

1.秋葉復興相更迭
12月27日、岸田総理は、秋葉賢也復興相と杉田水脈総務大臣政務官に辞表を提出させる形で更迭しました。来年1月下旬召集の通常国会で野党の追及を避けるためと見られていますけれども、これで岸田政権での閣僚更迭は10月以降で4人目となりました。
岸田総理は秋葉氏の後任に元復興相の渡辺博道衆院議員、杉田氏の後任に総務官僚出身の長谷川淳二衆院議員をそれぞれ指名しましたけれども、今回の“更迭人事”について、岸田総理は記者団に対し「任命責任を重く受け止めている。山積する課題に取り組み、職責を果たしていきたい」と述べ、今後、政権の態勢立て直しに全力を挙げる考えを示しました。
この更迭にある閣僚経験者は「当初想定されていた問題閣僚の一掃はできず、その場しのぎ対症療法にとどまった」とコメント。自民党の長老も「内閣支持率アップなど政権浮揚につながるかはきわめて疑問」と述べるなど、その場凌ぎ的な対応だと見られているようです。
2.諦めさせられた内閣改造
ただ、少し前には、更迭ではなく、年明けに内閣改造説が取り沙汰されていました。
22日、複数の政府・与党幹部が来年1月下旬召集予定の通常国会に向け内閣改造すると明かし、調整中だと報じられていました。秋葉氏もこの改造で交代させるという話しも出ていたのですけれども、なぜ、それを待たずの更迭になったのか。
どうも、岸田総理は内閣改造を諦めさせられたという報道も出ています。
何でも、20日に党本部を訪れた岸田総理は麻生副総裁、茂木幹事長と会談し、「内閣改造という声もありますね」と水を向けたのだそうです。けれども、麻生副総裁らの反応は芳しくなく、「内閣改造で政権が上向いた例は聞かない。むしろ、弱まるのが世の常だ」と言われたのだそうです。
麻生副総理、茂木幹事長が首を縦に振らないということは、改造したくても、麻生派、茂木派の協力を得られないということです。それを押し切って強硬したら、流石に政権は持たない。
今の岸田総理は、自身がやりたい「人事」ですら思う通りに出来ないまでに弱っているのかもしれません。
3.衆院解散は総理の専権事項だ
となると、総理に残された専権事項は解散しかありません。
これについても、25日、自民党の萩生田政調会長は、フジテレビの「日曜報道 THE PRIME」も出演し、防衛増税について「今年7月の参議院選挙で防衛費を積み増すことは約束したが、その財源を増税によって賄うことは約束していないので、これまでの議論には少し違和感を感じている……いきなりの増税には反対で、もし増税を決めるのであれば、過去の政権がいずれもそうだったように、国民の信を問わなければならない。増税の明確な方向性が出た時には、いずれ国民に判断いただく必要が当然ある」と増税実施前に衆議院の解散・総選挙を行い、国民の信を問う必要があるという認識を示しました。
総理の専権事項であるはずの「解散」に、政調会長が踏み込む。岸田総理の求心力がそこまでに落ちている可能性も考えられます。
これについて、岸田総理は27日のTBSのBS番組で、増税を巡り「スタートの時期はこれから決定するが、それまでには選挙はあると思う」と述べ、翌28日の共同通信などのインタビューで、再び、増税開始前の衆院解散・総選挙について「可能性はあり得る」と述べる一方、実施時期は決めていないとして「今のところ来年の選挙は考えていない」とも語っています。
この時、岸田総理は、衆院解散は首相の専権事項だと明言したそうなのですけれども、内閣改造は麻生副総理、茂木幹事長に封じられ、解散について萩生田政調会長に口出しされる。求心力がた落ちの岸田総理にしてみれば、「衆院解散は総理の専権事項だ」といってみせなければ格好がつきません。かなり苦しい状況に立たされていることが窺えます。
増税の内容は例年11~12月の与党税制調査会で決まりますから、24年度の税制改正大綱をまとめた後の23年末の解散もありえますけれども、岸田総理の「来年の選挙は考えていない」という発言の通りであれば、増税開始は25年度以降になります。
この場合は、24年9月の自民党総裁任期終了後に増税が始まることになります。当然ながら可否を決める前に総裁選があり、増税の時期や内容が選挙の争点になる可能性が出てくることになります。
4.千万人と雖も吾往かん
岸田総理の発言を見る限りでは、年明けの内閣改造も解散総選挙もないことになるのですけれども、嘉悦大学教授の高橋洋一氏は、もし、今解散総選挙をやるとするならば、起死回生の一策があるとして次のように述べています。
・年明け通常国会の冒頭で解散する確かに、高橋教授のこの案は、起死回生の一策になるかもしれません。
・防衛増税は撤回する。一兆円などなんとでもなる
・岸田政権は次のサミットまでと言われていることを考えると、1月に解散に打ってでるべき
・総選挙で勝てば、岸田政権は続けられる
・厳しいのはなんの準備も出来ていない野党だ。
・その昔、小泉元総理に、総理の仕事って何ですかと聞いたことがあった。答えは「解散と内閣改造しかない」だった。
・国会冒頭解散は面白い。野党は手も足も出ない。野党の支持率が高くない限り選挙は勝てる。
けれども、問題は、この決断を岸田総理に出来るかどうかです。
安倍元総理が凶弾に斃れた直後、これから岸田総理は「総理の孤独」と対峙することになる、と述べたことがあります。
岸田総理は、内閣改造について、麻生副総理や茂木幹事長と相談しましたけれども、仮に、その相談が、「総理の孤独」を自ら背負った上での相談なのか、それとも「孤独」の重みに耐えられないから、少し持ってくれと懇願するための相談なのかでは、その意味は全然違ってきます。
前者は、賛成だろうが反対だろうが、最終判断は自分がやるという覚悟がありますけれども、後者には、その覚悟がない分「いいなり」になってしまう危険がある。
安倍元総理無きあと、岸田総理に「千万人と雖も吾往かん」とでもいうべき覚悟が固まっているのか。今まさにそれを問われているような気がしますね。
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