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1.ブースター接種
昨年は武漢ウイルス禍に翻弄された1年だったかと思いますけれども、国内でもワクチンの3回目の接種が昨年12月1日からスタートしました。
厚労省は「特に接種をお勧めする方」として、「高齢者、基礎疾患を有する方などの重症化リスクが高い方」、「重症化リスクが高い方の関係者・介助者・介護従事者などの重症化リスクが高い方との接触が多い方」、「医療従事者などの職業上の理由などによりウイルス曝露リスクが高い方を挙げています。
ワクチンの効果については、東邦大学の東丸貴信名誉教授が次のように述べています。
今のmRNAワクチンは接種して3カ月後に抗体価が半分以下、6カ月で90%減少するというデータがあります。ただ、中和抗体が激減しても、NK細胞などが体内の異物の排除を行う『細胞性免疫』は長期間残るとされます。ウイルスに対する免疫力がなくなるわけではなく、発症や重症化を抑える一定の効果は持続するのです。とはいえ、3回目接種で中和抗体を再び多くすることは重要です。従来株の中和抗体の量が多いと、オミクロン株についてもカバーして発症や重症化を抑える効果があると考えられています」このように、ワクチンが効かないのでは、とも言われるオミクロン株についても発症や重症化を抑える一定の効果があるというのですね。
その一方、副反応とされるアナフィラキシーショックや、全身の皮膚・粘膜症状、喘息、呼吸困難、頻脈、血圧低下といった症状が表れたことがある人について、東丸名誉教授は次のように述べています。
1回目、2回目の接種でこうした症状があった人は、追加接種はできないとされています。また、因果関係はわからないとしても、ワクチン接種後に後遺症と呼べるくらい強い副反応があった人も慎重になったほうがいいでしょう。心筋炎、髄膜炎、心筋梗塞、脳卒中といった重篤な疾患を発症した人はもちろん、長期にわたって胸痛が治まらなかったり、ひどい頭痛が続いていたり、手足のしびれが残っていたりする場合は、3回目の接種は控えたほうがいいと考えます。東丸名誉教授はアナフィラキシーショックだけでなく、強い副反応があった人や11歳以下へのコロナワクチン接種についても慎重にリスクとベネフィットを天秤にかけて判断すべきだとしています。
ほかには、接種に対して精神的に強い抵抗がある人は、鬱などの精神疾患につながるリスクがあるので注意が必要です。小学生など11歳以下の子供へのコロナワクチン接種においては、重篤な副反応とその長期後遺症についての十分なデータはありません。欧米のような感染爆発の状況では別ですが、現状では慎重にリスクと効果のバランスを考慮したほうがいいでしょう
それ以前に、現時点の日本において、オミクロン株はマスコミが煽る程の脅威にはなっていません。
オミクロン株に感染した患者10人以上の治療に当たった国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長によると、患者の殆どは、ワクチンを接種した海外から帰国した20代から60代までが中心とのことで、無症状か、症状が出ても発熱やせき、喉の痛みなどを訴える人が多く、重症化した人はいないということだそうです。
また、デルタ株に感染した患者と比べ、味覚や嗅覚の異常を訴える人は少ないとしています。これが現状です。
2.ホリエモンと古舘伊知郎
ただ、こうしたワクチンの副反応リスクについて、世間の口に上るようになったのはつい最近の話で、昨年は「ワクチン打つべし」の空気が世間を支配していて、ワクチン接種を拒否あるいは躊躇する人達はいわゆる「反ワク」などと一部で揶揄されたりしていました。
ホリエモンこと堀江貴文氏が、ビジネスパーソンや就活生必携のソーシャル経済メディア「NewsPicks」で注目を集めたニュースを深掘りする「HORIE ONE」というネット番組があるのですけれども、そこの7月5日公開の「『ロジックvs感情』のニュース解説」で、ニュースキャスターの古舘伊知郎氏と対談を行っています。
その中で、堀江氏は、ワクチン接種に対する考え方については「ロジックと感情の対立」という切り口で語っています。
堀江氏はロジックで考えればワクチン接種しないことなんてありえないと主張したことに対して、古館氏は、ワクチンには賛成意見も反対意見もあって、半信半疑だと述べていました。
これに堀江氏は隕石に当たって死ぬような話だと嗤い、ただの感情論だと斬って捨てていましたけれども、筆者は古館氏の主張の全てが感情論なのかとは思いません。
なぜなら、人の"感情"には、"直観"が働いている部分もあると思うからです。
3.感情が評価する
心理学者で名古屋大学大学院情報学研究科教授の大平英樹氏は、「脳の中で、感情の形成に関わる部位のうち、一番重要なのは"扁桃体"です……扁桃体は、何かを見たり聞いたりしたとき、それが生存に関わる重大なものであるかを一瞬のうちに評価します……人生では、大事な決断をしなくてはいけないけれど、判断の材料が乏しいという場合があるでしょう……頭でいくら考えても、どちらが正しいとも言えない。そんなときは、"好き、嫌い"のような感情に任せると、扁桃体がけっこういい判断をしてくれますよ」と述べています。
つまり、好ましい対象には好意的な感情、好ましくない対象には不快な感情が発生するという、対象を「評価する」機能が感情には備わっているというのですね。
筆者はこれを"直観"が働いているという風にも捉えているのですけれども、直観とは読んで字の如く「直かに観る」です。ロジックも何もかもすっとばして、物事の本質を直接「観て」しまう力です。
