国民総幸福量 (利潤について考える その6)

「国にとって大切なのは国民総生産より国民総幸福量なんです。」

1976年、当時まだ21歳だったブータンのジグメ・シンゲ・ワンチュク国王は、ある国際会議でこう演説した。

「国民総幸福量」とは、経済成長自体が国家の目標とするのではなく、国民の幸せを目標とする指標。経済成長は幸せを求めるために必要な数多い手段のうちのひとつにすぎず、富の増加が幸福に直接つながるとは考えない概念。

ブータンの政策の中では、国民総幸福量には4つの主要な柱があるとされている。それらは、持続可能で公平な社会経済開発、自然環境の保護、有形、無形文化財の保護、そして良い統治。

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鎖国政策を貫いてきたブータンは、1952年に「開国」したけれど、節度ある開国を基本として、農業と森林を守り、あえてスローな近代化を選んだ。

基本に人が幸せになることにあるのだから、幸せが確保・増大しているのであれば別に急ぐ必要はない。

スローな近代化の中でも、国民は新しい概念や技術をそれなりに学んでいる。テレビ放送が始まったのは1999年のことだけれど、国民の様子を見ながら、欲望に振り回されることのない着実な近代化を進めてる。人の不幸から富を得るのではなく、国民の幸福な状態を壊さないように、絞りをかけながら現代文明を受け入れていく政策。

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ただ、ブータンは王国で、経済力も一人当たりGNIでみれば760米ドル程度と、世界的にみれば全然だし、人口も約92万人と少ない小国だから、スローな開国政策でも比較的やりやすかった面はあると思う。

民主化された大国になればなるほど、他国との相互依存度も高くなるし、民意も反映しないといけないから、たとえば日本で、まったく同じやり方をやろうとしてもかなり難しいだろうとは思う。

だけど、政策の中身はともかくとして、お金ではなくて、幸せそのものを追求することを主眼においた政治・経済活動はこれからの時代を予兆しているように思える。

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