知的正直さ (知性の発揮について考える その1)
今回は知的生活に基づいた、知性の発揮について考えてみたい。全6回シリーズでエントリーする。
知的生活の名著に渡辺昇一上智大学名誉教授の「知的生活の方法」がある。もう30年以上も前の本だけど、今もってその輝きは失われてはいない。
渡辺昇一名誉教授は「知的生活の方法」の最初の章で、知的正直さが大切だと説いている。
自分を誤魔化すのではなく、自分が知識を持たない、即ち知らないということを認める正直さが、知的生活を行ううえで欠かせないという。わかったふりをすると進歩が止まる、とも。
こうした態度は、「知」に対する姿勢によって生まれてくるのではないかと思う。
武道を習うときに、真に強くなりたいと思って始める人と、人に強いと思われたいと思って始める人とでは、武道に取り組む姿勢が違ってくるように、知の世界においても、まず知に対する真摯な態度が必要なのだと思う。
福沢諭吉は学問はいわば無目的に、そのこと自体に熱中しなければ大成するものでない、と言っている。つまり学問が手段化したときが危険だということ。
日本人は外国人と違って、学校を卒業したら、本を読まないといわれる。これは学問が立身出世のためとか、単なる手段になってしまっていることを示してる。
こうした知に対する姿勢は、おそらく認識力の育成にも関わってくる。わかったことと、わからないことを自分の中でしっかり分けておかないと、自分の中で何か心の言葉になっているかすら、だんだん分からなくなってくるから。知識を軽んじてしまって、やがては心の言葉を意識しなくなる。
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