心を攻める覇権維持 (中国の世界覇権戦略 その4)

現代戦争は兵器技術が占める要素が大きく、莫大な開発費が必要になる。軍は戦争によって敗れなかったとしても、軍を支える経済が持たなくなって崩れてゆく。

圧倒的兵器性能差を維持しようとすればするほど、経済的負担がどんどん重くなっていかざるを得ない。そして自重で潰れてしまう。

アメリカは、他国がどんなに頑張っても追いつけないくらいの圧倒的軍事力差を確保することによって、覇権を維持していったけれど、多分、中国はそんな不経済なことはしない。

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「心を以って攻めるを上となし、兵を以って攻めるを下となす」

三国志の蜀の軍師諸葛孔明が「南蛮征伐」を行うに際しての、参謀馬謖の進言。

覇権に対する挑戦国が現れるためには、まず覇権を狙うという野望を持つことがスタートになる。その野心から挑戦国が生まれてくる。だから、その野心すら持たないようにさせればいいと考えるほうがもっと効率的。ある意味、戦後の日本に対して行われたWGIPみたいなものだけれど、もう少しえげつないやり方。

まず、植民政策によって周辺国を半中国化させてゆくのが第一歩。次に将来の反乱の目を摘んでおくために、半中国化させた国の伝統や民族意識を破壊し、独立への指向をさせないように仕向けていく。同時に思想統制をして、政府転覆を考えさせないようにする。

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仮に統制国家があったとして、民主国家で思想信教の自由、表現の自由が保障された上で、不都合な真実を隠す国家と、情報統制と全体教育による画一化によって考える材料すら与えない国家とでは、後者のほうがより悪質。前者は将来の政権交代の可能性が残されているけれど、後者にはほとんどない。全体主義の怖いところ。

日本の拡大戦略はといえば、文化を輸出したり、日本企業の海外生産などで、「ニホン」を世界各国にばら撒いて、現地の人が良いと思って受け入れてもらうことで、シンパにしていく戦略になるけれど、中国は直接移民を送って、自国に有利なように人口分布を塗り替えてゆく。

縁起のレイヤー理論でいえば、「ニホン」という粉を、相手国をかたちづくる縁起の織物にまぶして、繊維の目を埋めていく方法と、「中国布」をいきなり相手の織物にツギハギしてしまう方法の違い。どちらも遠目には日本と中国の影響を受けた色合いにみえるけれど、その構造は全然違う。

日本は相手の心を正攻法で攻めていくけれど、中国は自国の心を相手の心に植えつけていく。今のウイグル・チベットの姿が将来の世界の姿にならない保証は誰にもできない。

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