商売の考え方として、日本人のそれは細く長く、そこそこの利益でも長く商売を続けることを好む傾向が強い。
だから老舗が多いし、副次効果として老舗を媒体とした伝統の保持があって、それがまた企業価値になったりもしてる。
伝統を身につけるのは時間がかかるし、なにより後世に伝えないといけないから、いきおい従業員もなるべく終身雇用にして、伝統を受け継がせ易い環境をつくったりもしてる。
欧米人の商売は太く短く、とにかく市場のシェアをとって、一年二年の単位で勝った負けたとやる。だから、企業を簡単に買収したり、売ったりするのも抵抗がない。
その場の利益を求める。従業員は即戦力でないといけない。儲けられる人が欲しい。だから年俸制がぴったりと合う。
前者は利益率が低く、意思決定も時間がかかるので急激な時代の変化になかなかついていけない反面、経営基盤は安定して伝統文化を保持してる。お客さんをリピーターにしてる。
後者は利益率が高く、経営スピードが速くなる反面、シェアを取れなければ即、倒産。常に新しい価値を生み続けなければならないので、苛烈な競争になりがち。
これって、双方の勝負観が影響している。
日本と欧米の勝負観の違いについては、大空のサムライ、坂井三郎氏が語っている。少し引用してみる。
--- 私がよくいうんですが、日本人の勝負観と欧米人の勝負観は、全然違う。ということは日本人は非常に単純なんですね。剣道一つとってもですね、一本とったら勝ち、相撲も土俵から出たら負け、相手に99.9%の戦力が残っていても、です。それなのに負けは負け。
ところが欧米人の勝負観というのは、とにかくプロボクシングでもレスリングでも、相手がダウンする、なおやっつけて完全にノックアウトする、それでもって勝ったとする。ところが日本の場合は一本とったら、おしまい。ハワイ作戦はまさにそのとおり。行ってだまし討ちをしてぽんぽんやって帰ってきて、勝った勝ったと喜んでいる。
そういう作戦が非常に多いんです。なぜそうなったかというと、日本の海軍、近代戦争やってないんですよ。せいぜいやったのが、日露戦争の明治37~38年ですね。それ以後、世界はたいへんな近代戦をやってきているわけです。 ---
商売ってある意味、商売敵との勝負だけど、日本の場合は相手を滅ぼすまでやらない。その時その時の商売で勝った、負けたとやってる。ひとつの商品が廃れれば、別の商品で別の勝負が始まる。だからお互い生き残って、共存できる。負け続ければ当然消えるけれど。
欧米の勝負観からいくと、商売敵を完全に滅ぼすまでやる。生き残りが一人でもいたら報復されるから。だからシェアを100%奪うのは悪いことでもなんでもない。勝ったものの総取り。一度負けたら立ち直れない。
欧米の勝負観のまま商売をトコトンまでやると寡占になる。欧米の勝負観で共生の世界をつくるのは難しい。
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