)

    遺伝子解析してその特徴を把握して、すばやく対応した方がよい≠宮沢准教授の主張を支持しなくなった

    遺伝子解析して対応すべきが、宮沢准教授の主張を支持しなくなったとイコールとされるのが分かりません。

    宮沢准教授の主張はワクチンの安全性の話であって、武漢ウイルスにどう対応するかとは別の話です。
    武漢ウイルスへの対応はワクチンだけではありませんから。
    治療薬(最近、葛根湯が効くという話もありましたね)もそうですし、免疫力を高めるとか、少し前は三密とかいわれてました。

    今、流行っているとされるオミクロンは感染力が高い反面、弱毒化しているとされ、死亡率も高くないとされていますから、それなりの対応に移行しているのが現状だと思いますけれども、道行く人のマスク率の高さをみれば、少なくとも、国民の意識下では対策は続いている訳です。(それが有効かどうかは別として)

    今後ともよろしくお願いいたします。
    2022年12月28日 08:27
  • 深森

    コメント返信ありがとうございます。
    当方の言及の意味が分からないのであれば、そのままで結構です。
    当方がつかんでいる情報と、そちらでつかんでいる情報および考察される結果は異なるのでありますし、そもそも、そのレベルから通じないのは当然の結果と思います。

    筆者さまが、宮沢准教授の見解を支持するという決断に至っているのは、非常に面白いと思います。

    寒くなりましたので、体調に気を付けて、お健やかにお過ごしくださいませ。
    2022年12月28日 14:09
  • 日比野

    深森さん、お返事どうもです。

    まぁ、いろんな方がそれぞれに情報を集め、それぞれに見解を出しているのが現状ですからね。最終的な結論は何年か何十年先に出るのかもしれませんけれども、パンデミックの渦中では、意見が分かれるのも致し方ないことです。それでも、マスコミやどこかの宣伝に踊らされることなく、自分で考え、自分なりの結論を出すことは大事だと思います。

    これからもよろしくお願いします。

    2022年12月28日 14:42