派遣社員の構造
派遣社員が問題になってる。ワーキングプアの温床だと。
正社員との明らかな給与格差。保障もなにもない。正社員として雇用しろとか、正社員並みの待遇に改善すべきとか言われてる。
外資系企業だと、業績が悪くなると、速攻で首を切る。情が入る余地がない。それに対して、一昔前の日本企業は終身雇用制を取っていた。終身雇用制は、好況のときは良かった。いくらでも人は欲しいから。
でも、失われた10年がこの構造を変えた。企業の固定費で一番かかるのは人件費。できれば外資系みたいに首を切りたい。でも、日本では外資系のようにすぱっと首切りは難しい、組合もあるし、風土として馴染んでない。だから、新卒採用を絞って、定年退職による正社員の自然減による緩やかなリストラを図った。10年たってみると、不況でも生き残れる程度の人員だけが正社員で、不足した人手は派遣社員で補充する企業だらけになった。
業績が悪くなると、派遣契約を解除して人件費を圧縮。スリム化して生き残りを図る。これは外資系が自分の業績が悪くなると行う大量のレイオフと同じ。派遣社員は事実上、外資系企業のレイオフ要員と同じ扱い。というより、いつでも首切りできる前提で雇っているとみるべき。
こうして、失われた10年の中で企業はなんとか生き残ったけれど、街にはフリーターと派遣社員で溢れるようになった。新卒採用を減らしたのだから当たり前といえば当たり前。
企業側は正社員という割り箸の周りに派遣社員という綿菓子でくるんだ、綿菓子組織を作った。
毎年の業績にあわせて、割り箸部分には手をつけずに、綿菓子の綿の部分をのりしろとして、量を調整することで、見えない解雇を行える体制にした。狡猾といえば狡猾。合理的といえば合理的。
もし、派遣を全員正社員として雇用した場合になにが起こるかというと、外資系のように業績が悪化した場合、大量のレイオフが行われる。首を切れなければ倒産するのだから選択の余地はない。
企業からみれば、解雇するのは、会社にとって使えない人材。そういうのは他の会社も取りたがらないから、大量の失業者を生み、固定化する危険がある。
だから、派遣の正社員化を進めるのであれば、解雇された人材に対する再教育の場を充実させて使える人材へと変える制度がしっかりしていないといけない。
制度として問題視される派遣制度だけど、現状では、逆に企業の雇用機会を補完しているといえる。
つまるところ、この問題は究極の選択風にいえば、
「給料は安いけれども、何がしかの職を手当てしてくれる社会」か「年収はあるけれど、一旦解雇されて無職になってしまったら最後、誰もなにもしてくれない社会」
のどちらを選ぶかという2択問題になる。
物凄くスキルがあって、どこにいっても通用するような人材だったら、どちらだろうが心配いらないけれど、大多数の人はそうじゃない。第一、そんな一流の人はとっくの昔に正社員として雇用されてる。
日本の風土では、まだ前者だと思う。問題は更に安い外国人労働者を安易に使うこと。彼らは日本に金を落とさない。国内の富を垂れ流しされては、ますますワーキングプアが増える。
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この記事へのコメント
日比野
「派遣社員は、人材の変動費化」とのご指摘、そのものズバリですね。ここまで明確に認識していませんでした。
大企業のみならず、どこの企業でも大なり小なり、派遣社員が重要な戦力になっており、中には、正社員以上の仕事をしているケースも多々あると認識しています。
もう少し、そういったスキルを見極めた上での待遇の向上や正社員との年収格差の是正はあっていいようには思います。おそらく安い外国人労働者との過当競争に晒されて、同じレベルくらいにまで抑えられているかと思います。
mayo5
ただ、大企業は正社員だけで構成できるわけでなく、多くの関連会社、出入りの会社、人々からなっている。派遣社員といえども、不況時にさようならをすると、長期的には落ちていくこととなります。
人件費の変動費化は、スプレッド・シートでお仕事する人には、すごいひらめきなのでしょうが、その裏の数々の人生があると言うことを理解できない人にやらせてはいけないことです。
fen
終身雇用制は確かに生活をきっちり保障してくれますが、それは働く側も一生その会社で働く覚悟があっての事。今の人はそこまでの覚悟がある人ばかりではないです。仕事が思ってたよりつまらないとか、他にやりたい事が見つかったとか、上司がムカツクとかいって辞めてしまう人を正規採用すると言うのはリスクが高い。
それに、きちんと就職活動をして就職した人と、バイトとあまり変わらない程度の面接で採用された人が同じ待遇を求めるというのは逆差別にはなるんじゃないでしょうか?それが通るなら就職活動というもの自体が死んでしまう。
という方面から考察してみても面白いですよ。