この直観は、先の大平教授が述べている「判断の材料が乏しいという場合」に絶大な力を発揮します。ロジック抜きで答えが分かるのですから、当たり前といえば当たり前です。
対談で古館氏は、ワクチン接種について「バンジージャンプの綱にちょっと亀裂が入っているんじゃないかと思っている」と述べていましたけれども、これはワクチンに対する賛成意見も、反対意見もそれぞれ踏まえた上での発言です。
言うまでもなく、賛成意見も反対意見もそれぞれ理由とロジックがあります。古館氏はその両方の意見を知った上でなお「亀裂が入っているんじゃないか」と述べているのですね。ですから古館氏のこのコメントには単なる感情論に止まらず「直観」も含まれているのではないかと筆者は見ています。
4.頭で考え心で観る
普通、感情は、「心」が思うものであって、「脳」が考えるものではないとするのが普通だと思います。「感心」という言葉をみても「感じる」のは「心」です。人が何かに感銘を受けたとき「心が惹かれた」とは言っても「脳が惹かれた」とは言いません。
もし、名古屋大学の大平教授のいうように、感情、あるいは直観に物事を判断する機能があるのだとすると、人間は、物事を判断する機能として、脳と心の2つを持っていることになります。
勿論、脳には、物事記憶し、考える機能が備わっていますから、どちらかといえば知性や理性を司るものになるでしょう。対して心のほうは、感性と直感を司るのが主体になるかと思います。
物事を判断する司令塔が「脳」と「心」の2つあるとき、脳がYes/No、心がYes/Noを判断したとして、それぞれ4通りの組み合わせが発生します。
つまり、「脳:Yes、心:Yes」「脳:No、心:Yes」「脳:Yes、心:No」「脳:No、心:No」の4通りです。
ここで、「脳」も「心」も同じ判断、「脳:Yes、心:Yes」と「脳:No、心:No」の場合はどちらも同じ判断ですから、その人が決断を下すときにも、迷いはないだろうと思います。
問題は残り2つの「脳:No、心:Yes」、「脳:Yes、心:No」のケースのように脳と心が別の判断をした場合です。
この時、取り得る判断は「脳」に従う、「心」に従う、「保留」するの3つが考えられます。
堀江氏と古館氏の対談を聞く限り、古館氏は、「脳」では、ワクチンを接種すべきだとYesの判断をする一方、「心」では、バンジーの綱に亀裂が入っているのではないかとNoの判断をし、脳と心が別の判断をした結果、「保留」するというスタンスでいるように見えます。
5.不明推測法
武漢ウイルスワクチンについては、心筋炎リスクがあるとか、後になってから好ましくない事実も明らかになっています。国民の8割、9割がワクチンを接種してから、実はこうだったなどといわれても「後の祭り」状態なのですけれども、では事前に知る方法がないかといえばそうとも限りません。
思考法の代表的なものとしてよく演繹法や帰納法といった考え方が挙げられます。
演繹法とは、事実とそれらに関する規則を使って結論を導き出す考え方で、帰納法とは、事実から共通の要素を見つけ出しそれを一般化していく考え方です。
mRNAワクチンでいえば、mRNAワクチンはヒト細胞に武漢ウイルスのRNAを注入して、スパイクタンパクを産生させ、それに対する抗体を誘導させる。ゆえにmRNAワクチンは武漢ウイルスに効くのだ、という具合に最初に原因があってロジックを辿って結論に辿り着くという思考法です。
これに対して、帰納法は逆にある事実からその原因となる一般法則を見つけていく方法で、たとえば、ワクチンの副反応で胸の痛み、息切れがある。その原因はなんだろうかと考えて、これは心筋炎ではないかと仮説を立て、診察や解剖などでそれを確認・証明していく思考法です。
これらに対し、第3の思考法として時折取り上げられることがあるのが「不明推測法」です。
この不明推測法とは、アメリカの哲学者、論理学者、数学者、科学者であり、「プラグマティズムの父」とも呼ばれるチャールズ・サンダース・ピアスが提唱した思考法です。
これは一見、帰納法とよく似ているように見えるのですけれども、帰納法が仮定と結論から規則を推論するのに対し、不明推測法は結論と規則から仮定を推論するという違いがあります。
帰納法は仮定と結論から規則を推論するので、導かれるのはただ一つの規則になるのですけれども、不明推測法は結論と規則から仮定の方を推論するので、結論と規則を広くとれば取るほど、導かれる仮定は、より包含的な仮定となります。
ワクチンの副反応でも、心筋炎が原因とされる胸の痛みや息切れだけではありません。疲労、頭痛、寒気、下痢、発熱等様々なものが報告されています。それらを全て心筋炎が原因とするのには流石に無理があります。そういうときに、心筋炎を含むこれら全ての症状や事象をうまく説明できる仮説を導いていくのが不明推測法です。
不明推測法は、説明のための仮説は自由に組み立ててよい反面、仮説が正しければ成立するはずの様々な事象を確認する必要があります。
ワクチンの副反応の原因については、後から後から、実はこうでしたと発覚する状況ですけれども、ならばこそ、ワクチンに対しては不明推測法を使ってその原因となる「仮定」を推測するのがよいのではないかと思います。
ワクチン推奨だ、反ワクチンだ等と色分けするのも結構ですけれども、その判断が「脳」と「心」が共に同じ答えを出した結果なのか、それとも、互いに違う声を出しているにも関わらず、どちらかを選んだ結果なのか。そういう観点もあってよいように思います。
自分自身の「脳の指令」と「心の声」。それぞれに耳を傾けてみることも必要なのかも知れませんね。
この記事へのコメント
南の火消し
毎朝楽しみに拝読させて頂いております。
毎日の更新、大変頭の下がる思いではございますが、ご健康に留意され益々のご活躍願っております。