知の性能 ③

知の性能 ②の続きです。

○知の指向性

知には内容そのものが誰を対象としているかで指向性を持っている。指向性の高い知は目的が明確で、コアな対象への効果が絶大。専門知識であったり、マニアックだったり。全方位の知は、誰にでも使えるけど、何に使えるか、どれくらい効果があるかはあまり明確じゃない。

基礎教育は全方位性が高く、専門教育にいくにしたがって、指向性が高くなる。その分市場は狭くなる。方位によっては、対象そのものが市場にない場合だってある。

だから、世の中に広く知れ渡っているような知は、全方位性のものが多く、指向性の高い知はあまり認識されない。国の知力は、その国の持っている全方位性の知と、奥に隠れている指向性の高い知との総和で考えなくちゃいけない。

指向性の高い知は、普通はその道のプロが持っているものだけど、プロがプロたる力を保持できる理由は、その下に膨大なアマチュア層の厚みがあるから。アマチュア層が充実すればするほど、その上に君臨するプロのレベルは高くなる。専門職でないアマチュア市場の充実度でその国の知の潜在力を推定できる。
デイリー・テレグラフ東京特派員のコリンジョイスは、東京にはどんなに地味なトピックでも、それに傾倒してやまない小さなグループがある、と紹介している。日本のアマチュア市場には指向性の高い知が、全方位に揃ってることになる。偏ってない。アマチュア層の厚い、肥沃な大地がある。
 
指向性が高く、専門性が高くなればなるほど、研究がすすみ、日進月歩で更新される。研究されつくすのが早い。賞味期限はさほど長くない。しかし、指向性の高い知は、時代に受け入れられ、求められたときに急激にピークを迎えて、ブームになる。一過性の動きになりがちだけど瞬間最大風速は大きい。

これに対して、全方位の知は対象が広い分、一度に役に立たなくなるケースは少ない。内容の更新も緩やか。だから全方位の知は賞味期限が長くなる。賞味期限が長い知はやがて、人々の風俗・伝統・しきたりに吸収され、なじんでゆく。全方位の知が人々の血肉になって、新しい知の安定生産状態に入る。

知は言葉に表されて知識になる。知識の段階になってはじめて他人に渡せる。知識の大小はあっても他人に渡せる形式になっていることが大事。でないと他人は使えない。誰かから投げられた知識は、別の人に受け取られて使われる。知識の価値は、次の価値を生むかどうかの有用性で測定される。

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