バーネット地政学と縁の関係 (縁起のレイヤー ⑥)

バーネット地政学では、紛争地域は田舎でおこるので都会化すれば起こらない。だから、他国と繋がることだ、という。

縁の種類ごとに互いに縁が沢山つけばつく程、経済的にも道義的にも縁を切るのが大変になる。縁を綺麗に切らないうちに干渉したり、紛争や戦争を起こすと、無法者のそしりを免れない。

だから、縁の種類ごとの接続を沢山もてば、紛争がおこりにくいということになる。特に血縁や友人知人の縁がついていると、道義的問題が発生するから、紛争の抑止力になりやすい。

ハプスブルグ家の外戚関係による平和維持は、血縁レベルで縁を太く接続して、内部紛争を防いだ例。

田舎は普通、貧乏だから、まず経済が育ちにくい。経済が未発達な段階では、メディアや知的産業が主な伝達媒体である思想で繋がる縁はもっと形成されないし、様々な思想の翻訳機能も熟成できない悪循環に陥る。

つまり田舎はグローバルには縁を形成しにくい条件を持っていることになる。

国家間の相互通信は、互いに距離が遠く離れているので伝送距離の長い地縁や思想の縁でしか通信できないケースが殆ど。しかし、貧乏な田舎ではそんな縁が存在しないので、血縁や友人知人の縁で形成される、比較的近距離通信の縁で繋がったブロックがばら撒かれてる。

血縁や友人知人の縁での活動の中心は主に地域生活圏であるから、生命の安全が脅かされたり、互いの地域生活圏が拡大して、おのおのの地域生活圏同士が互いに衝突して紛争になる。

バーネットのいう地政学的に繋がるというのが、グローバルレベルで繋がるという場合、伝送距離の問題から思想の縁や経済的関係の縁でしか繋ぐことができないことになる。だから都会化が必要だという主張になる。

画像


地域生活圏レベルで直接繋がる場合は、移民または、個人的友人関係による繋がりを作るしかない。移民した場合は、相手の地域生活圏となじまなければ、別の布をツギハギしたと同じ状態になるから物理的衝突が起こる。バーネットの主張する田舎で紛争が起こるのと同じ状態になる。地域生活圏同士の衝突は生活圏の確保に関わるから。

ユダヤ人や華僑は家族単位で世界中に移民している。すなわち地域生活圏、特に血縁レベルでグローバル化しているのが特徴。物凄く縁の繋がりが強いグローバルネットワークを形成している。

アメリカはフルブライト奨学生制度なんかで代表されるように、世界中から人材を集めて、親アメリカ人材にして、世界中に送り返している。これは主に知人の縁で接続をグローバル化する戦略。知人の縁の繋がりもまた強い。

だけど、地域生活圏の縁は主にその国独自の伝統や思想を伝達するのが主な役目だからなるべく干渉しないで保持すべき。グローバル化する対象にはそぐわない。下手をすれば、相手の伝統破壊に繋がりかねない。

だからグローバル化は、経済関係や思想の縁だけにして、地域生活圏への思想伝達はその当事国にまかせるべき。

今のところ、日本が世界と繋がっている縁は主に経済関係が殆どであって、その他の縁は殆ど接続通信されていない状態。今後、世界に影響を与えるためには、経済的関係だけでなく、思想の縁をどう繋ぐかという戦略を構築する必要があるだろう。


 人気blogランキングへ

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック