ネットの政治への影響力を検討する その4

ネットの政治への影響力を検討するシリーズの最終回として、ネット組織のあり方を検討してみます。

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政治に組織と金が必要か否か。絶対必要と考えるのが普通。

有権者、特に政治家本人を知らない層にとっては、マニュフェストでいくら政策を謳ってみても、意識下ではまだまだお上任せ。政党の歴史と実績で判断してる。これまでもそうだったように、悪いようにはしないだろう、という思い込みが幅を利かせる。

候補者本人を知らない人は、候補者本人をみて判断なんかしてなくて、その後ろの政党をみて判断してる。

売り込みにきた営業マンじゃなくて、勤めている会社の名前を見ている。大企業だから大丈夫だろう、と思う心理と同じ。営業マンは誠実そうで、悪人顔でなければ合格点。

だから、日本の政治家はまずクリーンであることが第一条件になる。政策云々の前にクリーンかどうかがくる。政策云々は政党が保障してくれる。勝手な思いこみであったとしても。

選挙戦では、候補者のクリーンイメージを植えつけられれば、半分は済んでしまう。クリーンなんだから悪いことはしない筈、という思い込みに訴えられるから。

政党組織も金も、政党名が知られ、候補者の顔が知られるためのもの。宣伝広告費としての側面が強くなる。政策を練ったり、ロビー活動のための金じゃない。それは役人に任せてる。

だから、タレント候補はうってつけ。伝統保守政党がダーティイメージのないタレント候補を擁立さえできれば、クリーンと顔の両方の条件がいっぺんに揃う。

要は平和すぎたということ。お上任せで巧くいっていたものだから危機意識が非常に低い。

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日本のネットの世界は理性が中心。理知的なブログは沢山あるけれど、文章だけでクリーンさを伝えることは難かしい。

他人のひととなりを判断するときって、その人の容姿や言動も見ているもの。情報はあればあるだけ判断し易い。

五感をフルに活用して判断したものは、大体あたっている。普段のひととなりって、その人の心根から染み出たもの。直接会って話すのって結構バカにならない。

テレビなどの映像情報を通して候補者を判断するのは主に、視覚と聴覚という二つの感覚から得た情報で判断しているけれど、ネットブログは聴覚が主。この場合の聴覚は文章を読むという意味。ひとつの感覚情報しかない。

最近は動画アップとかできるようになったけれど、動画になって初めて、視覚と聴覚という二つの感覚情報が持てる。TVと肩を並べる。

ネットは時間と空間を飛び越えて相手と繋ぐことができるけれど、ブログとTVを比較すると視覚情報が劣る分TVに負ける。

更に、政党組織に入ると候補者や支援者と直接会って話したりできるから、クリーンさだけじゃなくて、本人の政治家としての資質や考えを五感で判断できる。五感情報すべてが得られる。現実社会の組織とネットでは知覚情報の数に差がありすぎるのは明らか。

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では、ネット上の繋がりなんて希薄な霧のようなもので、組織なんかできっこないかというと、必ずしもそうじゃない。

ネット上のブログで知り合った相手同士が現実社会でオフ会をするなんてのはよくあること。

気の合う仲間同士どんどん会って、五感全部に働きかけて、情報を伝達しあうことで、互いの齟齬は無くなってゆく。強固な繋がりができる。ネット社会でも現実社会でも。

ネット上で組織をつくろうとしたら、キャズム理論に従って、こうした魚群レベルのグループを互いに情報におけるホール・プロダクト、すなわちホール・コンテンツをケーブルとして繋げばいい。LAN型ネットワークモデルなら形成できる。これがネット上での組織のあり方になると思う。

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こうしたネット組織ができた場合、現実社会でどれだけの力をもつか。意識レベルではかなりの力を発揮できるが、現実社会でどうかといえば別の観点が必要になる。安全と経済の問題を考えなきゃいけない。

ネットでは考えだけあればで存在することができるけれど、現実社会では生命の安全と経済的安定が考えに優先してしまう。場合によっては、節を曲げてでもとにかく生きのびるのが先決だったりすることもある。火あぶりの刑になっても、節を曲げずにいられる人はごくごく少数。ネットでいくら勇ましいことを言っていても、いざ自分の後ろにヤクザが立ったら、途端にだんまり。でも一概に責めることなんてできない。それが現実。

金は、生命の安全と経済的安定が保障されるところに使われる。平和な日本では、金の力がものを言う。

総務省が出している平成16年家計調査年報から、世代別所得と貯蓄のデータと世代別ネット利用率を比較すると下図のようになる。

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注目すべき点は、ネット利用する/しないの率と貯蓄の積で、20~50歳代までのネット利用者の貯蓄の合計額よりも、60歳代以上のネットを使わない人たちの貯蓄の合計額の方が多い事実。

しかも60歳代以上の投票率は80%以上に対して、20~50歳代までの投票率は60%に満たない。

ネットを使わない世代が圧倒的に現実社会で力を持っているという事実を忘れてはいけない。
だから、こうした現実社会でのオピニオンリーダーへのアプローチも大切な要素になる。


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この記事へのコメント

  • ナルト

    日比野さま、こんにちは。TBありがとうございました。
    60代以上の人々が中心になって組織されたグループは、紙媒体による活動報告が主で、ネット利用はきわめて低いですね。以前、皇室を侮辱する演劇をやっていた連中の行動をスッパ抜いたのは、60才近い女性で、私も今年初めころのエントリで取り上げました。
    こういうグループが恐らく全国にも存在していると思われ、年齢の差を越えて連携していくことも必要かと思われます。
    さて、どうするか・・・。以前から考えてはいるのですが、なかなか前に進めません。

    話変わりますが、らんきーブログのぶいっちゃんがTBしてきてますね。彼とは思想的には異なるのですが、彼のブログスタイルや肩に力の入っていない率直な表現が好きで、以前から少し交流があります。

    こういう意見の違う人々との意見交換も将来的には必要になってくると思っております。
    2015年08月10日 18:19

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