独立とは何か


国家としての独立とは何かについて考えてみる。


独立をなんと定義するかで勿論議論が変わってくるので、このエントリーでの国家の独立とは、

「他国の影響をうけずに独力で国家意思を決定できること」

と定義した上で話をすすめてみる。


日本は国民主権だから国家意思は国民意思の総体。

そうすると、独立を考えるということは、国民が意思決定をするにおいて、何らかの影響をうけているのかいないのかという現状認識と、影響がある場合に排除する国民意思があるのか否かという命題に帰着すると思う。

主権国家の義務は「国民の生命と財産を守ることである」とは、よく言われるところ。国民意思決定の重要なファクター。

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このファクターは次の2つの観点から考えられるべき

1.国民の生命と財産は何に担保されているか 
2.国民の生命と財産は本当に守るべきものなのか


1.を担保するものは、国家安全を保障するところの軍事力と、食料供給(食料自給)、生産インフラおよび資源・エネルギーの確保。

今の日本が1.を独力で確保できているかといえば、まったく出来ていない現実は否定できない。食料自給率とエネルギー自給率を100%にしたければ、人口を半分か、四分の一以下くらいまでにするしかない。

ここまでは現段階で、国民の共通認識として持てると思う。

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次の問題はこれを克服することはできると考えるか考えないか。

1.を自前で担保するなんて、未来永劫に渡って地政学的に無理なのだ、と考えれば、どこかの国に従属して生き延びるしかなくなる。

それに対して、いや1.も自前で担保できるんだ、と考えれば、そのための方策をどうするかの議論になる。具体的には、食料自給とエネルギーの問題。あとは自衛権の行使の問題。

検討の結果、自前で担保できないとなれば、やっぱり属国の道を選ぶのか、2.への選択を迫られることになる。

2.の態度はかなり強固。武士は食わねど高楊枝ではないけれど、たとえ困窮して、落ちぶれてしまうことになったとしても、日本人の矜持は決して捨てないという立場。殺されても誇りは捨てない態度。ここまで覚悟ができているのであれば、1.での検討結果に関わらず、なんらかの方策をみつけられる可能性があるかもしれない。

安倍総理は、著書「美しい国へ」で

「たしかに自分のいのちは大切なものである。しかし、ときにはそれをなげうっても守るべき価値が存在するのだ、ということを考えたことがあるだろうか。P.108」  

と述べているから、明らかに2.の立場。だけど国民がそれを理解しているかどうかは、はなはだ怪しい。理解していれば、少なくとも1.の議論がされていて、結論が出ていたっておかしくないから。

2.を国民の意思にするのであれば、2.の世論の喚起やその教育をしなくっちゃいけないし、その前に国民が受け入れなかったら始めることすらできない。それに加えて、今の教育で教えられている東京裁判史観と日本人の軍事アレルギーがその邪魔をする。

だからまず1.の段階をどう通過するのかから始めなくっちゃいけないのだけれど、多分1.の担保を自前でできるとする独立派と、そんなの逆立ちしても無理だから、商人国家として生きるしかないよ派に国論が割れると思う。

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この記事へのコメント

  • suzuran

    2つ目は極東問題ですが、日比野さんは将来アジア問題から米軍が手を引く時には、米国から(日本も可能?)一方的に安保破棄できるという事に触れていました。確かに未だ極東問題は解決には時間が必要でしょうが、もし将来解決後米軍が日本基地から撤退したとして、その時日本はどうするのが得策だ、とお考えでしょうか?日本独自の世界戦略構想による、世界に通用する防衛省を作ることが可能だ、とお考えなのか。話によると独自の情報システム構築が多大な費用を要する為、とうてい不可能だ、と言う話を聞いたことがあります。
    それが事実であるなら、米軍から離脱した独自の軍隊を持つことも不可能ということなのでしょうか?つまり、永遠に日本は日米安保を維持し続けていくしか方策はないと?しかもエネルギーのほとんどをアラブの石油に頼っている現在、今後もどこまでも米軍の尻馬に乗っかって、中東戦争にまで借り出されても、アラブ人殺しに貢献していくことになるのでしょうか?
    2015年08月10日 18:18
  • 日比野

    mayo5さん、こんばんは。
    「国民の生命と財産を担保」する要件を食料自給率だけに直結しているつもりではなく、

    1.「国家安全を保障するところの軍事力」
    2.「食料供給(食料自給)」
    3.「生産インフラおよび資源・エネルギーの確保」

    のうちのひとつという位置づけのつもりだったのですが・・
    分かりにくかったですか? すみません。

    で、続編はありません。悪しからず。
    2015年08月10日 18:18
  • mayo5

    やはり、大局に着眼したら、大局から着手しなければならないと思う。ただ、急場が優先。
    「国民の生命と財産を担保」する要件を、食料自給率に直結させてしまうのは、・・直結しているかな。どこかで省略して、論旨を曲げていないかな。
    よく分からないけれど、今後の展開を見よう。
    2015年08月10日 18:18
  • 台風

    バグさんへ質問。
    人間は、食・衣・住の確保が基本です。歴史上、常に、軍事力と経済力がこれを保証するパワーでした。パワーの選択によって軍事国家か、商人国家になると考えるものです。あるいは2種同時選択。むしろ独立国のパワー装備としては、2種同時選択が標準でしょう。
    バグさんが、今或る王国の王だとしたら、当然、他国の動きを注意深く観察し、臨機応変に自分から行動を起こす必要がある訳ですが、軍事力と経済力のほかに、どんなパワーを使って食・衣・住の資源と自国の保全を確実にしようと考えますか?この2種類の力が充分に無いと、どんな他国も、交易にも交渉にも応じてくれないので、一方的な関係になります。かつての欧米列強と植民地の関係のように。
    「他国の影響を受けながらでも、軍事・経済とは別系統で考えられるパワーがあって、それで自国を維持できる」方法があれば非常に興味深いので、後学の為に是非お聞きしたいです。
    2015年08月10日 18:18
  • 罵愚

    さっそくレスらせていただきます。ふたつの疑問があります。ひとつは「他国の影響をうけずに独力で国家意思を決定できること」の定義。「他国の影響をうけずに」存在できる、あるいはできた独立国が、あるものでしょうか?国際社会と呼ぶ社会の構成要素としての国家であれば、相互に影響をおよぼしあうのは避けられないから、この部分は削除しないと“該当者なし”になってしまうと思う。
     ふたつめの疑問は、それに関連するのですが「国民の生命と財産を担保」する要件を、食料自給率に直結させてしまうのは、あまりにも乱暴すぎないか?の疑問です。その粗雑な立論が、最後のところで軍事独立と商人国家の二者択一を脅迫する結論につながっている。
     たとえばですよ、かつてのヨーロッパの植民地列強は、海外に植民地をもっていたわけだ。物資を植民地から収奪しなければ成り立たなかった列強はあなたの独立国の要件には、当てはまらないということですか?おなじように、食料を海外領や交易にたよっていた独立主権国家はギリシャ・ローマの時代にも、三国志以来の支那大陸にもあったと思うのですが…
    2015年08月10日 18:18

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